現状よりさらに先のネタばかり浮かぶジレンマ
早く進めたい。
具体的には体育祭あたりまで
ヒーロー育成の最高峰と言われる国立雄英高等学校、通称”雄英”でも基本教養として、一般教科の授業が午前中に行われる。ヒーローは敵を倒してはい終わり、と思われがちかもしれないがそんな単純な仕事ではない。デスクワーク等が欠片もできないようなヒーローはどれだけ力があろうと二流や三流にすら劣る。
”ヒーロー育成の最高峰”と呼ばれる雄英は、トップヒーローたちの母校だけあり一般教養を疎かにはしない。さらに言えば、それら一般教科を担当するのは当然、教員として雄英に勤めるプロヒーローたちである。彼らは’オールマイト’を筆頭に知名度の高いヒーローが多く、普段テレビやパソコンでしか見ることのなかったヒーローが目の前で自分に授業をしてくれる。
マニアやファンには唾涎ものであり、人によっては幾ら金額もつぎ込んでもと言うかもしれないが、悲しいかな雄英に入学してすぐの生徒はそのことに欠片も気づくことはなく、
・・・・・なんか、普通だ。
そう思った。
♦♦♦♦
授業があれば当然、休み時間もある。また入学してまだ最初の授業のとなるため、どの教科も今後の方針等の説明が大部分で比較的チャイムよりも早く終了することが多い。生徒たちはその時間を利用し、今後少なくとも一年は一緒のクラスとなるクラスメイトと積極的に交流、親睦を深める。
どのクラスも明るく、活気にあふれるように見えたが、1年A組だけは様子がおかしかった。
(((((き、気まずい・・・)))))
席の近い者で、あるいは同性で交流し、会話に花を咲かせながらも、1年A組の生徒のほとんどが同じことを感じていた。
その微妙な空間を形成しているのが、我愛羅である。
個性把握テストを通しクラスのほとんどの者が、担任教師の相澤を強制退学処分も場合によって下す恐ろしい人物と現在は認識しており、その恐ろしい人物すら警戒させるようなヤベー奴、それが他のクラスメイトから見た彼の印象であった。
彼の周辺に人はいない、話しかける人もいない、周辺の席の生徒は席から離れた場所に移動していた。そのため教室内で不自然に人が少ない空間がぽっかりとできてしまっている。
人間は恐ろしいものと同等かそれ以上に得体のしれないもの、未知の存在に警戒心を抱く。個性の無効化や記憶の改ざん等、警戒させるには十分すぎることをやっていた。
やらかしちゃったのである。
ところが本人だけその自覚が皆無であり、読書をしつつ、気にしてない体を取りながらも本人的には、マジかよこんなん聞いてないんだけど、といった思いでいっぱいだったりする。
そんな感じでもうしばらく続くように思われた気まずさは、脳内でこんなん聞いてないんですけどー!やり直しを要求したいんですけど~!などとどこぞの水を司る駄女神よろしくクレームをしている彼の元に二人の生徒が向かったことで変化が訪れた。
♦♦♦♦
我愛羅は雄英高校敷地内に併設された大食堂で昼食を買うべく生徒の列の中にいた。雄英高校の大食堂では、クックヒーロー’ランチラッシュ’を筆頭としたプロによる一流の料理を安価でいただくことが可能となっているのだ。
「白米に落ち着くよね最終的に!!」
サムズアップかましながら放たれる真理とも言うべきランチラッシュの名言である。
複数の料理を受け取る際、我愛羅とランチラッシュは無言でサムズアップを交わしていた姿があったとかなかったとか。
明らかに一人で食べるには多い、具体的には"個性"を使用しつつトレー三つを運んで混雑した中を進んでいく。汁物や水が注がれたコップなどの人のごった返した場では極力持ちたくない物も多く所持しているにも関わらず、その足並みはよどみない。
さらに言えばトレー上の液体は波紋すら浮かべていない。体術や武術に詳しくない素人目でも異常と断定できるほどの体さばきで人ごみの中を縫うように歩いていく。
その向かう先には既に席を確保してくれていた女子生徒が二人。’八百万 百’と’耳郎 響香’である。
「遅くなってすまない。待たせてしまったな」
「ッ!いえいえ!お気になさらないでください!・・それほど待っていませんので」
「そうだよそうだよ!・・混んでるし仕方ないよ」
「・・・そうか」
教室とは真逆の何故かやたら強い剣幕で違和感を感じなくはなかったが、それぞれに注文した昼食のトレーを渡して彼女たちの向かいの席に座る。
周りの生徒たちは、我愛羅の整った容姿と美少女と言っても過言ではない女子生徒二人というメンバー構成にただならぬ雰囲気を感じて遠巻きにさりげなく様子をうかがっている。
なお、男一人に女二人の構成に修羅場を勝手に想像している者が実のところ大半であったが、それは詮無き事であろう。
その状況を肴に『この世の全ての赤』を煮詰めたような劇物の集大成を汗だくでイイ笑顔しながら食している愉悦部員もいたがこれもまた問題ないのである。
・・・・・ないったらないのだ。
♦♦♦♦♦♦
「あ、あの、沙漠さん・・ひ、ひとつよ、よろしいでしょうか?」
「どうした、八百万」
野次馬どもが期待した修羅場もなく不特定多数から舌打ちが聞こえてきたりもしたが気にすることもなく食事を終えて一息ついている中で、事は動き出した。担任教師との会話で見せた落ち着いた様子とは逆に、ひどく緊張しているのか視線が右往左往したり指先で遊んだりを繰り返した末に八百万はある’お願い’をしたのだ。
「な、名前で、お呼びしても、よよろしいでしょうか?あああと、私のこともな、名前で呼んでいただけませんか?」
「ッ!ううウチも、いいいかな!?」
ひとつではなく二つの要求であり、その内容ともう一人がそれに便乗した様子から、またしても不特定多数から舌打ちと幾人かが急に席から立ったような音がしたが三人の中にそれらを気にする者はいなかった。
「ああ、二人がいいのならこちらも喜んでそうしよう。それでは改めてよろしく頼む、百、響香」
これまでの人生で最大と言えるほどの勇気を振り絞ってのお願いを何の躊躇いもなく了承し、不意打ち気味に念願の名前呼びまでされたことで、二人は嬉しさやら何やらでフリーズしその後徐々に首から赤面症もびっくりなほどに赤くなっていく。耳郎にいたっては耳のコードの先まで赤く染まっているほどだ。
なお、それらを引き起こした張本人はというと全く気付かずに新しく人数分のお茶を取りに席を立っていた。
「待って!とりあえず落ち着こうよ峰田くん!そんな血涙流しながらフォーク持って突っ込みに行こうとしないで!」
「そうだぞ!上鳴くんも落ち着きたまえ!一雄英生として相応しい行動をだな!あと地味に帯電するのも止めてくれないかな!?みんなも!特に女性陣!彼らの関係の話で盛り上がる前にクラスメイトを止めるべきだろう!?」
私怨や嫉妬で