君を探して   作:茜崎良衣菜

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捜索8

 

 

 

どこ、どこにいるのおねーちゃん!

別荘内は全部探したはず。それなのに見つからないってことはもう別荘外にいるってことだ。玄関を開け外に出る。そこはすでに真っ暗で何も見えない。この先にあるのは森だけ。スマホも持たずに飛び出したおねーちゃんがこの中に入って行ったのなら動けずにいる。早く助けないと。

 

あたしはスマホのライトを付け森の中へと駆け出した。

 

 

 

「おねーちゃん!どこにいるの!」

 

 

 

何度も何度も呼び掛ける。だけど返事はない。

それにこの頼りない光だけじゃお姉ちゃんの姿を探すことは困難でしかなかった。

 

 

 

「‥‥‥‥っ!うそでしょ」

 

 

 

さらに追い打ちをかけるように雨が降ってきた。受けている限りかなりの大粒。

 

まるであの日(・・・)みたいな天気の変化に唇を噛んだ。

神様って人がいるなら、だいぶ意地悪だね。

 

 

 

「っおねーちゃん!おねーちゃん!!」

 

 

 

大きな声で森の中に響くように。その考えは雨にかき消された。

こんなことなら黒服の人にでも手伝ってもらうんだった。今更後悔が募る。けど反省してる暇はない。早くおねーちゃんを見つけ出さないと、また繰り返しちゃう。

 

あの衝動(・・)は絶対ダメだ!

 

 

 

「‥‥さ‥‥‥‥めん‥‥‥‥い‥‥」

 

「‥‥!」

 

 

 

確かに聞こえた微かな声。その声に引き寄せられるように移動する。

そこにいたのはあたしがずっと探していた人だった。

 

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい_________」

 

 

 

地面に蹲ってうわごとのように呟かれる言葉。いつもみたいなクールさも冷静さもない。怒られた子供の様に繰り返し謝っていた。けど声は魂が抜けたかのよう。そんなお姉ちゃんの身体を起こす。おねーちゃんはあたしのことに気づいていないのか謝罪の言葉を繰り返すばかり。目を見てもくれない。聞くに堪えなくてあたしはおねーちゃんを抱きしめた。

 

 

 

「‥‥大丈夫だよおねーちゃん。あたしがずっと、側にいるから」

 

「‥‥‥‥‥‥ほんと?」

 

 

 

やっと目が合った。

よかった。まだ大丈夫だ。あの衝動(・・)まで達してない。

 

 

 

 

「ほんとだよ。おねーちゃんが望むならずっと隣にいてあげる」

 

「‥‥よ、かった‥‥‥‥」

 

 

 

苦しそうに笑うおねーちゃんに胸がズキズキ痛んだ。そんな風に、笑わないでよ。その顔が見たくなくてあたしはおねーちゃんを背負った。

背負っているせいでおねーちゃんに雨が当たってしまうけどさすがのあたしもおねーちゃんをお姫様抱っこできるほど筋力はない。スマホのライトは胸ポケットに入れているけど意味ないだろう。とりあえず早く別荘に戻らなければ。おねーちゃんが風邪ひいちゃう。道がどんなに入り組んでても覚えられる人間でよかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

「日菜!?紗夜!?」

 

 

 

別荘の玄関を開けばそこにはリサちーと友希那ちゃんがいた。全身びしょ濡れになっているあたしたちに目を見開いていた。

走ったせいで乱れた息を整えながら思う。丁度いい手伝ってもらおう。

 

 

 

「なんでそんなに濡れて!ていうか紗夜どうしたの!?」

 

「話は後だよ。リサちー、あたしのポケットから鍵取って。その部屋まで案内して」

 

「わ、わかった!」

 

 

 

リサちーたちの案内の元部屋にたどり着いた。おねーちゃんをベッドに寝かせ季節に似合わない暖房をつけた。バスルームに置かれていたタオルで身体を軽く拭いていく。まあお風呂に入らないと意味なんてないんだけどね。

 

 

 

「日菜」

 

「‥‥何?あー、ありがとね手伝ってくれて」

 

「なんでずぶ濡れで帰ってきたの。紗夜に何があったの」

 

 

 

 

なんて言えばいいのさ。おねーちゃんの抱えているのことをあたしが勝手に話していいものなのかな。ううん。そんなわけないよね。大体おねーちゃんが望んでるはずない。

 

 

 

「‥‥なんでもないよ。だから2人は部屋に戻って」

 

「戻ってって‥‥この状況見て戻れるわけない」

 

「おねーちゃんならあたしが見てるから安心して」

 

「そういう問題じゃない!こころの知り合いに会った瞬間様子がおかしくなったのわかってて放っておけないよ!」

 

「‥‥‥‥心鬼にしてでも放っておいて」

 

「日菜!」

 

「っ!どうせ話したって何も解決しない!」

 

 

 

怒鳴るつもりなんてなかったのに。どうしてあたしは、余裕がなさ過ぎて嫌になる。解決策を見出せない自分に、他人に心配をかけてしまっている自分に、腹が立って仕方ない。

ごめん、あたしたちの力になりたいってことはわかってるよ。だけど、だからこそ話したくないから。

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥お願い、この件には関わらないで」

 

 

 

懇願した声は震えていた。どんどん小さくなっていく。

 

 

 

「‥‥リサ、行きましょう」

 

「え、ちょ、友希那!」

 

「紗夜のことは日菜に任せましょう。私たちの出る幕じゃないわ」

 

 

 

空気を読んだ友希那ちゃんがリサちーを連れて部屋から出て行ってくれた。今日は友希那ちゃんに助けられたよありがとう。

 

 

視線をベッドに向ければあたしのことを捉える双眼。それに少なからず驚きつつベッドに近づいた。

 

 

 

「おねーちゃんいつの間に起きてたの?」

 

「‥‥日菜、気持ち悪いわ。お風呂に入りたい」

 

「うん。今準備してくるね!」

 

 

 

そう思ってお風呂場に行こうとすると腕を掴まれた。訳が分からずおねーちゃんを見つめていると何を思ったのか抱きしめられた。突然のことに動揺が隠せない。

 

 

 

「おおおおおおねーちゃん!?どうしたの!?」

 

「‥‥日菜も、濡れてる‥‥?」

 

「そ、そうだね。濡れてるかも」

 

 

 

何そのあいまいな返事。服が肌にくっついて気持ち悪い。

 

 

 

「‥‥なら一緒に入りましょう」

 

「‥‥‥‥へ」

 

「このままじゃ風邪引くわ」

 

 

 

 

え、あ、は、マジですか?

おねーちゃんにこんなこと言われる日が来るなんて。人生何があるかわからないね。

というかあたしが立ってる分見下す形になってるから上目遣いされてるように見えてその上優しい声なんて聞いて断れるわけないじゃん。

 

 

そもそも断る気はさらさらない。

 

 

 

「わかった。一緒に入ろっか」

 

 

 

おねーちゃんの手を掴んでお風呂場まで移動。お湯を張りおねーちゃんが服を脱いでいる間に着替えを用意する。それを持ってお風呂場に戻れば全裸のおねーちゃんがいた。いや当然なんだけどね。あいかわらずのスタイルの良さに目のやり場に困ってしまう。姉妹だから緊張する必要もないはずなのに心臓がうるさかった。お互いに成長したからだろうか。

あたしも服を脱ぐ。張りついていた服がなくなり空気が冷たく感じた。

 

久しぶりにおねーちゃんの髪を洗う。こんなの小学生以来だ。無邪気だったあの頃を思い出し、少し羨ましいと思った。

あの頃のおねーちゃんは笑顔の絶えない子だった。だから憧れたしおねーちゃんのやってることは輝いて見えたからなんだって真似した。それがまさか姉妹の仲を引き裂く要因になるとは今よりもっと子供だったあたしは全く思っていなかったけど。

でもまたこうして仲良くできてあたしは嬉しい。おねーちゃんも同じだといいな。

 

 

身体を洗い湯船に入る。二人で入っても広いとは、さすがは弦巻と言ったところか。

あたしの足の間におねーちゃんが座る。もたれかかる身体を支えるようにお腹に腕を回した。

 

 

 

「こんな風に入るの久しぶりだね」

 

「‥‥そうね」

 

「昔はおねーちゃんが抱きしめてくれたよね。懐かしいなー」

 

「‥‥そんなこともあったわね」

 

 

 

遠い記憶ではあるけどあの時のあたしたちは笑いあっていたはずだ。

なのに、どうして今は笑いあうことができないんだろう。

何もかもが変わってしまったみたいでおねーちゃんも蒼くんも遠くなってる気がする。

 

 

 

「‥‥日菜」

 

「ん?どうしたの?」

 

「私、日菜が妹で本当によかったわ」

 

「え、ほんとにどうしたの?」

 

 

 

いきなりすぎる告白に戸惑いが隠せない。おねーちゃんがあたしに向かってそんなこと言うなんて想像してもみなかった。けどやっぱり嬉しいことに変わりない。

 

 

 

「‥‥言わないと伝わらないかもしれないから」

 

 

 

おねーちゃんらしい言葉につい頬が緩んだ。腕の力を強くして抱きつく。すぐ解かれると思ったがそんなことはなくしばらくそのままでいるのだった。

 

 

 

 

温まった心と身体に暖房は必要ない。電源を切り同じベッドに横たわる。

あたしが笑えばおねーちゃんも笑って。仲の良い証拠に思えてとっても幸せだった。

 

 

 

「ねえおねーちゃん」

 

「何かしら」

 

「あたしもおねーちゃんがおねーちゃんでよかったよ」

 

「‥‥知ってるわ」

 

 

 

「おやすみなさい」の声に「おやすみ」と返して静かに目を閉じた。おねーちゃんの体温が伝わってきて暖かい。

今日はいい夢が見れそうな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど、よく考えてみればおかしなところだらけだった。

 

 

蒼くんのことで辛くなった時、今までのおねーちゃんはここまであたしと一緒にいただろうか。

お風呂に雑談、告白に添い寝まで。まるでできなかったことを一つずつ終わらせてるみたいな。

 

 

 

 

あたしはまんまとおねーちゃんの策略にハマっていた。

おねーちゃんの衝動(・・)は収まってなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そして迎えた翌日。

 

 

 

 

 

おねーちゃんが消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






更新がだいぶ遅くなってすみません。
バイトに入試と忙しかったので…。
頑張って更新していきたいと思います。



評価とコメントありがとうございます!

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