劇場版とある魔術の禁書目録 プロジェクトエンデュミオン~その奇跡は誰がために~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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どうも遅れました
ごめんなさい
しかもこの出来ですよ
重ねてごめんなさい

※例の如く以下略
・黒川陸姫(仮面ライダーレンゲル)

誤字脱字ありましたら報告ください

ではどうぞ


チャプター6

ふと、目が覚めた

 

シャットアウラはのしかかるような圧力で目が覚めた

もぞりと身体を起き上がらせようとすると妙に動きにくい

そしてふと、その重い原因を見た

 

原因は二人いた

一人は上条当麻

自分を守ろうとしてその身体を盾にしようとして庇ったのがよくわかる態勢で自分にのしかかっていた

もう一人は鏡祢アラタ

逆に彼はそんな当麻を守ろうと…いや、その態勢から見てみると彼は自分を含めて二人守ろうとしたのだろうか

 

(なんにせよ、お人よしな連中だ)

 

シャットアウラはそんな事を思いながら両手を動かしてその下からはい出ようとして―――気づいた

それは鏡祢アラタの頭―――自分たちを瓦礫から守ったのだろうが、肝心の己の身体は全く守れていないではないか

そう、彼の頭からは血が流れているのだ

恐らくとうまとシャットアウラを守ろうとしたとき、瓦礫が彼の頭を直撃したのだろう

脳を震わせたからかで気を失っているのか、アラタは目を覚まそうとしない

 

「う、うぅ…」

 

一方のもう片方の少年は気が付いたようだ

彼はゆっくりと両手を地面について起き上がるとアラタの存在に気づいた

同時に、彼の頭の怪我にも

 

「あ! アラタ…、お前―――」

「変に動かすな。容体が悪くなる」

 

シャットアウラはそう手で制して徐にハンカチを取り出すと彼の頭に巻きつけて簡単な止血を施した

そして今度は当麻へと視線を向けてアラタを背負いつつ、立ち上がった

 

「お前、歩けるか」

「あ、あぁ…」

 

ついて来い、と彼女は当麻に言って歩きはじめる

 

「あ、おい待てよ!」

 

一方で当麻もそんな彼女の後ろを追いかけた

 

 

一方こちらは伽藍の堂にいる留守番組

つつがなくクリーニングから帰ってきた幹也と説く何でもない話をしながら燈子やアラタの帰りを待っていた

 

「ところでさっき来た人、誰なんだろうね」

「さぁ? 多分橙子さんの友人だと思うんだけど…」

 

唐突に先ほど訪ねてきた男性の事を鮮花はしゃべりだした

鮮花もそこまでの年月は生きてはいないが、あの人はいかにもなナイスミドルという単語がばっちり似合う人だった

顔つきも凛々しく、それでいて激動な人生を歩んできたのだろう

 

「それにしても橙子さんたち、遅いね」

「別にそれは大丈夫なんじゃない? アラタくんにそれでいて橙子さんもいるのよ? ケンカ吹っかける奴の気がしれないわ」

 

そう鮮花が言うと幹也はあはは…と苦笑いをする

しかしゴウラム―――鏡祢みのりだけはどこか苦い表情をしていた

そんな彼女の顔を見た未那はきょとんとした表情で

 

「どうしたの? みのりちゃん」

「え? あ…その…アラタが気になって」

 

アラタを信じていない訳ではない

けれど何だか妙な胸騒ぎがするのだ

 

「義兄妹だもんねぇ、みのりちゃんとアラタは。…ていうかアラタに義妹が出来たことも驚きなんだけど」

 

どうでもいいが、みのりの事を知っているのは橙子のみなのだ

まぁぶっちゃけると説明が面倒くさいという事から置き去り(チャイルドエラー)を保護した、みたいに設定を捏造しているのだ

これと言って問題はないのだが

 

「けど、大丈夫だよ。アラタくんが強いのは、みのりちゃんも知ってるでしょ?」

「…幹也さん」

 

そうだ、鏡祢アラタの強さは自分が一番知っている

人になる前から、ずっと

 

「だから待っていよう。僕たちは信じて」

「うん!」

 

 

薄暗い道をシャットアウラは負傷したアラタを背負いゆっくりと歩いていた

その後ろを上条当麻はついてきている

 

「鳴護アリサは無事なんですか」

 

通信機越しにシャットアウラは名護慶介とやり取りをしていた

 

<あぁ。彼女は無事だ>

「そうですか。…負傷者は?」

 

シャットアウラがそう聞くと名護は一瞬躊躇したような間があった

やがて彼は口を開く

 

<…あの被害で出た死傷者は、ゼロなんだ>

「!? ゼロ!?」

 

シャットアウラは思わず声を荒げた

ゼロだと? 地下にいてもあれほどの被害だったというのに反対に地上は怪我人すら出ていないというのか

しかし、彼が嘘をついているとも思えない…おそらく事実なのだろう

一言二言交えて、シャットアウラは通信機のスイッチを切った

ちょうどそんなタイミングだ

 

「…う、ぅ」

 

鏡祢アラタが意識を回復したのだ

 

「アラタ!」

 

真っ先に駆け付けたのは彼の友人である上条当麻である

 

「…あれ、ここって…」

「無理はするな」

 

彼は当麻の肩を借りながら、どうにか地に足をつけた

ゆっくりと息を吐きながら調子を整え、彼は立ち上がる

 

「…アリサや、客はどうなった?」

 

当麻に肩を預け、アラタはシャットアウラに問いかける

それにシャットアウラは答えた

 

「皆無事だ。客も含めて死傷者はゼロだ」

 

シャットアウラからその報告を聞いてアラタは内心驚いた

あれだけの爆発だったのだ、怪我人程度は出たと思っていたのだが

 

「そうか…すげぇじゃねぇか。まさしく、〝奇跡〟って奴だ」

 

安堵したアラタは思わず、そして何となくその単語を口にしてしまった

シャットアウラが最も嫌いであるその言葉を

当然聞き逃すハズもない彼女は当麻を突き飛ばしてアラタを壁に叩きつけた

 

「っは!?」

 

叩きつけられた拍子にアラタは肺の息を吐き出す

シャットアウラの腕は胸ぐらをつかみ、アラタの瞳を睨んでいた

彼女の顔は、憎悪を孕んではいたが、同時にどこか、寂しさも混じっていた…ような気がした

 

「お前!? いきなり何しやがる!?」

「貴様は黙っていろ! この男は、私の前で奇跡などという曖昧な言葉を口にしたんだ!」

 

あまりの剣幕に思わず当麻は黙ってしまう

そんな当麻を無視し、シャットアウラはアラタに向かって言葉をまくし立てていく

 

「奇跡なんて起こっていない! 偶然の結果がたまたまああなっただけの事だ! …この世界にあるのは、量子学的な偶然と、人の歪な欲望だけ…!! 見えざる手なんて存在しない!」

 

そう言って彼女は掴んでいたその手を離した

ようやく解放されたアラタは息を吸いこもうと咳をしつつ、その肺へとまた息を吸い込んだ

そんな彼を気遣うように当麻が駆け寄る

 

「…けど、アンタ彼女の歌ちゃんと聞いたことないだろう」

 

そんなシャットアウラの背中に向かって当麻は言葉を紡いだ

 

「アンタも一回聞いてみな。…奇跡はあるって、思えるかもしれないぜ」

 

それは当麻もアラタも偽りない気持ちだった

彼女の歌には、よくは分からないが魅力がある

そんな魅力的な歌を彼女も聞けばわかってくれるだろう…そう簡単に考えていたが

 

「…私は、ある事故で脳に、音楽を認識する機能を失った」

 

空気が変わる

 

「私にとって…音楽や歌は耳を穢す醜悪な雑音(ノイズ)でしかないんだよ」

 

触れてはいけないものに、触れてしまったと、当麻とアラタは悟る

結局それっきり会話が続かず、当麻に支えられながら三人は出口へと目指す

 

「…悪い、その―――」

「なぜ謝る。貴様たちが謝る必要などない」

「けど、アンタの―――」

「シャットアウラだ。シャットアウラ・セクウェンツィア」

 

思えば、ここで初めて彼女の名前を聞いた気がする

やがて、目の前に光が見えてきた

宵闇を照らす、ヒカリ

 

「それに、私は今に満足している。歌や、奇跡などという言葉にも、惑わされずにすむのだから」

 

そう言った彼女の横顔は凛としていたが、それでもどこか複雑な顔をしていたような気がする

本当に…彼女はそう思っているのだろうか

 

 

アラタの怪我は特に深くはなく、アマダムも治癒に協力してくれたのかすぐに塞がった

 

しかしそれでも橙子に少しの間は変身をするなと釘を刺されてしまった

幸い事件も何も起こってないし、体調も万全となったし、今のところ特に問題はない

だけど、それでも

ふと、鏡祢アラタは街中にあるテレビモニターを見た

 

そこに報道されていたのは、つい先日行われた鳴護アリサのコンサートに関するものだ

しかしそれは喜ばしいことではなかった

内容は主に、その当日に起こった爆発事故について語られていた

原因は不明、しかし負傷者はゼロとなったこの事件は、瞬く間に奇跡と呼ばれて広まった

ぼんやりとそのモニターを眺めてはぁ、とアラタは息を吐く

 

「…奇跡ってなんなんだろうなぁ」

 

奇跡

基本的には起こりえることが少ない事象が起こりえることを指す…らしい

 

そもそもアラタは奇跡なんて感じたことはない

…いや、もしかしたら今生きている日常もすべて奇跡の連続なのかもしれないが

しかし、シャットアウラはそれを否定した

思えば当然なのかもしれない

奇跡なんて不明瞭なものに頼ってしまっては、いざという時に自分の力を発揮できなくなりそうだ

 

「悩んでいるのかな」

 

そう自分の思考に没頭していると不意に声をかけられた

その方を振り向くと白いシャツに黒い革ジャンを着込んだ男性だった

 

「…え…と…貴方、は」

「私は本郷猛。…橙子くんの友人さ」

 

 

「橙子にあなたみたいな知り合いがいたなんて、驚きです」

 

本郷猛と名乗った男はどうやら世界中を旅している冒険家みたいなことをしているらしい

その旅の途中、なんらかの事件に巻き込まれて蒼崎橙子と知り合ったらしい

 

「私も君の話は最近聞いたんだ。なんでも、面白い友人が出来たってね」

 

橙子め

そんな事を言っていたのか

 

アラタがはぁ、と短く息を吐くとふと、耳にアリサの歌声が聞こえてきた

それはテレビなどのモニター類から聞こえてくるものだ

 

「…彼女の歌声は、元気が出てくるな」

「そうですね。…努力から勝ち取った、彼女の舞台です」

 

鳴護アリサは自分から見ても努力家だろう

決して驕ることなく、まっすぐに、夢を見て彼女は今まで歩んできたのだろう

初めて会ったあの時から、彼女は歌が上手かった

そして再会した時は、もっと上手になっていた

ただ純粋に、夢を求めている、女の子なんだ

 

「ねぇ、本郷さん」

「うん?」

「奇跡って、あると思いますか?」

 

何となく、アラタは聞いてみた

アラタとしては肯定もしないし、否定もしない

結果だけを見るなら奇跡になるかもしれないし、たまたま偶然の結果が奇跡となる事もある

曖昧なのだ、奇跡というのは

 

「そうだな。…私は、あると信じたい」

 

少し独白していると、本郷は答えてくれた

そして続ける

 

「そもそも、待っているだけでは奇跡とやら起きないだろう。奇跡は、我々自身の力で呼ぶものと思うからだ」

 

奇跡とは、〝起きる〟のではなく、〝起こすもの〟

そう、本郷は呟いた

 

「…つまり、自分次第って事ですか?」

「まぁ、そういう事だな」

 

そう言って彼は笑った

とても、優しい笑顔だった

釣られてアラタも笑みを浮かべる

 

ある女は言った

世の中は、人の歪な欲望しか渦巻いていない、と

しかし目の前の男は、少なくともそんな部類には入らない

ていうかそもそも、本当に奇跡なんてものがあったなら、あんな事件なんて起こりえない

 

「ありがとうございます、本郷さん。…何となく、分かった気がします」

「そうか。…それは何よりだよ」

 

最後に強く握手を交わし、本郷は軽く踵を返した

アラタはその背を見送りながら、無意識に礼をしていた

不思議と、身体が勝手にそうしてたのだ

 

「アラタくん?」

 

そこでまた背後から誰かの声がかかった

慌てて礼を崩し上半身を起こしてその声の方を振り向くと、アリサがそこにいたのだ

 

「あ、アリサ。何してるのさこんなとこで」

「アラタくんこそ。どうしたの?」

「い、いやぁ…別に。あ、アリサこそなんで…」

 

質問に質問を返すようで申し訳ないが、アラタは問う

それにアリサは僅かに頬を染めながら

 

「うん。当麻くんと少し話してたんだ」

 

彼を語るアリサの眼はどこか熱を帯びているような―――

一瞬考えて彼は悟る

罪な男だな、我が親友

 

「当麻くんにも話したんだけど、私ね、三年から前の記憶がないんだ」

 

―――え?

と、言うと、彼女はもしかして記憶喪失…という事なのだろうか

そしてそれは奇しくも、上条当麻と同じような状況なわけで

 

「鳴護アリサって言う名前も、施設の人たちがつけてくれた名前なの。…だから、これが自分だって言えるのがなくて」

 

アリサは両手を後ろに組んで、アラタの横を通り過ぎる

そしてアラタの方を再び向けると

 

「だけどね、歌を歌ってるとそれだけで心が暖かくなるの。何かがこう…なんて言えばいいのかな。とにかく、歌っていればいつか取り戻せるような気がするんだ。…何かは分かんないけど、私がなくした何かを」

 

そう言う彼女の顔は笑顔だった

決して記憶喪失をマイナスにしてなどいない、純粋な笑顔

 

「…あぁ、取り戻せるよ。必ず」

 

アラタは答える

彼女は、叶えたい夢がある

それを心に宿している限り…必ず報われる日が来るはずなんだ

 

「大丈夫。君ならきっとできるさ」

 

そう言ってアラタはアリサに向かって親指を立てる

サムズアップ、という奴だ

向けられたアリサは一瞬キョトンとしていたがすぐに意味を理解し、同じように親指を立て、笑顔を浮かべた―――

 

 

BOARDのアジト

ソファに座りながら一人の女の子がイヤホンで音楽を聞いていた

 

リズムに合わせて彼女はパタパタと足を動かし、旋律を奏でるように鼻歌を歌い始める

彼女が聞いているのは今噂の鳴護アリサの曲だ

 

軽快にリズムを刻む彼女の耳から、ふとイヤホンが取り上げられた

 

「にゃ! 何をするですか夜神さんっ!? 私の至福の一時を!」

「そう思ってるならもうちょっと音量下げてくれ。漏れまくりなんだよ」

 

戒めると一真は取り上げたイヤホンをその女性に向けて投げ返す

投げられたイヤホンをあたふたしつつ彼女は受け取って

 

「ねぇねぇ夜神さんっ、鳴護アリサの事どう思います?」

「はぁ?」

 

いきなり何を効いてくるのだろうかこの子は

正直に言うと一真はあんまり興味はない

まぁ確かにネットを泳いでるときは興味本位で聞いた彼女の歌は全く無知な自分でも素晴らしいと思えるほどではあるが

 

「つっても、別にどうとも思ってねぇよ。ちょっとすごい人くらいの認識しか」

「やっぱりですか? なんだか黒鴉の人たちが何だかアリサちゃんを巡って一悶着あったって聞いたんだけど」

 

だから先日特訓を申し出てきたのかアイツは

それはそうと一悶着があったのか

確かについ最近で鳴護アリサのライブコンサートで爆発事件があったという話を聞くが

 

「これはもう、私たちで鳴護アリサの身辺警護するしかないですよね!」

「そう言って実はサイン貰いたいだけとか言うんじゃないだろうな」

「…」

 

なぜそこで黙る

 

「まぁいいや。一応橘さんに言ってみるよ」

「さっすが夜神さん! 話が分かるぅ!」

「うるせいやい。言ったからにはちゃんと仕事しろよな陸姫(ムツキ)

 

女の子―――黒川陸姫は笑顔で応える

 

「もちろん! しっかり頑張るもんね!」

 

時間は進んでいく

ゆっくりと、しかし、確実に




黒川陸姫(くろかわむつき)
仮面ライダーレンゲル
BOARDの一員で夜神の後輩
高校に通いつつBOARDのメンバーと二足の草鞋を履いてる人
普段は温厚だが、やるときはやる女性
因みにキレると朔夜と夜神でしか制止できない最恐なお人
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