今度はちゃんとポケモンの世界です。
——ここは、どこだ?
気づけば俺は真っ暗な空間にいた。
手を伸ばすとすぐに壁にぶつかり、力いっぱい押すと空間が揺れた。
(う、嘘だろ……?)
嫌な予感がしたのはオタク故か。
そういえば、手足が異様に短い気がする。
(ありえない……そんなはずない)
冷や汗をダラダラと垂らしながら、嫌な予感を憐れなオタクの妄想だと確認するためにこの空間を脱出すべく、壁を壊そうと壁を殴りつける。
「〜〜〜〜〜〜!」
そうして、壁を殴って空間を揺らしていると外から聞き取れないが、興奮したような小さな声が聞こえてきた。
それに尚更嫌な予感をしつつも、壁を殴り続けると、壁に罅が入り始めた。
もう少しだと、俺はさらに力を込めて壁を殴る。
徐々に壁が崩れ始め、光が入ってくる。
そして、ついに壁が砕けた。
「生まれたー!」
眩しさに目が眩んだ俺の耳に少女の声が響く。
目をぱちくりさせ光に目を鳴らすと俺の目の前で手を挙げ喜びを露わにしている可愛らしい少女の姿が。
しかし、その少女の大きさが異常だ俺の体長何倍あるかわかったもんじゃない。
自分の体を見下ろすと黄色い体に短い手足。
後ろを振り向けば尻には黒い稲妻型の尻尾。
「ピ、ピチュー……」
引き攣った口から零れるのは明らかに人語ではない可愛らしい鳴き声。
「こんにちはピチュー!私はレミ、貴方のトレーナーよ!これからよろしくね!」
俺を抱き上げた少女の言葉で現実を直視する。
嫌な予感の通り、俺が先程までいたのはたまごの中で。
そして、俺はピチューとして今さっき生を受けたらしい……。
嗚呼、オタクの妄想ではなくネット小説でよくある転生をしてしまったことに俺は少女の輝かしいまでの笑顔を見て項垂れた……。
「どう、ピチュー?美味しい?」
「ピチュ……」
ニコニコと俺がポケモンフーズを食べるのを見つめる少女の問いかけに頷く。
あの後、生まれたばかりでエネルギーを欲したのか、俺の意思とは関係なく鳴った腹の虫にレミという名前らしい少女はあわててポケモンフーズを皿に明け俺に差し出した。
元人間の俺がこんなもの!と思ったのは一瞬だけでその匂いを嗅いだだけで俺は無意識にポケモンフーズを手に取っていた。
食ってみると普通に美味かったポケモンフーズを食べている俺をレミは何が楽しいのかニコニコと見つめている……食いづらい……。
「あのねあのね私ね、もう1年したら10歳になるの!そしたらね〜、ポケモントレーナーになれるのよ?それで、貴方を最初のポケモンにしてジム回ってね、チャンピオンを目指すの!イッシュ地方一のポケモントレーナーになるの!」
「ピチュ?」
少女の言葉を半ば聞き流していた俺は最後の一言に首を傾げる。
イッシュ地方?第5世代の舞台か?
あそこはピカチュウ系列は全然出なかったはずだけど……貰ったりしたのか?
「頑張ろうねピチュー!」
そう言って今日1番の笑顔で笑いかけて来た少女に不覚にも見惚れてしまった。
「ピチュ!」
「わぁ、ありがとう!」
俺が大きく頷くとレミは俺を抱きしめる。
何の因果かピチューになった俺だけどいっちょこの子をチャンピオンにしてあげますか!
……最終進化系でもライチュウかぁ……キツイな……。
ピカチュウじゃないと言うね!
まぁ、この後ピカチュウに進化するけど。