GS美神の世界でサバイバル   作:京太郎

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今回は人形師蒼崎橙子が視点のサイドストーリーです。
感想でご指摘いただいた部分を補完する内容なのです。




16.5 人形師が見たもの

 

16.5 人形師が見たもの

 

 

 

~伽藍の堂~

 

 

依頼された横島優の人形が完成した。

 

寝台には私が作成した横島優の人形が横たわっている。

 

もう数時間もすれば、本人がその出来栄えを確認のためにここに訪れるだろう

 

思えば、黒桐が伽藍の堂を探していると言い出したことが今回の事の発端だ。

 

その話を聞いていた両儀が探るのが気に入らないと出て行った。

 

そもそも此処には人除けの結界が貼ってあり関係のない人間は訪れることが出来ない。

 

私が面白い思った依頼しか受けないからこれでもいいのだ。

 

黒桐に見つかる程度の探索者ならば、両儀も本気になることは無いだろう

 

精々、脅す程度で終わるはずだ。

 

そう、私は脅す程度で終わるはずだと思っていた。

 

しかし、簡易的な使い魔を通してその戦闘を見ていたが、両儀が捕獲されているではないか

 

直ぐに黒桐を両儀の迎えにいかせた。

 

帰ってきた両儀は不貞腐れていたが、その様子も私にしてみれば面白く久しぶりに愉快だと思ったよ。

 

もうこれだけでも、探索者の依頼を受けやってもいいと思ったよ。

 

一応黒桐にこの探索者の正体をこの一晩でわかる限りを調べさせることにした。

 

翌日の早朝にフラフラになりながら横島優の調査結果を持ってきた。

 

調査報告を流し読みしながら、相変わらず黒桐のものを探すという一点においては本当に極まっているな。

さてこの横島優だがいくつか不審な点がある。

 

そう、まるで突然この世に現れたかのような不自然さだ。

 

兄となっている横島忠夫の怪我に合わせて、弟として登場している。

 

そして兄は治療のために静養となっているが、入院や出国した履歴もない

 

人は生きていく上で必ず何らかの足跡を確実に残していく

 

それが横島優には何もない、横島忠夫と入れ替わったと言われたほうがまだしっくりくる。

 

まぁ話してくれるかどうかはわからないが、酷く興味をそそる横島優を黒桐に迎えに行かせる。

 

黒桐がぶつくさ言っているが、速く行ってこいと追い出す。

 

 


 

 

やはり私の勘は正しかったようだ。

 

今、横島優がこの伽藍の堂から帰っていった。

 

ここで彼から告げられたことを反芻しながら思いに浸る。

 

横島優は魂だけでこの世界に訪れた異世界人だったわけだ。

 

突拍子もない話ではあるが、私は法螺話だとは思わない。

 

この世には有りえない事など無いのだ。

 

並行世界は魔法使い第二魔法の使い手であるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグによって観測されている魔法だ。

 

あの横島優は異世界だと思っている並行世界から来ていると言われれば、どうやってという疑問はあるが納得もできる。

 

もしかしたらあの魔道元帥ゼルレッチの厄介ごとに巻き込まれたのかもしれない。

 

しかし愉快なのは、体を本来の持ち主に返すために守護霊となっている横島忠夫を復活させるというではないか

 

横島優にはわかってないことかもしれないが、それは魂の物質化、第三魔法に抵触している。それがどれだけ偉大なことかも分かっていないだろう。

 

かのアインツベルンでさえ成し遂げていない大儀式を魔法、魔術とは縁遠い

この極東の地で成し遂げる可能性があるというだ。

 

これを喜劇と言わずして何が喜劇だ。

 

愉快すぎて先ほどから嗤いが止まらない。

 

黒桐や両儀がこちらを見て不可解な顔しているがそれすらも気にならない。

 

いいだろう、横島優

 

第三魔法の可能性に賭け、私が持てる全て尽くして最高傑作を作ってやろう。

 

 

 


 

 

 

幾日か日にちが立ちついに、完成した人形を本人が確認している。

 

彼の表情を見る限り、私の渾身の作品は満足しているようだ。

 

横島優と残りの支払い、今後の儀式の話をしていると突如、女性が現れた

 

なんだと!?内心が驚愕に彩られる

 

ここは腐っても封印指定を受けた魔術師の籠る工房だぞ!

 

横島優の人形を作成する前にこの世には有りえない事など無いと私自身が思っていたが

こうもたやすく私の張った結界を通過されるとはな

 

まだ、無効化されるかはたまた力任せに破られたほうがまだ分かりやすい

 

それだけ力をもった存在が横島優のバックにいるのか、それとも横島優自身がそうなのか、これだけのことを簡単にできる存在がただの運送屋扱いとはな

 

良いじゃないか!第三魔法もあながち嘘ではないということがはっきりしてきた。

 

 

あのヒャクメという女性が人形を持っていき、横島優も慌ててここを飛び出していった。

 

しばらくしてからまた先ほどのヒャクメという女性がこの伽藍の堂に現れる。

 

今回も結界は正常に動作、全く嫌になる。

 

「私は神族の調査官ヒャクメ、貴女の作成した人形を儀式の前に微に入り細に入りすべて調査したのね。

人形におかしな仕掛けは無かったのね。よろしい魔術師、貴女の儀式への見学を神族調査官の私が承認するのね。

ただし、今回のことを記録するものは一切携帯しないことが条件なのね」

 

それだけ言うと私の手を取り、即座に転移をした。

 

 

 


 

 

 

転移後、赤い髪の頭に角の生えた女性がこちらに歩いてくる姿が見えた。

 

「ようこそ、魔術師殿ここは妙神山修行場、私はここの管理人である小竜姫

本来では鬼門の試しを受けていただくことになっていますが、今回は旦那様の身体を作っていただいたこともあり、特別に入場を許可します。

 

先ほど貴女をここに転移させた神族の調査官ヒャクメによって、検査を実施しましたが、生身の人体とかわらないと褒めていましたよ。

 

ヒャクメには旦那様を無視して、態と先に人形を回収させましたが、それは検査の時間と貴女を先にここにお招きするためでした。

今は旦那様を迎えに行っていることでしょう」

 

私を転移で連れてきたあの神族の親玉の登場らしい

 

私が見て分かるか分からない程度の魔力しか発していないが、それはおそらく高度に隠蔽しているか体内で循環しているから漏れてこないのだろう。

 

それに横島優のことを旦那様と呼んでいたが、横島優は何者なんだ?

まぁいい、儀式を見学させてもらえるならお行儀よくしておこう。

 

「貴女も見たところその体は人形のようですね。

成長が出来る人形を作れるその腕には素直に称賛を送りましょう。

しかし、失礼だが貴女自身はさほど強くはなさそうだ」

私自身が人形の身体を使っていることを見破った小竜姫殿が疑問に思ったのか質問を受ける。

 

「私自身が最強である必要はなく、必要であれば最強のものを作れば良い

そう私は考えているのですよ。小竜姫殿」

 

「そうですか、少し前に朧という仙人を目指す修行者が西洋魔術師は何かと技術偏重主義だとこぼしていました。

貴女も修行をすれば強くなれますが、そういう信念があるのならば無理にとはいいません。」

 

さて、旦那様も到着したようです。こちらに来てください。

 

そういって小竜姫殿が建物中に進んでいく。

 

 

 


 

 

 

 

 

案内された部屋に入ると注連縄に区切られた空間の中に私が作成した人形が安置されていた。

 

ヒャクメという神族があちこちを触って遊んでいるようにも見える。

 

そこに小竜姫殿が後ろから拳骨を食らわせていた。

 

奥の方を見れば神道でよく見る祭壇も設えてあり、その中央には大きな神鏡も据えてある。

 

そうこうしている内に清水で禊を終えた横島優が部屋に入ってきた。

 

儀式を開始する前にさらに部屋の清浄度をあげるという。

 

彼が祝詞を唱え、魔力、いや東洋では霊力を練り上げそのまま柏手を叩く。

 

神道における禊の魔術特性は一切の不浄を許さず、あらゆる穢れを祓い除く絶対結界

 

この時、祭壇に据えてある神鏡は一際大きく輝き、この部屋を一瞬照らし出した。

 

しかしその一瞬で、霊団であっても刹那の時も持たずに消滅してしまう神気が部屋を満たす。

 

人の身には成しえない、正に神の御業だ。

 

まさかたった今、横島優が奏上した祝詞には天照大神の御名があったが、天照大神がお応えになったと言うのか

 

日本では鏡が持つ魔術的な意味として、日本神話に登場する八咫鏡は天照大神の姿を映したゆえに、天照大神の御霊を移した依り代と扱われるようになった。

ここで大事なのは鏡には光が反射するように天照大神が映るということだ。ならば鏡を介してその御業を行使しても何も可笑しくはない。

 

こんなことあり得ない!そう叫びたかった。

 

神が、それも日本における最高位である天照大神がその御力を振るわれるなど、どれだけ横島優は神に愛されているのだ。これではまるで神の寵愛を受けた者じゃないか

 

準備が整ったと小竜姫殿が腰の神剣にて横島優の後頭部を強かに打ち付けた。

 

その衝撃で横島優の霊魂が身体から抜け出す。

 

すかさずその手の神剣を振るい、魂の緒を断ち切る。

 

そのまま横島優の人形にその魂を込め、二つの文珠を使用した。

 

魂の抜けた身体は肉体は所謂植物状態となり、心臓は動いている。

 

栄養が摂取できなくなり、徐々に衰弱してそのうち肉体の活動が停止し肉体の死を迎えるのだ。

 

小竜姫殿が横島優の魂を込めた人形の頭を膝に乗せ、ヒーリングをかけ、ヒャクメ殿が状態を観察している。

 

その様子を見る限り旨く行ったようだ。

 

 

 

 


 

 

 

暫くの後、横島優が目を覚ます。

膝枕に驚いたようだ。少年らしい可愛いところもあるじゃないか

 

ヒャクメ殿が再度状態を確認をした結果、GOサインを出す。

 

それを聞いた横島優がチラリとこちらを見てから、手のひらに拳くらいの大きさの宝玉を出現させた。

 

呪を唱えた瞬間、結界が消し飛びそうな物質化一歩手前といった濃密な霊力が風というには生ぬるい暴風が部屋に巻き起こる。

 

先ほど小竜姫殿が使用した文珠を今度は横島優が発動させる。

 

そして、先ほどにも増して霊力が強まりすべてを吹き飛ばす爆風と化す。

 

唯一、台風の眼となっている中央で横島優が呪を唱える。

 

今まで吹き荒れていた霊力が横島優の背中で渦巻どんどん纏まり、激しい光を発しながら収束していく。

 

そして部屋に先ほどまでが嘘のように静寂が訪れた室内に七色、いや複雑に輝く珠が横島優の手の中に納まる。

 

そしてその珠は神族が脈動するようにドクンドクンと光を発する。

 

あれが魂の物質化、第三魔法の体現だというのか

 

まさか本当にこの目で第三魔法が確認できるとは・・・・・・

 

横島優がその魂を元の身体にそっと身体に戻すとスルスルと吸い込まれて消えていく。

 

ヒャクメ殿がその身体をすかさず検査する。

 

魂の定着も無事に完了したようだ。

 

そして私は第三魔法の余韻に浸る間もなく来た時と同様にヒャクメ殿の転移によって伽藍の堂に帰還した。

 

あの横島優という少年には興味が尽きないが、神々に愛される存在に手を出せばこちらに神罰が下るだろう。

 

まぁいいさ、身体のメンテナンスを含め時間は無限にある。

 

今は待つとしよう。絶好のタイミングが訪れるまで・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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