君を探して   作:茜崎良衣菜

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捜索9

 

 

 

午前八時。アタシたちは別荘の食堂スペースに集まっていた。理由は十時から午前練習をするため各々食事を取っていた。

ただその中に紗夜と日菜の姿はない。頭では昨日の日菜が忘れられずにいた。

 

 

苦しそうに呟かれた言葉。自分ではどうしようもないと言いたげで見ているだけで辛かった。

 

そしておそらくその二人の調子を狂わせているこころの隣に座っている元凶、桐谷蒼夜は一体何者なのか。

日菜の発言的には幼なじみっぽいけど本人たちの行動的には初対面って感じだった。

どっちが正しいんだろ。どっちも本気で言ってるように見えたし。うーん、考えてもわからない。

 

 

 

「リサ姉、どうかしたの?」

 

「え?」

 

 

 

名前を呼ばれてハッとする。いつの間にか俯いていた顔を上げると目の前に座っていたあこと燐子が心配そうにアタシを見ていた。

 

 

 

「あ、いや、なんでもないんだよ」

 

 

 

とっさに普段通りに振る舞おうとすれば隣の友希那が口を開いた。

 

 

 

「紗夜と日菜のことでしょ。隠さなくていいわ」

 

「‥‥まあそれもそうだね」

 

 

 

多分昨日のことをみんな気にしているのだろう。誰も口にはしてないけど。

 

 

 

「あこ、びっくりしちゃいました。紗夜さんが泣いていたこともだけど、日菜ちゃんがあんなに怒ってるところなんて初めて見たよ‥‥」

 

 

 

正直アタシも初めてだ。前にペンダントのことで怒っていたのとは度が違う。怒鳴った挙句人を地面に叩きつけるなんて。優しい日菜の意外過ぎる行動にその場の誰もが驚いていた。彩と花音とりみは悲鳴あげてたし。

 

 

 

「桐谷さんと氷川さんたちの間には一体何があったんでしょうか‥‥」

 

「わからないけれど、このままにしておけないことだけは事実ね」

 

 

 

友希那の言う通り。このままじゃ絶対ダメだ。二人と蒼夜のこと、知らなきゃ向き合えない。

 

 

 

「‥‥アタシ、日菜が来たら」

 

「おねーちゃん!!」

 

 

 

日菜が来たら聞いてみる。

その言葉は全て言い切ることができなかった。

 

バァン!と大きな音を鳴らした扉の方に全員の視線が釘付けになっていた。

 

 

 

「ひ、日菜ちゃん?どうかしたの?」

 

「千聖ちゃん!ここにおねーちゃん来てなかった!?」

 

「紗夜ちゃん?来てないけど‥‥」

 

 

 

Tシャツに短パンというラフな格好の日菜は焦っているようで落ち着きがなかった。

 

 

 

「紗夜さんならさっき見ましたよ」

 

「っ!どこで!どれくらい前に!?」

 

「え、ええっとあたしが見た時は玄関にいました。時間は30分くらい前だと思います」

 

「紗夜はきっと海に行ったんだわ!とってもキレイだもの!」

 

 

 

美咲の言葉に切羽詰まった顔は変わらない。が、こころの言葉に日菜は青ざめていた。その目は信じられないとでも言いたげだ。

 

 

 

「う、み‥‥?近くに海が、あるの‥‥?」

 

「ええ!ここから40分くらいで着くわよ!」

 

「どこにあるの!?」

 

「うーん、あっちらへんよ!」

 

「それじゃわかんない!正確な場所教えて!!」

 

 

 

どうして日菜がここまで焦っているのかわからない。こころの曖昧な発言に噛みついているところなんて初めて見る。

 

 

 

「海なら森を抜けた先ですよ。あと共同スペースで騒ぐのはやめていただけますか」

 

 

 

それに水を差したのは蒼夜で静かに日菜の肩に手を置いていた。日菜はその手を振り払う。

 

 

 

「元はと言えば蒼くんが悪いんだよ!他人事みたいな態度取らないで!」

 

「昨日も思っていたのですが僕と貴方達は初対面ですよね?それなのにどうして」

 

「ッ!もういいよ!」

 

「待ってください。話はまだ終わってません」

 

 

 

食堂を去ろうとする日菜の手を蒼夜は掴む。必死に振り解こうにも男女の差は目に見えていた。

 

 

 

「離して!お願いだからおねーちゃんのこと探しに行かせて!時間がない!」

 

「時間ならいくらでも」

 

「早く行かなきゃ、おねーちゃんが死んじゃう(・・・・・・・・・・・・)!」

 

 

 

日菜の一言に全員が絶句し動けなくなる。ただ手を解いた日菜だけは走り出していてその後を追うようにアタシたちも食堂を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

走れ!走れ!もっと速く!今ならまだ間に合う!お願い間に合って!!

昨日も入った森の中を全力で走る。明るいから何かに躓くことはない。歩いて40分ならあたしのスピードで行けば10分以内で着く。いやそうじゃないと困る。こんなところで死なれるわけにはいかない。

 

 

安心してた。あたしが少しでもおねーちゃんの心の中に住んでると思ってた。

けど違ったんだ。あたしはおねーちゃんの心に住めてなんていなかった。

昨日の会話だってお別れの挨拶(・・・・・・)だったに違いない。どうしてあたしはそれを見逃してたの!

 

唇をグッと噛みしめた。零れる涙が視界を曇らせていく。

 

ダメだよおねーちゃん。

あたしと同じステージに上がって見せるんでしょ。それまでギターはやめないんでしょ。

約束破るなんて許さない。そうなったらあたし後追いするよ。だからお願い。

 

 

あたしたち(姉妹)を殺させないで。

 

 

森を抜ければ蒼くんの言葉通り海が広がっていた。こんな状況じゃなければキレイだと思ってたのに、今は人殺しの道具に見えてしまう。

周りを見渡せば岩山みたいな所におねーちゃんが立っていた。

かっこいい凛とした雰囲気はない。あるのは死を感じさせるものだけ。

 

 

 

「おねーちゃん!!!」

 

 

その後ろ姿に呼び掛ける。

振り返った彼女は一度目を見開いて、けどすぐに優しい顔になった。

 

 

 

___やめて、そんな顔で見ないで。

 

 

 

口元がその4文字を形作る。

 

 

 

___いやだ、いやだよお別れは。

 

 

 

身体が後ろに傾いた。

 

 

 

___お願い行かないで(逝かないで)

 

 

 

 

 

必死に伸ばした手は空を掴む。時が止まった。

また、あたしは大切なものを無くして‥‥。

横から続いて飛び込んだ影に驚く。

 

ドボン!という音が2つあたしの耳に届いていた。

 

 

 

 

 

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