・鍛えよ。鍛えよ。
次の連休に妙神山に行くことにする。
人間に頼れないなら、神様に頼るしかない。小笠原GSや六道GSという手もあるが、小笠原GSは黒魔術、六道GSは式神使いだ。
使用している術式が違うせいで霊力の基礎は習えるかもしれないが、そこからの発展がないかもしれない。
ASEで山登りに適した車両を借りくることにしよう。
ちょうど、この間のトライアルバイクを用意してくれた車輌課の課長がいたので、妙神山に連休に基礎修行に行くことを話し、登山にも耐えられるオフロードバイクの使用許可を連休の前日から借りられるように申請しておく。
優からは課長と呼ばれているが、まぁ俺の名前はどうでもいい。
妙神山という神様がいる場所にどうやら修行に行くらしい。そこでオフロードバイクを貸してくれと言ってきたが、山に向かうのにここにあるバイクでは航続能力が低いだろうからちょっとカスタムをしておいてやる。
ガソリンタンクの容量が小さいからビックタンクに交換して、ついでにキャブレターでは高山病(空気が薄くなり正常に燃焼しない)にかかるだろうからインジェクションのバイクを用意しておく、あとは予備のガソリン携行缶を積むためにサイドキャリアをくっつけておいてやるか、片方には携行缶を積んで、もう片方に着替えなんかを詰め込んでいけば楽になるだろう。
そういえば、アーカム考古学研究所から特殊強化服の試験運用の依頼が来ていたな。ついでだから優に着せて試験させておくか。
妙神山に向かう前日にASEに車輌を借りに来た。明日は早朝にでかけるので今のうちに用意しておきたい。
「よう、優きたな。バイクはばっちし仕上げておいたぜ。あとライダースーツを貸出してやるからそれももっていけよ。会議室に置いてあるから説明も聞いてこい。」
そう課長が言ってきた。課長の言うとおりバイクを見てみるが、ビックタンクになっており、スイングアームも延長されており、ヒルクライムにも対応できるようになっている。
サイドキャリアもついて携行缶も積めるのが大きい。流石は課長だな。
しかし、万が一転倒もありえるのでライダースーツの貸出しは嬉しいがわざわざ説明をうけるようなものではないと思いながら課長にお礼を言って。会議室に向かう
会議室前に到着した。使用中のランプがついているのでノックをする。会議室内から応答の声があったので、入室をした。
中には小柄な壮年の男性と若い感じの女性がいた。
「君が横島 優君かな。儂の名前はメイゼル、アーカム考古学研究所の科学者じゃよ。我々が開発した特殊強化服をASEが試験運用してくれるというので、持ってきたんじゃ、さて早速これを着て見てくれ」
メイゼル博士といえば、オリハルコン研究の第一人者でAMスーツやオリハルコンナイフの製造に携わっていたはずだ。
「サイズは良さそうじゃの。この特殊強化服はオリハルコン繊維と人工筋肉を合わせたパワードスーツでな、小口径の銃弾程度は余裕で弾く衝撃吸収構造と普段の30倍の力をだせるようになっておる。あと大きな特徴として手に霊力を集めて増幅した霊波攻撃もできるように設計してある。」
メイゼル博士がスーツを僕に着せながらスーツの特徴を説明してくれる。首の留め金具を締めて首周りの余裕を確認してから、握力計を持って腕に力を込めてくれと指示が出た。
腕に力を込めるとメキメキいいながら人工筋肉が稼動して握力計を握り締めていく。
握力計の針は振り切れてしまっている。
「うむ、良さそうだの。あとオリハルコンナイフも持ってきのでこれも試験してきてくれ」
メイゼル博士にライダースーツと聞いていたことを話し、冗談めかして宇宙人とでも戦えそうですねと話したら。
「神族に殴り込みにいくんじゃろ?それくらいの装備は最低限もっていけ」
博士は真顔でそんな事を言ってくる。修行に行くのであって間違っても殴り込みではありません。
最後にメイゼル博士にスーツの名前を聞いてみたが試作特殊強化服という仮称で名前はなかったのでアーマードマッスルスーツはどうですかと伝えたら採用になった。
「では優君、わしは帰るとするよ。帰ってきたらレポートをよろしくの」
そう言って、メイゼル博士はさっさと帰ってしまう。
まさかこんなところでAMスーツが出てくるとは思わなかった。
さて明日は早朝から出発だ、今日は早めに寝ることにしよう。
朝からオフロードバイクに乗って、妙神山を目指す。整備されていない山道に入ってからAMスーツの効果を実感し始めた。マシンをホールドするのにとにかく楽なのだ。これまでよりダイレクトに操作できる。
いつもより速いペースで不整地を駆け抜けていくと早くも妙神山の正門を守護する鬼門が見えてきた。
門の前に到着し、バイクを停めると鬼門が声をかけてくる。
「そんな物でこの妙神山にくるとは怠けておるわ」
「おうよ。右の鬼門、この左の鬼門の試しを受けて泣いて帰るがいいわ」
バイクで来たことを嗜めるように鬼門たちから声がかかる。麓から自分の足で登ってくることも修行の一つだということも理解できるが、自分の技能を使っているのだ。
そんな事をかんがえていると、あっさりと鬼門が開き小竜姫様が現れた。
「あら、お客様ですか」
存外、軽いノリで開門される。そこに鬼門たちの抗議の声があがる。
「小竜姫様、そんな簡単に開けられては我らの役目が果たせません」
「まぁそう硬いを言うな。そしてそこの貴方、まずはその兜を脱ぎなさい。」
小竜姫様にヘルメットを脱ぐように指示されたので素直にヘルメットを取る。
「あら横島さんじゃないですか、どうやら雰囲気がちがうようですが、こちらには何をしにきたのですか?」
人界では基礎の霊能力を鍛えてくれる場所がなく、神様に頼ろうと思ったことを話し、唐巣神父からの紹介状をお渡しする。
「なるほど、美神さんも唐巣神父もすでに弟子がいて、慣習により教えられないということですか、わかりました。この妙神山、修行する者に閉ざす門はありません。しかし試しは受けてもらいます。」
小竜姫様から修行の許可がおりて、鬼門の試しを受けることになった。
鬼門と対峙したところで、小竜姫様から開始の号令がかかった。
まずは2体いる鬼門の足止めをしなくては。
盾を多重展開して鬼門たちを取り囲み、禊の絶対結界を発動させる。
「高天原に坐す 掛けまくも畏き天照皇大神
平に平に伏して願い奉る
諸々の禍事、罪、穢れを祓い給え、潔め給えへと
恐れ恐れ申す。」
仏門に降り、仏典の守護者となっているが、元々の特性は人々の恐れから生まれた鬼、つまりは
盾により清浄な神気が漏れることを防ぎ、足止めに成功する。
AMスーツを全開にして門に取り付き兆番の楔から門を引き抜き、そのまま門を崖から捨てようとする。
「そこまで!横島さんの勝利とします。」
小竜姫様から合格の声がかかったので鬼門の体に門を置く。
「では、横島さんこちらにどうぞ。どの修行コースにしますか?それとまずは俗界の服を着替えてください。」
下界に戻ってからも、継続的に続けられる基礎コースをお願いした。そして服についてはAMスーツの霊波防御能力、物理的な耐衝撃能力を告げ、このままではダメでしょうかと小竜姫様に問いかけた。
「そのなんちゃらスーツが如何に役に立たないものか実践でお見せしましょう」
問答無用で斬りかかってくる。無論手加減をしてくれているのだろうオリハルコンナイフで受け流すことができた。何度目かの斬撃を直接受けてしまい試作だったことあるのか、ナイフに欠けが生じてしまった。
その欠けた瞬間に気が抜けたように見えたので、小竜姫様に霊力を増幅したサイコブローを叩き込んだ。
横島さんなど一撃でかたが付くと思ったが、どういうことだ斬撃を受け流される。
ナイフを切り裂くつもりでかなり本気で放った斬撃もナイフに欠けを生じる程度のダメージだった。
なにより、横島さんの動きが良い。あのスーツのおかげかかなり素早い動きでこちらに対応してくる。あまつさえ反撃も食らってしまった。
こちらとしても神族としての意地がある超加速を使ってでも、あのナイフをへし折ってやろう。
超加速を使うその初動に入った瞬間、待ったの声がかかる
「先ほどから何を騒いでおるか、小竜姫よ!」
老師と声を上げてから、小竜姫様が老師に対して僕がAMスーツを着用したまま修行をすると言い出したことなどを説明した。
「横島といったな。お主のそのスーツ、確かに大した代物じゃ、しかし教えを乞いに来た者が指導者の話をきかんでどうする。」
我が意を得たりとばかりに、小竜姫様は頷いているがそれに対しても老師は小言を言う。
「小竜姫も所詮は人間と侮った結果がいまの現状よ。初撃から本気で切り伏せればここまで長い引いてはおらんかったじゃろう、弛んでおるぞ。」
無意識に侮ったことを指摘され、肩を落としてしまう。素直に着替えておけば良かったと反省をして謝ることにする。
「小竜姫様、我が儘を言ってすみませんでした。スーツの性能試験とあなたにスーツの補助があればここまでやれるのだということを認めて欲しかったのです。」
「こちらこそすみません。頭に血が上ってしまいこの様なことをしてしまい。もっと何故ダメなのか話せば良かったですね。」
お互いに謝罪をして、小竜姫様とは和解ができた。
横でその様子を見ていた、斉天大聖が自分について来いと話しかけてくる。
僕だけ斉天大聖について奥の間に通される。
そこには、黒い髪を腰のあたりまで伸ばし、後ろで一纏めにしている
ふんわりしてとても優しそうな雰囲気を発している女性が座っていた。
「こんにちは ■さん、いえいまは横島優さんでしたね。
天照、その名を聞いて呆然とした。え、なんでこんなところにいるの?
だが、次の瞬間には平伏をして、自身の名前を告げる。
「初めまして、天照大神様、先ほどの前世の名前は理解できませんでした。この世では横島優と名づけていただきました。宜しくお願い致します。」
「そんなに固くならなくてもいいんですよ。妙神山は神族の出張所なので本体は流石にこれませんでしたが、分霊の私なら来ることができました。
目の前の女性は天照大神の分霊のようだ。しかしわざわざ会いに着ていただけるなんて本当にありがたいことだと思う。
「さて、この度は横島さんの召喚を防げず、斯様な仕儀になり大変申し訳なく思います。」
そういって、そっと頭を下げる天照大神様。こちらが恐縮してしまうので辞めてほしい
「いえ、事故のようなものだと理解しております。むしろ召喚事故で次元の狭間などに行かず、ある意味でホッとしております。」
「えぇ、横島さんには召喚の直前でしたが、次元を超えるのに案内役として貴方の魂魄に私の分霊を忍ばせておきました。こちらの世界に来てからも分霊の霊的な防御があり、その加護の力も合わさって横島忠夫さんは守護霊となったようですね。」
忠夫君は天照大神様のお力で消滅は間逃れて現在は僕の守護霊となったようだ。ではあの時
キーやんが消滅と言ったのはなんだったのか?
それに天照大神様の分霊がいらっしゃったので、禊の結界があんなにも強かったのだろうか
「キーやんは立川で休暇中でしたし、海外の神なので、そこまではっきり観測はできなかったのでしょう。恐らく消滅したであろうと判断したと思いますが、勘違いで希望を持たせるのもどうかと思い、消滅と言ったと思われます。
それにあなたには案内役として私の分霊がいるので、詳細が分かるようになっていまし霊能も強化されておりました。そのおかげで本日妙神山にきたわけなんですが」
流石は天照大神様だ。しかしなんだろうかこの近所に住んでいる美人のお姉さん感は、なぜかすごい親しみを感じる。あれかやはり世界初の引きこもり系神様だからか、天姉様とか呼んでみたい。」
「えぇいいですよ。須佐能は乱暴者だったので悲しくなり天岩戸に隠れましたが、あなたはそんなことしませんよね?」
しまった。途中から声に出てしまっていたようだ。なんたる不敬をしてしまったのか
「はい天照大神様、あなたに乱暴狼藉を働くなど絶対にしません。」
「あら横島さん、天姉様でいいのですよ。」
コロコロと鈴を転がすように笑う。
「それでは、天姉様とお呼びします。時間ができたら今度は神宮にもお会いしに参ります。」
「本体も喜ぶと思うわ。姉と慕ってくれるならあなたはは私の弟のようなもの、八咫鏡を授けたいところですが、それは叶いません。すでに貴方には私の加護を与えていますが、さらに強力な加護を授けましょう。」
そういって天姉様は僕の額に口づけをしてくれる。
「さて、貴方に加護を与えたわ。霊格もあがりました。それにこれで天に太陽がある限りたとえ夜でも月は太陽の光が反射したものどこにいても貴方のことが分かるようになります。
神宮にも会いに来てくださいね。本体も楽しみにお待ちしていますよ。」
それだけ告げて、斉天大聖と2,3話したあと天姉様はふっとその場から立ち去った。
その様子を見ていた斉天大聖は呆れたように僕に告げる。
「お主もう加護ではなく、寵愛のレベルになっておるぞ。幸い天照殿は太陽神、農耕神で穏やかな気性ゆえよほどのことはないとは思うが、今回のことで他の神々に目を付けられておるかもしれん、気をつけたほうがいいぞ」
「ご忠告ありがとうございます。斉天大聖様」
心配をしてくださる斉天大聖にお礼を言う。
「さて、お主せっかく妙神山まで来たのじゃから、ちょっと修行をしていけ、わしが見てやろう、最上級神魔からもよしなに言われておるし、天照殿の加護もうけたじゃろ、それに弟子の小竜姫も可愛がってくれたみたいじゃしの」
「いや、小竜姫様は申し訳なく思っていまし和解しております。それに基礎の修行だけ習えれば十分だとおもっているのですが」
AMスーツのパワーを全開にしてもびくともせず、むしろ引きずられていく。
「なに、若い者が遠慮なんてしてはいかん」
そういって、このまま異空間に放り込まれた・・・
そして、ゲームをしながらそのときを待ち続ける。
恐らく2ヶ月くらい経った頃、異空間から戻ってきた。
老師が自身の宝具である如意金剛を振りかぶり、こちらに向けてくる。
「魂が過負荷から開放され、潜在能力が引き出しやすくなっておる。出来なくば死ぬだけじゃ」
AMスーツを全力稼動する。2ヶ月以上整備無しできたがどうやらまだ正常に稼動してくれている。
老師の攻撃をオリハルコンナイフで受け流し躱したつもりだったが、小竜姫様に付けられた欠けた部分から刃が折れそのまま吹き飛ばされる。
そのまま、意識がブラックアウトしていった。
「力が欲しければくれてやる」
また体の奥底から声が聞こえる。目が覚めるモヤがかかった感じがするが自分が何をすべきかわかる。
老師が如意金剛で突きを放つ、先程は避けきれなかったが今度は避けきれる
そしてそのまま、老師に刃先だけとなったナイフを心臓目掛けて突き立てる。
だが、ナイフは心臓ではなく老師の腕を刺すだけだ。
「お主横島ではないな、貴様何者だ?」
答える必要もない、敵は殺す。ただそれだけだ。
このまま殺されるくらいなら殺してやる。
幾度かの攻防のあと、ブチっと大きな音がAMスーツから響く
人工筋肉の筋繊維がちぎれたのだろう。途端にパワーアシストの能力が無くなる。
あぁここでおしまいかと棒立ちとなった。
しかしいつまでたっても老師のとどめの一撃がこない。
目を開けて老師を見つめる。
老師もこちらを見ながら大喝をいれてくる
「貴様いつまで殺人機械をやっておるか!! 貴様は何者だ!!!」
途端にモヤのかかっていた視界がクリアになる。
御神苗君の殺人機械だった精神が僕が死にかけたことで浮上してきたのか
そういうことか、殺人機械の精神に乗っ取られていたのか
だが、こんなところでは死ねない!
体に力を入れ、拳を握りこむ
そして力の限り叫ぶ
「僕の名前は横島優だー!!!!!!!」
この瞬間に霊気が収束、圧縮されビー玉のような文珠が生成される。
「ようやく潜在能力を開放したか、しかしお主もなかなか厄介なものを持っておるの。
イタタ、傷を負ったのなんぞ何百年ぶりじゃわい」
おい小竜姫、治療箱をもってこいと老師が小竜姫様を呼ぶ。
小竜姫様が老師の怪我をみて驚愕してから治療に取り掛かる。
老師の治療が完了してから、小竜姫様がこちらに話しかけてくる。
その眼差しは憧れとも畏怖ともつかないそんな表情をしていた。
「横島さん、あなたは一体何者なんですか、かの斉天大聖を傷つけることができるなんて、私でも無理かもしれないのに」
「僕は横島優です。横島忠夫さんが記憶喪失になり、その体に入ってしまったのが僕なんです。」
小竜姫様には嘘はつけない、限りなく真実を話す。
「それでは老師に傷を負わせたのはどうやったのでしょうか?」
「僕が死にかけたことで普段抑圧している殺人機械として精神が出てきたようです。しかし僕も殺人機械の意思だったのか理解はしていませんでした。」
御神苗君のポジティブな精神を見習いたいと常々思っていたが、まさか殺人機械の精神まで付いてくるとは思わなかった。たしかにスプリガンでも最終番まで殺人機械の精神を乗り越えられなかった。
自分もこれから死にかけると殺人機械になってしまうのかと思うとひどく憂鬱になる。
「わかりました。優さん、あなたは殺人機械になることを少なからず恐れている。それは間違いありませんね?」
「はい、今は酷く憂鬱な気分です。まさかこんなことになるなんて」
「では、その精神に負けないように修行あるのみです。私がきっちり面倒を見て差し上げます。」
今度は小竜姫様に引きずられていく、AMスーツを全開にしようにも筋繊維が断裂しているせいでパワーがでない。
あれ?妙神山所属の神様って脳筋ばっかりなの?
なんで、出てくる女性キャラはヤンデレ気質になるんだろうか