オサレになりたい!名倉くん   作:オロパタジン

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 オリジナルキャラクターがもう一人出てきますが、モブに名前をつけただけなので覚えなくて大丈夫です。

 説明だらけで読みにくいかも。


友人達

 

 

 

「なあマスオ、俺結局どうすりゃいいと思う?」

 

 尾白猿夫は、変なアダ名で呼びかけてくる友人に目を向ける。彼の友人の名前は名倉アスキン。尾白と同じ中学の中では有名な男だ。

 

 同学年の女子の三割ほどが名倉ファンクラブに入会しており、尾白の中学の男子達からはあまり好かれていない。モテない男子達が突っかかっていっても、大人のようにあしらう。そんな名倉を見て、女子の人気が増していくという負のスパイラルが、彼らの中学では出来上がっていた。

 

 

 名倉は前世を合わせると30歳程なので、中学生を相手取るのはお手の物である。同時に中学生に欲情する性癖も持ってないので、彼女は出来ない。ファンクラブが卒業まで解散しなかったのは、この様な理由があるからだった。

 

 

 そんな特殊な立場の友人と二人で、尾白はファミレスに来ていた。雄英高校ヒーロー科の合否判定が出てから2日経った昼間の事である。

 

 「飯奢るんで相談に乗ってくれ」というメッセージを受け取った尾白は、倍率300倍を突破してご機嫌であった為、深く考えずに了承した。

 

 

 

 ご機嫌な尾白を待っていたのは、不機嫌な名倉だった。

 

 名倉が落ち込んでないのが唯一の救い。落ち込んでいたら奢られるのも嫌になってしまうからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「人の将来を左右する質問だから、ちょっと難しいよ」

 

「けっ、他人事かよ。 いいよなぁマスオは、機械に強い個性でさぁ」

 

「……君に言われると嫌味に聞こえる」

 

「寝づらそうだし、座りづらそうだから正直微妙な個性だよな」

 

「やっぱり嫌味じゃないか」

 

「悪い悪い、ちょっとイライラしてたわ」

 

 

 

 

 尾白に出会う前、名倉は(精神年齢)年下の集団の中で生活することで、ストレスが溜まっていた。更に、自分のファンクラブも出来てしまい、(精神年齢)年下からほぼ毎日のように変な絡まれ方をされる。名倉の精神は日に日に疲弊していった。

 

 そんな精神状況の中、大人びた性格かつファンクラブに対してどうこう言わない尾白と、中学三年にして出会ったのだ。志望先も同じだったため、名倉はめちゃくちゃ尾白を気に入った。

 

 

 

 名倉は仲良くなった人にしか個性の詳細を教えない。友人となった尾白は彼の個性について知ることになったが、彼に勝つビジョンが未だに見えていない。尾白の中では、ヴィランになって欲しくない友人No. 1だ。

 

 

 

 名倉の個性の名前は致死量。恐ろしいほど簡単に人を殺せる個性である。

 

 生物は同じ物質を体内に摂取し過ぎると死に至る。名倉はその死のラインを操作することが出来るのだ。自分のラインだけでなく、他者のラインも操れるので、一度その能力の対象になってしまえば触れる事なく殺されてしまうであろう。

 

 その応用としてあらゆる攻撃に対し、自分の死のラインを上昇させる事で無効化する事も可能である。更に、攻撃を受けた後ラインを上昇させることにより、その傷の回復を早める事もできる。

 

 正確には相手の霊圧に対する致死量のラインを操作することで、攻撃を無力化するという仕組みだ。だが、個性発現者達も霊圧に似たようなエネルギーを使って異常現象を起こしていたので、個性に対しても問題なく使用可能となっている。

 

 ほぼ不死身なのに、防御力無視の即死攻撃を放てる個性。オールマイトを除いた全ての個性の中で、一番強力なものなのではないかと尾白は思っている。

 

 

 

 

 

 ちなみに名倉の死にたくないという願いにより、今の個性と外見になったのだが、彼は未だに気付いていない。

 

 

 

 やや不貞腐れ気味の名倉を尻目に、尾白は二つある合格通知を手に取った。一つは尾白の元にも届き、何度も何度も穴が空くほど見た通知。もう一つも、尾白にとって聞き覚えのある名前が書いた通知だ。

 

 

 

「雄英高校の普通科と、赤山学院大学付属高校のヒーロー科かあ。確かにこれは迷うね。」

 

 

 中堅高校のヒーロー科と、超有名高校の普通科。果たしてどちらに行った方が友人の為になるのだろう。名倉がヒーローを目指していることを知っている尾白は、入試より難しい問題だと感じた。

 

「ちなみに、名倉はどっち行こうと思ってるの?」

 

「コネが出来そうな雄英かなぁ。 あーでも、実戦練習が出来るヒーロー科の方が良いのかなぁ」

 

 

 腕を組んで一人で考え出す友人に苦笑いしつつも、尾白は自身の意見を述べることにした。

 

 

「俺は雄英に来て欲しいかな。 教員全部プロヒーローの所って滅多にないし、実戦練習も放課後俺とやればいいと思う」

 

「……」

 

 尾白の言葉を聞いて、名倉は片眉を上げたまま固まった。

 

 

 

 

 

 

 

「それに何より、ライバルが居ないと俺がつまらない」

 

 雄英高校という最難関を共に目指してきた尾白と名倉は、勉強も組手も走り込みも一緒に行っていた。そもそも難関過ぎて、記念受験が多い雄英高校を本気で目指すものは少ない。試験に向け切磋琢磨した二人はお互いを認め合っていたのである。

 

 

 

 そんなライバルからの言葉を聞いた、名倉の口角は釣り上がる。

 

 

 

「いいぜ、乗ったわその話。 ……オジサン久々にテンション上がってきたよ」

 

「名倉って本当に俺とタメだよね?」

 

 

 

 名倉の年齢詐称疑惑が、尾白の中で一層深まったところに、注文していたハンバーグジャンボサイズがやってくる。

 

 

「お前結構遠慮ないよな」

 

 

 尾白は、友人の非難を他所に目の前のご馳走に手をつけることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 名倉が雄英高校普通科に進学することに決めた日から月日が流れて、季節は初夏。寒くもなく暑くもない、過ごしやすい気候の中で、今日も雄英高校では多くの学生が学業に取り組んでいる。

 

 

 そんな何気ない日の昼間のお話。

 

 

 

 

 美味しそうな匂いが充満した騒がしい教室の片隅で、三人の男達が席をくっつけ集まっている。その内の一人、ボサボサ頭で目の下にクマを作った少年が、購買部で買った焼きそばパンを頬張る。

 

 頬張ったパンを飲み込むと、痺れを切らしたのか彼は口を開く。

 

 

「おい、机くっつけて来たんなら何か喋れよ」

 

「ご、ごめんね」

 

「お前はいつも巻き込まれてるだけだろ。 おい名倉、聞いてんのか?」

 

 

 ボサボサ頭の彼、心操人使が顔を向けた先には、豪華な弁当をガツガツかきこんでいるイケメンがいる。前髪をオールバックにし、一部を前に垂らした独特な髪型をした彼、名倉は心操に睨まれ名指しで呼ばれた事で初めて箸を置いた。

 

 リスのようにした頬を動かして、咀嚼をしている彼は納得がいかないことを表情で表現する。その後、口の中の物を飲み込むと、コップ付き水筒のコップに、カフェオレを注ぎながらもようやく返事をした。

 

「小さい頃教わらなかったか? 食べながら喋っちゃあいけませんってよぉ。 ママの言いつけ守れないなんて、致命的だぜ?」

 

「じゃあ何のために毎回席くっつけてんだよ、アホ」

 

「食べ終わったらお喋りしたいでしょうが!」

 

 

 普通科に入学して以来名倉と心操、そして偶々心操の隣席であったモブ顔の佐藤は、こうして昼食を共にしている。きっかけは誰も覚えていないが、友人関係などそんなものである。

 

 イケメン二人(とモブ一人)の食事を、ギラギラした目で見つめる女子生徒の姿もちらほらある。だが、彼らは気にする素振りを見せない。

 

 

 「話変わるけどよ、そういやなんで心操は普通科来たんだ? ヒーロー目指してんだよな」

 

「お前も目指してて来てるじゃねえか」

 

 

 心操と名倉は、個性の害悪さと実技試験の不満をそれぞれ持っていた。佐藤を巻き込んで仲良くなった彼等だが、そのおかげで意気投合。短期間でかなり親交を深めていた。佐藤を置き去りにして。

 

 心操と名倉が意見を出し合い語り合い、途中途中で一般的意見を有している佐藤がツッコミを入れる。この流れが彼らのいつもの会話である。

 

 

 

 「だってよぉ、教師陣全てがプロヒーローとか中々無いぜ? しかもツテでヒーロー事務所合格してる奴も結構いるじゃん」

 

 前半は尾白の受け売りだ。名倉にとって尾白の存在は意外に大きいらしい。

 

 

「まあ、そうだな」

 

「でも二人なら他校のレベルの高いヒーロー科に、合格出来たんじゃない?」

 

 

 佐藤の何気ない質問に、名倉は青海苔がついた歯を見せながら笑みを作る。

 

「優秀な講師陣に、今年はオールマイトが加わるんだぞ。 他校のヒーロー科なんか霞むわ。」

 

 友人を呼び出すほど悩んでいた名倉は、自身の選択が正しかったということを強調するような発言をした。尾白が聞いていたら呆れているだろう。

 

 

「確かに、合否判定の映像に映った時は驚いたね」

 

 佐藤は普通科生徒向けに撮影された、キラッキラの映像を思い出す。スーツのオールマイトもカッコよかったなと思っていると、心操が会話に加わる。

 

 

「名倉は雄英体育祭狙いだと思ってたんだがな」

 

 心操がニヤリとしながら、名倉を見やる。普通科の生徒も参加できる、最大のコネ作りの場。そして、現代日本のオリンピックに変わる人気を誇る大会でもある雄英体育祭。その名を出すと佐藤を除く二人の口元が緩む。

 

 

「わかってるじゃないの、心操クン」

 

「クン付けすんな、きもちわりい」

 

 

 佐藤にとっては負け確定の疲れる大会という認識であるが、この二人にとってはどうやら違うらしい。また自分が蚊帳の外になり少し寂しくなった佐藤は、気を紛らわす為に好物の冷凍食品の唐揚げを頬張った。

 

 

「ヴィラン襲撃で休止になりそうだったけど、開催することにしてくれて本当に嬉しいぜ。 今から去年の映像見て作戦立てるぞ」

 

「トーナメントまで残らなきゃ意味ないし、今回は協力してやるよ」

 

 

 彼ら(佐藤を除く)は普通科教室の片隅で、雄英体育祭に向け闘志を燃やす。

 

 

「優勝するのは俺だがな」

 

 

「いや、俺だ」

 

 

 

 

 俺ではないなと、佐藤は心の中で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 名倉の個性はイレイザーヘッドに激弱。

 佐藤くんの下の名前は考えてません(無慈悲)



 書きだめ尽きたので、次の投稿はかなり先です。




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