~~自宅~~
その日、たまたま暇だった忠夫君と一緒に居間のテレビで暇つぶしにF1の実況を見ていた。
忠夫君が時給250円でバイトしていた時はとにかく暇があれば、通い詰めていた。
待機時間も時給がもらえていたようで、美神GSのところにいたようだ。
何もなければ、そのままおキヌさんの作る夕食をご馳走される。
最近は、まともな時給になったおかげもあるのか、余暇も自分の為に使えているようだ。
特に意識をせずに見ていると、清姫がお茶を淹れ持ってきてくれた。礼を言いカップを受け取る。
忠夫君にも配膳しているあたり、清姫の優しさを感じる。
そしてそのまま、僕の座っているソファーの隣に腰をかける。
以前は、清姫がお茶を配膳してくれたりすると、その手を取り
生まれる前から愛していましたー!と飛び掛かったりしていた。
まぁそれはそれで問題なのだが、ご主人様のお兄様なのでとやんわり断っていた。
それに気をよくしたのか、遂に清姫の入浴を覗きにいったのだ。
流石にそれは阻止をしようと思ったが、忠夫君の超常的な動きで僕を縛り上げた。
まったく身動きがとれずにもがいていると、風呂場から「転身火生三昧」と聞こえてきた。
しばらくすると、いつもニコニコ笑っている清姫が真顔で戻ってきた。
縄を解いてくれる清姫に、一応覗きは大丈夫だったかと聞いたところ、お仕置きしてまいりましたと、そう清姫がつぶやく。
宝具が炸裂した、忠夫君だったが翌朝には平気な顔で清姫の作ってくれる朝食を、
食べていたが、清姫が動くと身体がびくっとしていたので、効果覿面だったようだ。
それ以来、清姫には不埒なことはしていないようだ。
ただ清姫曰く、あの方は一切嘘を付かず口説きにくるのですと
だから思わず手加減をしてしまいました。とそう聞いたことがある。
街でナンパしているのを見かけたこともあるが、一人ひとりに本気だったとは思わなかった。
まぁそれはさておき、放送していたF1で事故が起きた。
世界最速の男と呼ばれるヴィスコンティがクラッシュしたようだ。
記憶に引っかかるものがあった。
ヴィスコンティが成仏しきれず、午後2時過ぎからサーキットに現れるというものだ。
これは美神GSが受注し、人工幽霊1号が憑依したマシンに乗って、ヴィスコンティと対決する。
最初は美神さんが乗り込んだが、1週目でリタイアした。
忠夫君が代わりに乗り込み、最終的には煩悩パワーで勝利するという
そんな話だったはずだ。
だから、今回も美神GSが受注するものだと高を括り、その場で黙祷を送るのみだった。
~~サーキット場~~
そう、美神GSが受注するものだと思っていたので、今ここに至るまで・・・・・・
いま、僕はヴィスコンティがクラッシュしたサーキット場にきている。
そして隣には美神さんではなく、ASEに依頼をした六道冥子さん。
最近、ASEからの任務でオカルトがらみのものは六道家からの依頼がやたら多い気がする。
東海道新幹線の合同任務で味をしめたのだろうか
ASEの依頼金額も結構高額だと思っていたが、冥子さんが依頼を失敗しすぎて
免許を失効するという話もあったくらいだし、依頼金額が高額でも
必ず任務を達成するASEは六道家にとってありがたい存在なのかもしれない
今回の任務はヴィスコンティとレースで勝負をして勝つことだ。
たしかに僕には霊能力があり、マルチドライバーの能力があるから
F1マシンでも操縦することはできる。
しかし、あくまで本職のガチのレーサーと戦うのはしんどい
斑鳩さんなら余裕かもしれないが、僕は能力があるだけなのだ。
とはいえ、これも任務なのだなんとかするしかない
午後2時を過ぎたころ、サーキット場にF1エンジンの爆音が響き渡る
今日もヴィスコンティが現れたようだ。
ピットハウスまで一緒にきた冥子さんが見守るなか覚悟を決めて
コックピットに座り、ピットクルーにベルトを着けてもらい、エンジンをかける。
ギアがニュートラルであることを確認して空ぶかしをする。
アクセルの踏み込み具合に合わせリニアにエンジンが反応し心地よい爆音が響く
ピットクルーにサムズアップしてさぁ行くかと思った瞬間に脳裏に最大級の警報が鳴る。
首を回し背後はミラーを使って辺りを見渡すと今の空ぶかしの音に驚いたのだろう
ミラー越しに見える冥子さんが、半泣きになっている
よく見れば冥子さんの影が泡立っているようにボコボコしている!?
文珠の{鎮}を生成し投げようかと思ったが、座席にベルトで固定されていて
身動きがとれない!!
即座にサムズアップしている手を剣指に替え、絶叫するように魂鎮めの呪を唱える
「急急如律令!我、式神に命ずる!急ぎ急いで陰に戻られませい!!」
泡立った影が収まるのを確認する。間一髪で、暴走は収めることができた。
レースを始める前に死に掛けるってなんなのさ・・・・・・
最近、暴走とか死にかけることが無かったので忘れていたが、
流石、冥子さん敵に回すと恐ろしいが、味方に付かれても自滅しかねない
任務が始まる前に強制終了になりかねない。もういっそGS免許を取るべきなんだろうか
「冥子さん、びっくりさせてごめんなさい。もう大丈夫なのでちょっと行ってきますね。」
そう言って手を振る。
「もう冥子びっくりしちゃったわ~~優君もしっかりね~~」
そう言って、冥子さんも手を振り返してくれる。
本当にそのしぐさを見る限り、良家のお嬢様なんだけどなぁ
さぁ行こうか、お前に魂を吹き込んでやる!
ピットエリアからでて周回コースに入る
流していただけのヴィスコンティに追いつけたが、こちらに気が付いたのか
ここからが本番だと言わんばかりの全開走行に移る
こちらも全開走行に移り、ヴィスコンティに追撃を掛ける
~~ピットハウス~~
レースも中盤に差し掛かった頃、ピットの中でタイヤ管理をしているスタッフがおかしなことに気が付き、他のスタッフに声を掛ける。
「なぁ持ってきたタイヤが思った以上減らないんだが」
「あぁそれはドライバーの横島さんが思った以上にタイヤ交換をしないせいなんだが
ちょっとこれを見てくれ」
そう言って、二人で横島優が走行している画面を見ると
まるでリプレイ動画を見ているかのように周回を重ねる横島の姿だった。
「なぁこれは世界最速のヴィスコンティに勝てるんじゃないか」
「あぁいけるかもな、でもあと一歩たらん」
~~周回コース~~
そんな会話をピットクルーがしている頃、優も世界最速には後一歩届かないことを感じていた。
美神が用意したマシンには人工幽霊1号が憑依し、忠夫の爆発的な妄想力を燃料にして勝利をもぎ取った。
しかし今回はそのどちらもない。
なのでピットインする回数を極力減らす努力をしてヴィスコンティに食らいついているが
あと一歩届かない。
文珠を生成するにも、全開走行している最中に他に意識を割くことができず
また生成できたとしても、前にいるヴィスコンティに文珠を投げて届かせることができない。
最終ラップが近づくなか、夕暮れの大きなオレンジ色の太陽を見て
やはり天照様にお助けいただく方法以外ないかと。
最初から考えていたことだ、何もせず勝てればよかったが
流石は世界最速まで上り詰めた男の走り違う。
このままでは勝てないのは残り周回数とタイム差からも明白だ。
冬木の街のセカンドオーナー曰く、無ければ有る所から持ってこればいい
「祓い給え、清め給え 祓い給え、清め給え
高天原に坐す 掛けまくも畏き天照皇大神
平に平に伏して願い奉る
五十と巡りし道の中にある、御霊に天照皇大神のご慈悲を願い奉る」
聖人が歩いた道が今でも伝説に残るように
世界最古の結界を張り巡らす、そのために今日は最初から同じように
走ってきたのだ。
簡単に言えば僕が走ってきた道が結界となる。
結界の中に太陽の柔らかい陽が差し込む
その光を受け、ヴィスコンティのマシンが闘争を忘れたかのように
速度が落ちる。
抜かすには今しかない!
お前に魂があるなら応えろ!!
アクセルを全開にして最後のホームストレートを走りきる。
ゴール間近で追い抜き、そのままチェッカーフラッグが振られる。
チェッカーフラッグは今日走った全ての者達の健闘を称えるのだ。
ヴィスコンティとそのマシンは夕暮れの逢魔が時の中に溶けるようにして消えていく。
チェッカーフラッグを共に受けた戦友を思い、満足した顔をして成仏した。
皆様、お久しぶりです。
ASEのオカルト絡みの案件にも一人で対応したほうが
むしろ安全なのではと、思い始める優でした。
~NG1~
逢魔が時の中に消えるヴィスコンティを見送り
夕暮れの陽炎の中に天照様のお姿を見つけた。
そのままお辞儀をすると天照様がニコリと笑い
「もっと、姉の私を頼ってもいいのよ。
陽の有るところ、私に届かないところはないわ」