GS美神の世界でサバイバル   作:京太郎

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31.横島兄弟の極楽大作戦

31.横島兄弟の極楽大作戦

 

 

 

ある時、僕たち横島兄弟は塀しか残っていない元洋館の跡地前に揃っていた。

忠夫君はいつもの上下Gジャンにトレードマークの赤いバンダナ姿に、霊具の入ったボストンバックと付き添いでおキヌちゃんが来ていた。

僕は何時ぞやに六道婦人に仕立ててもらった。オーダーメイドのスーツ一式の黒スーツ姿に聖別された六道の徽章を付けている。そして付き添いの清姫が一緒に来ていた。

僕たちは所属事務所が違うので滅多に一緒に仕事をすることがない。

一緒に仕事をするにしても、美神さんか冥子さんのどちらか、または両方がついてくる。

しかし、今回は監督者が誰もきていない。

そのせいなのか、忠夫君はちょっと緊張しているようだ。

 

今回の依頼だが忠夫君が美神除霊事務所にバイトを始めたかなり初期、美神さんの色気に騙されて時給も250円の時代、おキヌちゃんもまだいなかった。そんな頃に受注した依頼の後始末が僕ら横島兄弟に回ってきた。

 

悪霊となった相手は鬼塚畜三郎、犯罪組織のボスだった男だ。

当時の話を忠夫君に聞くと美神達は鬼塚の隠したポエム集を屋敷の隠し部屋から発見し、未練を強引に断ち切って鬼塚は無念の成仏を遂げ、あれ以来工事の邪魔をする鬼塚も出ず、依頼完了となり報酬が支払われた。

時給は変わらんかったけど、若者のリビドーを逆手に取った魔女とか、ほっぺにチューをしてもらったとか、アレは俺に惚れとるとか、わりとどうでも良い話も混じっていたけど、概要としてはこんな感じだったらしい。

 

さて、件の不動産会社だが、さっさと取壊し売却をしたいところだが、30年も塩漬けされていた案件で後回しになっており、ちょうどその当時、複数の案件が重なって直ぐに取壊し工事は行われず、買い手がつくまでの間放置されていた。

ようやく買い手も見つかり高層マンションの建築が決定、壁に白骨死体でも埋まっていないだろうなと戦々恐々の中、解体工事を開始した。

解体が進み、上部構造がなくなり、基礎が見えてきたところで建築図面には記載の無い地下室が発見されたのだ。

 

現場の作業員が崩落の危険がない事を確認した上で地下室を確認のため、一歩階段を踏んだところで、鬼塚の悪霊が再度現れた。

これに対し不動産会社は依頼の未完了だとして、美神除霊事務所にたいして無償での解決を強く要請した。

 

まぁかなりの金額を払って、実は終わっていませんでしたではキレるのも分かる

美神としても、割と駆け出しの頃で悪霊を吸引札に吸収や完全に成仏を確認したわけではなく、そう強く出ることもできなかった。

しかし、自分のミスではあるが、不動産会社のいいなりとなり無償対応、ただ働きというのも美神のプライド(守銭奴)が許さなかった。

そこで、忠夫君にGS見習いの修行という名目で解決してこいと忠夫君を送り出した。

 

ここまでは美神除霊事務所側の都合だが、何故も僕まで駆り出されたかといえば、本案件は不動産会社が第三者を交え、本当に悪霊が消滅したことを確認するために、美神さんが六道徐霊事務所に依頼をだした。

もうすでに建物の上部構造がなく更地になっているので、六道冥子所長が担当するはずだったのだが、美神さんが来ないことが分かると「令子ちゃん来ないの?」とやる気が減少し、追い打ちで新作スイーツの発売日に重なっていることがわかるとやる気ゲージは消滅、僕に代打が回ってきたという次第だ。

 

 

~屋敷前 横島兄弟~

 

さて、何時までも門の前に立ち尽くしていても仕方が無いので、忠夫君を促し内部にはいるために、預かってきた門の鍵を開けた。

カチリと小気味のいい音がして、開錠できた。

開幕で襲ってくるとしたらこのタイミングだが、事前の情報通り地下空間に足を踏み入れるまでは襲ってこないのだろう。

 

そのまま門を開けて入ろうかと思った瞬間に、僕の左腕に柔らかく暖かな幸せな感触が襲う。

何事と思い左を見てみれば、清姫がニコニコしながら僕の左腕に抱き着いてきた。

 

「ご主人様、これが世に言うダブルデートですのね。

お兄様はおキヌさんと、そしてわたくしはご主人様とそれぞれ行動を共にして、その中を深める。

男女の中を深めるにはお化け屋敷が定番と雑誌に書いてありましたし、この状況まさにそういうことですのね。」

 

ささ、おキヌさんも義兄様をくっついてくださいまし、とおキヌを促す。

 

おキヌさんもこれ幸いと思ったのか、「ダブルデート初めてです。横島さんよろしくお願いしますね。」と忠夫君に腕を絡める。

 

忠夫君はその感触に、違う違うんや、おキヌちゃんはそんな事を思っていい子じゃないんだとカッと眼を見開きクールを装おうとしているが、残念なことに眼が血走っている。

 

まぁ何でもいいけど、まだ門の鍵を開けただけでこれだけのギャグ空間に突入している今回はむしろ安心安全だと考えてもいいんだろう。

流石に僕も毎回のようにドンパチしたいわけではない・・・

 

 

~屋敷内~

 

 

さっそくひと悶着あったが、門を潜り、鬼塚が逃げないように屋敷に結界を張る。

今回は美神さんが苛つきながら供出してくれた結界札を塀に貼り付ける。

 

門を起点に僕と清姫のペアと、忠夫君とおキヌちゃんでペアを組みそれぞれ時計回りと反時計回りで札を張っていき、交差したところからはお互いの札が正しく張れているか確認をして、門まで戻ってくる流れだ。

 

清姫はささっと僕と腕を組み、手もちゃんと恋人繋ぎで「さぁご主人様御屋敷内を散歩しましょう」とフンフン鼻息荒く歩き出す。清姫サンちょっとステイ。

 

ふと、忠夫君を見れば、おキヌちゃんはさっきの事が恥ずかしくなったのか、お互いに顔赤くして初々しい感じでそっと袖を掴み、僕らと反対側に歩いて行った。

 

お互いに門までたどり着き、結果を確認しあう。

一応お互いに問題が無かったようで安心した。

 

さぁ鬼塚が現れたという地下室にいきますか

 

 

~地下室前~

 

 

地面にぽっかりと穴が開いておりちょっと覗いてみれば、下に降りていくための階段がそこから見える。

現場の作業員が安全の為に設置したのか、穴の周りにはカラーコーンとバーで区画が仕切られており、バーには開口部注意と書かれたビラが付いている。

 

一応周りを霊視してみるが、鬼塚の姿を見ることが出来ない。よっぽど上手く隠れているのか、地下室に入ることがキーになっているのか

そんなことを考えていると、忠夫君がバーを跨いで地下室に降りようとしている。

 

やけに自信満々な彼にどこまで霊能が使えるようになっているのかを確認する。

 

「兄さん、やけに自信満々だけど、すごい霊能でも使えるようになったの?」

 

忠夫君がこちらに振り返り、香港の元始風水盤で発現した霊能の栄光の手を見せてくれる。

 

「ふっふっふっ 見よこの栄光の手をそしてサイキックシールドがあれば攻守ともに完璧じゃぁ。兄より優れた弟などいないのだよ!」

 

なるほど、まだ霊波刀と文珠は使えないみたいだね。

まぁいいや、自信満々のところに水を差すのもどうかと思うし、お手並み拝見と行こう。

 

 

意気揚々と地下室への階段に一歩足を踏み出した途端に鬼塚が姿を表し、散々に罵っている。

ほらさっさと栄光の手でぶん殴っちゃえばいいじゃないと、見学していると腰が引けたのか忠夫君が戻ってくる。

「おキヌちゃん、兄さんのカッコいいところ見てみたいよね。さぁ兄さんおキヌちゃんにカッコいいところを見せるためにも、今度は栄光の手を発動したままで行って、奴がでたら殴ってやればいいんじゃないかな」

 

とりあえず、忠夫君を煽っていくスタイルでいく。

今のところ霊能は兄より優れていると思うんだよ。

 

そうだよな、先に発動してから行けばいいよな!よっしゃ行くぞと行って再度地下に向かう

 

 

「わたくしはご主人様のかっこいいところもみたいですわ」

 

はい、清姫さんステイ、今は忠夫君の番だから

でも、一応懐に釣ってある聖別された銀弾頭の弾丸が詰まった霊銃(拳銃)を取り出せるようにしておく。清姫さんに良いところを見せようとか、そんなのじゃないったら無い。

 

本当は精霊石が良いのだが、流石に精霊石弾頭は高すぎて手が出ない。あれはよっぽどじゃないと撃てない。それに固いところに当たると砕けて回収できないし・・・

銀なら精霊石に比べればまだ、安いし後で回収して鋳つぶせばまた使える。

聖別は唐巣神父にお願いしている。お布施という形で相場位の料金を支払っているが、同志厄珍堂に頼むより安く、なにより品質という面で安心できる。

最近、唐巣神父のお布施が神父の家計の一角を閉めているのではないかと思うくらいだ。

それくらい、聖別済みの銀弾頭の弾丸を持ってきている。

 

完全に腰が引けているが、兄さんまだーと声をかけると、「今いったるわい」と栄光の手を発動したまま再度地下に足を踏み入れる。

先ほどと同じく、鬼塚が大声で罵っているが、忠夫君は栄光の手を発動しているので強気で鬼塚を殴る。

ただビビっているか、それとも上手に霊気を纏うことが出来ず殴るというよりは叩く程度の攻撃しか出来ていない。

やっぱり忠夫君はエロ方面か、誰かを守るときにその力を発揮するのかな

 

パン!パン!と2回乾いた破裂音が響く

音の正体は僕が握っている拳銃からなんですけどね。

 

鬼塚は突然、銀弾頭を頭に食らったせいで姿が保てなくなったのか、その姿を一時消している。

そして、忠夫君はと言えば、腰を抜かし口を大きく開けてこちらをおかしな物を見るような眼で見ている。

 

「おい、優、おm お前それ拳銃じゃないか、日本で拳銃なんて持っていたらしょっ引かれるぞ」

 

「いやいや、兄さんこれは拳銃じゃなくて霊銃。

GS免許保持者は霊銃の所持と、その行使も許可されているよ。

ただ、霊能者が霊銃で犯罪を犯すと、ほぼ死刑並みの刑罰を食らうから使いどころが

かなり面倒な霊具なんだよ。

美神さんから聞いてないの?」

 

「いや、そういえばGS免許取った時に聞いた気がする・・・

あぁだから美神さん銃をぶっ放していたのか、あの時は美神さんだから何でもありかなと思っていたけど」

それだけ言うと何故か遠くを見つめている

 

まぁあの性格だから、いろいろと思う所は有ると思うけどね。

 

「さぁ、鬼塚消えたしさっさと地下室を確認して鬼塚を成仏させよ」

 

兄さん先に行く?と聞くと、今度はお前から行ってくれと返事がくる。

了解、それではさっさと行きますか、まだ階段一歩しか降りてないしね。

 

いつも通り、清姫には背後からの攻撃を守るようにお願いして、今度は僕が先頭になり地下への階段を降りる。

もう出てこないかなと思ったが、一歩踏み出すと鬼塚が出てきたので銃撃する。

 

鬼塚がチャカなんて捨てて、男なら素手でこいなど叫んでいるが、構わずに銃撃する。

 

全弾撃ち尽くしたところでスライドが後退して固定されたので、次のマガジンと交換して初弾を薬室に送り込む。

 

そこまでやって、後ろを振り返ると忠夫君がドン引きだという感じでこちらを見ている。

 

「お前、意外と容赦ない性格なんだな」

 

なに、生易しいことを言っているのか、殺れるときに殺れだよ。

ドラマのように拳銃を突きつけて、舌なめずりなんてド三流のやることだよ。

反撃を食らいたくないなら速やかに殺さないと・・・・・・

 

「情け容赦のないご主人様も素敵です。あぁわたくしもご主人様に攻めて・・・」

 

うん、清姫さんはどこいっても正常運転ですね。

 

鬼塚をやった感じがしないが、姿を見せないので軍用のライトを照らしながら地下室への階段を降りながら、回収できそうな銀弾頭を拾っていく。

 

警戒しながら、階段を降りていくと割と広い地下室にたどり着いた。

中を覗くと鬼塚がいたので、先制攻撃で銃弾を打ち込む。

それと同時に祝詞を唱え、この地下室の穢れを祓い、場を浄化する。

 

鬼塚が動けなくなったところで、忠夫君が吸引札を持って駆け寄り、鬼塚を吸引札に取り込んだ。

この辺りは、美神さんの仕込みもあるのだろうけど、手際がいいな。

 

不動産会社からの依頼通り、鬼塚も回収したしこれで任務完了だ。

さっき打ち込んだ銀弾頭が勿体ないので、壁にめり込んだ弾頭を取り出せる限り回収する。

ナイフで壁にめり込んだ弾頭を取り出していく。

 

忠夫君は何もない地下に飽きたのか、さっさと終わらせて上に上がって来いよと地上に戻っていく。

 

手伝ってくれてもいいのにと思わないでもないが、銃を撃ったのは僕なので黙って作業を進める。

粗方取り出したので、上に戻るかと思ったところで壁の一部が着弾の衝撃で脆くなったのか壁が崩れてきた。

 

不動産会社の話では地下室も潰してしまうという話だったので、問題は無いと思うが一応調べておこうと思い、崩れた壁に近づいて、ある物を見た瞬間に僕の膝が崩れ落ちそうになった。

 

なんで、こんなところに賢者の石があるんだよ!?

アーカム考古学研究所で実物を見たときは、これは遺跡周辺から発掘されるって言ってたよね。

なんで、こんなところから出てくるんだよ。僕は呪われているのか?

しかも結構でかいし、これだけでかいと相当な黄金かオリハルコンが生成出来てちゃうじゃないのか?

 

まさか、不動産会社が賢者の石が出てくるからここを買い取ったのか

鬼塚の資金源が、この賢者の石だったのだろうか?

だとしたら、この売りさばく先はどこだアーカムならまだいいが、トライデントとかだと最悪だぞ。

このまま賢者の石を持って地上に出たら銃撃戦とか嫌すぎるー!

 

軽く疑心暗鬼に陥りながらも、アーカム考古学研究所に賢者の石発見の報告をしようと思い立つ。

そうだ報告連絡相談は基本だよな。

緊張して手が震えるがなんとか気合をいれて、携帯のメモリーから番号を引っ張ってくる。

 

電話ボタンを押して耳に当てと ツーーツーーツーーと無情な音が携帯から響く

なんでだよと思って表示をみると、圏外になっている。あぁくそ地下だから繋がらないのか!

 

とりあえず、この目に着くでかいのだけ持って帰ろう、小さいかけらはあるかもしれないが

この場を離れる方が先だ。

賢者の石をポケットに入れて、一気に階段を駆け上がる。

 

地上でおキヌちゃんと話していた忠夫君が必死の形相で上がってくる僕を見て

 

「おいおい、まだ鬼塚の悪霊でも、でたのか?」

 

そう笑いながら揶揄って聞いてくる。

鬼塚の悪霊のほうがまだよかったよ。ぶち殺すだけなんだから・・・

 

「美神さんに訳も分からずいきなり一千万位入ったアタッシュケースを渡されたのと同じような感じかな」

 

それを聞いて忠夫君も顔を真っ青にして、「分かった俺は何も見てないし、聞いていない。ここには鬼塚の悪霊を祓いに来ただけだ」

そう言って理解を示してくれた。彼の中ではどれだけ美神さんはやばい人なんだろうか

 

 

僕もまずはこのポケットに入れた賢者の石をアーカム考古学研究所に運ぼう・・・

 

 

 

~後日談~

 

賢者の石を移送しているときに襲撃があるかもと、なるべく人通りの多い道を通ったのがよかったのか、それとも僕がビビり過ぎただけなのか、襲撃は無かった。

 

早速アーカム考古学研究所の調査員が鬼塚邸を調査に行ったとのことだったが、これ以上賢者の石が出土することは無かった。

 

調査員の話では、鬼塚邸を建築するときに遺跡を発見したようだが、遺跡の保全と発掘に時間を取られることを嫌い、その当時の担当者を皆殺し、そのうえで口の堅い業者に建築を続行させたらしいということだった。

 

建築関係者にとってみれば、遺跡は工事が止まってしまうため、不発弾並みに見つかってほしくない物かもしれない。

 

 

そうそう、この話を妙神山に行ったときに、小竜姫様に話した。

僕は気を付けないとだめですよ。とかオリハルコンは希少金属ですものね。とかそんな答えが返ってくるものだと思っていた。

 

「あらあら、そんなものが欲しいのですか?」と言われ話を聞くとどうやら、神界や魔界では割と普遍的に出土する鉱物だったようで、それほど珍しいものでもないそうだ。

人間界に遺跡周辺でしか出土しないというのは、過去において神との交流がもっと盛んだったころの神族や魔族が人間界に持ち込んだ名残だったようだ。

 

いい機会なので、ついでに例のプレートの制作者について聞いてみたが、世界には神秘があった方が面白いと思いますよ。とはぐらかされてしまった。

 

最後に、賢者の石は妙神山でも掘れば、でてくるかもしれないと言われた時の、僕のショックはかなり大きかった。

 

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