のんびり巡ろうシンオウ地方(仮)   作:ユキノス

9 / 17
こちらは約1ヶ月ぶりの更新となります、ユキノスです。
前回、シェイミの仕業らしき現象によって救われたコウキ一行。ミツハニー印の甘い蜜、食べてみたいですよねぇ……と思っても、流れる様に発電所へ向かわなければいけません。スト(殴)……ハクタイに行く途中で通りますし。
ではどうぞ。


谷間の発電所、実はね……

「……さぁて、と。朝ご飯も食べたし、行こう」

「ガウッ」

花畑では散々だったが、お爺さんからお礼として《ミツハニー印の甘い蜜》を貰ったのは嬉しかった。と言っても旅には使えないので、宅配のお兄さんに頼んで、フタバタウンに送ってもらったが。

「っと、そうだそうだ。ちょっと寄り道して行くよ」

「?」

首を傾げるホムラだが、花畑であれだけ大暴れして詫びの1つもせずに行ってしまっては、それこそシェイミに恨まれるというもの。という事で、水やりをする。……花と言ったら何したらいいか、これしか浮かばなかったんだよ。

 

 

「ごめんね、シェイミ……せめて、こうさせて」

花屋さんからコダックじょうろを借りてきて─と思ったが、普通に譲ってくれた─、花に水をやっていこう──としたが、全部やろうとしたらかなり大変なのは僕でも分かる。なので、僕らが闘った跡だけでも水をやる事にした。

「……それと、結果的に助けてくれてありがとう」

「フン、これに懲りたらミーのお花畑を荒らさない事でしゅ」

「えっ……!?」

サワサワサワサワ、と花畑の一部が揺れ、何か──とても小さい何かが走っていった。とても小さな足跡から図鑑で調べると、そこにはシェイミの名が記されていた。

「──うん、約束するよ。僕はもう、この花畑を荒らさない。……でも、またいつかここに来るね?」

返事は無かったが、拒否はされないと願いたい。

「……さて、発電所に行ってみようか。今日はフワンテが来るって噂だよ」

ボールの中のホムラ達も楽しみらしい。ニコニコして体を揺らしている。

「おぉーーーーい!」

「ん?」

「良かった、はぁ、まだここに居たか……」

「ど、どうされたんです、そんなに慌てて」

歳も歳だからキツいだろうに、大急ぎで走ってきたお爺さん─《ミツハニー印の甘い蜜》を作っているお爺さんだ─。何か用事だろうか。

「まさか、またギンガ団が……」

「いやいやそうじゃない、キミのおかげで皆逃げてったよ。渡したい物があって……ええと、あったあった。ほら、受け取ってくれ」

「……鍵?おじさん、この鍵僕のじゃ……それにこれ、発電所の鍵じゃないですか!」

「ああ、だがワシはもう歳だ。それに、所長も引退したのに鍵なんぞ持ってても仕方無い。発電所の中を見学するも良し、誰かに渡しても良し、使い道はキミに任せるよ、わぁっはっは」

「は、はぁ……」

……とにかく、発電所の鍵を貰えたのは嬉しい。これで見学に行っても閉まってました、なんて悲しいにも程がある。

 

―*―*―*―*―*―*―*

 

筋肉痛の為、こまめに休憩しながら暫く歩き、ソノオを抜けた先に、今にも泣きそうな女の子が1人でぽつんと立っていた。キョロキョロと辺りを見回しているが、何を探しているんだろうか。……いや、待っているのかな?

「こんにちは、どうしたの?」

「あ、あの……えっと……お願い、私のパパを助けて!」

「……え?」

『助けて』という事は、捕まっている。それは大変だ。

「お父さんがどこに居るか、分かるかい?ゆっくりでいいよ」

「うん……ぐすっ、パパね、発電所で働いてるんだけどね……なんか、よく分からない人がね……」

ギンガ団だ。絶対にギンガ団だ。断言してやる。……あいつら、人を何だと思って……!

「ありがとう、それだけ分かれば十分だよ。僕が行って、キミがパパに会える様に頼んでみる」

「……うん、ありがと」

「だから、キミはソノオタウンで待ってて。少ししたら戻るよ」

それじゃ、と手を振りながら、発電所まで一直線に走る。どうやらギンガ団、盗みだけじゃなく監禁までする様だ。ジュンサーさんが見逃しても、僕が見逃さない。見逃す訳にはいかない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「(……あれ?ギンガ団がポケモンに酷い事した所、見た事あったっけ?)」

恐らくユクシーが関係してそうだ。だが今は発電所へ──

「!! ニャルマー、《ひっかく》!」

「ホムラ、《ひのこ》!」

「ヴニャァァ!」

あっけなくニャルマーを倒し、さあ下っ端を懲らしめようかとしたその時。ガチャバタン!と音を立てて、扉が閉まった。下っ端も中に入ったらしく、中から勝ち誇った様な声が聞こえる。

「はっはー!いくらお前でも、鍵が無ければ入ってこれないだろう!勝負には負けたが、こういう意味では俺の勝ちだ!なぁーっはっは!」

「……言いたい事は、それだけ?」

「……あ?」

お爺さんから貰った鍵で扉を開け、口をパクパクさせている下っ端を睨む。

「ひっ……ま、マーズ様ぁぁ!」

恐らく上司の名前だろうが、そんなの関係無しにスーツの襟を掴む。

「待ちなよ。傷ついたニャルマー、そのままにするつもり?」

「もっ、戻します!すいませんでしたぁぁぁ!」

「全くもう……ポケモンは道具じゃないんだ、ねーホムラ」

全くもってその通り、と言いたげに頷くホムラ──が入ったボールをベルトに留め、マーズという名前らしい上司の元へ行く事にした。一番良いのは、そこにあの子のお父さんが居る事だけど……

「こんにちは、アナタがギンガ団に楯突く子供?」

特徴的な形の赤い髪、1人だけワンピース型のスーツ、下っ端があれこれやっていても何1つしていない。……いや、指示は出しているか。

「……そうだけど。貴女がマーズ?」

「ええ。アタシがギンガ団幹部3人衆が1人、マーズ。発電所のエネルギーを貰いに来たの」

「……目的まで、わざわざどうも。でもね、目的を話されたからって、僕がそれを邪魔しない理由にはならないって事は分かってるよね?」

「勿論。むしろ、アタシたちに逆らう時点でここで引き下がられたらつまらないし。……それはそれとしてさぁ、アナタ中々に可愛い顔してるね」

「それはまたどうも。僕としては、そこで働かされてるおじさんを娘さんに会わせてほしいんだけど」

「うーん、どーしよっかなぁー……私にバトルで勝ったらいいわよ。私達も出ていく。代わりにアナタが負けたら──アタシの子分になってよ。そしたらアタシ大満足よ」

「──!」

悪寒がした、とは正にこの事だろうか。負けるのが怖いから、違う。女性とバトルするのが嫌だ、違う。子分にされた時、どんな扱いを受けるか──違う。

()()()()()()。それが、他の下っ端やジムリーダーとは大きく違う点だった。

「……それじゃあ、外に出ようか。ここだと狭い」

「いいわよ。あー、可愛い子分が増えるの嬉しいなぁー……皆同じ顔なんだもの。ジュピターに自慢しよーっと」

これが、絶対的強者の余裕か。──だから何だ。

余裕は慢心を生む。慢心は敗北を生む。それだけを忘れなければ問題は無い。

「ホムラ、行くよ」

「ガウッ」

「……へえ?珍しいの連れてるのね。行くわよドーミラー!」

ドーミラー。古代から生きているポケモンだが、昔の人はドーミラーを鏡の代わりに使っていたんだとか。

「ホムラ、《ひのこ》!」

「ドーミラー、《ミラーコート》」

「ガァウッ!」

「ホムラ!」

《ミラーコート》は、相手の特殊技を跳ね返す。《ひのこ》は特殊技なので、見事に跳ね返されてしまった訳だ。

「くそっ、しかも風も強い……!」

谷間の発電所は、文字通り谷間にある。そして、谷間はかなり風が強いのだ。だからこそ風力発電が有効な訳だが、戦う上ではかなりハンデをもらう。風上に居るか風下に居るかで、技の出しやすさが格段に違うのだ。

「(どうする、どうする……!ホルスはかなり危ない、ホムラも風を突破出来る程の速さは無い……となると!)戻ってホムラ、代わりに……カグツチ!」

「コァッ!」

「カグツチ、ドーミラーに掴まって!」

「……?」

風上に居るマーズには、こちらの言葉がよく聞こえていない。だが風下のこちらにはよく聞こえる。風上は情報に、風下は行動にそれぞれハンデがある訳だ。

「(でも、カグツチならそれも軽減出来る!……筈)」

「コォアアア!」

「なっ……ドーミラー!《たいあたり》!」

「カグツチ!()()()()()()()()!」

やはり女性に比べて低い声だと通るのか、それともただ単に大きいだけなのかは分からないけど、こっちの動きに合わせてくれたカグツチは受身を取った─正確には僕のそれに合わせてドーミラーを掴んだ─。……となれば……

「カグツチ、ひたすらにやれ!」

「ドーミラー、もう一度ミラーコー……」

ボボボボボボボッ!という音と共に何度も《ひのこ》が放たれ、熱風が風下(こちら)まで来た。

「あっつ……夏にやるもんじゃないなこれ」

「……っ、ドーミラー!」

「………………」

目を(バツ)印にして地面に転がったドーミラーを見てほっと一息。流石に一体だけではないだろうが、それでも一体を無傷で倒せたのは大きい。

「頑張れ、カグツチ!」

「チッ……ズバット!」

「もう見飽きたの来た……カグツチ、ホムラと交代!」

「コァッ」「ガウッ」

で、問題なのがね。ズバット、着地が出来ないんだよ。という事はつまり、風の影響を強く受ける訳。となると自然と近付いてくる訳で──

「ホムラ、《おんがえし》」

うん、まあ知ってた。こうなるの予想ついた。でもごめんね、こっちもあの子に頼まれてるんだ。

「クッ……ああもう、ブニャット!」

「オンミ゙ャー!」

「カグツチ、交代!」

「コァ──」

「《ねこだまし》!」

パンッ!と前足を鳴らしたブニャット。カグツチはそれによって怯んでしまい、少しの間動けない。

「まずっ……」

「《みだれひっかき》!」

「ミ゙ャアッ!」

みだれひっかきが5回、全て命中し、カグツチが吹き飛んだ。

「カグツチ───ッ!」

下で受け止め、状態を見ると傷はやや深いが、オボンの実を食べさせて少しでも傷を──

「グ……ウァ……」

「……?」

治そうとした直前、カグツチの体が光り始めた。

「これは……進化……?のわっ!」

「……これはまた何とも……」

ヒコザルから進化して、モウカザルになったカグツチ。しかし、その息は荒く、白目がある辺りは(あか)かった。




やっと4000字近く来た(白目)。
さてさて、ギンガ団の幹部もそれぞれ性格はゲームと変えております。マーズは面白い事なら首を突っ込みたがるみたいなキャラにしたつもりです。
それと、谷間とは言えあそこまでの強風になるかは正直分かりません(おい)。谷間に行った事が無いので……。

ではまた次回。……マーズ戦は流石に決着つくだろうけど、どこまで進むのやら。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。