劇場版とある魔術の禁書目録 プロジェクトエンデュミオン~その奇跡は誰がために~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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拙い文ではありますがお付き合いください


チャプター1

道端を三人の人影が歩いていく

一人はツンツン頭が特徴的な少年で、もう一人は割かし大きな安全ピンで服を止めている異様なシスターであり、最後の一人は乱雑に切られた髪を掻きながら二人と歩いている

 

名前はそれぞれ上条当麻とインデックス、そして鏡祢アラタ

当麻は神の奇跡さえも打ち消す右手を持っており、インデックスは一度見たものを忘れない完全記憶能力を所持し、さらにアラタはクウガという仮面ライダーへと姿を変える力をそれぞれ持っている

 

「なぁインデックス。ハンバーガーじゃダメなのか?」

「ダメだよ当麻。昨日の夜はすっごくひもじい思いをしそうだったんだから。そうじが来てくれたから事なきを得たけれど」

 

そんな会話をしている当麻とインデックス

華奢な見た目に反してインデックスはよく食べる

その片鱗をアラタはつい最近に見に感じた

見ていて気持ちいい食べっぷりである

 

「仕方ないだろ…」

 

言いながらどこか空を見つつ現実を軽く逃避

 

「晩御飯を忘れちゃうとね、存在までも忘れられたような気分になるんだよ。ね? あらた、スフィンクス」

 

「同意を求められても…」

 

アラタは苦笑いをすると同時に、インデックスの胸元にいる三毛猫のスフィンクスがなー、と鳴く

 

「…はぁ。了解、好きなだけ食え、ったく」

「え!?」

 

思わず変な声が出るくらいアラタは驚いた

そんな言葉を聞いたインデックスは大きく目を輝かせる

 

「ホント!?」

「あぁ…二言はねぇよ」

 

そんな事を言いながらテクテクと前を歩く当麻

思わずアラタは彼の近くに歩み寄り小さい声で

 

「…大丈夫かそんな事いって」

「あぁ。実は結構なお金持ってきたんだ。今日ぐらいは大丈夫だよ」

 

そう言いながら彼は苦笑いする

しかし眼はあんまり笑ってなかった

と、一つの電光掲示板がアラタの目に入ってきた

その掲示板にはオービットポータル社の社長であるレディリー氏の姿が映し出されていた

同時に宇宙エレベーターに関する情報も映し出される

 

ちょうど同じように見ていたインデックスがふと呟いた

 

「ねぇとうま、あらた。宇宙エレベーターって―――あぷ」

 

そんなインデックスの言葉は突然止まった当麻の背中にぶつかって遮られた

 

「むー、とうま?」

「インデックスさん? …あなた完全記憶能力があるのに何を言ってるのですか」

「え?」

「あれだよインデックス」

 

インデックスはアラタが指差した方向へと顔を向ける

その方向に見えるのは天までそびえるように建設されている大きい建物―――宇宙エレベーターがあった

少しそれを見てインデックスはぐしぐしと両目を擦るようなアクションをした

 

「ねぇねぇ、今までもあんなのあった?」

「な! あったよありましたよ! 科学が絡むとホントにダメだなインデックスは!」

 

そう言われてなんとなくアラタもその方向を見て当麻の説明をBGMに怪訝な顔をする

…あったかなあんな建物

 

なんでも発表は最近らしく、学園都市でなければ実現不可能なスピードで建設されていったらしい

 

「むむ…、とにかくすごいってのはわかったよ。でさ、とうま。…宇宙えれべーたーってなんなの?」

 

その言葉にハァ、とため息を吐きながら説明していく

 

「簡単に言うとだな、ロケットとかそう言うのを使わなくても宇宙に行けるようにしたのが、あのエレベーターなんだよ」

「おー…。科学サイドはバベルの塔でさえ現実にしてしまうんだねぇ…」

 

そう言って目を輝かせるインデックス

宇宙エレベーターを見つめているインデックスの背中を見ながらアラタは当麻と話を始めた

 

「けどやっぱり最近発表されたとしても普段あれがあったなんて信じられないんだよなぁ」

「ちょ、アラタまで何言ってんだよ。確かに俺もそのこと聞かされるまで半信半疑だったけどさ」

 

どうやらそんな違和感を当麻も感じていたようだ

確かに仮に検察途中であってもあんなに高い建物だ、建設途中のものが見えるはずなのだが

 

そんな事を考えて、ふと耳に音楽が聞こえてきた

 

 

~グローリア~

 

視線の先には人がたくさん集まっていた

多くの人垣をくぐってインデックスを見やすい位置に誘っていく

 

「この辺かな?」

「だな。ここからならよく見えるぞ」

 

インデックスは二人に誘導されてその音楽を奏でている人を見た

その人は自作したのか、ピアノのような楽器を用いて歌を歌っていた

そこでふと、アラタは唐突に思い出す

あの時美琴と共に助けた時の彼女はまだ機材がなくアカペラだったのだ

恐らく必死に頑張ってお金を溜めて購入したのだろう

 

「へぇ…上手いな、彼女」

「あぁ。前よりさらに、な」

「え? 知ってるのか?」

 

当麻の言葉にアラタは頷きながら

 

「まぁスキルアウトに絡まれてるとこを美琴と助けただけだけどな。その時も歌ってたんだ、彼女」

「なるほどなぁ…」

 

アラタの言葉に頷きながら再び当麻はピアノを弾きながら歌を歌う彼女を見た

 

澄んだ声から繰り出されるのはまさしく美声と言って謙遜ないほどだ

 

 

そんな彼女の歌声はストリートライブだけでなく、ネット上にも広まっている

 

「〝八十八の奇跡〟? …そう言えばそんなのもあったね」

 

レストランAGITO店内にて

 

御坂美琴はドリンクバーにコップを置き、ボタンを押す

最近ドリンクバーも店内に実装されて汎用性が増してきたとは翔一の弁だ

 

「はい、三年前です。あのオリオン号事件で、スペースプレーン計画が凍結されて、宇宙エレベーター建設が本格的に始まったらしいんです…!」

 

そう力説するのは初春飾利である

初春は席で待っている人たちの分を置いてジュースをコップに注いでいく

注ぎ終えると彼女はコップを持って自分たちの席へと歩いていく

 

「なんと言っても世界初の宇宙エレベーターですからね。おまけにこの学園都市に建設する困難と苦労は、赤道直下に作るのに比べてもう何倍もあるんです。その苦労を乗り越えて完成させたのが…あの〝エンデュミオン〟なんです!!」

 

こういったことに関すると初春はヒートアップしていく

彼女は窓の外を見ながらうっとりとしつつ

 

「その姿はもう…空にかけのぼる天の橋立…美しいですよねぇ…」

 

「はは…そうね」

 

苦笑いを浮かべつつ、美琴はそれに肯定する

そこでふと、同じ席にいる二人に視線を移した

 

そこにいるのは佐天涙子と神那賀雫の二人だ

二人は一つのイヤホンをそれぞれ一個ずつ付けており、音楽を聞いていたのだ

 

「あ、えっと…それ、何聞いてるの? 佐天さん、神那賀さん」

 

その視線に気づいた二人はイヤホンを外しつつ美琴に向けて

 

「これですか? ARISAっていうネットやストリートライブで活躍してるアーティストなんですけど」

「すごい人気なんだよ? 私も佐天さんに勧められてファンになっちゃった」

 

そう言って二人は笑顔になる

初春もさっそくARISAについてノートパソコンで検索を始めた

そんな彼女を横に、佐天は美琴に向かって顔を乗り出す

 

「これは噂なんですけど、ARISAの歌を聞くと良い事が起こるって言われてるんです!」

「へぇ? そうなんだ?」

 

近くにいる神那賀は美琴の方へと動かしつつ、イヤホンを差し出した

 

「噂が真実かはともかく、聞いてみなって。いい歌だよ?」

 

神那賀に促されて彼女からイヤホンを借り、耳につけ音楽を聞く

イヤホンから流れる曲を美琴はふと思い出す

 

「…おりょ?」

 

この曲と似たような曲を美琴は覚えていた

あれはいつだったろうか…確かその時はアラタと一緒だったはずだ

 

「?」と怪訝な顔をして佐天と神那賀は顔を見合わせる

その時検索を終えた初春がノートパソコンをこちらに向けて動画を再生し始める

 

「はい、これですよね?」

 

その動画に映る女の子を見て美琴は確信した

 

「あぁ…やっぱりあの子だ」

 

何気なく呟いたその声にえ、と神那賀と佐天はフリーズした

 

「み、御坂さん! ARISAと知り合いなんですか!?」

「聞いてないよ! いつの間にー!」

 

思わず二人の剣幕に美琴はちょっぴり押され気味

そんな三人を見て初春はパソコンの画面を見つつ、ふと窓の外を見た

そして―――

 

「ヒィッ!?」

 

思わずそんな声を上げてしまった

否、上げざるを得なかった

その声に釣られて美琴と神那賀、佐天は思わず窓の外を見た

 

そこには、どういう訳だか黒いオーラを纏った白井黒子の姿がそこにあった

彼女はある事件で怪我を追ってしまい、車いす状態だった

顔を窓にこすりつけ、若干愉快なことになっている

 

口の動きを読むと、お姉様ァァ、と僅かに濁点気味に言っているような気がする

そして彼女は空間転移をして―――あろうことかテーブルの真上に飛んだ。しかも車いすごと

 

重力に惹かれ、テーブルに落ちる前に初春はノートパソコンをその悲劇から守るべくそこからどかした

そしてドスンッ!! という大きな音と共にテーブルにダイナミックに着地

これが俗にいうダイナミック入店か

 

車いすを操作し、美琴らの方へ顔を向ける

 

「こんな所で何をなさっていますのお姉様!!」

 

パソコンを守りつつ、初春が口を開く

 

「し、白井さん…まだ入院していたはずじゃ」

「半日早く許可が出たからお姉様やお兄様たちを驚かそうと思っていたのですの!! でしたのにまさかこちらがびっくりすることになるなんて…!」

 

思わず剣幕にたじろぎつつ、美琴はイヤホンを外す

 

「かくなる上は―――わたくしも―――!」

 

「黒子ちゃん」

 

「―――はっ!」

 

黒子の声を遮ったのはこのレストランAGITOの店長―――立神翔一である

 

「…アラタくんの友達でも、流石にこれは看過できないよ俺は」

 

普段温厚な彼が僅かにこめかみをひくつかせるのを美琴は感じていた

そんないつも通りな光景に、初春ははふぅ、と息を吐く

 

「あ…あの、その」

「せめて入口から来たなら大目に見ようかなっと思ってたけど。…流石にそれはいけないんじゃないかな」

 

あぁ、翔一の背中にアギトが見える

珍しく黒子を説教する翔一を尻目に、美琴はもう一度、イヤホンをつけてみた

 

やがて彼女のストリートライブは終わりを告げる

彼女は徐に立ち上がり今まで自分の歌を聞いてくれた人たちに感謝を述べる

 

「ありがとうございました!」

 

拍手喝采が響く中、やがて人垣も散っていく

その場に残されたのは当麻とインデックス、そしてアラタの三人となった

ピアノのチューニングをしているであろう彼女にアラタは声をかける

 

「さらに上手くなったな」

「え? …あぁ! 貴方はいつぞやの!」

 

彼の顔を見て笑顔になる女の子

そんな笑顔を見て、ふと背後にいるインデックスに視線をやった

 

彼女は両手を上にあげながら拍手を未だに送っている

そんなインデックスに当麻も小さく笑みを浮かべる

 

「この子も君の歌を好きになったみたいだな」

 

アラタにそう言われ女の子はより一層笑顔になる

 

 

「ありがとう。そだ、あの時名乗ってなかったね、私は鳴護アリサ―――」

 

そう言って少しアラタを見たあと、インデックスに歩み寄ろうとして、ケーブルに足を引っ掛けた

 

「あっ!?」

 

見事に態勢を崩し、前のめりに倒れそうになるのを上条当麻が受け止める

何とか踏ん張ろうとするが、勢いが強かったのか当麻はアリサを受け止めたまま見事に背中を打ちつけた

 

「いてて…あ」

 

状況が状況ゆえ

当麻がアリサを抱きしめたようになってしまい、頬を染める

 

「ご、ごめんなさい…っ」

 

アリサも体制を整えようと顔を上げる、が目の前には当麻の顔

二人はどことなく見つめ合ってしまい

 

「とーまー…!」

 

そんな彼に一匹の狂犬が歩み寄った

インデックスである

思わず当麻はアラタに助けを求め―――

 

「グッジョブ」

 

思いっきりサムズアップで返された

何をグッジョブなのだろうか、と思う暇もなく

 

 

 

「ぎゃあああああああああああっ!!」

 

 

 

晴天の下、上条当麻の叫びが木霊した

 

 

「本当に凄かったよ! 感動したんだよ!! ねぇ、とうま! あらたっ!」

 

一通り当麻にかみついて落ち着いたのか、彼女はアリサを称賛する

褒められたアリサはそういったことに慣れていないのか、顔を真っ赤にして照れていた

 

インデックスにアラタは小さく頷いて同意する

その後、アラタは当麻へと視線を移した

向けられた当麻はゆっくりと首を動かし、アリサの方を向いた

余談だが、彼の顔にはいくつかインデックスの歯型がついていた

 

「俺は歌とかよくわかんないけど、それでも凄かったってのは伝わったよ」

 

そう言って当麻は徐に携帯を取り出し

 

「お前の曲。携帯に全部落としたんだぜ」

「おぉ、早いな当麻。俺はCDを貰おうかなー」

 

アリサはほんのりと顔を赤らめる

こういった真正面からの賛辞に彼女は慣れていないのか終始照れっぱなしである

 

「あ、ありがと…。気に入ってもらえると…嬉しい、かな」

「フフ…こう見えても私はちょっと歌には厳しいんだよ。だけどアリサのは本物だよ! 詩にスペルを乗せたりしてないのに、あんなに皆を虜にするんだもん」

「? すぺる?」

 

さらっとやばいワードをブチ込んだインデックスの口を慌てて当麻が抑える

そしてそんな二人をフォローするようにアラタが口を開く

 

「い、いやぁ、すっごく透き通った歌声でさ、一瞬テレパスかなんかだと勘違いしちまったよ!」

 

後ろの方ではじたばたするインデックスにそれを抑えようと奮起する当麻

…いや、もう負けたかもしれない

何故ならじたばたという音ががぶがぶという咀嚼音に変わったからだ

 

「はは。それはないかな、私無能力者だし」

 

笑み交じりに彼女は言った

当麻はインデックスにかじられつつ

 

「? そうなんだ?」

 

と返答した

確かに彼女の歌声はそういったものに頼るのではなく、それ相応の努力が生み出したものだろうとどこか感じていた

 

「うん。前は悩んだこともあったけれど、今は少し感謝してる…かな?」

「感謝?」

 

アラタはその疑問を口にする

うん、と彼女は頷きながら

 

「もし能力とかあったら、そっちに頼ってたと思うし。それ以前に、歌ってなかった気がする」

「…そんなもんなのか?」

 

当麻が聞き返す

いつしか咀嚼をやめていたインデックスも彼女の話を聞いていた

 

「うん。私ね、勉強もダメだったし、唯一出来た事が歌を歌う事だったの。だったら歌おうって、その為なら何でもしようって!」

 

語る彼女にいつしか三人は引き込まれていた

 

「いつか大きな場所で…大勢の人の前で歌えたらいいなって…、それが今の私の夢かなって!」

 

彼女の背後にはいつしか後光が射していた

いや、別にこの場所は光が射すところではない、むしろ日陰だ

否、場所なんてどうでもいい

少なくとも、その輝きは三人には眩しかった―――

彼女は絶賛花道をオンステージしているじゃないかっ

 

「と、とうま! あらた…! ありさが、ありさが眩しいんだよ!?」

「神々しい! 筆舌に尽くし難しっ! 普段の俺たちの日常が荒んで見えるぅ!」

「すっごく、すっごくいい子じゃないかっ!」

 

思わずその眩しさから目を背けようと三人は手を使って顔をガードする

そんな眩しさから身を守ろうとしていると、アリサの携帯が鳴った

? と怪訝な顔をしながら三人は急いで携帯の画面を見るアリサを見守る

しかし、気を使っているのか、彼女はまだ電話に出ない

 

「…あの、いいかな?」

 

ホントにこの子はいいこだ、と当麻と二人内心思いつつ、「どうぞ」と答える

 

その返事を受け取ってようやくアリサは電話に応答した

どこかと打ち合わせかなんかしているのだろうか、「はい」や「そうです…!」と言った返事が聞こえる

 

「…えぇっ!? ほ、本当ですか!!? あ、ありがとうございます…!!」

 

一体何の話をしているのだろう、と思いつつ三人はとくに意味もなく顔を見合わせる

やがて電話の相手と話を終えたのか、携帯の通話ボタンを切って、ゆっくりとアリサはこっちを見た

 

「…オーディション、受かっちゃった」

 

言っている本人も信じられないと言った表情で呟く

そして聞いているこっちも何を言ってるのか最初は分からなかった

かろうじて聞き取れたのは、オーディションという単語と、受かったという言葉

その二つから推測するに

 

「私、デビュー出来るんだって!!」

 

その答えを導く前に彼女自身が答えを言ってくれた

そう、早い話が、プロデビューである

 

「…え!? てことは、テレビに出れるのか!?」

「す、すげぇよアリサ! なんかもう、すげぇとしか言えない!」

「え? テレビ? …とゆうことは、カナミンと同じになれるの!? すごいよっ!」

 

思わずインデックスはアリサに歩み寄ってその手を掴み、その喜びを共感する

彼女が言ったカナミン、というワードにアリサはちょっぴり怪訝顔をしていたが

因みにカナミン、とはインデックスが見ているテレビアニメの主人公である

 

「これはお祝いしないといけないよね!」

「う、うん…?」

 

思わず彼女はよくわからないで頷いていたのだろう

さらにインデックスは続ける

 

「そうだ! 私たちこれからごはん食べに行くんだよ! ありさも行こうよ!」

 

あ、と当麻が反応するがもう遅かった

 

「え? で、でも―――」

「いいよね!! とうまっ!」

 

そう言うインデックスの瞳はギラリと輝いて見えた

これは断ったらどうなるか、想像しやすいもののやつだ

 

「…俺も、金出すから」

「すまねぇ、アラタ」

 

肩をがっくり落としながら改めてあんなコト言わなけりゃよかったと後悔する当麻だった

 

◇◇◇

 

唐突に場所は変わる

そこは黒鴉部隊と呼ばれる治安維持部隊の訓練施設である

その訓練をコーチしているのは、名護慶介と呼ばれる人物である

 

「…それにしても、最初彼がコーチを依頼してきた時はちょっと戸惑っちゃったわ」

 

その高台から黒鴉部隊の訓練を見下ろすのは、オービットポータル社の社長、レディリー・タングルロードである

パッと見の外見はただのゴスロリの女の子にしか見えないが、倒産寸前まで追い込まれたオービットポータル社を買い取り、宇宙エレベーターを開発にまでこじつけた若き天才社長なのだ

 

「そうですね。それで面白半分で採用したら、割といい指導するんですもの」

 

その隣に佇むのは社長秘書である女性、水城(みなしろ)マリア

彼女は、かつての研究員である

生きながらえた彼女はレディリーに拾われ社長秘書という役割を与えられたのだ

そしてもう一つ、彼女はあるシステムの装着者でもある

 

「貴女も大丈夫? 例の彼女の保護任務、貴女にも出てもらうけど?」

「問題ありません。試運転にも名護さんに付き合ってもらいましたし、調整も完璧です。後は私次第…」

「そう。期待しているわ」

 

レディリーの呟きにマリアは僅かに礼をして答えた

 

一方、訓練している黒鴉部隊

訓練、と言っても一人一人が精鋭なのこの部隊では名護直々に一人ずつ組み手をして鍛えていくスタイルを取っている

 

一通り訓練を終えた名護慶介は一人の人物を呼び止めた

 

「シャットアウラ君」

 

呼び止められた女の子は長い黒髪をたなびかせ名護の方を振り向いた

改めて彼女の名前はシャットアウラ・セクウェンツィア

名護がコーチしている黒鴉部隊のリーダーであり、人望も厚い名護も注目している人物だ

 

「なんでしょうか? 名護さん」

「いや、君用に調整されたイクサナックルが完成した。それを渡そうと思ってね」

「! 完成したんですか?」

 

小走りで駆け寄る彼女に名護はベルトとナックルを手渡す

本来、イクサナックルは白と赤がベースカラーであるが、彼女に渡したナックルは白い部分が黒鴉部隊をイメージした黒色へと変わっており、シャットアウラ用にいろいろと調整を加え完成したのがこのイクサナックル(ブラック)なのである

 

「あぁ、君の能力に合わせてカリバーにはパレットを撃つシステムをつけさせた。正直能力とか俺には分からないが、君なら何の問題なくイクサを使いこなせるだろう」

「ありがとうございます。わざわざこのようなものを制作していただいて、本当に感謝しています」

 

正直に言って彼女は少々融通が利かないところがある

しかし部下の面倒見はよく、それでいて信頼も厚く黒鴉部隊の隊員たちは彼女の人柄に惹かれている

実に〝最高〟な部隊だ

 

「それで、今日の任務ではあるが、そこで試運転も兼ねることになるかもしれない。構わないか」

「えぇ。望むところです」

 

そう言って彼女は手に持つナックルを握りしめる

 

「わかった。では任務の時まで、身体を休めなさい」

「えぇ、では失礼します」

 

シャットアウラはその場で軽く一礼をすると部下の所へと走って行く

その背中を眺めて名護はちらり、と高台で社長秘書と会話しているレディリー氏を見やった

 

(…レディリー・タングルロード。事前情報では魔術師の可能性ありという事らしいが…さて)

 

そして名護はぐ、と視線を険しくする

彼の視線に気づいてか、もしくは初めから気づいていたのか彼女は僅かに名護と視線を交わし―――小さく笑んだ

 




劇場版での目標

なるべく本編での登場ライダーに見せ場を作る


仮面ライダー鎧武を出す(あくまで目標)

※名護慶介となってますが仕様です(けど名護さんで間違いないです)
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