君を探して   作:茜崎良衣菜

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捜索31

 

 

それはとても優しい温もりだった。

久しぶりに俺が感じたそれに懐かしさすら覚えている。この温かさを手放して、突き放していたと考えると心が痛い。もったいないことをしていたと反省する。

 

 

ベッドに腕と頭を預け寝ている彼女の手は俺のと繋がっていた。どれだけかはわからないがずっと握っていてくれたのだろう。

窓から吹く風がキレイな水色の髪を揺らしていた。

 

 

 

俺はずっと、ずっとこいつのことを好きでいるのだと思っていた。たとえこいつが俺のことを好きじゃなくなる日が来るとしても俺はこいつを好きであり続けるのだと思っていた。

それくらいこいつに惚れていたというのに。それがまさか逆だったなんて思ってもみなかった。

だけどまあ、こいつの想いが強くて、何度でも俺のそばにいてくれたから戻って来られたのだと考えると悪い気はしない。感謝以外の言葉はあまり思いつかない。

 

 

 

「……ごめんな」

 

 

 

俺がいなくなった一年間。こいつだけじゃない。色んな人たちに心配と迷惑をかけたことだろう。俺の知らないところでたくさん、たくさん。

最後の謝罪にしよう。謝るよりも感謝の言葉を受け取り、伝えていきたい。そうしよう。そう決意した。

 

 

 

「____紗夜」

 

 

 

身体を起こし、愛おしいその名を呼ぶ。

頭を撫でていればその目がゆっくと開いていく。

 

 

 

「おはよう」

 

 

 

笑顔で言い放てば勢いよく起き上がった。後ろに仰け反り倒れそうになるもんだから慌てて支えた。

 

 

 

「ちょ!危ないだろ?」

 

「そ、蒼夜!」

 

 

 

紗夜は幽霊でも見たかのような目で俺を見る。どうした?と微笑めばポロポロと涙が零れていた。

 

 

「……夢じゃ、ないわよね?」

 

「もちろん」

 

「ずっと、ずっとあのままかもって、そう思ってて……」

 

「寂しい思いさせてごめんな」

 

 

 

華奢なその身体を抱きしめる。

こうやってまた一緒にいられるのなら、それでいい。それだけで俺は幸せだ。

 

頬に口付けた。

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

事故に遭ってから一週間。検査を終えて無事に退院の決まった俺は紗夜と共に病院を出て歩く。こうして隣を歩くのは久しぶりで、それが嬉しい。

俺の退院祝いと称して弦巻家で行われたパーティーにはRoselia、ハロハピ、他のバンドメンバーも集まってくれていた。楽しくて、めちゃくちゃ笑った気がする。

 

 

 

「蒼夜さん記憶がない時と戻った後だと本当に性格違うんですね」

 

「ん?そうか?」

 

「いや全然違いますって。別人ですよ」

 

「そもそも話し方から違いますもんね」

 

 

 

美咲と花音に言われた言葉。正直今の方が素だし前の方に違和感しかない。様付けもキャラじゃないしやめたが最初呼び捨てした時は落ち着かないのかそわそわされていた。

 

 

 

「俺はこっちが素だぞ。前の話し方の方ができないっつーの」

 

「あたしたちからすればそれがものすごい違和感なんですけど……」

 

「まあ、そうなるよな……」

 

 

 

俺だって同じ状況になったら戸惑う自信がある。戸惑うなって方が無理な話だ。

 

 

 

「けどこんな俺も俺だからさ、これからもよろしくな!」

 

 

 

そんな二人に笑って俺は言う。二人は驚いたような顔をして、だけど笑い返してくれた。

 

 

 

「おーい蒼夜!」

 

 

 

振り返ればリサが手を振っていた。その隣には紗夜がいた。その表情が少しムスッとしていて、ご機嫌取らなきゃなーと思ってしまう。

 

 

 

「……蒼夜さん、記憶が戻ってからも大変ですね」

 

「そうか?そうでもないよ」

 

 

 

あんなの、ただかわいいだけじゃないか。大変なはずがない。

あいつのことを幸せにできるのは俺だけなんだ。全力で甘やかして、甘えて、一緒にいられなかった分もこれからは一緒にいたい。

それだけが、俺の望みなのだから。

 

 

 

「おう!今行くよ!」

 

 

 

明日に向けての足取りは、とても軽かった。

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

「みんなはしゃいでいたわね」

 

「だな。どんだけ俺のこと気になるんだって話だよ」

 

「迷惑っぽく言うわりには楽しそうな口振りね」

 

「まあ、興味を持たれるのに悪い気はしないからな」

 

 

 

昔からちやほやされて嬉しがるような人だった。

彼は私の恋人なのに。他の子たちが興味を持つことに嬉しがるなんて、嫉妬してしまうに決まっている。

私の感情は見透かされているのだろう。蒼夜は笑って手を繋ぐ。

 

 

 

「けど俺が好きなのは紗夜だけだよ。これまでも、これからもね」

 

 

 

彼の言葉に一喜一憂する。

悔しくて、でもやっぱり嬉しくて。

 

 

 

「それにまた俺がいなくなっても紗夜が俺のこと、見つけてくれるでしょ」

 

「当たり前じゃない」

 

「俺だって紗夜がいなくなったら全力で探し出すよ。どれだけの時間を費やしたって絶対紗夜のこと見つけるからな!」

 

 

 

そう言って蒼夜は笑った。見慣れたクシャッとした笑みを向ける。それは私の求めていた笑顔でずっと探し続けていた私の幸せ。

 

トンッと蒼夜の胸に頭を預ける。蒼夜は驚いた声を上げて、それでも私を受け止めることは忘れない。

あぁ、帰ってきた。やっと蒼夜が……!

 

 

 

「……もう、いなくならないで」

 

「……もちろん。これからはずっと紗夜の隣にいるよ」

 

 

 

蒼夜の服を掴む手に力が入る。涙が零れて止まらない。

そんな私を蒼夜は抱きしめた。これでもかってくらい強く強く、今までできなかった分まで抱きしめてくれた。

 

 

 

貴方と過ごしていた日々は楽しかった。

貴方がいなくなってからは苦しかった。

 

自分を責める日もあった。

苦しすぎて泣いた日もあった。

 

それでも今日まで変わらなかったことは一つだけ。

私は貴方が好き。この世界の誰よりも好き。その想いだけでここまで来たんだ。

 

もう離れない、離さない。

何度でもその手を掴んでみせると誓おう。

 

 

だから貴方もこの手を離さないで。

これからもずっと私の隣を歩いていて。

 

これから出会う困難には二人で悩み続けよう。一人じゃ解決できない問題も貴方と一緒なら答えられる気がするから。貴方がいてくれたら私は、何でもできるはずだから。

 

 

 

「帰るか」

 

「……ええ。そうしましょう」

 

 

 

涙の止んだ頃、蒼夜は優しい笑みで手を引いてくれる。

手を繋いで再度帰路を進んで行く。それが嬉しかった。

初めて想いを伝えてくれた道を、恋人の私たちで歩く。

 

 

 

「蒼夜」

 

「んー?」

 

「好きよ」

 

「あありがとな。俺は大好きだよ」

 

 

 

一年前の私たちが今の私たちを見たら何を思うんだろう。

驚くだろうか。それとも安心しているだろうか。

どちらになるかは今の私たちにはわからない。

それでも今が幸せであることに変わりはないから。

 

 

私たちはこれからも走り続ける。

今日はその長かった第一歩目だ。

 

 

 




これにて君を探して。は完結になります。
応援してくださった皆様ありがとうございました。
蒼夜と紗夜がこれからも幸せな時を過ごせるように願っています。
蒼夜と紗夜の物語を見守っていただきありがとうございました!!
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