20.そうだお礼参りにいこう。終
~自宅~
はっ!?
飛び起きて辺りを見渡した。ここ数か月でみなれた自宅の自室だった。
あぁそうだった、そうだった。だんだん思い出してきた。
昨晩清姫と遭遇して、彼女の身の上話を聞いたり伝承から想像していろいろと相談にしているうちにどうしても彼女をこのまま、この地で一人ぼっちにすることができないと思い。
結局、僕は彼女を式神として連れてきてしまったのだ。
昨晩は熊野を出るのが遅くなり、名古屋で新幹線に乗ったのが22時台のほぼ最終に近い列車だ。
何故そこまで遅くなったかといえば、おおよそ清姫が美少女なのが悪い
彼女が歩くだけで周りの人が振り返るほどだ。
それに、彼女が興味津々でいろいろと尋ねてくる。
それは昔の山村と現代ではだいぶ様変わりしているだろうさ
彼女が現代になれるための通過儀礼みたいなものだと思って、知る限り答えふらふらしていたらご覧のあり様だった。
なんとか新幹線に飛び乗って、清姫がいるから迂闊に寝ることもできず家についたらばたんキューだった。
今にしてみれば、清姫を影にいれてしまえば無用なトラブルだったかもしれないが、やっぱりできる限り外にだしてあげたいしなぁ
そういえば、新幹線に乗った時に変な感じがしたな、まだ俺はやれるとか諦観とも寂寥感ともいえない複雑な感情を感じたけど・・・・・・
まぁいいやそんなことを今考えても仕方がない。
もう1個なにか割と重要なことを忘れているようだけど、なんだったかな?
そういえば清姫はどこにいったんだのだろうか
影の中に意識を向けて見てもいる様子はない。
まさかと思い布団の中に意識をむければ、隣になにやら暖かい温もりがいらっしゃる
心地が良すぎて気が付きたくなかったのか、忘れたかったのか
朝だから清姫起こさないと
あれ?というか今何時だ?
「まだ寝てんのか、そろそろ起きないと遅刻するぞ~お前にしては珍しいな」
そんな声と共に忠夫君が部屋に入ってくる
そうだ、彼の顔を見て思い出した。清姫という同居人が増えると伝えてなかったな。
あれ?いま清姫は隣で寝ている。これはいわゆる朝チュンという状況では?
「ご主人様、もう朝ですか?わたくしが朝餉のご用意をいたしますわ」
もう絶対に出待ちしていただろうというタイミングで清姫から声がかかる
なんで、このタイミングなの?これが世界意志なの?
「なんで!お前ばかりもてるんじゃーーーー!!!
夜明けのモーニングコーヒーなのか、そうなのか、そうだなんだろ!!
あぁもう神は死んだ!!!」
あぁやっぱり忠夫君が暴発したわ
「いや、兄さん今起きたばかりだからコーヒーすら飲んでない」
「それでも女の子と一緒の布団で寝て起きるなんて朝チュンやないかーーー!!
優、おどれ昨晩帰りが遅いと思っていたらこんな美少女を連れ込むなんて
うらやま・・・けしからんぞーーーー!! 」
太陽のバッキャロー!
そんなことを叫びながら家を飛び出して行った。
僕も遅刻するから早く家を出ないと
清姫に学校という寺子屋のようなものに行くがどうすると聞くと
ご主人様のある所に清姫有りです。
それとも清姫はお邪魔ですかと涙目で言われてしまえば覚悟を決めるしかない。
なるべく努力はするけど、駄目なら影の中に入ってねとお願いする。
~学校~
学校についてから只ならぬ状態の忠夫君に何か吹き込まれたのか愛子から清姫について若干的外れではあるが激しい尋問をくらう
「優君、不純異性行為なんて不潔よ。いきなり彼女を連れて登校なんて
しかも朝も一緒のベッドに寝ていたそうじゃないの、高校生なんだから慎むべきよ!
もう、優君ときたら私と言う物がありながら・・・・・・でもでも横島君も・・・・・・」
最後は教室内が騒がしすぎて聞こえなかったが禄なことではないだろう。
そんな状態で忠夫君はニヤニヤしながらこっちを見ている、内心いい気味だと思っているのだろう。
さて、どうしたものかと思案を巡らせていると隣にいた清姫が静かにだがとても力強く
こう答えて教室内は沈黙した。
「わたくしは、清姫はご主人様の妻でございます。
結魂した中、もう死がふたりを分かつまで離れるつもりはございません」
とこう宣言したのだ。
愛子もそれを聞き下を向きながらあぁそうなんだ・・・・・・と突然のトーンダウン
本当に意味がわからない。でもなにか彼女から危険を感じるのは何故だろうか
そして忠夫君はニヤニヤ顔から一転して机にヘッドバットし始めた
机が血に染まっているが、ほっとけばすぐに直るだろうから放置でいいだろう
弟を罠に嵌める兄にはいいお仕置きではないかと思う。
職員室に行き先生に清姫のことを相談したら、学校妖怪の前例もあるので、おとなしく授業を受けるなら問題ないとのことで、登校しても良いことになった。
彼女は僕の式神なので、ある意味で霊能力のようなものだし
でも、公式に許可がもらえるに越したことはない。
旅費を出してもらった以上、結果の報告を面談なのか書類でいいのか、はたまた電話報告だけでいいのか六道家に聞く必要があると思い電話で予定を確認したら、おばさん暇だから会って話がしたいとのことで放課後にフミさんが迎えにきてくれる
さて、教室に戻って授業を受けよう、そう思い教室に戻るとすでに清姫の机と椅子が準備してある。無駄に準備がいいな
座席の配置は僕の右隣になっている。清姫の教科書とかないから誰かかが気を利かせたのだろう。
まぁこの後にそれがさらなる嫉妬の炎を生み出すとはこの時は全然思っていなかったのだが・・・・・・
~教室~
先生が話す声と黒板の内容をノートに写す生徒達の筆跡音がするだけの静寂に満ちた教室内
だが時折くぐもった女性の艶めかしくどこか甘えた声が本当にかすかに響く
「ん・・・・・・・あぁ・・・・・・・」
そして、その声の主は僕の右隣にいた。
午前の授業は良かったんだ、清姫が隣にいて教科書を一緒の見ながら受講するだけだった。
教科書を忘れたときに隣の人に見せてもらった記憶が誰にでもあるだろ?
最初はあんな感じだったのだ。
机がぴったり寄せてあったが、まだ席の距離は離れていた。
教科書が見れませんとだんだんと椅子の距離が近くなり、ついには僕の右腕に清姫の体温が感じられ、清姫の息づかいまで聞こえるようになっていた。
そして僕がノートに書き込むときに動く肘が清姫の豊満な胸に当たるようになってから声が聞こえるようになってきた。
清姫にちょっと離れてといっても、私のことがお嫌いですかと問われれば
僕も男です。胸の感触が心地よくどうにも離れがたい。
如意宝珠のお力もどんどん貯まっていくと言うものです。
授業を受けながら、イチャついていたせいだろう、前屈み気味の男子諸君の恨みを相当かったようだ。
授業が終わったら速攻で帰る支度をして逃げるとしよう。
明日からもこんなことになるなら清姫には影に入ってもらおうかな・・・・・・・
~校門前~
授業が終わってさて逃げるかと思ったらその前に囲まれてしまったよ。
まぁおまえ等すまんかったと思い、素直に謝罪と気が散るなら影に入ってもらうからと
言ったら、清姫に会えなくなることと、僕とのイチャ付きを天秤にかけて清姫に会えなくなるほうが嫌だったようだ。
血涙を流しながら快く道を譲ってくれたよ。
クラスの男を扇動して、自分は後方からしれっとわら人形で呪詛を送り続けている忠夫君には呪詛返しをプレゼントだよ。
陰陽道には呪詛返しの法も多く残っている。
少しのたうち回るといいよ。
なんで、俺に痛みがぁとか叫んでる彼を後目に六道さんのお迎えを校門で待つ
しばし待っていると如何にもという高級車が止まった。
フミさんが迎えにきてくれたと思ったら降りてきたのはまさかの冥子さんだった。
「優君~~~迎えにきたわ~~~冥子、優君の式神さんに会いたかった~~~」
こんなところでぷっつんされたらどれだけ被害がでるかわからないので、六道家でゆっくりお話しましょうと一緒に車に乗り込む。
その様子をみていたらクラスメートがエスコートしているように見えたのか
やっぱり優ばかりあんな美人と知り合いになって、しかもお迎えだとーーーー!!
と叫んでいる。明日学校に行くのが今からしんどいが、ぷっつんから守ってあげていることも事実なのだ。なんだったら一度体で痛みを覚えると静かになるんだろうか
いや、最近こいつら何やっても死なないんじゃね?位に思ってきたけど万が一ってやっぱりあるしなぁ
まぁとりあえずは放置でいいか、さぁ清姫、冥子さんとこの車に乗って行こうか
車が動き出してからしばらくしてから冥子さんがおもむろに話を切り出してきた。
「優君と式神さんは仲良しみたいで安心したわ~~
冥子お姉さまが~式神と仲良くなる方法を~教えてあげようかと思ったけど
大丈夫そうね~」
「まぁご主人様とさらに絆を深める方法があるのですか?」
隣で聞いていた清姫が冥子さんに質問をする。清姫には聞き逃せない話題だったようだ。
「それはね~式神さんと優君がずっと一緒にいればいいのよ~
そうすれば、ずっと仲良くいられるわ~」
「承知しましわ。ご教授いただきありがとうございます。わたくし清姫と申します。」
「六道冥子よ~、よろしくね~清姫ちゃん」
話が落ち着いたところでどうやら六道家に到着したようだ。
あれ?まさかタイミングを計って到着とかないよね?
チラッと運転をしていたフミさんをみるとにこりと微笑むのみだ
深く追求しても僕が墓穴を掘るだけになりそうだ。フミさんにお礼をして
冥子さんの後をついて行く。
~六道家~
応接室にはいると六道婦人の冥奈さんがさっそく僕たちを迎えてくれた。
「優君いらっしゃい~~そして~あなたが式神になった清姫さんね~
私は六道冥奈よ~よろしくね~
さぁ座って~まずはお茶にしましょ~」
そこまで行ったところで、先ほど運転をしてくれたフミさんが紅茶とケーキをもって配膳をしてくれる。
さっきからフミさんの万能ぶりが気になって仕方がないが冥奈さんに今回の旅の内容をざっくりと報告する。
天照様に直接会ってお礼が言えたこと、熊野古道で清姫を見つけて話を聞いた結果、式神としてつれてきたこと。
そして勝手に清姫を連れてきてしまい、誰からか文句がでないか心配だということを話した。
「優君~清姫さんのことは安心して頂戴~誰か文句をいってきたら私に~連絡して頂戴~
おばさんがメってしてあげるわ~
それに六道家として式神使いが増えるのは嬉しいことだから大丈夫よ~」
六道家がバックになってくれるのはありがたいが、無料より怖いものはない
なにか裏があるんじゃないかと思うが、僕程度では冥奈さんの腹積もりは読めない。
ちょっと整理してみるか、僕にはどんな価値があるか
天照様と小竜姫様の繋がり、あとは文珠が使える
あれ?これって多少迷惑を被っても十分身内に抱き込みたくメリットだよな。
「そうね~優君が今考えている通り~メリットが大きいのも~確かなことなんだけど~
それ以上に~神族の方の機嫌を損ねる可能性も~あなたにはあるのよ~
だから~六道家としては~特別肩入れや~引き込みもしないわ~
でも仲良くしてくれるとおばさんうれしいわ~」
あれ?地味に心を読まれてる?というか僕が分かりやす過ぎなのか
「はい、僕も冥奈さんにはお世話になっていますから、これからも仲良くしてもらえると嬉しいです。」
「あら~そう言ってくれると~おばさんも嬉しいわ~
そうだ、清姫ちゃんを守るために~六道GSにアルバイトでいいから在籍しては~どうかしら~
六道家は~式神使いの家だから~式神使いがいてもおかしくないと思うわ~」
六道婦人、なんというダブルスタンダード
しかし、清姫を守るというウィークポイントを地味についてくるな。
小竜姫様や天照様もいらっしゃるが、人間界の権力という点ではやはり六道財閥の力は大きい
とりあえず、今回のところは保留させてもらおう。
「ASEにマルチドライバーとしてアルバイトですが所属しているので今回は遠慮させてもらいますね」
「あら~残念だわ~ でもASEと話が付けば六道GSにもきてくれるのよね~」
僕はこのとき特に考えていなかったがまさか六道家からASEにアプローチがあるだなんて考えもしていなかった。
後になって分かったことだが、本当に後の祭りだったのだ。
え?冥子さんが会話に入ってこないけどどうなっているかって?
彼女ならケーキと紅茶を堪能してそれどころじゃない感じだったよ。
どうもご無沙汰しております。
今回も読んでいただきありがとうございました。