劇場版とある魔術の禁書目録 プロジェクトエンデュミオン~その奇跡は誰がために~   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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お待たせしました

物語も中盤―――既存のライダーに見せ場作れるように頑張りたいなぁ

今回もグダグダですがご容赦を

ではではどうぞ
誤字脱字ありましたら報告ください

因みに今回は先行キャラはいません


チャプター7

エンデュミオンの完成式典が明後日に迫る中、オービットポータル社の社長、レディリー・タングルロードが記者会見を開いて、質問に応対をしていた

特に無駄に動くでもなく、ただ棒のように立っていながら受け答えする

 

「いよいよ明後日になりましたね、エンデュミオンの完成披露式典が!」

 

レポーターの質問にレディリーは頷きながら答えていく

 

「はい。当日にはわが社の総力を挙げて奇跡とはいかなるものか、皆さんにお見せできるかと思います―――」

 

言葉の途中にて、はぁ、とため息をつきながら式は言葉を紡いだ

 

「全く奇跡がどうとか。胡散臭いにもほどがあるぞこいつ」

「そう言ってやるな。…まぁ、お前のいう事に一理あるのだがな」

 

あの日のライブから帰ってこれたのは夕方だった

アラタはあのまま戻っては来なかったが、携帯にメールが来ていたから特に問題はなかったのだろう

そしてその後で幹也から誰かが橙子を訪ねて会いに来てた、という報告を受けてすぐ、橙子は連絡を取った

眼鏡をかけてはいなかったから、恐らくその手の知人なのだろう

 

「そう言えば今日、アラタくんは?」

「ん? 鳴護アリサのライブに行ってる。おそらく、ビリビリの嬢ちゃんとかも一緒だろうよ」

 

そう、先ほどテレビで報道していた式典を祝ってだか何だかは分からないが本日も鳴護アリサのライブをしているらしいのだ

因みに式も燈子も招かれたが今回は断っている

 

「えー! じゃあ今日お義兄様と遊べないのー?」

「我がまま言っちゃダメだよ未那。その代り、今日は鮮花お姉ちゃんが遊んでくれるから」

「鮮花お姉様とは前も遊んだけど…いいや! お姉様ー、絵本読んでくださーい!」

「…なんかいろいろ言いたいけど付き合ってあげるわ! 来なさい未那ー!」

 

そんな二人の様子を微笑ましく見守る幹也

微笑む幹也の隣に式は歩みより

 

「本当の姉妹みたいだな。あの二人」

「そうだね。二人とも結構似てるし」

 

髪が長いところとか、兄大好きな所とか

少し詳しく探せばたくさん見つかるかもしれない

もっとも、探す気はないが

 

そこでふと式は思いついたことを幹也に言ってみることにした

 

「なぁ、幹也。そう言えばお前、探し物得意だったよな?」

「え? うん。得意って言うよりは、向いてるって言うのかな」

「それを得意って言うんだよ。まぁそんな事より一つ、調べてほしいのがあるんだ」

 

?マークを浮かべる幹也の前に式はテレビをもう一度見やる

そこにはまだインタビューを受けているレディリー・タングルロードの姿があった

 

 

~Brand New Bright Step~

 

一方こちらは鳴護アリサのコンサート会場

今回も燈子のデザインした衣装に身を包みながら彼女は歌い踊っている

 

この会場のどこかには当麻やインデックス、アラタと美琴もいるのだろう

そんな事とはつゆ知らず、招待された彼ら達とは別に自力でこのコンサートにやってきた人がここにいた

一匹のお供を連れて

 

「うおーっ! ARISA(エーアールアイエスエー) アリサーっ!」

「…キバット、少し落ち着いてって」

 

紅葉ワタル、そしてその相棒、キバット

アリサの歌はもちろんワタルも好きだ、ファンと言ってもいいだろう

しかし相棒のキバットがハマりにハマり今回のコンサートだってチケットを入手するのに苦労したものだ

 

「これが落ち着いていられるかって!だってコンサートだぜ!? アリサだぜ!? テンション上がんない方がおかしいでしょうがっ!」

「それでもアクションつけないでって! なんだか周りの僕を見る一部の人たちの眼が変になってるから!」

 

まるで〝なんだこいつ〟的な視線に耐えきれなくなったワタルは何とかキバットを説得し声だけの応援(?)に専念させた

そこで一息を付きつつ、ワタルは改めて鳴護アリサの音楽へ耳を傾ける

彼女の音楽はストリートライブをしていたころに何度か聞いたことがあった

その時から彼女の才能は飛びぬけていたのだ

そして最近さらに活躍している彼女の噂を聞いて嬉しくなったのを覚えている

さらにさらにエンデュミオンのイメージソングを歌うことになるとはさすがに思ってもいなかった

しかしそのエンデュミオンを管理しているオービットポータル社の社長はどうもきな臭い

…とはいっても自分では今の所なにもできない

改めてワタルは彼女が作る旋律に耳を傾けた

 

 ◇

 

とある一室

何台ものあるモニターを見ながら、レディリーがライブで歌う彼女の姿を見ていた

その隣には水城マリアも立っており、同じようにその画面を見ている

やがてレディリーが口を開いた

 

「〝奇跡の歌声〟。あまりに普通だけど実効性が伴っていれば、これほど強いキャッチコピーはないわ。ねぇ、マリア」

「えぇ、同意ですわ」

 

隣にいるマリアに向かって彼女は言葉を紡ぐ

マリアの言葉を聞いたのち、レディリーは今度は自分の後ろに待機していたシャットアウラへと視線を向けた

 

「貴女も。そうは思わない?」

「っ、。いいえ、私は奇跡など信じません」

 

耳に来る醜悪な雑音(ノイズ)に耐えながらシャットアウラはそれに答えた

そんなシャットアウラにレディリーは小さい笑みを浮かべたまま

 

「本当につまらないわねぇ、貴女。オリオン号と共に地に落ちる筈だったオービットポータル社の社長の命脈を保ったのは〝八十八の奇跡〟というイメージよ? …つまりは、奇跡って言うのはわが社の最大の売りなの」

「オリオン号の事件は、決して奇跡なのでは―――」

「乗客八十八人が助かったのに? あれを奇跡と呼ばずしてなんというの」

 

レディリーの言葉にシャットアウラは言葉を詰まらせる

オリオン号の事件―――八十八の奇跡

奇跡と言ったものを信じない彼女にとってそんなものはただの偶然と思いたいのだ

しかし、いくら偶然が重なったとはいえ、八十八人も助かるとは思えなかった

 

言葉を詰まらせるシャットアウラを尻目に、どことなくレディリーは天井を仰ぎ見て、呟いた

 

「…これでようやく、準備が整ったわ―――」

 

 

「アリサちゃん、お疲れ様」

 

ライブが終わったタイミングを見計らって陸姫はアリサに向かってタオルを渡す

あの時一真が橘に頼み込んでくれたおかげなのか、黒川陸姫は現在彼女のボディーガードとしてそばにいた

無論いきなり決まったことにアリサも驚いていたが事情を説明すると笑顔で受け入れてくれて、すっかり打ち解けて仲良くなっている

 

「ありがとう陸姫さん」

「やだなぁ、ムッキーでいいって」

「ふふ、ありがとうムッキーさんっ」

 

そう言って笑顔を浮かべるアリサ

その笑顔にはまた陸姫はクラリと来る

正直に言ってしまえばサインをもらうことも目的の一つになっていたがそばに入れるだけでそんなのどうでもよくなってくる

 

「それじゃ送るよ。友達とごはん…だっけ?」

「うん。助けてくれたお礼がしたいんだ」

 

一通りの着替えや準備を終えて、アリサはその友達の所へ歩いていく

そんな彼女たちを見て思わず陸姫も笑顔になった

 

 

そしてとあるファミレスにて

 

「いよいよだねアリサっ!」

 

テーブルに出された料理をもふもふ食しながら両目を輝かせつつインデックスは口を開いた

 

「うん。これも当麻くんやインデックスちゃん、アラタくんのおかげだよ」

 

アリサは変装用か、陸姫から渡された伊達眼鏡をかけてインデックスに笑顔を浮かべる

そしてその席の近くに陸姫も座っており、時折インデックスやアリサと会話を交わす

出会ったのは初めてだが案外早く打ち解けられた

しかし今はアラタと当麻は誰かに呼ばれたのか外出しており、店内にはいなかった

…とはいえこんなとこを襲ってはこないだろう

 

「今日は私のおごりだから。たくさん食べてね、インデックスちゃん」

「ほんと!? いいの!? それじゃあ…ウェイトレスさーっん!!」

「はーいっ」

 

そんな声を聞きながら陸姫は大きく背伸びをする

そう、その時はそう考えていた

 

 

一方でこちらは上条当麻と鏡祢アラタ

街灯が照らす光の下で、四人の男が話している

ベンチに座りながら笑み交じりに話すサングラスをかけた男の名は、土御門元春

そしてその付近に立ってるのは、如月弦太郎だ

 

「いやぁ…よりによってあの子とは」

「っとに。流石というかなんというかだぜ」

 

口々に軽口を叩く二人に当麻は詰め寄る

 

「じゃあ、やっぱり知ってるんだな、二人とも。なんでアリサが狙われるのかを」

「教えてくれ、なんであの子が狙われなきゃいけないんだ」

 

当麻とアラタ、二人の疑問に闇から聞こえた別の声が応えた

 

「―――あの女の子は聖人…またはそれと同等の力を宿していると見なされたからです」

 

闇から歩いてきたのは神裂火織という女性だった

必要悪の協会(ネセサリウス)に所属している魔術師だ

彼女の後を追うようにまた男性も髪を掻きながら歩いてきていた

その男性はヒビキという男性だ

 

「神裂…」

「ヒビキさんも」

 

二人は街灯の光が当たるところまで歩いてくると口を開いた

 

「彼女が完全に覚醒すれば、神裂ちゃんをも上回る力を発現する可能性もあるんだよ」

 

そう言ってヒビキは神裂の方を向く

神裂火織は聖人だ

この世界に二十人ともいないうちの一人であり、不完全と言えど天使と呼ばれる存在と渡り合えるほどである

その神裂を超えるかもしれない力を宿しているというのだ

 

「まぁこれはあくまで推測なんだけどにゃー。照明もされてないし」

 

そう言って土御門は自分の両肘を膝につけつつ答える

そんな彼に神裂は視線を移動させ

 

「貴方の見解は? 土御門」

「んー。どうだかなにゃー? そもそも聖人の定義だって曖昧だし」

「では、弦太郎」

「…俺に聞くのか姉御?」

 

弦太郎がそう答えると同時、土御門は徐に立ち上がり神裂の前に歩いていきやけに嘗め回すように下から上まで視線を動かしながら

 

「ねーちんが隅から隅まで調べさせてくれればにゃー?」

「それには賛成だ土御門。姉御、まずはそのたわわな果実を―――」

「じょ!? 冗談じゃありませんっ!」

 

土御門らの(よこしま)な視線から身を守るように神裂は自分を掻き抱き土御門らに一喝する

そんな彼らにヒビキは苦笑いを浮かべながら改めてアラタと当麻に向き直って

 

「まぁその聖人が何であれ、学園都市はその子の資質や能力を解剖学的に解明して、利用したいみたいなんだよ。…特に、あの幼女な社長はね」

 

ヒビキの視線が珍しく鋭くなる

その場には何とも奇妙な空気が流れていく―――

 

 

「これ」

 

そう言ってアリサは封筒をインデックスに手渡した

食後のデザートとしてパフェを突っついていたインデックスはスプーンを口に入れながらそれを受け取り

 

「あの歌の歌詞。一緒に歌うって約束したでしょ?」

 

先日、アリサとインデックスは一緒にお風呂に入ってた時、浮かんできたフレーズを紙に纏めていた時

この歌が出来たら一緒に歌おう、と顔所と約束を交わしていたのだ

インデックスはぱぁっ、と笑顔になり彼女はコップを手に持った

 

「ありがとう! たくさんおめでとうだねありさっ!」

「こちらこそ、ありがとう」

 

そんなインデックスに応えるようにアリサも水の入ったコップを持ってかちん、とお互いのコップを当てる

 

『かんぱーいっ!』

 

コップの中の水が揺れ、―――その水を見つめていたウェイトレス―――メアリエは小さく口元を笑みを作った

 

 

一方で外

 

「うー、ぅん。暇ねぇ」

 

テクテクとのんびりと道を歩くのは食蜂操祈と呼ばれる女の子である

学園都市に七人しかいない超能力者の一人で、常盤台の生徒である彼女は特に宛もなく歩いていた

 

「アラタもなんか留守だったし…なぁんかなぁ」

 

はぁ、と変なため息を吐きながら彼女は道を歩いてく

常盤台では何人かお供がいるのだが、今回は自分一人だ

そんな事を言いながら彼女はなんとなくファミレスの横を通った時だ

 

がっしゃぁん!! とガラスが割れた音が聞こえた

 

「ふぇ!?」

 

あまりに突然な出来事に食蜂は頭にハテナマークを浮かべつつ、その割れたガラスから三人ほど飛び出てきた

その三人のうち、一人だけは誰かを抱えていたことを食蜂は見逃さなかった

しかしそう思考に浸る暇もなく、フードを被った一人の女の子が扇子を振るった直後大きな風が巻き起こる

彼女はスカートを抑えつつ巻き起こった風によって来る埃とかを守るべく左手で顔を覆った

 

その風が止んだ時にはその女の子たちはもうその場にいなかった

その女の子たちがいなくなった場所を食蜂が睨んでいるとまたその割れたガラスから一人のシスターが縛られた状態でぴょんぴょんと跳ねてやってきた

 

なんでシスター? というという思いはしたがそれを心の中にしまっていくことにした

ちなみに彼女はどういう原理か分からないが氷水のような何かで口を塞がれていた

 

「んー! んーんー!!」

 

何を言っているか分からない

しかしなんかヤバそうな雰囲気ではあったので食蜂はその口元の何かに手をかけて引っぺがしてみた

それは思いのほか簡単に崩れた

ぷはぁ、と息をするそのシスターを尻目に今度は拘束を解いていく

彼女の拘束を解いた時に、シスターは急いで立ち上がり食蜂の顔を見て

 

「ありがとう! えっと…!」

 

そう礼を言って彼女は徐に携帯を取り出してある番号にかけ始めた

 

「…え?」

 

一瞬ポカンとした食蜂ではあったがすぐに冷静さを取り戻し、先ほどの見た光景を整理し始める

…と言っても情報が少なすぎて纏めるのもないのだが

 

「…これは聞いてみる必要がありそうねぇ」

 

 

急に当麻の携帯がブルブルと震えはじめた

 

「? …インデックスからだ」

 

どうやら電話の相手はインデックスからだそうだ

何かあったのだろうか

通話ボタンを押して当麻が携帯に耳を当てる

 

「おっす。どうした…、なんだって!? アリサが!?」

 

アリサが、という言葉にアラタも目を見開いた

 

◇◇◇

 

同時刻

 

<この馬鹿ッ! 何みすみす誘拐許してんだ!>

 

「ひう…! ごめんなさい…」

 

完全に迂闊だった

うっかりトイレに行っていた隙をつかれるなんて思わなかった

ていうかそれ以前にウェイトレスに変装しているなんて思わなかったのだ

 

<ともかくいったん戻って来い。状況を纏めたい>

「うん。…わかった」

 

短く陸姫は答え、携帯を切る

自分から護衛を買って出てこの様だ

自分の無力が、腹立たしい

 

◇◇◇

 

「クロウリーダーよりクロウ(フォー)。…状況の報告を」

<目標は高速道路に入りました>

 

となると現在相手は車か

しかし以前交戦したところから考えるとまだ何を隠しているかは分からない

 

「見失うな。そして、油断もするな」

 

短くそう言うとシャットアウラはなんとなく、ロッカーの中にある一つの帽子に視線をやった

それはパイロット帽だった

焼け焦げたようなボロボロの帽子だった

 

「奇跡なんてありはしない。…あってたまるか」

 

吐き捨てるように言った後、彼女は歩き出す

己の任務を全うするために

 

◇◇◇

 

そこは車内だった

運転しているのはメアリエで、助手席にはステイルが座り、背後の座席には目隠しして視界を奪ったアリサを中心にジェーン、マリーベートが座っている

 

因みにステイルは相も変わらずに煙草を吸っている

そんなステイルを見てソワソワしながらジェーンは抗議した

 

「あの、師匠? 車の中で煙草を吸ってはダメですの。…その、背が伸びなくなります―――」

「構わないよ。僕はもう十分伸びたから」

「違うのです! 私が―――」

「気にすんなジェーン」

 

不意に声が挟まれた

それは車の屋根の上に座っている霧島斎堵の声だ

 

「ステイルは幼女が好きだからな」

「はっ! やっぱり師匠そう言う趣味があるですの!?」

「阿呆か! 斎堵もわけの分からないことを口走るなっ!」

 

そんなやり取りにマリーベートが苦笑いをしている最中、ステイルははぁ、と息を吐きながら何気なくサイドミラーを覗き込んだ

そしてむ? と眉をひそめる

僅かばかり、空気が歪んだ気がしたのだ

それに呼応するかのようにダン、と屋根の上で立ち上がったような音が聞こえた

どうやら斎堵も気づいたようだ

 

「気づいてるか、ステイル」

「あぁ。―――来るぞ!!」

 

ステイルの言葉通り、彼らの乗る車の付近に依然戦闘を行った四輪の特殊起動兵器が姿を現す

今まで光学迷彩か何かで姿を隠していたのか、それは突然現れた

 

「メアリエ、前に出すな!」

「合点!」

 

ステイルの指示に応えメアリエはさらにアクセルを踏み込む

一瞬足場から崩れそうになるが、すぐに態勢を立て直し斎堵はメダルを用意しドライバーにセットする

 

「よし行くか。…変身っ!」

 

そう言ってスキャナーを取り、スライドさせて読み込ませる

 

<ライオン! トラ! チーター! ラタラッター ラトラーターッ!>

 

黄色の輝きと共に斎堵の姿がライオンを模した姿、オーズ・ラトラーターコンボへと姿を変える

両腕のトラクロ―を展開させ彼は道路へと身を投げ出し、ステイル達の車を追うように走り出した

 

 

何体かの起動兵器を掻い潜り、一体のバイクが間を縫うように走ってきていた

乗っているのは黒いイクサ―――シャットアウラだ

ブラックイクサはようやく前を走る対象の乗った車を視認した

その車の屋根には依然交戦した赤い髪の神父が膝を付けて戦闘態勢を取っている

 

随伴している起動兵器から放たれたアースパレットを撃ち抜くようにブラックイクサはイクサカリバーから放たれたワイヤーで射抜く

射抜かれたパレットは爆発を起こし、一瞬ではあるが車の視界を奪う

しかし停車には至らない

 

ならばなんとか組み付いてタイヤを砕くまでの事

ブラックイクサはアクセルを蒸かしさらに速度を増していき―――その車の隣へと組みつく

しかし行動を起こす前に

 

「!?」

 

自分のすぐ横にはライオンのような姿の人影がこちらを蹴るように足を動かしていた

ちぃ、と舌を打ちながらブラックイクサは速度を落としその蹴りから逃れる

 

(あいつ…この速度を走っているというのか!)

 

よく見てみるとその人影は何も乗っておらずこの速さをなんと走っているだけで追いついている

本当に訳が分からない

やがて、彼らはトンネルに入り、オレンジ色の蛍光灯が照らし始める

 

 

トンネルの中に入り、ステイルは立ち上がる

斎堵の援護もあるがこれではいずれやられてしまうだろう

そう思っていたその時だ

 

「師匠!」

 

窓からジェーンが顔を出していた

彼女は扇子を振り抜くと同時、大量のルーンカードをばら撒きはじめる

この戦法は恐らく、こういったトンネルの中でしか使えないだろう

つまり、決着をつけるのは今しかない

ステイルはぐ、と力強く拳を握り言葉を翳す―――

 

魔女狩りの王(イノケンティウス)ッ!!」

 

彼の言葉から放たれた炎は異形の姿を形作り、そこに灼熱の魔神が生み出される

 

(!?)

 

流石にあんなものが来るとは思わなかったブラックイクサは仮面の下で大きく舌を打つ

炎の巨人は配下の起動兵器を蹂躙していく

ブラックイクサはなんとかその攻撃を掻い潜り、何とか車との距離を詰めていく

しかしこれでは多勢に無勢、何とか隙を作らなくては

 

ブラックイクサはミラーを見て背後を確認しつつ、自分の背後にアースパレットを数発打ち込む

そしてパレットをワイヤーで射抜いた―――

 

 

鏡祢アラタが操るゴウラムの後ろに上条当麻が乗っている

二人の目的は当然ながらアリサの奪還だ

流石にこんなチェイスじみたことにインデックスを連れてくるわけにはいかない

 

「もうちょっとで追いつく…! いけるか、ゴウラム!」

<うん、任せて!>

「よし…! 当麻、しっかり捕まってろよ!」

「あぁ、頼んだぜアラタ!」

 

そう三人で意気込んだ直後だった

ドォン! と大きな爆発音が聞こえたのは

 

「ゴウラム!」

<おっけー!>

 

そうゴウラムに言ってさらに速度を増していく

 

 

やはりそう簡単に行く相手ではなかったか

爆風の中から出てきたのは無傷の黒いイクサで、そいつから放たれた弾丸の一発は運悪く車のタイヤを射抜いた

射抜かれたことによりバランスが崩れた車からステイルは脱出し、その車はゴロゴロと転がっていく

幸い爆発するには至らなかったようだ

 

その車をちらりと見てみると完全に内部の人たちは目を回し気絶している

ひとまずは、無事なようだ

ステイルの隣にはオーズもやってきて、メダルを変えタトバコンボへと戻した

大きく肩で息をしているからやはり消耗が激しいのだろう

そして今度は目の前

そこにはバイクから降りた黒いイクサがイクサカリバーを携えて歩いてきている

 

一触即発

 

まさにそんな空気が辺りを包む

その空気を壊すように二人の少年が空から降りてきた

 

「やめろ!」

 

ゴウラムの上に乗っている当麻から発せられた声にステイルとブラックイクサは勢いよく振り向いた

ゴウラムは二人の間に漂うように飛行するとそこから当麻は飛び降り、アラタも追ってそこから飛び降りた

そんなタイミングを見計らいゴウラムもみのりへと姿を変える

 

「何を先走ってんだステイル! まだあの子が聖人だって決まったわけじゃないんだろう!?」

 

「―――神裂か」

 

そう言った情報を知っているとなればなんとなく予想がつく

ステイルの隣にいるオーズも苦笑いをしているであろう

ふぅ、と一つ息を吐くとステイルは当麻に向かって口を開く

 

「…さっき新たな指令が下ったんだ。…あれが何か、分かるか」

 

そう言ってステイルは煙草を咥えながらある方向へと視線を向けた

それは宇宙エレベーター…エンデュミオンだった

 

「…宇宙、エレベーター?」

 

当麻の隣にいるアラタがためらいがちに答えていく

今現在、知っている情報がそれしかないからだ

しかし、目の前に立つ二人はそれを否定する

 

「それは違うよ、アラタくん」

 

「…え?」

 

「シュメールのジグラッド。バベルの塔…。あれは合理性を持った建築物でね、あいつは〝そこに在る〟だけで魔術的な意味合いを持ってしまうのさ」

 

思わずあのエンデュミオンを見直す

まさか、あの建物は魔術がらみで立てられたものだというのか

それを裏付けるようにステイルが言葉を足していく

 

「問題は…そこに聖人を組んで大規模な魔術装置にしようとした人間がいるという事だ」

 

「なっ…!? ちょ、ちょっと待ってくれ! 学園都市に、魔術を利用しようとしてるヤツがいるって事なのか!?」

 

そんな彼らの会話は、ブラックイクサに五割も理解できなかった

ただざざ、と聞こえた来た通信音に彼女は耳を傾ける

 

警備員(アンチスキル)が動き出したわ。戻って>

「了解」

 

レディリーからの指示に応えるとブラックイクサはバイクを再び蒸かすと、倒れた車の近くに移動した

そしてバイクから降りて、車の付近へ歩み寄ると運びやすいように車の部分を少々斬り裂いて彼女を運び出そうと―――

 

「っ!?」

 

ブラックイクサ―――シャットアウラは見てしまった

彼女の首からかけていた袋の中から、自分が見覚えのあるブレスレットが見えてしまったのだ

それは自分が持っているブレスレットの欠けた部分を埋めるような大きさのものが

いや、これを持っているものは世界で自分一人のはずなのに、なんでこの女が―――!?

 

<あら。見てしまったの?>

 

まるで自分の心の動揺を見透かすかのような声に一瞬ビクリとした

 

<いいわ。彼女を私の所に持って来てちょうだい>

「…くっ!」

 

ほとんど衝動的に車を刻み、彼女を担ぐ

その時、足音が聞こえた―――しかし接近を許す前に

 

「来るなっ!!」

 

彼女の声が場を包む

しかし動きを止めないヤツもいた

それは当麻とアラタだった

 

「シャットアウラ! その子を離せ!」

「おい! 聞こえてんだろうアウラ! アウラぁっ!」

 

うるさい―――

仮面の下でシャットアウラは唇を噛みしめる

 

「―――関係などないくせに! なんでお前たちは邪魔をするッ!」

 

激情に駆られるようにブラックイクサは上空にアースパレットを撃ちだした

数にして、およそ六つか

 

「マズイ!」

 

ステイルはそう言いながら今も伸びている三人の近くへと走っていき斎堵もそれを追った

ステイルがその三人を確認している最中、斎堵が二人へと声を飛ばす

 

「逃げろ! 当麻、アラタっ!」

 

そう言う頃には遅く

 

ブラックイクサのワイヤーが射抜いたパレットは大きく爆発した―――

 

 

「…間に合わなかったか」

 

大きな爆発音がして夜神はブルースペイダーを走らせてここに来た

後ろには陸姫も乗っている

幸いにもその爆発は中空で起きたようで地面には被害などはなかった

しかしその爆風を受けて壁に叩きつけられたのか、二人の少年はぐったりと倒れていた

もう片方の少年は女の子を庇うように抱きよせながら気を失っていた

 

「夜神さん…本当に、ごめんなさい」

「気にすんな。タイミングが悪かった」

 

そう言うと陸姫は俯いて地面を見る

恐らく一番ショックを受けているのは彼女自身だ

自分からこの護衛任務を提案しておいて結果守れなかったのだ

 

「安心しろ、陸姫」

「…ふぇ?」

「一人のミスはみんなで埋める。…それが俺たちBOARDの教訓だろうが」

「…夜神さん…」

 

いずれにしろ、あのロリ社長が怪しいのは分かりきっている

だが如何せん情報が足りない

そこでふと、女の子を庇った状態で地面を倒れている一人の少年を見た

…もしかして、何か情報を知っているのかもしれない

 

「だから好きです。…夜神さん」

「あぁ? なんか言ったか?」

「なんでもないですー」

 

短く返し夜神はとりあえず携帯を開いた

この二人を病院に連れて行かねば

この近辺で一番近いのは―――やっぱりカエル医者の病院だろうか

 

◇◇◇

 

常盤台女子寮

その自室にて

御坂美琴はノートパソコンに向き合っていた

かたかたとキーボードを叩く音が単調に響き、美琴はじ、と画面を見つめた

 

「…うーん」

 

気になったのはやはりあの社長の事だ

どう調べていこうか、と考えたそんな時、コンコンと自室のドアが叩かれた

? と頭に疑問符を浮かべながら美琴は「はーい」と言いながらお客を室内に招き入れ―――

 

「あれ? …貴女は」

「よぉ。ライブ会場以来だな。両儀式だ」

 

美琴はとりあえず美琴は普段黒子が使っている椅子を持って来ようとしたが、式に止められた

 

「大丈夫だ、すぐに済む話だからな」

「? 話って…」

 

式は徐に赤い革ジャンから一枚の写真を取り出す

それはレディリー・タングルロードの写真だったのだ

 

「…これって」

「あぁ。…ん? なんだ、お前も調べてたのかあの社長の事」

 

不意に式の視線は先ほどまで彼女が使っていたパソコンに目がいった

美琴は「え、えぇ」と言いながら頬を掻く

 

「それなら話が早い。オレの旦那がさ、あの社長の真実に気づけたんだ」

「え? 真実って…嘘!?」

 

ていうか期間が短すぎないだろうか

昨日の今日でもう真実を掴むだなんて…

 

「話を戻すぞ。あの社長は―――」

 

今まさに話を聞こうとした直前、美琴の携帯が鳴った

その着信音に美琴はバツが悪そうな顔をして、式は苦笑いを浮かべる

彼女は視線で「いいよ」と言ってくれた

美琴はすみません、と謝りつつその電話に出る

相手は佐天だった

 

「もしもし? どうしたの―――えぇ!? アリサさんが!?」

<はい。誘拐されたのは彼女で、間違いないんじゃないかって…>

 

美琴の声色のトーンで式は目を細める

先ほど彼女の口から出たアリサという名前

…なぜだろうか、ものすごく嫌な予感しかしない

 

「…うん、うん。わかったわ。私もすぐそっちに行くから!」

 

そう返事をして美琴は携帯を切った

携帯をポケットに入れる仕草の傍ら、彼女は式へと視線を向ける

 

「…なにがあったんだ?」

「アリサさんが、誘拐されたみたいなんです。…それで今から、友達の支部に行かなきゃいけなく…」

 

―――どうやら嫌な予感は的中してしまったようだ

 

「分かった。オレも手を貸す。その支部に案内してくれ」

「えぇ、それじゃついてきてくださいっ!」

 

美琴の声に頷きながら二人は部屋を飛び出していった

その時先ほど式が持っていた写真がひらり、と彼女のパソコン付近に落ちた

パソコンに写ってるのは、現在のレディリー

式の写真に写ってるのは、数百年―――具体的には八百年ほど、過去のレディリー

 

どういう訳だかその現在と過去のレディリーの見た目には明確な違いは、全くなかった

八百年の時間がたっても、レディリー・タングルロードに身体的な変化は全くなかったのだ―――

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