レクトは旅がかなり長かったこともあり、新しく入った者たちとはあまり親しくなかったため、この期間で仲を深めていた。手合わせをしたり、食事をしたりと、皆と交流した。
その中で、勝負を挑んできたナツを倒した後、ナツの父親はドラゴンだと聞いた。黒竜の他にもドラゴンがいることを知って、会ってみたいと言ったところ、ナツは喜んでいた。この話はなかなか信じてもらえずにいたようだ。レクトからしたら竜は特に珍しい存在でもないのだが。
また、レクトがここに連れてきた少年達とも手合わせをしていた。ジェラールの天体魔法に、グレイとリオンの氷の造形魔法と、強力な魔法を使いレクトに挑むが、簡単に避けられ、ボウガンを構えたレクトに、睡眠弾を撃たれて眠ってしまったり、麻痺弾を撃たれて痺れたりと全く相手にならなかった。しかし、憧れの男の強さを改めて感じることが出来、皆満足そうな表情だった。
そんな生活を続けて3ヶ月程経ち、レクトはそろそろかと思いマカロフに話をした。
「100年クエストをいくつか受けたい。またしばらく帰れなくなるが許可もらえるか?」
100年クエストはS級魔導士ですら達成できる可能性はほぼ無い。それを複数等まずありえない事だった。しかし、
「まぁお主の実力からすればなんの問題もないじゃろう。しかし、その目、本当にそれだけか?」
レクトはS級魔導士の中でも別格のギルダーツですら相手にならなかった。マカロフの目から見ても世界最強と言える力を持つレクトなら大丈夫と思った。
しかし、その目はなにか大きな決意をしたようなものだった。まるで命をかけた戦いに挑むような。
「流石だな。マカロフの言う通り、俺は100年クエストだけが目的ではない。以前からずっと考えていたことだ。黒竜と戦いたい」
その言葉を聞いたマカロフは言葉を失う。
「100年クエストは10年クエストよりもはるかに難しい。それに挑むことは楽しみだ。だが最近は思うようになった、それだけで満足できないのではないかと。より強い敵と戦いたい」
続けて、
「黒竜とは一度戦ったが、倒すことが出来なかった。リベンジしたい。例えこの命を賭けて戦うことになろうとも」
そこまで言ってマカロフを見るレクト。
マカロフは迷う。親として、ギルドの者が命を失うかもしれない戦いに行くなど、許可できることではない。レクトの実力は信頼しているが、黒竜の強さはレベルが違う。例えるならば天災、まず関わってはいけない存在なのだ。だが、レクトの目、そこに宿る強い意志は曲げることはできないと感じた。
「お主が黒竜と戦ったことがあるという話は初耳じゃな。一つ条件を付ける。命を賭けて戦うと言ったが、死ぬことは許さん。何があろうと絶対に無事にギルドへ帰ってくること。それが条件じゃ。そして、一度目の戦いも含めて、黒竜との戦いをわしの酒の肴に聞かせてくれい」
そう言うマカロフ。無茶な願いを許してくれて、心から心配をしてくれたことにレクトは感謝した。そして必ずここに帰ってくると誓う。
「黒竜のことは皆には内緒にしておいてほしい。無駄に心配をかけたくない」
マカロフはその頼みも聞き入れ、ギルドの者には100年クエストに行くことだけを伝えることにした。
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翌日、レクトが100年クエストに出発するという話を聞いて、ギルドの者達が見送りに集まっていた。レクトが、大陸でもクリア出来るものがほとんどいない10年クエストを、被害を出さずにいくつもクリアし、問題ばかりのFAIRY TAILという印象がなくなっていた。そんな、ギルドの誇りであるレクトが今度は100年クエストへ行くというのだ。複数の100年クエストを受けることを止めるものはおらず、心配もほとんどされていない。それほどレクトは信頼されており、今回の期待も大きかった。
「早く帰って来いよ!」「帰ったら飲むぞ!」
等と言った、すでにクリアすることが決まっているような声がかけられる。
「あぁ、楽しみにしとく。皆も問題ばかり起こさずにしっかり働けよ」
そう言って笑い合い、レクトと周りのメンバーは和やかな雰囲気で会話をしていた。
そんな中、唯一人浮かない表情の者がいた。黒竜の話を聞いたマカロフである。レクトは笑顔で皆と話し、不安にさせないようにしているが、内心ではどうなのかと心配になっていた。そんなマカロフの様子に気づいたレクトはマカロフの元に来て、「信じてくれ」と、ただ一言だけ告げた。
マカロフはその言葉を信じ、明るく送り出すことにした。
「ギルドの仲間は家族。皆お主の帰りを待っとる。必ず帰ってくるんじゃぞ」
「あぁ、もちろんだ」
マカロフの言葉を聞いてレクトは歩き出す。その背をギルドメンバーは期待と信頼に満ちた目で見ながら見送るのだった。
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100年クエスト、その難易度は今までのものに比べるとやはり別格だった。レクトが受けたクエストは3つ。
1つは、陸から離れた海にて、巨大なサメの大群の討伐。1匹1匹の強さもほかのモンスターに比べると桁違いで、それを数十匹倒さなければならない。水中での戦いの大変さ、50m近い巨体に皮膚の硬さ、様々な要因がありこれまで幾多のS級魔道士が犠牲になり、クリアされなかったクエストであった。
2つ目は、大陸の西にある極寒の地で遺跡の調査をすることであった。はるか昔からあるその遺跡は探索に行ってから帰ってきたものが1人もおらず、今もなお謎に包まれた場所だった。過酷な環境に加えて、遺跡の中では猛毒を持ったモンスターや、麻痺毒を扱うモンスター等様々な敵に襲われる。遺跡の奥には今まで誰も手をつけることのなかった黄金が眠っているという。
3つ目は、火山の鉱石の採取である。暑さだけでさほど難しくないようだが、溶岩に囲まれたその場所は、何もしなくても体力を奪われ、炎の魔道士ですら長くは留まれない。加えてここでも、溶岩を泳ぐ魚竜種のモンスターや体がマグマで出来たモンスターなど、変わった魔物で溢れている。そして何より、鉱石をとることが難しい。壁に埋まっているのは間違いなく超希少な鉱石だが、壁が硬く、それらはギルダーツのクラッシュですら簡単には砕けない程。
どれも難易度の高いクエストだが、結果としてレクトはすべてクリアした。水中での戦いは何度も経験しており、慣れた動きで襲ってくるサメを大剣で切り伏せていった。すべて討伐し、平和になった海域はこれまで近づけなかった漁師達から感謝された。2つ目のクエストでは、とあるドリンクを飲んで寒さは一切関係なかった。モンスターも今までに比べると強いのだが、いつも通り無駄のない動きで倒していき、黄金までたどり着くことができできた。お金は特に必要としていなかったため、大量の金をすべて寄付したことで産業の発展に貢献につながり、大陸中から注目を浴びた。3つ目のクエストでは2つ目同様、ドリンクを飲んで暑さを無効化、モンスターについても相手に合わせて水の属性を持った武器で倒すなどして、苦戦することなく進んでいく。そして鉱石は金のピッケルを出し採掘していった。問題なく硬い壁を削り、掘り出していくとどんどん楽しくなっていき、かなりの量を入手していた。昔から荷物はかなり持てていたのだが、この世界に来てから武器と同様に物も別空間に入れれるようになったため、残さず持ち帰った。それらを納品すると、今までにない鉱石に武器屋や宝石店などは大喜びであった。
クエスト達成の報告をするため、評議会を訪れると聖十大魔導の称号を受けることとなった。高難度のクエストをいくつも達成する実力と、大陸への貢献度から選ばれたのである。レクトとしても特にデメリットが無いのであれば良いかと思い、聖十大魔導となった。
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FAIRY TAILにて・・・ギルドの者達は大いに盛り上がっていた。レクトの活躍が大陸中の話題となっているからだ。100年クエストの達成、それによる大陸への様々な貢献、そして聖十大魔導となったことはFAIRY TAILにも伝わってきた。
「流石レクトだ。うちのギルドの誇りだぜ」
「全くだ。俺らも見習わないとな」
そう言って盛り上がる男達。
「やっぱりかっこいいわ」
「ファンクラブ出来そうね」
そう言ったのは女性魔導士である。その手には新聞があり、そこにはレクトの写真が載っていた。聖十大魔導となったことで顔写真を撮られていたのだった。
「やっぱりレクトさん凄い。また手合わせしてもらいたいな。私の実力を見てもらえばきっと・・・」
「私の成長した姿を見てもらわねば。今なら1人の女性として意識してもらえるだろう」
「アンタなんか見てもらえないよ。レクトは私みたいな女がタイプなんだから」
レクトがクエストに出発して数年、他の魔導士以上にレクトを尊敬し、思いを寄せていた少女達も成長し、今では立派な女性になっていた。相変わらずレクトの話になると喧嘩になるが・・・
「ハハハ、あんたらはまだまだガキじゃないか。レクトはきっと私に会うのを楽しみにしているさ」
そう言うウルに対して、
「レクトは若い女の方が好きなんだよ!」
言い返すミラ。このやり取りも昔と変わらなかった。
騒がしいギルドだが皆その顔は笑顔である。憧れ、目標、想い人、それぞれレクトに対する思いがあるが、皆が尊敬しており、帰りを楽しみにしていた。クエストをクリアしたということはそろそろギルドに戻ってくるだろうと考え、帰ってきたらどうやって迎えようかと考えているのだった。
そんな中、マカロフだけは険しい顔をしていた。100年クエストをクリアしたことは嬉しく思っている。ギルドの家族が偉業を成し遂げたのだから嬉しくないはずがない。だがそれは、これから黒竜に挑むということを示している。信じているがやはり不安はぬぐい切れない。
「必ず帰ってくるんじゃぞ」
そう呟いて、心の中で無事を祈るのだった。
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評議会を出たレクトは目的に向かって動き出す。100年クエストを行う中で黒竜の情報も集めていた。2つ目のクエストで遺跡の奥深くを進んでいる時、黒竜について描かれた壁画を見つけた。そこから読み取れる情報、また自分で集めた大陸中の情報と合わせて黒竜の場所を予想し移動していた。山を越え、森を抜け、ひたすら歩き続けた。自分の力をぶつけたい、そしてリベンジを果たしたい、その思いは目的の場所に近づくほどに強くなっていた。そして、とある場所に着いた。
先程まで歩いていたジメジメしていた洞窟とは一変、広大な土地が広がっていた。一面に茂る緑の草原に色鮮やかな花が咲き誇る。そんな美しい光景を前にしても、レクトの目にはそれらは一切入っていなかった。
レクトが見つめるのはそんな美しい景色の中にいる巨大な黒い生物。1度しか会っていないが見間違えるはずがない。この時を待ち望んでいたのだから。
「久しぶりだな。こうやって目の前にすると、やはりお前は他のモンスターとは次元が違う。今度こそは勝たせてもらうぞ、アクノロギア」
そう黒竜の名前を言って睨みつけるレクト。古龍と呼ばれるモンスターから作られた防具に長く細い剣を背負ったその姿は、黒竜に比べると遥かに小さいが凄まじいオーラを放っていた。
それに対してレクトを見つめる黒竜も強いプレッシャーを感じさせる堂々とした佇まいである。その姿には、一切の油断がなく、自分が認めた人間を全力で倒すという意志が表れていた。
ガアアアアアアアアァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
黒竜が咆哮をあげたのを合図に、両者は動き出した。黒竜はその巨体による圧倒的な力を武器に、レクトは背負った剣に手を添えて。
今、再び世界最強の竜と人類最強のハンターがぶつかった。