俺の名前はノブナガ=ハザマ、こう見えても悪名高き幻影旅団のメンバーだ。腕っ節にも自信はある、タイマンで俺に勝てる能力者はそうは居ないだろうな。シャルから聞いた話で眉唾だが、ある機体の中に新種の猿が入っていてその猿が今この森の中の部族にあがめられているんだとよ、なんでも光に包まれて現れたとか…。
シャルはその機械の方に興味があったみてぇだが、俺は断然猿だ。まだ団員にも知られてねぇことなんだが、俺は無類の猿好き。猿マニアだ。猿って聞くとなんだかわからねぇんだが従えたくなっちまう。その猿が草履とかも暖めてくれるような猿だったら最高だな。
袴のような服を着用し、腰には刀を一刀携えている。綺麗に結わえたちょんまげが天に向かって伸びていた。見た目はまさに侍そのものである。顎に蓄えた無精髭をさすりながら上機嫌で森の中を掛けていく。これはノブナガ=ハザマの1時間前の状態であった。
現在はというと…
「ホギョアアアァッ」
(なんだ…??全然かわいくねぇ……しかもオーラ纏ってるじゃねぇか、あそこで転がってるのは…ボノレノフ…?ここはもしかしてギュドンドンド族の集落だったのか…てかボノやられちまったのか?相手はあの猿…?音の塊を無尽蔵に飛ばしてやがる…ちょっと待て、、気がつかれた…おい、こっちに来るんじゃねぇ…想像してた猿と違うんだよ…糞ッ!迎え撃ってやるぜッ!)
ノブナガは円を発動し、静かに目を瞑り鞘に納めた刀の柄を軽く握り締め腰を落とした。ノブナガの円の中に侵入した全ての物は最速の抜刀術により一刀両断にされるのであった。
「円」というのは纏と練の高等応用技。通常は身体の周囲を数ミリから数センチの間隔で纏っているオーラを自分の必要な間隔まで広げる。これによって円の中にある全ての物の形や動きを肌で感じる事が出来る。猿が声と共に飛ばしてくるオーラの塊を円の中に入って来たものから一刀両断にしていくノブナガ。
明らかに興奮状態にある猿が飛ばすオーラ砲を斬りながら違和感を感じていた。確かに威力は申し分ない攻撃であったが、果たしてこの程度の攻撃にあのボノレノフがやられるであろうか…?
冷静に頭を働かせていたが、それならば尚更のこと警戒をしなければと気を引き締めた刹那。ノブナガの円にオーラ砲以外の物が侵入した。明らかに異質な雰囲気を醸し出したその物体に条件反射とも言える程の速度で居合いを見舞った…
ノブナガ「バカな………」
ノブナガの神速の一閃が止められた。そして居合い切りを発動すると同時に感じた恐怖をも感じさせるオーラの主。その漢が目の前で抜刀される前の俺の腕を掴んでいる…言わずものが確信した。ボノレノフをやったのはこいつだ……
ノブナガ「ありえねぇ…」
その漢の戦闘能力のことなのか、もしくはその纏うオーラの事か、多くの疑念が頭を過ったが、まずあり得ないのはノブナガの円の半径は4M、それは太刀の間合いと一致している。
その中に入った物は問答無用で斬られる。それは居合いを納めた者の価値観から言えば常識であった。ましてやノブナガはその中でも達人とも言ってもよい程の技術を持つ。それをあまつさえ抜刀する前にその手を止める事などあってよい筈はなかった…そして先ほどから刀を抜こうとしているが1ミリも動かす事が出来ない…圧倒的な腕力…
ノブナガ「てめぇ…何者だ?」
冷や汗を垂らしながら、言葉をはっしたノブナガにニヤリと笑い佇む漢。
パクノダ「ノブナガ!!離れて!」
具現化した銃から飛ばされた念弾が漢に目がけて発射された。すかさず距離をとるノブナガ。漢は素早い身のこなしで念弾が当たるより早く土煙だけを残し、岩の上に立った。
「ほぅ、そんな事も出来るのか…」
その漢は少し考えた後、手の平にオーラを集中させた。オーラを右手に集め、そして手の平の上に乗せた。感覚で言うと右手にバスケットボール大の球体を乗せているような状態だ。
しきりに「ほぅ…」っと唸ったりしている所を見るにこれが初めての経験なのだということがわかる。
そのバスケットボール大の球体を今度は両手で強引に縮めていく。
本来オーラを操る術を知る者であればそんな事をせずともオーラを操ることが出来るのであるが、いや、自らの腕力でオーラを握りこみ凝集させるなどまず出来る筈もないのだが‥この漢はまだオーラの扱いに慣れていないようだ。
強引に力でその球体をサイコロくらいのサイズに凝縮してしまった。
今度はそれを左手の手の平に乗せると右手でデコピンをし、そのオーラの塊を弾いた。
ノブナガ「パクーーーーッッ!!!」
その漢が凝縮したオーラの塊はパクノダの腹部を貫き、その場でパクノダは血を吐いて倒れた。
「勉強料だ、早く治療してやりな。俺は猿と戯れてた所なんだから邪魔するな」
そう言い残し、その漢は去って行った。黒い道着に身を包み、お尻には何故か315と書かれたプレートを付けていた。
乱雑に並べられたベットに見るからに堅気ではなさそうな者達が横たわっている、中には銃で撃たれた者なども居たりと、ここは正規の病院ではないのであろう。
国営の病院へは訳あって行くことが出来ない者、ケガや病気の原因の追及など一切ない。
そのかわりに多額な医療費を請求する闇医者が運営する病院であった。
酸素マスクを付け横たわる女性は旅団員のパクノダ。先の漢に念弾を撃ち込まれ意識不明の重体となった彼女をノブナガが近くの闇医者に連れて来ていたのであった。
ノブナガは困惑していた…彼女を守れなかった自分に対しての負い目はもちろんあったが、それ以上に今まで出会った事のない程の力を持った漢の存在…タイマンでは負けはしない…そう己の力を過信していた事にも腹が立った。おもむろに電話を取り出すと、ボタンを押した。
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シャル 「もしもし、ノブナガやっとーーー」
ノブナガ「シャルか、パクがやられた。恐らくボノレノフもやられてる…」
言葉を遮るように淡々とノブナガが続けた。
シャル 「どういうこと?なんで3人が一緒に?」
ノブナガ「俺が知るかよ、場所は解らんが恐らくボノレノフの故郷、ギュドンドンド族の集落だ。」
シャル 「なるほどね。パクは団長の指令で機体が現れた地で情報集するように言われていたんだ。そこがちょうどボノの故郷だったのかもね。容態は?」
ノブナガ「今はパクを連れて闇医者にいる、意識不明の重体だとよ…ボノは解らねぇがおそらくもう…」
シャル 「相手はどんな奴ら?」
ノブナガ「こっちが聞きてぇ…とんでもなく危なねぇ野郎だった。」
シャル 「もしかして一人…?」
ノブナガ「…………そうだ」
丁度その時に機体が1機、シャルの居るアジトに帰還した。続けざまに残りの4機も帰還した。
シャル 「オッケー。今ちょうどみんな帰ってきたんだ。ノブナガはそのままパクに付いててあげて、また連絡する」
ノブナガ「あぁ…」
機体から降りて来たクロロ、ウボォーギン、シズク、そして無惨な姿となったコルトピの上半身を抱き抱えたマチ。ウボォーギンが外側からハッチを開けると見慣れぬ漢が眠っていた。そのままウボォーギンが担ぎ、横たわらせた。
状況が理解できないシャルナークにクロロが静かに説明した。
シャル「なるほどね、ならその漢はコルトピの抜け番って訳ね」
クロロ「あぁ、意識が戻ってから話をするつもりだ」
クロロとシャルナークが今後の事について話を進めているとシズクがデメちゃんが吸い込んだもの出してくるねと言い。アジトを出て行った。
シズクの能力のデメちゃんは最後に吸い込んだものは吐き出す事が出来る。
吸い込んだものがどこへ行くのかはシズク自身も知らないし、別に吐き出さなくてもおそらく無限に吸い込むことが可能であったが、シズクの心情的に死体を吸い込んだ際はなんだかデメちゃんが可哀想になって吐き出さなくては気が済まないようであった。
アジトから数キロ離れた崖の上。下は断崖絶壁の海。
シズク「よし、デメちゃん、吐き出していいよ!」
そこに向かって、吸い込んだ死体とガラス片、床板を吐き出しアジトに戻った。本当はここにあちらの世界のたくさんの物も吸い込んで持ち帰る筈だったが今回は仕方がなかった。
表情からは普段何を考えているかいまいち読む事が出来ないシズクが今何を考えているのかは定かではないがそのままアジトへ戻っていった。
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吐き出された黒帯の集団の死体とガラス片、床板、そして、その中に範馬刃牙の姿もあった。
既に心臓は停止している。
医学的にも死体と言って間違いないであろうその身体を、海面に背面を打ち付けた衝撃か?上から落ちて来た死体の衝撃か?はたまた範馬の血か?全ての偶然が奇跡を産み、範馬刃牙の心臓は再び鼓動を刻むことになった。
「範馬刃牙復活ッッ!!範馬刃牙復活ッッ!!範馬刃牙復活ッッ!!」
目が覚めた瞬間に水の中に居た刃牙は、全身の力を抜き、そのまま水上へ浮上し、記憶を辿るが状況を整理する程頭が冴えていない、身体には負傷している箇所も多いようだ‥
そして考えることを辞めて月を見ていた。
今度は心臓の鼓動をそのままに静かに意識を失った。