ネギま!ー副担任は世界最強ー 作:nothing
麻帆良学園に来てから一週間ほどが経った。この一週間は、超包子以外で口に合う飲食店を探したり、図書館島で読書したりと、穏やかに過ごしていた。
知り合いも数人だが出来た。早朝に店の前を通る新聞配達の少女と図書館島の図書委員の娘たちだ。多少会話するくらいだが、最近は打ち解けてきた気がする。
そんなある日、ミコトは世界樹広場に立っていた。
「ふっ……はっ……」
何をしているかというと、体術の鍛練だ。戦闘に不可欠な技術であるために、長年続けてきた日課だ。早朝は人通りもなく、集中できる。
一つの動作の終わりを次の動作の始動に繋げ、止まることなく、それでいて舞うように滑らかに技を連ねていく。
「……ふっ!」
一連の流れが終わると、少しの間動きを止める。そしてまた別の流れに移り、それが終わるとまた動きを止める。これを繰り返していき、すべての流れが終わるまで続ける。次に、どこからともなく長い棒を取り出し、それを振り回していく。武器を使った鍛練に移ったのだ。
「ふっ……! はっ……! せいっ……!」
徒手空拳から始まり、棒術、杖術、槍術、刀術──と、様々な武術を次々に繰り出していく。ミコトはこれらの武術を融合させた独自の戦闘術を扱うため、こうしてひとつひとつの技を磨き、また状況に応じて使う技を誤らないように鍛練を欠かさない。
「ふう……。ところで君は誰かな?」
動きを止めて一息つく。普段ならこの後はクールダウンをして家でシャワーを浴びるのだが、この日は珍客が現れたようだ。
「ん? ワタシアルか?」
独特な口調の少女だ。明るいクリーム色の髪をしていて、中華風の衣装を着ている。
「ワタシは
「古菲さん、ね。それで、どうしてずっと見てたの?」
彼女は、鍛練を始めて1時間ほど経ったくらいにこの広場に来て、ずっと鍛練を凝視していた。
「いや~、とても美しい動きだったからつい。どの流派アルか?」
武闘派らしく、そういったことには勘が働くようだ。素人目には古風な舞にしか見えないのだが。
「よく武術だってわかったね。俺のは我流だから、どこの流派ってわけじゃないよ」
「我流であの完成度……、あなたデキるアルね!」
「そんなに大したものじゃないさ。小さな頃からやっているだけだ」
それから二、三言葉を交わして古菲は立ち去った。彼女も鍛練に励むようだ。
ミコトも、鍛練を切り上げて家へ戻る。
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シャワーを浴び、少し遅い朝食を摂ったミコトは学園長へ電話を掛けていた。一階の空きテナントを使用する許可をもらうためだ。
《君の家の空きテナント? 好きに使って構わんが、何に使うんじゃ?》
「喫茶店でもやろうかと思いまして」
《ふむ、問題なかろう。ただ、いかがわしいことはするでないぞ?》
「はは、やりませんよそんなこと」
《うむ、管理人には話しておこう。三日後くらいに管理人と細かい点について話し合ってくれ》
「ありがとうございます」
通話を終了し、喫茶店の営業の目処が立ったことに安堵し、一息つく。
(料理は好きだし、趣味を活かせる場ができるのは幸運だったな)
この男、この一週間は飲食店巡りと読書以外することがなく、勤務が始まってからもこの無聊が続くのではないか、と内心危惧していたのだ。
(細かい話がまとまったら、食材なんかの買い付けも考えないとな……)
ミコトは今後の展望に思いを馳せる。
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それから二週間ほどが経ち、ミコトの店『Cafe ~
『Cafe ~Ventus~ 』の開店日の客はタカミチと学園長のわずか二名であった。ミコトも静かな店にしたいらしく、それほど繁盛はしなくてよいと言っていた。
やがてこの店が『超包子に優るとも劣らない名店』として噂になるのだが、それはまた別のお話……。
ミコトは店の営業日以外の日は学園都市内の散策などをして11月11日を待った。
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2002年11月11日、ミコトの初勤務の日だ。
現在は各クラスでのHRの時間。ミコトはタカミチとともに生徒達が待つ教室へと歩いていた。
「僕に続いて教室に入ってもらうけど大丈夫かい?」
「ああ、転校生って訳でもないんだ。問題ない」
タカミチはミコトの返答に軽く頷くと、ザワザワと生徒が騒いでいる声が漏れている扉に手をかける。
「お? 先生来た?」
「あれ? 知らない人がいるよ?」
「お兄さん……?」
「あ、あの人……」
「のどか? どうかしましたか?」
「超~、包子まん一つちょーだい」
「一つネ。毎度ありヨ♪」
ガラガラと扉の開く音に気づく者は見知らぬ男の存在に疑問を持ったようだ。教師が入室したことに気づかない者も一定数いるが。
「はいはい、そろそろHRを始めるよ」
生徒達はパンパンと手を叩くタカミチに気づき、ガタガタとあわただしく席につく。
「うん、それじゃあHRを始めようか」
「あの、高畑先生そちらの方はどなたなのでしょうか?」
ピシッと手を挙げて質問をしたのはクラス委員長である雪広あやかである。長い金髪をストレートに下ろし、高い身長とメリハリのある抜群のプロポーションから大人びた雰囲気を醸し出している。ちなみにニックネームは『いいんちょ』。
「ああ、今から皆に紹介しようと思っていたんだ。今日から君たちの副担任になるミコト・カグラ・ホーキンス先生だ。じゃあ自己紹介を頼むよ」
「ああ………。突然のことで飲み込めていないかもしれないが、副担任になるミコト・カグラ・ホーキンスだ。本名は長いので日本名の
これからよろしく頼む──と、締めてミコトは頭を下げる。生徒達は突然の状況にシン……と一瞬静まり──
『えーーーーー!?』
と一斉に驚愕の声をあげる。
「どういうこと!? いきなり副担任って!」
「っていうか若くない?」
「しずな先生はどうしたの?」
「お兄さん、先生なの!?」
「はいはーい! 先生は彼女いるんですかー!」
「特ダネきた!」
教室の中はあっという間に驚愕と疑問の声で騒然となる。一部違った騒ぎ方をしている者もいるが。
「少し落ち着いてくれ。質問には答えるから」
ミコトはよく通る声で放った一言で皆の意識を自分に向け、ざわめきを静めた。 なんとも多芸な男である。
「それで、最初の質問は?」
「はーい! 先生は何歳ですか!」
「19歳だ。次からちゃんと手をあげろよ?」
元気そうな二つ結びの女子、椎名桜子の質問に答え、挙手を求める。
「はい! 先生!」
「……佐々木か。なんだ?」
元気よく手を挙げたのは、桃色髪の女子、佐々木まき絵だ。ミコトは名簿で名前を確かめながら質問を促す。
「彼女はいるんですかー!」
「定番だな……。彼女はいない。はい次」
「はい!」
「朝倉だな。何が聞きたい?」
「神楽先生は何人なんですか?」
「国籍は日本国籍を使っている。生まれはイギリスだ」
「はいアルヨ」
「
「包子まん一ついかがかナ?」
「もらおうか」
「毎度ありネ♪」
といったように、この日のHRはミコトへの質疑応答で終わることとなった。
「もう質問はないか? それじゃあ改めて、これからよろしく頼む」
「じゃあ、切りもいいしこれでHRを終わろうか」
場が落ち着くと再度頭を下げて自己紹介を終える。
タカミチは生徒達に、授業に集中するんだよと言って教室を出た。ミコトもそれに着いて教室を出るが、
「ああ、ミコト。今日の仕事はこれで終わりだよ」
「は……? 終わりってどういうことだ?」
タカミチの言葉にミコトは一瞬停止する。
「免許持ってる君に、授業の見学なんて必要ないだろう?」
この実習は表向きに必要な課程であるため行っているが、教員免許をもっているミコトには不要であるため、学校側も授業参加などの業務は課していない。結局この日の勤務はこれで終了となり、タカミチは職員室へ向かった。
「はあ、仕方ない。帰って店の準備でもするか……」
こうして、ミコトの教師生活が始まったのだった。
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「連絡事項は以上だ。では、これでHRを終わる」
「起立、礼」
ミコトが放課を告げると、日直の生徒が号令をかける。初めの一週間ほどは突然の新任教師の存在に色めき立っていた生徒達も、一月も経てば慣れるというものだ。最近のクラスの話題はもっぱら、すぐそこに迫ったクリスマス関連である。
なにかと多忙な(魔法使いの仕事で、出張と称して学外へ出ることが多い)タカミチに代わっていくつかの担任業務を請け負っているミコトは、半ば担任のような存在になってしまっている。
「神楽先生」
「ん?
ミコトの名を呼んだのは
「今日の放課後はお暇でしょうか」
「あ~……済まない、今日は出張中の高畑先生の仕事を代わりに請け負っていてな。その後は学内の広域指導が入っているんだ。なにかあったか?」
「いえ、茶道部の茶会にお越しいただきたかっただけですので」
茶々丸は茶道部に所属していて、定期的に茶会を開いている。今回はそのお誘いだったらしい。
「済まないな、また誘ってくれ。できるだけ予定は調整しよう」
「はい。それでは失礼します」
きれいに一礼し、絡繰は教室を出ていく。
「さて、残りの仕事を片付けてさっさと帰るとするか」
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自宅へ戻ると、家事などを手早く片付けて広域指導の用意をする。広域指導は三組での交代制で行われ、1班が18時~21時、2班が21時~24時、3班が24時~4時の間、巡回にあたる。ミコトは1班なので遅くとも22時には家に戻れるはずだ。
(あまり遅くはならないだろうが、一応夕食の用意は先にしておくか)
本日のメニューは手軽で美味しいハンバーグ。ミコトはソースや付け合わせにも手を抜かないので、さながら星持ちレストランのような出来映えの料理が出来上がる。
他の料理にも転用できるので、ハンバーグのタネは少し多めに作っておいた。
「これでよし。そろそろ出るか……。外は寒そうだな」
厚手のジャケットをクローゼットから出し、それを羽織って出掛ける。
(そういえばタカミチはデスメガネとか呼ばれてるんだっけ……)
と、同じ広域指導員である友人の異名のことなどを考えながら、放課後の麻帆良学園の広域指導にあたる。
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(何も異常はなさそうだし、騒ぎも起きていないようだな……)
広域指導に出てからしばらく経つが騒ぎなどは見当たらない。そろそろ切り上げようかと思っていると、
「ちょっと、やめてください!」
と甲高い拒絶の声が聞こえてくる。声の方を見ると、四人組のガラの悪い男達が同じく四人組の少女たちをナンパしているようだ。
「いいじゃん。一緒に遊ぼうぜ」
「そうそう、楽しいとこ連れてってやっからさ」
男達はヘラヘラと笑っているが、ああいう輩は自分の思い通りにならなければ力づくでも望みを叶えようとする。
そう例えば───
「おい、早くしろよ」
「チッ、分かってるよ……。おら、来い!」
「いやっ!離してよっ!」
「止めてよ!裕奈から手を離して!」
───言うことを聞かない生意気な小娘を無理やりに連れていく、なんてことは平気でする。
もちろん広域指導員であるミコトが目の前の犯罪行為を見逃す訳もなく、撃退に向かう。
「残念だがそこまでだ」
「あん? なんだ……ごっ!?」
「おいてめえ!何しっ……ぐえっ!」
少女の腕を掴んでいた男に近付き、顎を打ち抜く。一撃で昏倒させ、弛んだ男の腕を剥がして少女を自らの方へ引き寄せる。
少女を胸元で軽く受け止め、後ろから殴りかかってくる男の脇腹に回し蹴りをいれて、沈める。
「え?え?……ひゃっ!?」
「この娘を頼む」
「え……?うわっとと」
急変した状況に着いていけていない少女を、近くにいた髪の長い少女(おそらく友人だろう)に半ば押しつけるように預ける。彼女が戸惑いながらもしっかりと受け止めるのを確認して、残っている男達の片方に近づく。
「ひいっ!?こ、こっちに来るんじゃねえ!」
男は拳を振り回してミコトを遠ざけようとするが、掠りもせずに間合いを詰められる。
「や、やめ……。がっ……」
一撃で意識を刈り取り、襟首を掴んで残り一人に投げつける。
「うおっ!?…………な、何者なんだよお前!?」
「広域指導員の神楽だ。流石に犯罪は見過ごせないからな」
男の誰何の声に応える。男は、ミコトの─痛い目を見たくなければ仲間を連れてさっさと行け─という言葉に仲間を抱えて、冷や汗をかきながら逃げていった。
(やはりこれだけ大きな都市だとあんな連中も現れるんだな……。)
「あ、あの……」
「ん?」
ミコトが逃げていった連中について考えていると、少女たちが声をかけてきた。腕を掴まれた少女は怖かったのか髪の長い少女に抱きついて泣いている。
「助けていただいてありがと……って神楽先生?」
「え、嘘?あ、ホンマに神楽先生や」
「……大河内に和泉か?とするとそっちは……明石と佐々木か」
男達がナンパしていたのはミコトのクラスの生徒達だった。長い黒髪の
「ズズッ……せんせえ?」
「先生何やってるの?」
「さっきも言ったが、広域指導員の仕事だ。お前たちこそこんな時間になにしてる?」
彼女達は、『部活のあとにカラオケに行こう』というまき絵の提案に乗り、先ほどまでカラオケボックスにいたという。
「あまりこんな時間に出歩くなよ? いつも誰かが助けてくれるとは限らんからな」
「うん、ごめんなさい先生……」
「明石はそろそろ泣き止んでくれ……。俺が泣かせたみたいだ」
「だ、だって怖かったんだもん……グスッ」
やはりまだ中学生なので、ああいう経験は恐怖が強く残るのだろう。ましてや裕奈は乱暴されそうになったのだから当然の反応といえる。
ミコトが泣き止まない裕奈に、どうすればいいかと思案していると─くうう─とかわいらしい腹の音が聞こえてくる。
「まき絵……?」
「…………//」
音の出どころはまき絵の腹らしい。アキラが名前を呼ぶと、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。しばしその状態で固まっていたが、
「し、しょうがないじゃん!まだ晩ごはん食べてないんだし!」
といきなり弁解を始める。誰も非難したわけではないのだが。
「クスッ、そうだね。確かに私もお腹すいたよ」
「うちもお腹減ったわー」
「あたしもけっこうお腹空いた、かも……」
アキラたちも空腹なのか、まき絵のフォローにまわる。
「そうだ!先生も一緒にご飯食べに行こうよ」
「あ、それいいやん!」
「うん、賛成」
いつの間にか食事の話が始まってしまっている。しかし、すでに女子中学生が外を出歩くには遅い時間なのだ。ミコトとしては早めに寮に戻ってもらいたいのだが……。
「ねえ先生?この辺で美味しいお店知らない?」
「はあ、この辺には居酒屋しかないからお前達は連れていけないし、もういい時間だ。早く寮に戻りなさい」
「え~!いいじゃんちょっとくらい」
まき絵が食い下がる。アキラと亜子も期待のこもった視線を向けてくる。裕奈は──
「先生……ホントにだめ……?」
「うっ……」
チョンとミコトの袖を摘まんで涙目で上目遣い。偶然の産物だろうが、狙ってやっているなら大した中学生だ。
「はあ……。少しだけだぞ」
『やったー!』
と、ミコトが折れる形で決着がついた。
暴漢に襲われそうだった生徒を保護した、非常に怯えていて帰寮が難しいため落ち着くまで様子を見る、寮にはこちらから連絡を入れる、と他の指導員に報告をする。後半は真っ赤な嘘である。
「じゃあ、お店どうする?」
「それなら当てがある。着いてきてくれ」
『はーい』
ミコトと女子四人はおしゃべりをしながら歩いていく。
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「明石はバスケ部だったか?」
「うん、そうだよ。先生こんど練習見に来てよ」
「あ、先生うちの部活も!」
「佐々木は新体操部だったな。新体操はよく分からないかもしれないぞ?……っとここだ」
ミコトが四人を連れてきたのは『Cafe ~Ventus~ 』だ。ここならお金を心配せずに食事できるし、ミコトが四人を寮に送っていけば事件の心配もない。
「お店ってここ?」
「カフェ……ヴェンツス?って書いとるね」
「ここって喫茶店? 定休日って書いてるよ?」
「大丈夫だ。それと和泉、ヴェンツスじゃなくてウェントゥスな」
ミコトは四人を店に招き入れる。ちなみに亜子は間違いを指摘されて赤面している。英語を学び始めたばかりの中学生では仕方ないので、恥ずかしがることはないのだが(ちなみにVentusは英語ではなくラテン語)。
「ねえもしかしてこの喫茶店って先生のお店?」
「え、そうなん? 神楽先生」
テーブルに座った裕奈がミコトに尋ねる。亜子も興味を持ったようだ。
「ああ、趣味でやってるだけだけどな」
「へ~!なんかすごーい」
「先生お腹空いた~!」
隠す気もないのか、あっさりと肯定するミコト。まき絵は空腹を訴えている。
「いま用意するから少し待ってくれ」
四人を残して、ミコトはキッチンへ向かう。残しておいたタネを使い、ハンバーグを焼いていく。部屋中に香ばしい香りが漂い、料理を待っている四人はゴクリと喉をならす。
「おまちどおさま」
コトリと四人の前にハンバーグを置く。彼女達の目は野獣のようだ。
「わあ~!めっちゃ美味しそう!」
「いただきま~す!」
「うわ、このソースすごく美味しい~」
「付け合わせのポテトサラダと塩パスタも美味しいよ」
上から、裕奈・まき絵・亜子・アキラである。ミコトは四人の反応を見ながら黙々と食事をしている。皆が食事を終えるまでにそう時間はかからなかった。
「あ~美味しかった~」
「先生料理上手なんやね」
「ごちそうさまでした神楽先生」
「お粗末さまでした。ほら、食べ終わったなら帰る用意をしろ。送っていくから」
食事を終えた四人に帰寮を促す。ミコトには四人を安全に寮まで送り届ける責任があるのだ。
「え~。まだいいでしょ~」
「ダメだ。もう遅い時間だろうが」
「まき絵、裕奈、置いていくよ?」
「わわ、待って~」
帰寮を渋るまき絵や裕奈をよそにアキラと亜子は身支度を整える。それを見て、二人はあわてて用意を整える。
ミコトは四人を女子寮まで送っていった。
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女子四人をつれたミコトは、麻帆良学園中等部女子寮の玄関前に来ていた。寮監に広域指導で彼女たちを保護したことを伝え、四人が夜遊びしていたのではないと説明する。
「先生、晩ごはんごちそうさまでした」
「美味しかったよ~」
「ホンマにありがとね先生」
「今後はもっと人通りの多い道を選べよ?それと、あまり遅い時間には出歩かないこと、いいか?」
「うん……。先生、本当に今日はありがとう」
裕奈は目を潤ませながら心からの感謝を言葉にする。ミコトがいなければ……などとは考えたくもないだろう。
ミコトは裕奈の頭を少し乱暴に撫でる。
「まあ、気にするな。じゃあな、早く寝ろよ?」
「うん……!」
「先生おやすみなさーい」
これで、本日の業務は終了。『家に帰るまでが遠足』ならぬ『寮に送り届けるまでが広域指導』であった。
しかし、ミコトの一日は終わらない。
(明日の仕込みしなくちゃな……)
明日も仕事だし、店の営業日でもある。ミコトはなかなか多忙な日々を過ごしているのだ。