機動戦士ガンダム外伝「細雪舞う記憶の彼方」 U.C.0083-0086 作:そらむし
地下通路を懸命に走る、2つの小さな影があった。
また一つ、地下施設全体が大きく揺れた。
壁や天井が崩れ始めた通路をただ走る。非常灯で赤く照らされた通路内は視界が悪かった。
ここを抜けなければ。後ろ手につないだ右手に力を籠める。右手にから伝わる温もりに対し、左手に携えた小銃はずしりとした冷たさを伝えてきた。彼女の息遣いが乱れているのを感じる。
「もう少しだ!」
うん、と懸命に答える声。ここから逃げ出すのだ。此処にいては壊れてしまう。
せめて、彼女だけでも―。
「――ッ」
通路の前方にマズルフラッシュの光が閃いたのと、左頬を熱が掠めたのはほぼ同時だった。
弾けるように振り返り細い体を受け止めると思い切り真横に飛ぶ。宙を舞いながら左手に構えた銃口を向かってくる敵意へと向けた。
奇妙な感覚がする。一瞬が引き伸ばされたように、意識だけが加速する。
そうか。もう―。
こうなってしまえばもう視覚など要らない。敵意を感じる方向に向かってトリガーを引き絞る。
銃口から吐き出された9ミリが目標の喉元を食い破るイメージが脳裏に浮かんだ。
敵意が一つ消えたのを感じ取ると身をひねり
すぐに彼女を体の上から降ろす。
「待ってて」
繋いでいた手を放した。勢いよく瓦礫を乗り越え目標に肉薄する。
敵意がこちらを捉えた。鋭く二発、確実にこちらの眉間を捉える弾道。
しかし関係ない。こちらはもう、
銃弾と交錯する刹那、その直下、銃弾と地面との間隙に勢いのまま滑り込む。天を仰ぎ見るような態勢になった眼前を銃弾が通り過ぎる。前髪の先が掠めた気がした。
そのまま目標の股下を潜り抜け、同時に片足を掴み引き倒す。体を翻し相手の背中にのしかかった。銃を持つ手を踏みつけ反撃を許さない。
そのまま後頭部に一発、確実に撃ち込む。目標の体が強張り、脱力したのを感じると、大きく息を吐いた。
彼女の元に戻り、血で汚れていない右手を差し伸べる。
「行こう」
どのくらい走っただろうか。方向は分からない。ただがむしゃらに上へと走ってきた。見上げた階段の終わりには光が漏れていた。見たことのない、まぶしい光。
―あの扉。あの扉の向こうに。
2人で光の中へ飛び込む。その手をしっかりと繋いだまま。
―痛みはなかった。まず冷たさがあった。顔を上げると頭から白い塊が落ちた。
思わず息をのむ。雪で覆われた広大な大地。ただ、ただ広がるその雪原の唯中に二人は転がり出た。後方で鳴り響く地響きに思わず振り向く。そこには。
その白の大地を舞台にするかのように、剣戟を結ぶ二つの巨躯があった。ビームサーベルの斬撃の余波によって舞い上がった雪が蒸発し、空中に細かい氷粒となって煌めく。
輝くダイヤモンドダストのなかで切り結ぶ巨人はあまりにも―あまりにもまるで
「きれい…」
隣の澄んだ声色の嘆息も聞こえなかった。戦いの唯中でその場面だけは、どこか宗教画のような神々しさで、幼い少年の心象の奥深くに焼付いた。
初投稿なため分からない事だらけですがよろしくお願いします。
この2人が主人公になります。今後の投稿で説明不足なところを明かしていこうと思います。