「合宿、ですか?」
「ええ。弦巻さんのお父さんの別荘で来週やるそうよ」
土曜日のバンド練習が終わると来週行われるという合宿の話をされた。来週の土曜日と日曜日の2日間、弦巻家の別荘で行われるらしい。
その日には普段から使っているドラムやキーボードの手配はもちろんのこと全部屋に防音設備が整っており敷地内には温泉もあるとのこと。正直別荘というかホテルだと思う。さすがは弦巻家と言ったところかしら。
「参加するのは私たちRoseliaの他にPoppin'Party、Afterglow、ハローハッピーワールド、Pastel Palettesも参加するそうよ」
「へぇー。パスパレも参加するんだ」
「じゃあおねえちゃんもいるんだ!ちょー楽しそう!」
「ひ、人が…いっぱい」
一人は意外そうな声を上げ、一人は心を躍らせ、一人は少々怯えている。それぞれの反応を見せているもののみんなやる気に満ち溢れていた。私だって例外ではない。5バンド集まるってことはギタリストもその数以上にいる。何度かお会いしたことがあるとはいえギターの腕がどの程度のものか把握しているわけじゃない。負けてられないわ。ギターが上手いのは日菜だけじゃないのだから。燃えてきたわ。
「私、スタジオの延長お願いしてくるわね」
「お、紗夜やる気だねー」
「当たり前でしょ」
自然と口角が上がる。まさか私が他のバンドとの練習をするのに舞い上がるなんて思っていなかった。
少し前の私だったらきっと興味を持てなかったかもしれない。これはつまりバンドに入って色々な人と関わって変われたってことよね。
Roseliaに入れてくれた湊さんには感謝しなきゃ。
「なら私も残るわ。元々延長しようと思っていたし一緒にやりましょう」
「あこもやりたいです!」
「わ、私も、いいですか…?」
「ちょっとみんなー?明日も練習あるってこと忘れないでねー」
結局今日の練習と同じ時間やってヘトヘトになったのは言うまでもなく、でもその練習はここ最近のどれよりも笑顔でやれたと思う。
♢♢♢
「紗夜さん、何かいいことありました?」
練習が終わり私は桐谷家に訪れた。出てくれたのは撫子さんではなく奏ちゃんだった。
なんでも撫子さんは今小学生組を公園に連れて行っているそうで家の中には奏ちゃんたち中学生組だけ。つまり私も含めた4人しかいないわけだ。
それなら今日は帰ろうかと思っていたら奏ちゃんに引き止められた。私のギターが聞きたいからいてほしいと言われてしまっては帰れまい。他の2人も賛成のようだった。
リクエストを聞いて弾くこと約10分。そんな質問が奏ちゃんから飛び出した。唐突な質問に私は首を傾げる。
「どうしてそう思うの?」
「なんか今日の紗夜さんいつもより楽しそうに弾いてるので。
「ああ。紗夜姉ちゃん超楽しそうだぜ!」
「僕にもそう見えるよ」
まさか合宿に対する思いがここでも溢れているなんて。まあ別に悪いことでもないし隠す必要はないわよね。
「来週バンドのメンバーと合宿するのよ。それが楽しみで」
「合宿!?いいなー俺も1回やってみたい!」
「遊びに行くんじゃないんだよ?わかってる?」
「わ、わかってるよ!」
「来週のいつ行くの?」
「土曜日と日曜日よ。だから来週はここには来れないわね」
私がそう言うと3人はわかりやすく落ち込んだ。犬だったら耳も尻尾も垂れ下がってることだろう。そんなところも可愛くて仕方ないのだけれど。
「だから今日は一緒に楽しみましょうか。来週の分まで」
私の言葉にパァッと表情が明るくなる。それに一度笑顔を見せて私はギターを弾き直した。
そして迎えた合宿当日。運命の再会をすることになるのをこの時の私はまだ知らない。
今回は短めです。
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