13.受肉に向けて~襲撃~
厄珍に捜索依頼をだしてから数日が立つが、いまだに連絡は来ていない。
メイベル博士の胸騒ぎも外れた様子で気が抜ける。
果報は寝て待てと言うし、急いではいるが慌ててはいけない。
今日はアーカム考古学研究所からの依頼でAMスーツの稼動試験のデータを取りにASEに来ていた。稼動試験なので当然、フル装備だ。
一通り動作確認が終わったところで、開発中の拳銃弾を渡された。
AMスーツ使用を前提にした弾丸1種類と通常時でも撃てる弾丸2種類
特殊硬質セラミック弾頭高速徹甲弾、これがAMスーツ使用を前提に装薬が増やされている弾丸だ、弾頭は硬質セラミックでコンクリート、鉄板等を拳銃で抜けるよう開発された弾頭だ。
弾頭に精霊石の破片が使用されたソフトポイント弾、悪霊とかにも効く精霊石の欠片が使われている。ソフトポイント弾なので物に当たると弾頭が変形し運動エネルギーを効率的に相手にぶつけられる。貫通力も少ないので霊体にも割と安心して撃てる
最後は必要なのか分からないが、硬化ゴムを弾頭にした非致死性の弾丸だ。主に暴徒鎮圧に使うのだが、なぜ支給されたのかはわからない。
あとは通常のソフトポイント弾とフルメタルジャケット弾をそれぞれ支給された。
銃は使うことが無いと思うがアーカムから支給されているので断るわけにもいかない。
それよりも日本国内で携帯許可を取っているとは言え普通に拳銃と弾丸が渡されるとは思わなかった。
アーカム財団の力を感じ改めて戦慄する。
試験項目が多く、時間がかかってしまい、夜も遅い時間になってしまったので、送っていこうかと声をかけてくれたが、余りにも綺麗な満月で、AMスーツも着用しているのでこのまま帰りますと声をかけてナイフと拳銃をカバンに詰めてそのまま帰宅した。
近道になる公園を横切って、家路を急いだ。
今晩は満月だけあって木々はあるが高いビルがないので遮るものがなく周囲はとても明るい。
自分の進行方向とは逆から着物に革ジャンを着てブーツを履いた女が近づいてきた。
綺麗な顔立ちなのに、変わった格好をしているなとその時はただそれだけ思った。
満月の下で尚輝く蒼眼と抜き身のナイフを見るまでは。
意識してから体が動いたわけではない、もう反射神経の領域でAMスーツを全開稼動状態にした。そして前から迫り来るナイフをしゃがみそのまま前方へ体を投げ出す。
AMスーツの力を全開にしたので女と距離が開く、カバンから素早く銃とナイフを取り出して装備した。
銃には暴徒鎮圧用のゴム弾を取り出し、スライドを引き、薬室に初弾を送り込み相手に銃口を向ける。引き金には指をかけない。
貴様何者だ、何故こんなことをすると誰何の声をあげる。相手の顔をよく見てようやく思い出す。両儀式だ。
しかも目が蒼眼になっている。直死の魔眼が発動しているじゃないか、一太刀切りつけられるだけも死にかねない。
なんで、こんなのがこんなところを歩いているんだよ!
「橙子が最近周囲を調べられてると感付いて、そして幹也がお前の写真を持ってきた。」
くそが、厄珍のやつ探るなもっとスマートに探せよ。なんか変な勘違いをしてるし。
偶然会ったのかどうかわからんが両儀式はやる気まんまんだし
サラシが胸にあたっている部分じゃないかもってことがバレた腹いせか、畜生!
「僕の名前は横島優、何かとてつもない勘違いをしているようです。当然、ロンドン魔術協会の執行者でもありません。人形作製師の蒼崎橙子に人形を作成してもらうために探していました。」
「ロンドン魔術協会の執行者を知っている時点で一般人ではない」
しまったーテンパり過ぎて余計なことまで喋ってしまった。
もはや問答無用とばかりに両儀式は斬りかかってくる。
応戦するしかない。
”火行符術 熒惑朱雀炎弾符” いわゆるファイヤーボールが飛んでいくが、あっさり死の線を切られたようで消え失せる。
無駄だと思っても隙を作るために火行符術と水行符術を混ぜ遠距離攻撃に徹する。
迂闊に接近戦なんてしよう物なら一発で首と身体が泣き別れだ。
札を投げる間に何度か発砲もしてみたが、どれもあっさりよけられる。
まったくどういう運動神経と反射神経をしているんだ。
近づけさせないために、銃と札で弾幕を張る。そろそろ目くらましの閃光符を投げるか
うまくいけば、そのまま物理ではワイヤーアンカー、霊的には文珠で捕縛してやる。
直死の魔眼には目にタオルを巻いて巻いておこう。
”火行符術 熒惑朱雀閃光符”
投げた札が激しい閃光を発する。目をかばったチャンスだ。
この隙にワイヤーアンカーと文珠{縛}で拘束をした。
もちろん、直死の魔眼対策で目にタオルを巻くのも忘れない。
イモムシ状態になった両儀式を見下ろす。
ワイヤーで着物の上から胸が強調され、目隠しをしていることで倒錯感がすごい。
如意宝珠にもどんどん霊力が溜まっていくのがわかる。
当分、再使用出来ることはないと思っていたが、案外早く再使用できるかもしれない。
さて、質問するかと思ったとき。
お巡りさんこっちです!という声と駆け足の地面を蹴る音が聞こえる。
どう考えても変質者は僕のほうだ。女性を拘束して地面に転がしているだ。タオルとワイヤーアンカーを素早く回収して荷物をまとめ離脱を図る。
自宅のマンションにたどり着き、精神的に疲れそのまま寝てしまった。
朝、玄関の呼び出しブザーがなる。誰だよこんな時間に・・・
そういえば警察は早朝にくるらしいな。
居留守を使おうかと思ったが、警察なら鍵屋も同行して鍵開けをしてくるかもしれん。
幸い扉の覗き穴を見なくても、居間のインターホンから誰が来たか分かるようになっている。
やばかったら、AMスーツと装備をもってASEに駆け込むとしよう。
さて、どんな奴が来たのだろうか?
上下に黒色の服をきて、黒縁のメガネを付けた温和そうな男性がディスプレイに表示される。
昨晩会った、両儀式の関係者といえば、この人は黒桐さんか
どんな用事かわからないが、少なくとも殴り込みということはないだろう。
一応確認のために、インターホンからどちら様で問いかけると、伽藍の堂から来た黒桐ですと返答が帰ってきたので、鍵を開けに玄関に向かう。
「初めまして、横島さん。黒桐と申します。昨晩は式がお世話になったようでお詫びも兼ねて伽藍の堂へご案内したいと思いますが、ご都合如何ですか?」
学校が終わり次第向かいたいと黒桐さんに伝えると携帯の番号を教えてくれた。授業が終わったら電話してくれとのことだ。
授業が終わり、伽藍の堂へ向かうために黒桐さんに電話をかける。伽藍の堂の最寄駅を教えてもらい、駅で待ち合わせをすることにした。
蒼崎橙子さんに会うのに丸腰では流石に不安なので、札とオリハルコンナイフだけカバンに詰めて待ち合わせの駅に向かった。
駅に到着すると先に待っていてくれた黒桐さんが手を振って出迎えてくれた。
伽藍の堂への道すがら、昨晩の話をしたがどうやら両儀さんの勘違いで独断専行した結果らしい。
黒桐さん、ちゃんと彼女の手綱を握っておいて欲しい。ある意味そのおかげで伽藍の堂に繋ぎが出来た訳なんだが。まぁこんなことは言えないけどな。
黒桐さんの案内で伽藍の堂に連れてきてもらったが、ロンドン魔術協会の封印指定をうけるような魔術師の住処なのに、意外と街中にあるのが以外に思う。
まぁおかしなことをすれば、生きては帰れないだろうというくらいは理解している。
黙って、黒桐さんの後を追ってビルの中にはいる。
部屋に入ると、眼鏡をかけた蒼崎橙子さんが座ってこちらを見ていた。
良かった、眼鏡をかけているなら、初対面から殺しに来ることはないだろう、それに黒桐さんが迎えに来てくれた以上話くらいは聞いてくれると思いたい。
「初めまして、蒼崎橙子さん。横島優と申します。
厄珍堂の店主厄珍さんに頼んで貴女に仕事を依頼するために居場所を探せてもらいました。」
「はじめまして横島君、早速だけど要件を聞いてもいいかしら?」
昨晩の両儀式の襲撃については何も触れてこない。
まぁお互いに触れたくない話題かもしれないので、自分としてはありがたくもあるが、襲撃された側としては釈然としない物を感じてしまう。
助力を得るために、橙子さんには全てを話し、こちら側の要望を伝えよう。
・異世界から魂だけでこの世界に来て、この体に憑依してしまっていること。元の体の持ち主は自分の守護霊としてこの世に留まっていること。
・元の持ち主(横島忠夫)にこの体を返したいこと。そして自分はこのまま消えたくないので霊能力が使用でき、成長すらする人形の体を欲していること。
・作成していただく人形はこの体をベースにするが、顔立ちを双子でも識別できるように少し雰囲気を変えて見分けがつくようにして欲しいこと。
・対価として、現金がないので文珠数個を対価としたいこと。
・儀式には如意宝珠を使用を前提に考えているが、良ければ立ち会って欲しいこと。
そしてお互いに合意を得られたのは以下の通りだ。
・人形を作成することは同意、そして顔立ちを変えることも了承。
・儀式の参加については魂の物質化という第三魔法に抵触するかもしれないうえに、東洋の陰陽術、術式は珍しくそれに触れられるので是非参加させて欲しい。
・対価については、文珠でもいいが作成にあたり材料費の購入等で別途5000万を現金を支払うこと。
自宅に帰り、今日の内容を振り返る。人形師蒼崎橙子さんに自分が入る人形を作ってもらえることになった。
それに関しては望外の成果だ、元々存在するかも怪しかった人形師の橙子さんが存在して、そして人形を作成してもらえる。
ただ、対価として支払う文珠はまぁいい。これは自分の霊能力なので無料で作ることが出来る。
しかし、人形の部品代と作成費用として5000万の現金が必要になってしまった。
ASEの仕事ではすぐに5000万も代金を集めることはできない。
ここは高額収入が見込めるGSとして、多少の危険を承知で金策に走るしかない。
どこの事務所に所属するかだが、美神さんところはすでに六道女子からアルバイトを雇ってしまったみたいだし。小笠原事務所は黒魔術系なので自分との術式似合わない。
唐巣教会は良い言い方ではないが、金にならないので今回は却下だな。
残るは六道事務所だが、式神の暴走が怖いが、今の自分を雇ってくれそうなところはここくらいしか考えらなれない。
小竜姫様に事情を話せば金を用意してくれるかもしれないが、そんなのまるっきり紐じゃないか・・・
流石に、神様に金を借りるのは心苦しい、自分のことはなんとか自分で対処しないと。
それに大樹さんや百合子さんにはサプライズとして忠夫君の復活した姿を見せてあげたいので、両親には内緒で金を稼ぎたい。
明日、学校の帰りにでも六道家に行ってみよう。
NGシーン ~妙神山監禁ルート~
「小竜姫様、横島忠夫さんの復活為に5000万を貸してください」
「わかりました。優さん、貴方のためにお金を用意しましょう」
対価を支払うまで、妙神山から出てはダメですよ。
優さんが5000万で買えるなら安いものです。
ここではお金を稼ぐ手段がありませんからね、返済不能です。
一生私の傍に居てくれるだけでいいんですよ。