前回唐突にバトり始めたこの2人、街中で何やってんだ!って思った方も居るかもですが、なんならこの人たちゲームだと大抵街中バトルなので感覚麻痺起こしそうです助けて……。
ではどうぞ。いつもより少し長め?
「カグツチ、《ひのこ》!」
「《つばさをうつ》で反撃だぁっ!」
ジュンは昔からせっかちで、すぐに攻めてくる。 それを読んでさえいれば、実は案外楽に戦えたりする。
「カグツチ、ムクタローに飛び乗って!」
「んなっ!? ありかよそんなん!」
「いやぁ、公式戦じゃないからなぁ……どうだろ」
「ムクタロー、振り落とせ!」
「あっやば、耐えて!」
すぐにのんびりと考える、僕の悪いクセ。 直さなきゃとは思っても、全然直らないのだ。
「2人とも、ここが街中だって事忘れてない?」
2人揃って、ギクッと効果音が付く程肩を跳ねあげた。 バトルに熱中し過ぎて、街中であるという事実をすっかり忘れていたのである。 口の端をひくひくさせながら声のした方を向くと、ジムリーダーであるナタネさんが、満面の笑みで立っていた。 ……米神辺りの血管がビキビキいってるのは、気のせいだと信じたい。 あ、無理? ですよねー。
「あ、あの……」
「……はぁ。 まぁ、今回は苦情も被害も出てない事だし……子供が2人、競い合ってただけ、って言えば聞こえは良いし……うーん、まあ……と・り・あ・え・ず! 今ここでお咎めは無しとします。 それに、2人に会いたがってる子も居るし、ね?」
《とりあえず》お咎めは無しと聞いて一安心。 ……それでもとりあえずだし、ジムではボッコボコにされそうなのが怖いけど。 ナタネさん、怒ったらジムリーダーで1番怖いって噂だし。
……で、会いたがってる子って?
「ほら、いつまでも恥ずかしがってないで」
「え、あ、あぅ……」
ひょこっと顔を出してはいるが……隠れてしまった。 あれ、でもあの顔見覚えあるぞ。 3年前まで、3人で色んな事をして、色んな事で怒られて、色んな事で褒められた時、必ず一緒に居た顔。 今はもう引っ越してしまったが、会える事を楽しみにしていた顔。
「……アイリ?」
「は? アイリって……え? お前、確か引っ越したって……1個先の街じゃねえかよ! なんだよぉ、すぐ会えたんじゃねえかよぉ」
「……えへへ」
笑うと出来る小さなえくぼ、照れた時に頬を掻くクセ、長い間着けていた証として色が落ちてきている髪飾り。 間違いなく、あの時のアイリそのままだ。
「久しぶり、コウキ」
「うん、久しぶり。 あ、そこそこ伸びたねぇ」
「ふふ、そうでしょ? それと、ほら! ピクちゃん、進化したの!」
「おぉー! お前も元気そうだなぁ、んー?」
「ピッピ〜♪」
あの頃と同じように、むにむにとした頬をつついてやると、思い出してくれたのか抱きついてきた。 こいつは、アイリもそうだが僕にも懐いているのである。 理由は分からない。
「そっかぁ、分かってくれたかぁ。 そうだ、ホムラ!」
「わっ、あの時のガーディ! 名前、決めたんだね」
「あはは……中々決まらなかったんだけどね」
「その割には、じーさんに聞かれた時即決だったじゃねーかよぉ、このこのー」
幼馴染みが、再会を喜ぶ和気あいあいとした雰囲気を、完膚無きまでにぶち壊した愚か者が1人。
「おいお前、そのポケモンを寄越せ」
「え……? この子は、私の……」
「我々にはそのポケモンが必要なのだ! 新たなギンガを創り出す為にな!」
「え、あ……」
ナタネさん……はもう帰ってしまった。 街の人……ダメだ、皆関わる気が無さそう。 僕達を、憐れんだ目で見ている。
じゃあどうする? ────決まってる。
「……ギンガ団。 ここに居るピッピは、この子の……アイリのポケモンだ。 必要だって言うなら、それらしい理由を聞かせてくれても良いんじゃないの?」
「コウキ……」
「そーだよ。 理由も無しに、初対面の人に対して『寄越せ』だぁ? 俺達みたいな子供でもそんな事しねーぜ!」
アイリと
「……詳しい理由は、俺も知らされていない。 だが! お前達が思っているようなちっぽけな事では断じてない! アカギ様は! 新たなギンガを創り、神となるお方だ!」
「話し合いが通じる相手じゃ……」
「なさそうだな。行くぞコウキ、踏ん張り所だ」
「……うんっ。 行けっ、ホムラ!」
「ムクタロー、出番だぜ!」
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
バトルを始めて、10分程経っただろうか。 既にバトルをしていた上、夏の日射しも相まって、トレーナーも僕達も疲れきっていた。
「っ……ホムラ、《おんがえし》!」
「ペンタロー、《あわ》だ!」
「《サイコキネシス》で押し返せ、ユンゲラー!」
「まずっ……がっ!」
「あぐっ……つ……」
「……や、やめて……もうやめてよ……」
《サイコキネシス》もそうだが、それぞれの技の威力が高過ぎる。 ……流石は、エスパータイプ屈指の強者って所だ。
「ホムラ、立てるかい?」
「まだやれるだろ? ペンタロー」
ボロボロでも。 泥だらけでも。 醜くても。 手の届かない星を、掴もうとしても。
「「早く逃げ
「っ……!? ピクちゃん!?」
「ピッピィ! ピィ、ピピィピィ!」
「……何、してんだよ?」
「ピクちゃん……?」
今までずっとアイリの言う事を聞いていたピクちゃんが、突然アイリの元を離れ、僕達の前に立った。 何かを必死に訴えている……けど……
「……まさか」
「っ、お、おい! そいつらは、お前を──」
「ピ」
振り向いたピクちゃんの親指は、しっかりと天に向けられていた。 そして、ギンガ団に手を掴まれ、すぐそこにあったビルの中へ入っていった。
「っ……! クソッ、開けろ! 開けろよ! 開けろォ────────ッ!」
「ジュン……アイリも、ホムラも、ペンタローも……ごめんね」
「謝る事、なんか……何も……っ」
───完敗だ。 僕達は、下っ端1人倒せなかった。 ポケモン1匹助けられなかった。 ……悔しい。
拳を道路に叩きつける。 痛い。 アスファルトが熱い。 それ以上に、アイリは辛い。
これ以上、辛くさせたくない。 優しさとか、そういうのじゃなく。 アイリには、笑っていてほしい。
「……ジュン。 僕、ナタネさんに挑んで来るよ」
「お前……っ、友達よりジムの方が大事かよ!」
「違う……そんなんじゃない。 ナタネさんぐらい余裕で倒せない限り……あいつらには、勝てない」
だからこそ、進もう。 抜けてみせよう。 毒のトゲがびっしりと生え揃った、茨の道を。
「……アイリ。 ピクちゃんの代わり、ではないけど……護衛用に、
「……うん。待ってるよ」
「──コウキ、俺も行く。 あいつらのしてる事は間違ってる。 だったら、誰かが止めてやらないといけないだろ?」
2人が無理して笑っているのは明白だった。 けど、そうでもしないと病んでしまいそうなぐらい、僕らの心は抉られた。 もう2度と、そんな事が起きてほしくないから……だから、もっともっと強くなる。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「失礼します。 ジュピター様、ピッピを連れてきました」
「ご苦労。……さて、始めるとしようか」
口角を吊り上げ、ピッピを機械に縛りあげたジュピターは、きっと上手くいくと信じていた。 それと同時に、一抹の不安も抱えていた。
何故なら、
ジュピターは、子供3人からピッピを取り上げる所を見た。あの子らは、何らかの手段で乗り込むか、警察……或いはジムリーダーに助けを乞うだろう。 しかしそうだとして、何故今まで無干渉を貫いてきた? 何か準備していた?
「…………チッ」
「ジュピター様?」
「いや……お前は仕事に戻れ。 それと、内部の見張りを厳重にしろ」
「はっ。 新たなギンガの元に」
下っ端が消えたのを見届けた直後、自分が歯軋りしている事に気付いた。
私は、何に腹を立てているのだ? たかが子供だ、蹴散らしてやればいいではないか。 警察? ジムリーダー? こちらには
「跳ね返してやろうじゃない。 何もかも!」
暗い部屋の中、ジュピターは高らかに笑った。
ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
ジムの皆で、今日の事、化粧品等の話をしていたら、チャイムが鳴った。 来客用ではなく、挑戦者の来訪を報せる方の。
「……あら? ナタネさん、今日の挑戦者って……」
「え? 今日は昼だけの筈だよ? ……おっかしいなぁ、予約制って書いてあるんだけど……はーい、ただいまー」
ちゃんとジムの前に注意書きまでしたのに、読まずに来た輩はどこのどいつだ……と愚痴りながら戸を開けると、そこには真剣な顔をしたさっきの男の子2人が居た。
「どうしたの? ウチが予約制だって事、一応分かって……はいるんだ、じゃあなんで?」
「っ……」
言葉に詰まった所を見ると、何やら事情はあるらしい。 だけど、この様子だと言えないようだ。
「……あー、分かった分かった。 深くは聞かないから。じゃあ、私が帰った後何があったかだけ教えて? 言いたくない所は話さなくていいから」
「……はい。実は……」
2人は、本当に詳細に語ってくれた。 物凄く強かったユンゲラーに、何も出来ずやられた事。 ピッピを守る為、それでも立ち上がった事。 でも、結局ピッピが自分から行ってしまった事。
語っている最中、大人しそうな方──コウキくんは泣きそうになっていたけど、それぐらいに悔しかったのだろう。 無力な自分が。
「ギンガ団に、あの子のピッピが……分かった、取り返して──」
「待っ……待って……ください」
「俺達も、一緒に行かせてほしいんだ」
「……は?」
この子達は何を言ってるんだろう。 たった今、為す術もなくやられてきたばかりだと言うのに。 代わりに行ってほしいのでなければ、何の為に
「無茶言ってるのは分かってる、でも! あいつらがやってる事は、許せないんだ!」
「それに、なんでこんな事してるのか……偉い人に聞ければ、分かるんじゃないかって……」
「はぁぁぁ………」
頭痛がしてきた為、米神を抑える。 やられると分かっているのに、挑むというのだろうか。 希望は? 確証は? 根拠は?
色々出たが、どれも無さそうだ。 では、本当に無策で突入するというのだろうか。
「───この、馬鹿!」
「「っ!」」
「ふざけてる、あまりにもふざけてる! 今さっきやられました、2回目挑みます、そしたら勝てると思ってるの!? 何も成長せず! 何も変わらず! 負けのイメージを貼り付けたまま! トレーナーズスクールで何を学んできたの!? もっかい年少からやり直せ! 何をすべきか、どうすれば出来るか、全部頭に叩き込んでからもっかい来なさい!」
──ああ、
昔から私は、自分を抑えるのが苦手だった。
「お前さんは何かと怒ってばかりだ、もう少し笑ってみな」とイッシュのチャンピオンに言われた事もあるし、エリカさんに「貴女はお節介さんなんですよ」と宥められた事だってある。 ……分かってる。分かってるんだ。 自分が、人付き合いが苦手って事ぐらい。
だけど、ジムリーダーにまでなった。 なってしまった。
嫌と言うほど沢山の人と話し、バトルして、1つ感じた事がある。それは、「人は学ぶ奴も居れば学ばない奴も居る」という事。
何度も挑んできて、何度も同じようにやられる人も居れば、2度目は喰らわない人だっている。 ここで問題なのが、この2人はどちらなのか? 何故、
「……幼馴染みに良いとこ見せよう、って理由なら、私は受け入れないよ。 あいつらは、そんな生易しい理由で返してくれるような奴じゃない」
「悪いけど、そんな理由で行く程の馬鹿じゃない。 僕だって……僕らだって、ギンガ団の強さは知ってる! だけど、僕には」
コウキ君がぽろぽろと涙を流し始めた辺りで、「あ、ヤバい言い過ぎた」と確信────いや、違う。 苦しさなんかじゃない。 彼の目に宿っている光は──後悔、だけではない。
「僕には、助けられるだけの力が無かった!
「……は?」
今まで考えていた全てがすっ飛んだ。
何がなんでもチャンピオンとかいう力押しの信念。うーん凄い。 そんな信念、皆さんは持ったことありますか? 俺は無いです(白目)
ではまた次回。