どっかで見たことある?き、気の所為やろ(目逸らし)
「すみません! 誤って貴方を殺してしまいました!」
唐突にそんなことを言う美少女の前に俺は立っていた。
首を傾げ周囲を見渡すと真っ白の謎空間に俺は居た。
ふーむ?
「おk、最初から説明してもらおか。話はそれからや」
「はいぃ、実は私神なんです」
「…………」
「いや、そんな可哀想なものを見る目で見ないでください!」
いや、だってねぇ?
「敬語使ってへりくだってる時点で威厳もクソもないよね」
「うぐぅ……」
「まぁ、でも——」
改めて自称神様の身体を見る。
腰までサラリと伸びた艶やかな黒髪。
ぱっちりと大きな黒水晶のような瞳。
芸術品のように整った顔。
スラリと伸びた真っ白な手足。
黄金比率の見事な美乳。
「そそそそんな身体中を舐め回すように見ないでください! なんで平然と神にセクハラできるんですか!?」
「ふっ、それを言うならまずは神と認めてみせよ。だがふむ、今まで見てきた女など霞むほどの美。よかろう神と認めてやる」
「認めさせろって言ったくせに即座に認めた!? しかもめっちゃ上から目線!」
「それで残念電波美少女自称神様? 殺したってどゆこと?」
「認めたんじゃないの!?」
「いや……ここまでの自分の言動を振り返ったら?」
「くっ、コホン」
自称神様は一つ咳をすると表情を変えて——
「——汝、神たる我の言葉に耳を傾けよ」
「……いや、ちょっと足りないなぁ」
「なんでですか!」
威厳を取り繕うとしたが失敗した。
「今までのがあるから今更って感じだよね。もっと……そうだな、重力増やしてみたり、後光差したら威厳あるかもしれない」
「なるほど……」
俺の言葉に真剣に頷く自称神様。
そういうところだよと言いたいのを我慢する。
「さぁ、神の威厳を見せてみろ!」
「はい! 行きますよ!」
言うと自称神様は再び表情を変える。
それと同時、体にのしかかる重力が増した。
「くぉ!?」
立つのすら辛いほどの重力に思わず、声を出す。
そして、自称神様に後光が差し、存在感が溢れる。
「——汝、神たる我の言葉に耳を傾けよ」
「——ッ!?」
さっきと同じセリフかよ!
そう口に出かかったが、紛れもなく神の威厳に口を開くことが出来なかった。
「…………」
「…………」
しばらくの間、物理的に重い沈黙が流れる。
「——どうでした!? 威厳ありましたか!?」
「…………」
その言葉とともに、重力、後光、威厳の全てが消え去った……。
思わず崩れ落ちそうになるほどの脱力。
何とか堪えて、キラキラと目を輝かせる残念な神様に口を開く。
「ああ、正しく神の威厳だったよ(過去形)。あんたを神様と認めるしかないな(残念な)」
「ふふんそうでしょうそうでしょう♪」
上機嫌に胸を張る神様に半眼を送る。
神様って認めてるのにまったく敬ってないことに気づいてない時点でもう残念だよな……。
「んじゃ、俺はこれで失礼するな」
「はい! アドバイスありがとうございます! お帰りは——って違う! なにナチュラルに帰ろうとしてるんですか!?」
ふむ、さっきから思っていたが中々いいツッコミである。
ここまでいいツッコミをしてくれる奴は今までいなかった。
「本題に一切入れてないじゃないですか!? どうしてこうなった!」
「なんでだろうね」
「貴方のせいじゃないですか!」
「おいおい神様、責任転嫁は如何なもんかね? 俺は話に入ろうとしたのに神の威厳とかにこだわったのはそっちだろ?」
「ぐぅッ」
悔しげに顔を歪める神様に俺は満足気に頷く。
美少女の百面相を間近で見られるとは最高に運がいいな。
「それで神様? 本題に入って頂けますかな?」
「ぅぅぅ、分かりました。実はですね私のちょっとしたミスで死ぬはずではない貴方を殺してしまったんです。なのでお詫びとして異世界に転生させたいと思います。好きな特典を1つ渡してです」
「ほほう、いわゆる神様転生ってやつだな?」
「はい、もちろんこのまま天国に行ってほのぼの過ごすというのもよろしいですが……どうします?」
顎に指を当てて、首を傾げて神様が尋ねてくる。
「ふっ、愚問——神様転生でお願いします」
「分かりました。では、どのような特典に——」
「イケメンフェイス」
「——へ?」
「イケメンフェイス」
「え……と?」
「イケメンフェイス」
「いや、3度も言わなくても聞こえてますけど……え? そこは何かしらのアニメの能力とか無限の魔力とかそういうのでは……?」
「イケメンフェイス」
「え、ちょ、普通のよくあるファンタジー世界ですよ!? 俺TUEEEEハーレムは!?」
「ふっ、やはり愚かなり神様よ。いや、神様だからか? どちらせよ愚かだ——どれだけ強かろうとこのブサメンじゃあ女の子にモテるかァァァア!!!」
「え? そんな悲観するほど悪い顔ではないと思いますけど。十分イケメンの部類に入るのでは?」
「結婚してください」
「ふえ!?」
「はっ! しまった非モテの習性が。忘れてください」
「な、なんなんですか!」
プンプンと怒る神様だが、しょうがないじゃないか。
美少女にイケメンとか言われたら条件反射でプロポーズしてしまうではないか。
「とにかくイケメンフェイスだ! 地球の俳優やアイドルに負けないイケメンフェイスだ! それさえあれば力なくてもまぁなんとかなるだろ知らんけど!」
「えぇ……というかイケメンで身体能力抜群な体が欲しいって言えばいいんじゃないですか? もしくはアニメのキャラの体とか」
——思考が停止した。
「——できるの?」
「はい。1つとは言いましたけど結構自由度ありますよ? 『イケメンフェイスと超パワーと超魔力が欲しい』って言えば3つの願いになりますけど『イケメンフェイスと超パワーと超魔力を秘めた体が欲しい』って言えば願いは1つになります。言葉遊びみたいですけどね」
…………………………。
「美少女女神様」
「び、美少女……」
「イケメンで最強の体ください」
「……急に欲張りましたね」
苦笑する神様に唇を尖らせる。
男ならやっぱり強さだって欲しいに決まってるジャマイカ。
「ふふ、まぁいいでしょう。では貴方の転生特典は『イケメンで最強の体』ですね」
「おいおい、この神様慈愛の女神かよ。美少女で心も広いとか最強かよ」
「び、からかわないでください!」
顔を赤くする神様。
「ついでにチョロすぎだろ。俺みたいなフツメンに美少女言われていちいち照れるとか」
「ちょ、チョロくないです! 誰だって褒められたら照れますよね!」
「ふっ、そっすね」
「今、鼻で笑いませんでした!?」
「転生お願いしまーす」
「むむむ」
納得しがたそうにこちらを睨んでいた神様だったが、コホンと咳払い1つ。
「では、貴方の第二の人生に幸あらんことを」
「…………なんでさっきの威厳モードと違うん? その女神モードの方が合ってね?」
「最後の最後までなんですか! もう!」
言って神様は指を1つ鳴らす。
その瞬間、俺の視界が白く染まっていく。
「……まぁ、楽しかったですよ。貴方との会話は」
おいデレたぞ。
その思考を最後に俺の意識は落ちていった。
実は自分で結構面白いと思ってたりする()