15.受肉に向けて~金策2~
バクダッドの古代電池
地中海に展開していたアーカム船籍の海洋調査船ロシナンテに無事着艦できた。
オスプレイのエンジンを停止して、飛行甲板に固定をしてもらう。
マックス隊長が知り合いを見つけたようだ、自分も一緒に来るように言われ、そのままついて行く。
その相手に親しげに話しかけた。
「よう、船長元気そうだな」
この人が、ロシナンテの船長、スティーブ・H・フォスターさんか
「お前も元気そうだな、マックス、しかし驚いたぜ、いきなり着艦させてくれとはな
そっちのASEのパイロットも紹介してくれよ。」
おぉそうだなといって、マックス隊長が自分を船長の前に出してくれる。
「このロシナンテの船長で、スティーブ・H・フォスター アーカム財団海洋開発部特別最高顧問、通称船長だ。海のことなら右に出るものがいない海洋のエキスパートだよ。
そして、船長こっちが今回俺たちを救助にきてくれたASEのマルチドライバーの横島優だ。」
マックス隊長が紹介をしてくれたので、そのまま挨拶をする。
「初めましてフォスター船長、横島優といいます。 今回は緊急着艦をさせていただきありがとうございました。海上なのにここまで揺れないこの船の性能はとんでもないですね。」
「俺のことは船長でいいぜ、着艦のことは気にするな。山本から連絡があったからな。
お前もこの船とは言え海上での着艦を一発で寸分の狂いもなく決めるとはいい腕してるぜ。」
船長について来いと言われ、マックス隊のメンバーと一緒に甲板から船内の一室にうつる。
マックス隊長が確保してきたエメラルドタブレットを船長に引き渡す。
船長が責任をもってスプリガンに渡し、研究所で徹底的な調査が行われた後に本社ビルの地下大金庫まで運ぶというスケジュールになっているそうだ。
とにかくこれで自分の任務は完了した。マックス隊の面々もこれで休暇に入れるらしく寄港地によるまで自由となるらしい。
自分も弛緩した雰囲気の中でどうやって日本に帰るか考えていた。
そんな中、船長から通信室に来いと呼び出される。
通信室にはいると、そこには船長が先に座って山本さんと話していたようだ。
ディスプレイ越しに山本さんに話しかけられる。
「横島君、君の機転のおかげでマックス隊が全員無事に生還できたよ。エメラルドタブレットもフォスター特別顧問に渡り、あとは後続のスプリガンに預ければ完了だ。本当によくやってくれた。
さて、横島君本当に申し訳ないが、問題が発生してしまった。隣国のイラク、バグダッドにオスプレイを操縦して向かって欲しい。すでにASEには依頼をしてミッションナンバーが発行されているので確認して欲しい。船長には燃料の補給をお願いした。」
どうやら、追加のミッションが発生してしまったようだ。
あんまり無理難題で無いといいのだけど、どうもASEとかアーカムが絡んでくるとギャグ要素はなくなるから辛い・・・
「横島君本作戦はある品物の奪還作戦だ。施設への潜入、物品の奪還はスプリガンが担当するので君はその往復の車の運転をお願いしたい。詳細は送った資料を見て欲しい。」
印刷された資料を見て気になった点をいくつか質問する。
・奪還する品物について
バグダッドの電池が今回の奪還作戦の要だ。そもそもバグダッドの電池とは陶器の壺に銅の筒と鉄心がはいっており、そこに電解液をいれることで二つの金属の間に電位差が生じて電流が発生し電池として機能するものだ。
模型を使った再現実験もおこなわれその時は2V程度の電圧が発生したことも確認された。
この電池を直列に繋ぎ、電気メッキをしたのではないかという学説も当時流れたそうだ。
しかしこれは超古代文明の物を古代人が模倣しようとして作られた物だ。表向きにはこれがバグダッドの古代電池といわれているが真実は違う。
超古代文明の電池は、現在のリチウム電池等と比べても小型で遥かに充電量が多く、さらに充電時間も短いという性能を誇る。
現代社会において充電池は携帯電話から車に至るまでありとあらゆるものに使用されている。軍事においては簡単に思いつくだけでも潜水艦の電池を交換するだけで驚異的な潜水時間を誇るようになるだろう。
こんなものがなんの制限もなく世界に流出してしまえば、産油国との摩擦は必死となる。
・奪還を担当するスプリガンについて
フランス出身のジャン・ジャックモンドが担当するそうだ。ライカンスロープの説明はなかったので下手に突っ込むことはやめておいた。取り敢えずイケメンってことだけ覚えておけばいいだろう。
・自分の任務について
簡単に言ってしまえば前回と同じだ。ジャンさんと合流してから目的地まで運び、ジャンさんがバグダッドの古代電池を奪還してきたら一目散に逃げる。砂漠での運転がメインとなるため、特殊な運転技術を習得している。マルチドライバーが選出されたようだ。
ついでにネットにつながっている端末を借りてASEからのミッションナンバーが発行されているか確認をした。自分に割り振られているID番号とPASSを入力し確認する。
たしかにアーカム考古学研究所からの依頼でバグダッドでの依頼が発行されていたので受諾した。
船長から燃料の補給が完了したと連絡をうけ、フォスター船長にお礼を言ってから一路、バグダッド国際空港を目指して飛行する。
予定時間より少し早くバグダッドに到着したが、すでに空港で待機していたASEのスタッフから砂漠仕様の4WDのSUVを受け取りジャンさんを待った。
少し待ったあとにジャンさんが現れた。
「お前がASEの横島か?俺の名はジャン、ジャン・ジャックモンドだよろしくな。」
「はい、ASEの横島優です。よろしくお願いします。」
暑いので車に入り、運転を始める。
走り始めた車の中で、暫く何かを考え込んでいたジャンさんが突然こんなことを聞いてきた。
「なぁ、日本人に優という名前は多いのか?」
質問の内容はわかるが、何故そんなことを聞いてくるのがわからなかったので質問に対し質問で返すことにした。
「多いかどうかは、わかりませんがそれなりにいるんじゃないですかね?
同じ名前の友人でもいるのですか?」
「あぁ、同僚に御神苗 優ってのがいる。世界の神秘を見に行くとかいって今はどこにいるのか分からないがな」
まじかよ。御神苗さんいるのか・・・
まぁ確かに自分は御神苗さんのメンタルを借りているだけだからご本人がいてもおかしくはないんだけど、会えるものなら一度あってみたいなぁ。
あれ?もしかすると斑鳩さんもこの世界にいらっしゃるのか?
ASEの日本支社でも見かけたことないけど、なにかの長期ミッションに出かけてるのかな?
無いと思って探すより、必ず有ると思って探すほうが見つかる率が高いのかもしれない、いや心持ちや意識のかけ方の問題かもしれないが、このミッションが終わったら探ってみるのもいいかもしれない。
そんな事を考えているうちに現場近くに到着した。
ジャンさんが車から降りて、すごい速度で車から離れていった。
ボーっと待っていると、遠くから爆音と共に煙が立ち上がっているのが見えた。
なにあれ、超こわいんだけど・・・
爆発があってから数分後にジャンさんがアタッシュケースをもって車に戻ってきた。
中身はバグダッドの古代電池のようだ。
ジャンさんの指示通りに車を発進させる。
追っ手は大丈夫なのかと質問したら、基地ごと壊滅してきたらくることはないという大変頼もしいご回答
こんな楽な任務ならわざわざASEに依頼するまでもないような内容だったが、
今回はジャンさんのおかげで楽だったのだろう。
一応銃撃戦に備えて、銃弾が逸れるように{逸}や矢{避}けの加護を意識して文珠を複数用意しておいたが、使わずにすんで良かった。
「全く、お前も優も俺がいなければ10回は死んでいるぜ」
え?何か危ないことでもあったのだろうか、そんな疑問を思い、ジャンさんにどういうことか聞いたらあんな目立つところで待っていたら
追っ手に蜂の巣にされるのが目に見えていたので、追っ手が来ないように基地ごと壊滅してきたそうなのだ。
一気に血の気が引き、タイヤが砂に取りかけられたがジャンさんが落ち着いた声で
もう終わったことだから気にするなと言ってくれる。
確かに基地に遊びに行くわけでもないのだから、次回からこの手の任務があればしっかり隠れることを意識しよう・・・
その後はなんだかんだ空港まで戻ってきて現地解散、ジャンさんはそのままアーカム財団の専用機で研究所まで移送するらしい。
自分も別便で日本に帰国した。空港からは疲れているところ申し訳ないがという台詞を聞きながらASEスタッフのお迎えで日本支社でアーカム山本さんも含めての今回の2案件の報告をした。
もう疲れきっていたので、思わず5000万円欲しいって愚痴がポロリとでてしまった。
そこからは当然、何故そんな大金が欲しいのかという話になり、そのまま話すわけにも行かず適当に話を作り上げた。
突発性の病に倒れた兄の治療に尽くしてきたが、先進医療なら完治する可能性がありその治療費が保険適用外なので5000万程度かかると話したところ
これからもASEのスタッフとして働いてくれるなら報酬の一部を借金の返済に充てることで5000万の融資をしていただけることが決定した。
まさに瓢箪から駒のできことだ。青天の霹靂とでも言うのだろうか
偶然の事とはいえ、ASEに相談してみて良かった。
そして自分の銀行に振り込まれたことを確認した後に橙子さんに連絡を取り、支払う準備が出来たことを告げた。
電話口では驚いたようだったが、最高の物を作成するという、力強い回答をいただき、完成を待つことにした。
長らくかかりました。
超古代文明の遺産など、世界の神秘についてもっと詳細に詰めていきたいところです。
結局はサラッと流すような事態になってしまい反省しています。