君を探して   作:茜崎良衣菜

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捜索4

 

 

 

「お嬢様。お急ぎください。予定の時間に遅れてしまいます」

 

「ええ。わかったわ!」

 

 

 

お嬢様に言われ止めた車の中から彼女のことを呼ぶ。普段なら何も言わずに見守るところだが今日はこれからお嬢様のバンドの練習がある。リーダーでもある彼女が遅れてしまっては示しがつかない。まあ、何事もスケールのデカいこのお方がいる以上示しなんてあってないようなものかもしれないが。

 

 

 

「お嬢様。バンド練習などの前に楽しそうなことを探すのはおやめください」

 

「楽しそうなものがある気がしたの!」

 

「ですが練習に遅れてしまってはバンド練習に最初から参加できなくなりますが…」

 

「それはダメね!早く行きましょう!」

 

 

 

車の後部座席に乗り込んだお嬢様は元気よく発進の合図を聞き僕は車を出した。

鼻歌が聞こえる。それは確か彼女のバンドの新曲だったと思う。僕が前に聞いた時にはまだ全然できていなかったはずなのにいつの間に完成していたのだろうか。

 

何度も来て見慣れたスタジオの前でお嬢様を下ろす。スタジオに入って行く後ろ姿を眺めていた。

その姿が見えなくなったのを確認して駐車場に車を停めた。一般車の中に混じる高級車というのは違和感しかないな。

 

僕もバンド練習を見守るためスタジオの中へ入った。

 

 

 

「蒼夜くん」

 

「まりなさん。おはようございます」

 

「久しぶりじゃない?」

 

「そうですね。2週間振りでしょうか」

 

 

 

見慣れた人影が声をかけてきたため会話する。まりなさんはCIRCLEの従業員でありバンド練の度にお世話になっている。お嬢様は何かと迷惑を掛けているため僕としても頭が上がらない。

 

 

 

「ハロハピの練習見ていくんだよね?3番の部屋にいるよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

僕はまりなさんと別れ3番の部屋へ移動した。扉を開けばまだ準備中だったようで楽器のチューニングやセッティングをしていた。

 

 

 

「あっ!蒼夜くん!」

 

「みなさんおはようございます」

 

 

 

いち早く僕の方に駆けつけてきたのは北沢はぐみ様だった。天真爛漫でとにかく明るい女の子。実家が精肉店をやっていてそこで食べたコロッケはなかなかに美味しかった。

彼女はお嬢様と似た性質の持っていると思う。ただ周りをちゃんと見ている子でもある。

 

 

 

「やあ蒼夜。私たちに会いに来てくれたのかい?」

 

「いえ、こころ様の付き人です」

 

「薫さん。蒼夜さんにそんなこと言ってもダメですよ」

 

「蒼夜さん。おはようございます」

 

 

 

男女どちらかわかりずらい顔立ちで身長も高く演劇みたいな口調の瀬田薫様。焦ったような声でため息をつくミッシェルの中の人奥沢美咲様。大人しく僕に挨拶をしてくれた癒し松原花音様。それにお嬢様を合わせた5人が「世界を笑顔に!」というコンセプトのもと結集したバンド『ハローハッピーワールド』のメンバーだ。

 

 

 

「お嬢様は予定時間に間に合っていたでしょうか」

 

「はい大丈夫ですよ」

 

「それはよかったです」

 

「蒼夜さん、また今日も連れ回されてたんですか?」

 

「スタジオに向かっている途中の道で何か見つけられたようで」

 

「あー。毎日大変ですね」

 

 

 

美咲様は苦笑気味にそう言った。僕はそれを否定する。お嬢様の付き人をしているのは基本的に休日だけ。学校で同じクラスの美咲様は僕以上に振り回されていることだろう。非常に申し訳ない。

今日だって結局何を見つけたのか僕にはわからないままだったし。

 

 

 

「蒼夜くん!はぐみのベースちゃんと聞いててね!後でどうだったか聞くから!」

 

「ほう。なら私も頼もうかな」

 

「わ、私も、お願いします」

 

 

 

そしてここに来れる時は大抵皆さんの演奏を聞いての感想を言うようになっていた。

初めてお嬢様に連れられて来た時にも同じように感想を言ったところそれがとても良いアドバイスだったらしい。それからというものの僕は彼女たちのコーチのようになっていた。楽器を触った経験がないというのにどうして的確に指示ができるのかは未だに謎だけど。

 

それから途中で休憩をはさみつつ約3時間練習をした。

終わった後花音様はクタクタのようで壁にもたれ座り込んでいた。美咲様も同じようにしている。美咲様に関しては練習の疲れというよりはお嬢様の相手をした疲れだろう。はたから見ててもぶっ飛んだことをしていたし、どうしてパフォーマンスにバク転を取り入れようとしているのか。危ないと思ってくれないとこちらもフォローのしようがない。

 

 

 

「お疲れ様です。花音様、美咲様。これどうぞ」

 

 

 

途切れ途切れのお礼の言葉を聞きながら僕は水とタオルを差し出した。

 

 

 

「そうだみんな聞いて!」

 

 

 

この2人とは対称的にまだまだ元気なお嬢様が声を張った。そんなハイテンションじゃなくても聞こえますって。むしろその元気で彼女たちを気遣ってほしい。

 

 

 

「来週合同合宿をすることが決まったわ!」

 

「ご、合同合宿!?」

 

「ず、ずいぶん急だね…」

 

 

 

唐突に何言ってるの僕の主は。来週合宿って急に言われても準備とか色々あるし無理でしょ。こういうの普通前もって言わない?せめて1か月前とかにさ。

そのせいで美咲様がだいぶ元気になりましたけど。

 

 

 

「合宿?楽しそう!」

 

「それはいいね!どこでやるんだい?」

 

 

 

わー。バカが2人。

 

 

 

「いや急だから!楽しい楽しくない云々じゃなくてみんなの予定考えてから言いなよ!あたしその日バイトだし!」

 

「それは大丈夫よ!黒服の人に相談したら全員のスケジュールを開けてくれたわ!」

 

 

 

おい黒服何してるんだよ。人様のスケジュールを人様の知らない所で勝手に書き換えるなよ。いくらお嬢様の要望だからって本気出すな。せめてみんなと相談してからにしろ。

美咲様頭抱えてるだろ。

 

 

 

「場所はパパが持ってる別荘の一つよ!」

 

 

 

旦那様も絡んでるのか。確かにお嬢様はかわいらしい娘さんです。それに関しては何も文句はありません。ですがちょっと甘すぎやしませんか。貴方が命令しちゃったらそれ動くは黒服も。

 

 

 

「お嬢様。合同合宿ということは他にもどなたかが参加されるんですか?」

 

「そうよ!ポピパにロゼリアにアフターグロウにパスパレも参加するの!」

 

「前3つはともかくパスパレまでって…」

 

 

 

美咲様言いたいことはわかります。おかしいですよね。千聖様のスケジュール完璧に抑えられるって。

 

 

 

「そ、蒼夜さん!蒼夜さんも当日合宿にいますよね!?いてください!!」

 

 

 

美咲様の質問、いやこの場合は懇願というべきか。に僕は首を横に振った。

 

 

 

「すみません。その日は1日旦那様のお手伝いをしなければいけないんです」

 

「それじゃあ来週の合宿楽しみましょう!」

 

 

 

美咲様は今にも泣きだしそうだった。

 

それを見て決意する。

旦那様に頼み込んで仕事が終わり次第合流させてもらおう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

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