ネギま!ー副担任は世界最強ー 作:nothing
第1話
2002年10月某日
メガロメセンブリアにあるオフィスの一室から口論が聞こえてくる。
「どうして彼が日本なんかに異動なのですか!秘匿任務でも発令されたんですか!?」
「そうではない…………。上からの指示だ、どうにもできん」
「だからその理由を教えてくれと言っているんです!」
「私も何も聞かされていないのだよ……。ただこの件にはオスティア総督が関わっているかもしれないと聞いた。……それが真実なら従うしかあるまい」
「そんな…………」
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「…………」
件の男、ミコト・カグラ・ホーキンスは人事部から正式に送られてきた辞令を手にしていた。
その本文はたった一行、日本での勤務を命じる旨が書かれていた。
「日本、か」
彼は一言そうつぶやいた。
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麻帆良学園都市
幼稚園、保育園から大学まで、数多くの教育機関が密集し一つの都市を形成するこの街は二つの顔を持つ。
一つは前述した教育機関として。此処に通っている生徒と教員、その他関係者だけで東京都の人口の倍はあるだろう。
そして、もう一つ…。それは、魔法使いとその関係者を管理する組織『関東魔法協会』の総本山だ。
この学園都市にも数多くの魔法使いや関係者が居り、図書館島と呼ばれる巨大図書館に保管されている貴重な魔導書や、強大な力を秘めながらもそれを知らずに暮らす人々を護り続けている。
「ここが麻帆良学園か……」
--麻帆良学園勤務を命じる--という辞令を受け、ミコトは日本へ向かった。
現在、麻帆良学園都市最寄りの麻帆良学園都市中央駅にて学園側の迎えを待っている。通学時間帯には1000人を軽く超える学生達で溢れかえるこの駅も、流石に昼も近いこの時間では人影は少ない。
「おーい。無事に着いたみたいだね」
「タカミチか?お前が迎えか」
「ああ。君と顔を合わせるのも久しぶりだね」
声をかけてきたのはミコトの同僚のタカミチ・T・高畑だ。くたびれたスーツ姿で煙草をくわえている。迎えとは彼のことらしい。
「麻帆良で臨時講師をしているんだったか。似合わないな」
「はは、まあ僕なりに頑張っているよ。早速だけど学園長にあいさつに行こうか。時間は大丈夫かい?」
「ああ、問題ない」
タカミチの問いに軽く頷いて答える。昼時だが腹も減っていないようだ。
それじゃあ行こうか、と言うタカミチに先導され学園長の元へ向かった。
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「ふぉふぉふぉ、麻帆良学園へようこそミコト・カグラ・ホーキンス君」
「これからよろしくお願いします学園長。長いのでミコトかカグラと呼んでください」
「うむ、よろしくのうミコト君」
ミコトはタカミチに連れられて女子中等部にある学園長室に来ていた。
目の前には麻帆良学園学園長及び関東魔法協会理事である
(噂通り妖怪のような見た目だな……)
かなり失礼なことを考える男である。
「して、君には教師として働いてもらいたいんじゃが、ちと問題があってのう……」
「問題、ですか?」
(問題とは何だろうか。日本でも使えるかはわからないが一応教員資格は持っているが)
「うむ。実は──」
話を要約すると、教師になるには一定の実習期間を設けなければならずその実習を指導教諭(今回の場合はタカミチ)をつけて行うことになる。しかしタカミチはあるクラスの担任をしており、時間をあまり割けないためミコトにそのクラスの副担任をやってほしい、ということらしい。
副担任とはいえクラスを受け持つ、ということで仕事量は多少増える。
「はい。問題ありませんよ」
「すまんのう。これで勤務内容の話は終わりじゃが」
(勤務内容の話
「魔法関係の話ですか」
「そうじゃ。この学園には巨大な結界が張られておる。これによって世界樹や魔法書を狙って学園に侵入しようとする外敵を阻んでおるのじゃ。しかし、やはり結界を抜けてくるものも居ってな」
「それらを排除しろ、と?」
「わかりやすく言えばその通りじゃ。君の他にも高畑先生をはじめ、学園広域指導員として実力者に任せておる」
麻帆良学園に侵入を試みる者は多く、膨大な魔力を誇る仙樹『蟠桃』や希少な魔導書、危険度の高い呪術書などを狙っている。だが、タカミチら広域指導員が警戒にあたり、危機を未然に防いでいるのだ。
タカミチは魔法使いのなかでも戦闘ランクA++を誇り、学園内では学園長に次ぐ実力者だ。魔法使い界隈では超のつく有名人で、雑誌なんかの取材を受けることもある。
(実力をある程度知られることになるが……。まあ、さして問題もないだろう)
「問題ありません」
「うむ、期待しておるぞ。と言っても出番はあまり多くないじゃろうが」
ふぉふぉふぉ、と学園長は髭を撫でながら笑う。実際そんな事態は年に1度あるくらいだという。
「ではこれで必要な話は終わりじゃ。改めて麻帆良学園へようこそ」
「はい。これからよろしくお願いします」
「住まいのことなどはこの資料に書いてある。必要なら案内を呼ぶが、どうするかの?」
「いえ、色々と街を見て回りたいので遠慮させていただきます」
資料を受け取り、失礼しますと言って学園長室を出る。実習生として着任するのは主だった行事のない時期にしたいらしく、11月11日だ。それまでは自由に過ごして構わないと学園長は言っていた。
(とりあえず住まいの確認をしてから少し出歩いてみるか)
ミコトは校舎を出て歩き始めた。
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「ふむ、品行方正そうな好青年じゃったのう。少し雰囲気が冷たかったが」
「どうかしましたか学園長?」
ミコトが部屋を出ていってから彼の資料を見ていた学園長が声をあげる。
「いやな、あのような男も珍しいと思ってな」
「…………」
「これまでの経歴を見るに、君に及ばんながらも多くの成果を出しておる。期待できるの」
「ええ、彼は実力もありますし人格的にも信用できますよ」
(昔から騒動に好かれる男だけどね……)
タカミチは笑みを浮かべてかつての仲間と友人を想う。この地でも彼は騒動に巻き込まれるのだろう、と……
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「ここが俺の家か」
ミコトは資料のなかにあった地図にしたがって歩き、当面の拠点となる建物を見つけた。
麻帆良学園都市中央駅から麻帆良学園女子中等部までのびる大通りから、道を一本入った閑静な通りに建っている二階建ての建物だ。二階建てといっても一階部分は元々飲食店だったようで、大部分がキッチンや飲食スペースで占められている。
「とりあえず荷物を整理しよう」
持っていたバッグを肩にかけ直しリビングのある二階へつづく階段に足をかけた。
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「送り忘れは無いな」
リビングに入り、届いていた荷物を開いて中身を確認する。こちらに持ってきたものに不備はないようだ。
荷物の整理と家具などの配置を終えて一心地つく。
「これでよし、と。さてこの後はどうしようか」
(一階の空きテナントが気になるな。喫茶店でも開くか。今度学園長に相談してみよう)
ミコトは独り身ゆえか家事スキルが高かった。料理も和洋中華なんでもござれだ。
「とりあえず学内を散策してみるか。これだけ広大なんだ、なにか面白いこともあるだろ」
かなり行き当たりばったりな計画を立て、散策に出かける。
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(ずっと思っていたがまるでヨーロッパのような街並みだな)
散策を始めて一時間ほど、いくつか面白そうなものや建物に目を惹かれながら思う。
明治期に創設された麻帆良学園は(一部現代的、ともするとSFかと思うような未来的なものもあるが)基本的に洋風な景観をしている。
(さっきなんてビッグ・ベンによく似た時計塔があったんだが……)
その他にもスペイン広場によく似た広場(世界樹広場と呼ばれる)やブルックリン橋によく似た橋、ジョットの鐘楼によく似た鐘楼などがある。
「ん、あれは何だ?島……?」
湖に浮かぶ島のようなものに目を留める。ミコトの立っている陸地とは石橋でつながっているようだ。
「ここが図書館島か。なになに、゛この島は図書館島と呼ばれ明治の中頃学園創立とともに建設されました。二度の大戦中戦火を避けるために世界中から貴重な本の数々が集められました”、か」
石橋の手前にあった説明板を読む。ここには書かれていないが図書館島は蔵書の急激な増加に伴い、増改築が繰り返され現在ではRPGのダンジョンのようなシロモノになってしまっている。また盗難を防ぐために一定階層からはトラップが仕掛けられており探索には相応の覚悟が必要となる。
「要はとてつもなくでかい図書館というわけか。面白そうだな、行ってみよう」
ミコトは面白そうなものを求めて図書館島へ行くため石橋を渡り始めた。
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ミコトは図書館島の一般図書階層(許可がなくても入場できる階層)に入った。見渡す限り書架ばかりが立ち並ぶ、まさに本の森だ。
「これはすごいな。面白そうな本はあるか?」
ミコトは興味を惹かれる本を探して歩き始めた。
(ん?あれは……中学生か?)
目当ての本もないまま書架の間を歩いていると、ある女子生徒が目に留まった。少し前髪の長いおとなしそうな少女だ。
少女は本を取ろうとしているが脚立に乗っても届かないようで背伸びをしている。それでも届いていないが。
「ん~……! ん~……!」
(危なっかしいな。足が震えてるし今にも踏み外しそうだ)
そんなことを考えている矢先、少女がバランスを崩し、足を踏み外した。
「っ!? 間に合え……!」
少女が床に落ちる前に助けようと、魔法で身体能力を高めて床を蹴る。
周りに人がいればその速度に目を点のようにするだろうが幸い人影はない。
なんとか少女が床と接触する前に抱き抱えて事なきを得る。
「ふぅ、間に合ったか。大丈夫か?」
外傷は無いようだが無事であるとは限らない。頭は、胸に引き寄せるように抱き抱えているためどこかにぶつけたりはしていないはずだが。
「あれ? おい大丈夫か?」
もう一度問いかける。少女は呆然として反応がない。しばし様子を見ていると、
「え……? ふあっ!?」
と、声をあげて慌てるように起き上がる。怪我はしてないようだ。
「無事みたいだな」
(え……? え……? 何で抱き抱えられてたの? た、助けてくれたのかな……。お、お礼言わなくちゃ)
「は、はい……、ありがとうございます……」
少女は顔を赤くしながらもなんとかお礼を言う。
ミコトは少女が無事であることを確認するとすぐに立ち上がる。
「もう無理するなよ?」
「は、はい……。あの、えっと……」
少女の返事を聞くことなく、ミコトはじゃあな、と言って去っていった。
(行っちゃった……)
少女はしばらくその場で見知らぬ男の去っていった方を上の空で見つめていた。
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それからもミコトは散策を続け、学園内の地理は大体把握できた。時刻は午後8時を過ぎたくらいで、周囲は仕事終わりだろうサラリーマンや遊びに繰り出している若者で賑わっている。
(腹が減ったな……。どこかで食事でも摂るか、ん……?)
空腹を覚えて辺りを見渡すと、美味しそうな匂いが漂ってきた。周りの人々もその方向に向かっているようだ。
「『
匂いの出所は二両の路面電車を改装して営業している、麻帆良屈指の飲食店と名高い『超包子』である。車両の周りにはテーブルとイスが立ち並びオープンテラスのようになっている。
疲れたサラリーマンや遊び盛りの若者共がカウンター兼キッチンの車両に注文を伝えている。
「繁盛しているみたいだな。料理も美味そうだし、ここにするか」
店の様子や近くに座っている客の食べている料理を見て、少なくともハズレではないだろうと判断する。
周囲の様子からミコトも注文を伝えに車両に向かう。
「すみません。青椒肉絲と炒飯、それと小籠包」
ー はい、かしこまりました ー
囁く様な、しかし不思議と耳にするりと入り込んで来る不思議な声音をしたコックコート姿の少女が注文を受ける。他にも中華風の格好のクリーム色の髪をした少女やロボットのような姿をした少女がいる。
(中学生くらいか? あの中華娘は発する雰囲気をみるに武術家だな。用心棒かなにかだろうな)
ミコトは“学園都市らしく学生も働いてるんだろう”とロボット少女のことなど微塵も気にしていない。(周りの客たちも気にしていない。日常の一風景らしい)
ー おまちどおさまです ー
「ああ、ありがとう」
先ほどの少女から料理を受け取り、パクリと青椒肉絲を一口。
「美味い!こんな料理初めて食ったぞ……!」
「おう兄ちゃん
美味い料理に舌鼓をうっていると、近くの席で食事をしていたガタイのいい若者が声をかけてきた。いかにも武闘派といった外見だ。
「ああ、初めてだ。今日麻帆良に着いたんでな」
「おお新入りか!
「ツイテる? どうしてだ?」
「なんだ知らねえのかい。超包子は麻帆良祭期間以外は月に一度しか営業してねえんだ。まあ店やってんのが中学生だから仕方ねえけどな」
「そうなのか……残念だな。この味なら毎日でも食べたいくらいだ」
「まあ、月に一度の楽しみってやつだな。麻帆良祭期間なら毎日営業してるからな、その時にしこたま食いつくすのよ!」
(かなりご機嫌だな……。この店は愛されているんだな)
ワハハハ!と豪快に笑う若者。周りの客たちも同じような様子で食事や歓談に興じている。テンションが高くなりすぎていて見知らぬ他人と飲み比べなどしているテーブルもある。
「おいおいそこの兄ちゃんたちもこっちで一緒に飲もうぜ!」
「え、いや俺は……」
「お、いいじゃねえか! ほら兄ちゃんも来いよ!」
「お、おいちょっと……」
ミコトは断ろうとするも敢えなくその波に巻き込まれていく。麻帆良学園の夜はまだ始まったばかり──
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ー 大丈夫ですか? ー
「ん、んん……?」
(いつの間にか眠っていたのか?)
ミコトは肩を揺さぶられる振動に目を開ける。周囲には酔いつぶれたのか地面に横たわっている人々が多く見られる。先ほどミコトに声をかけてきた若者も倒れている。
ー 目が覚めましたか? ー
「ああ、なんとか。迷惑をかけたみたいだな、すまない」
起こしてくれたのは調理をしていたコックコート姿の少女だ。
ー いえ、お気になさらないでください。お酒強いんですね ー
「見ていたのか?飲み比べの途中から記憶が曖昧なんだが……」
ー お客さん、最後の一人になっても飲み続けていましたよ ー
「そうみたいだな……。普段は嗜む程度なんだが」
ー ふふ、ほどほどにしないといけませんよ? ー
「肝に命じておこう……。もう帰るよ、ごちそうさま」
ー はい、お粗末さまでした ー
お代を少女に渡して帰途に就く。
(超包子か……。また機会があれば食べに来よう)
ミコトは満足そうに鼻歌を歌いながら夜の闇に消えていった。
ミコト・カグラ・ホーキンス
182cm/90kg 19歳
魔法世界から麻帆良学園に転勤してきた青年。魔法を含めた戦闘技術はピカイチだが、上手く実力を隠して目立たないようにしてきた。
食事や読書といった娯楽を楽しむ質なので、図書館島や超包子の存在に胸を躍らせている。