そうなん△   作:オリスケ

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第10話

 たき火が揺れる。ぱちんと音が鳴る。

 なでしこが、しきりに足を気にしている。折れた足の、添え木した上の方に指を立て、何度も掻いている。

 ズボンに隠れて見えないが、足は若干腫れて膨らんでいる。膿んでいるらしかった。

 

 

「……これ、ちゃんと治るよね?」

 

 

 なでしこが不安に眉を下げて、それでも笑顔で聞いてくる。

 なんでそんなことを聞いてくるんだ。少し考えてみればいいのに。

 私は火を見ていたい。少しも動きたくない。

 

 

「……分かんないよ。応急処置だってしっかりとできていないし、消毒もできてない。傷から菌が入っていても、どうにもできない」

 

 

 分かんないよ。私は医者じゃないんだから。

 そう言うと、なでしこは小さく謝って、それきり黙ってしまう。

 

 

 なでしこが心配そうに足を掻く。

 かりかり、かりかり、肌が擦れる音が煩わしい。聞いているとこちらまで痒みを覚える。

 思えば、ずっとお風呂に入れていない。膝の上に重ねた手のひらを擦ると、焦げ茶色の垢が爪の間に挟まる。

 体中がべたべたする。何日も着替えてなくて蒸れる。気持ち悪い。かゆい、痒い。

 

 

 こんな状態で風呂に入れたら、さぞや天国に違いない。冗談でもなく、生き返るような心地よさだろう。

 ……なんて。

 考えるだけ、無駄な事だけど。

 

 

 

 

 たき火が揺れる。ぱちんと音が鳴る。

 夜が来る。

 助けは、まだ来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 朝になる。

 

 

 

 味気ないスープは、もうたくさんだ。

 

 

 

 最後の晩餐すら、選ぶことはできないらしい。

 

 

 

 たき火が揺れる。ぱちんと音が鳴る。

 

 

 

 顔が熱い。火に炙られた顔が乾燥し、ささくれ立っている。

 

 

 

 痛い。痛い。生皮を剥がされるようだ。

 

 

 

 けれど、凍えるよりずっとマシだ。

 

 

 

 どれだけ近づいても、手足の凍えは止まらない。

 

 

 

 指先からぱきぱきと、凍り付いて固まっていく。

 

 

 

 熱くて痛いのに、寒い。

 

 

 

 ここから動きたくない。

 

 

 

 お腹が空く。身体を起こすと、空腹まで目を覚ます。

 

 

 

 味の薄いスープじゃ、もう誤魔化されない。

 

 

 

 なでしこがケータイで、私の写真を撮った。

 

 

 

 私はなでしこを酷く責めた。それ以来、なでしこはケータイを開かない。

 

 

 

 苛々する。へらへら笑って。

 

 

 

 早く現実を見るべきなのに。

 

 

 

 身じろぎひとつしたくない。何も感じたくない。火を見ていたい。

 

 

 

 たき火が揺れる。ぱちんと音が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が来る。

 助けは、まだ来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 朝が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たき火が揺れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なでしこが笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は無視する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たき火が揺れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぱちんと音が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 助けは、もう来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たき火が揺れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、ここで死ぬに違いない。

 

 

 

 

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