「待って!おねーちゃん!」
走り出したおねーちゃんを呼ぶ。けどそれに効果はなくて部屋から出て行ってしまった。
あたし以外のメンバーは困惑したような表情をしていた。おねーちゃんを泣かせた蒼くんも例外じゃない。
あたしはそんな蒼くんに腹が立っていた。もちろん泣かせたからってのもあるけどそれだけじゃない。
確かに驚いたよ君が現れた時は。
嬉しかったよやっと見つかったから。
泣き出しそうだったよ本当に。
けど君の言葉で引いちゃった。
なんで覚えてないの。
あたしならともかくおねーちゃんのことをなんで。
「蒼くん!!」
「っ!?」
あたしは彼の胸倉を両手で掴んだ。彼の方が身長が高いから前屈みになってギョッとしている。
その顔にすらムカついた。
「どういうつもり!おねーちゃんにあんなこと言って!」
「あ、あんなことって」
「とぼけないで!あの冗談は笑えない!」
「冗談?何の話ですか。僕は本当のことを」
何の話?本当のこと?それが戻ってきて最初の言葉?なにそれ
「ふざけないで!ちゃんと本当のこと言って!」
「言ってます。なのに何が不満なんですか」
「っ!いい加減にしてよ!蒼くんがおねーちゃんのこと覚えてないわけない!胸元のペンダントが何よりの証拠でしょ!?自分であげといて忘れたなんて言わせない!!」
普段は温厚な性格だと思ってるけどこれにはさすがにキレた。
蒼くんがいなくなってからもおねーちゃんはどうしようもないほど蒼くんを好きでいるのに。なのになんでこいつは!
「知らないものは知らないですよ」
その一言にプツンと何かが切れた。
え、何その適当な返し。君にならって、思ってたのに。
あたしは蒼くんを地面に叩きつけた。軽く悲鳴が聞こえた気がしたけど気にしてる余裕はない。
「もういいよ。こんだけ言っても知らないフリするなんて。君におねーちゃんを任せたのは間違いだったみたいだね。昔からずっと一緒で信用してたのにこんなところで裏切られるとは思ってなかったよ。最低だね」
あたしは座り込む蒼くんにそう吐き捨ててこころちゃんの元に向かう。大声出したせいかなみんなの視線が刺さる。
「ねえこころちゃん。部屋の鍵、貰っていいかな。できれば二人部屋がいいんだけど」
「ええ!もちろんいいわよ!それなら日菜と紗夜は同じ部屋ね!」
「うん。そうしてもらえると助かるよ」
室内に広がる空気感とこころちゃんの声は完全にミスマッチだった。まるで場の雰囲気がわかってないみたい。
黒服の人から鍵を受け取りあたしは扉を閉じた。
♢♢♢
走る走るひたすら走る。日も落ち暗闇の森の中を当てもなく。まるで彼から逃げるように進んで行く。
もう別荘から何十kmも離れている気がしていた。視界がぼやけているせいで何も見えないし足を止められないことが不思議で仕方ない。
「きゃっ!」
何かに躓いて転んでしまう。勢いがあったため受け身なんて取れなくて打ち付けた所がジンジン痛んだ。
その場で小さく蹲る。
蒼夜、どうして口調と一人称が変わっているの。
ねえ、どうして笑いかけてくれないの。
教えて、どうして私のことを知らないみたいな態度を取るの。
私が、貴方を
『当たり前だろ?むしろそれ以外に何があるっていうんだよ』
「っ!?」
『お前なんか忘れたいくらい大っ嫌いなんだよ』
そんな言葉聞きたくない。
私を蔑む目なんて見たくない。
もう何も考えたくない。
それなのに身体は言うことを聞いてくれない。
私を苦しめるようにあの日が鮮明に思い出される。家で映画を見るような手軽さで過去は再生された。
耳を塞いでも目を瞑っても他のことを考えても。音が映像が会話一つ一つが私を責める。
私はこの
みなさんたくさんの評価とコメントありがとうございます!!