ゴン「レオリオ、クラピカ、あっちで隠し扉を見つけたよ」
ハンター試験は滞りなく進み、第3次試験を迎えていた。試験内容はトリックタワーと呼ばれる高い塔の最上階から生きて下まで降りてくること。制限時間は72時間。
外壁をつたって意気揚々と降りていったロッククライマーの人が怪鳥に襲われた所をみると外壁を伝って降りることは難しいのであろう。時間とともに人数が減ってゆく受験者に焦りを覚えていたレオリオとクラピカにゴンとキルアが駆け寄ってきた。
4つの隠し扉を見つけたようだ。話し合いの後1、2の3で一斉に。
4つの内のどれかが罠であっても恨みっこなしということで同じタイミングで降りた4人。ハンター試験という状況にも関わらず互いを尊重しているこの4人は本当に素晴らしいと思う。
降り立った先は4人が4人とも同じ部屋。照れ笑いを浮かべて短い別れを懐かしむ一同に、頭を丸め早口で捲し立ててきたのは294番のハンゾーだった
ハンゾー「いやぁ~待った待った。良かったぜ!お前らが来るまでもしかしてずっとここに一人で待ちぼうけするのかとひやひやもんよ、何にしろこれで5人揃ったし先へ進めるってことだな。おっと、自己紹介がまだだったな俺の名前はハンゾー。よろしくな」
ハンゾーからの説明の通りここから5人で腕時計のような形のものに○と×のボタンがついた機械を使用し、多数決で行き先や行動などを決定して進んでいくことになるようだ。
この機械を5人全員がはめると扉が開き、その奥にまた扉があり扉にはこのような表示があった。
このドアを
○→開ける ×→開けない
ピッ
このドアを
○→5 ×→0
満場一致で扉を開けた。最初から行動を共にして助け合ってきた4人だけならともかくこのハンゾーという男とも、なかなか相性が良さそうだ。特に揉めることもなく様々な試練を少し楽しそうに看破した4人は4次試験に進む。
4次試験の内容は狩るものと狩られるもの。一人一人くじを引き、引いたくじに書かれているナンバーが自分のターゲットのナンバープレートとなる。
自分が持っているプレートは3点。ターゲットのプレートも3点。それ以外のプレートは1点となり、ゼビル島での滞在期間中の7日間で6点分のナンバープレートを集めた者がこの試験の通過者となる。
この4次試験まで残った受験生は既に20数名という少数になっていた。その為1点分にしかならないターゲット以外のプレートを好んで狙う者などまず居ないであろう。
自分にとって1点分のプレートということは他にそれを狙っている者もいることになるので無用な争いを起こすことにもなりかねない。おのずと勝利への定石は自分のプレートを守りきりターゲットのプレートを奪取するということになる。
船が島へつくまでの2時間は自由時間と言い渡され、船の旅をお楽しみくださいという案内人の笑顔に対して、受験生の顔は険しい。誰とはなく自分のプレートは胸から外し懐にしまい込んでいた。皆、誰とも視線を合わせようともせず情報を遮断する。
甲板で座り込み佇むゴンの隣に座ったキルアが投げかける。
キルア「何番引いた?」
ゴン 「キルアは?」
キルア「ナイショ」
このやり取りでお互いに笑顔を見せ、2人の間での緊張が少し和らいだ。
キルア「安心しろよ、俺のターゲットはゴン(405番)じゃない」
ゴン 「俺もキルア(99番)じゃないよ」
せーので見せっこをすることになったゴンとキルアは同じタイミングでくじで引いたターゲットのナンバーを見せ合う。キルアのターゲットは199番。2人とも心当たりはないようだ。
最もキルアがゴンに声を掛けたのはゴンのターゲットが誰か気になっていたのも確かではあるが、この199番が誰か知っていたら教えて貰うつもりでもあった。
ゴンが出したプレートを見てキルアがとっさに言う
キルア「…マジ?」
ゴンのターゲットは44番。奇術師ヒソカのナンバーだった。
プレートから再びゴンの顔に視線を戻すとゴンが震えているのをキルアは見逃さなかった。
キルア「嬉しいのか怖いのかどっちなんだ?」
ゴン 「両方…かな」
ゴンはこれがもし決闘であれば自分に勝ち目はなかっただろうがプレートを奪えばいいということならば何か方法があり、チャンスもあると。そう思うと怖いけれどやりがいはあるとそう言った。まぁがんばろうぜ、生き残れよゴン。といい残しその場を去って行くキルアに対して、親指を立てたゴンであった。
船がゼビル島に到着し、アナウンスが流れる。いよいよ4次試験が開始されるようだ。3次試験のトリックタワーの制覇が早かった者から森に入れるルールになっているようで、その後も成績順、2分間隔で船から島へと降りていくようだ。
「それでは一番の方スタート!!!」
進行役の女性の元気の良いかけ声で3次試験を1位で突破した44番のヒソカが今ゼビル島へ降り立った。
「22番スタート」
4次試験の順番通りに数刻後に呼ばれたゴンが元気よく島へ駆け出す。森の中へ駆け出すその足取りは好奇かまたは恐怖か、そのどちらの感情をも持ち合わせ歩を進めて行く。
どれだけ歩いただろうか?未だに受験生の誰にも遭遇することはなかった。
ここは思っていた以上に広い島だったようだ。一度だけ後方に気配を感じたような気もしたがそれも気のせいだったのだろう。水辺を見つけそこでやっと一息つきながら服を洗濯することにしたゴン。ハンター試験が始まってから数々の試験を突破してきたゴンの服は泥や砂で大分汚れていた。
落ちてゆく汚れを見つめながらどうしたらヒソカからプレートを奪えるだろうかと考えていた。まぁまだ7日もある。しっかり対策をして望めばきっとなんとかなる。ゴンは持ち前の前向きな思考も相まってまずは腹ごしらえにいそしむことにしようと決めた。
既にトレードマークにもなっている釣り竿を手に魚釣りを始めた。さっそく何かが掛かったようだ。
ゴン「お!!きた!!きたきた!!きたァーーーー!!」
どこかで見たような光景である。デジャブ?いやその辺りは気にしないでおこう。なにしろ釣り竿には魚は掛かってなかったのだから。魚の代わりに掛かっていたのは一人の少年。
Tシャツに針が引っかかり運良く身体に針はささってなかったが意識のないこの少年は身体中傷だらけだった。
ゴン「え!?なに!?ねぇキミ大丈夫?」
手厚く看護しながら少年に言葉をかけ続ける。意識のない少年にちょっと痛かったらごめんね?と一応一言断りを入れてから、背中に掌底で喝を入れる。
「ゴホッゴホッゴホッッッッ」
ゴン「あ、水が出たね!」
口から大量の水を吐き、やっと意識を取り戻した身体中傷だらけの少年。
あれからどれくらいの日数が経過しているのだろう?最後に覚えているのは海面から見えた美しい月。少し記憶が混同している。なんにしても助けてくれたのであろう、このとんがり頭の少年にはお礼を言っておくべきだろう。
「ありがとう、助かったよ。」
ゴン「いきなり水から出てきたからびっくりしたよ、オレはゴン=フリークス!キミの名前は?」
バキ「バキ…範馬刃牙だ」
ゴン「はんま…あれ?もしかしてバキはおじさんの…?ユージローって大っきな黒い服着た人。」
バキ「ユージロー?範馬勇次郎は俺の父親だけど…」
ゴン「やっぱり!だと思ったんだ。おじさんもオレが釣り上げたからさ。」
刃牙は戸惑う。少しだけ時間をくれとゴンに断りを入れてから頭を整理する。自分は神心会本部の道場であの大男と戦い敗北した。そこまでは解る。確かにその瞬間に一度死んだ。
いや、死を意識する程の衝撃をこの身体に感じた。その後、幸運にも意識が戻ると海の上に浮かんでいた…そしてまた意識を失い今に至る。ストライダムの話を参考にすると父親が違う世界に行き、その機械に乗って帰って来たのは勇次郎ではなく、見知らぬ5名。そしてその中の一人が数々の戦友達を相手に猛威を篩った…。
バキ「親父がここに…?ゴン、ここって日本だよな?」
ゴン「にほん??ちょっとオレそういうのわからないんだよね。でも試験官の人はゼビル島って言ってたよ!」
バキ「日本って聞いたことない?アメリカは?」
ゴン「う~ん。オレはくじら島っていう小さな島出身なんだ!だからごめんちょっとわかんないや」
バキ「そうか、悪い。なら俺の父親の範馬勇次郎は今どこにいるかわかるかい?」
ゴン「おじさんとは一緒にハンター試験を受けてたんだけどね、途中でハンター協会の会長とケンカして負けちゃって、そっから姿は見てないんだ」
バキ「負けた!??負けたって喧嘩で親父が!?」
ゴン「うん。なにがあったのか良くわからなかったけど…その会長に吹き飛ばされて動かなくなっちゃって、どこかに運ばれていったよ」
バキ「…………」
放心状態となっている刃牙の姿を見て、少し気を使うようにゴンが慌てて言葉を足した。
ゴン「あ、あのね、ハンター試験っていうのはプロハンターになる為の試験でオレの親父もプロハンターなんだ。だからオレもハンターになりたくって。ちなみに今は4次試験の最中なんだ。バキはまだちょっとそこで横になってて、オレが魚釣るから一緒にごはんにしよ!」
バキ「…‥…」
範馬刃牙、若干18歳のこの少年にとって父親の絶対的な強さはむしろ崇拝に近い。
産まれ落ちてから今までの期間ずっと父親を越える事のみに心血を注いで来た。ただただ父親より強く。
その為に様々なことを犠牲にしてきた刃牙は格闘士として恵まれた体格とは言えないその小さな身体で地下闘技場のチャンピオンにまで上り詰めた。
ただただ弱い部分、足りない部分を鍛える。
そんな生活を送ってきた刃牙ならではのシンプルな発想が行き着いた答えはいかにも彼らしかった。
ゴンが釣り上げた魚をそのまま丸焼きにした物を口に運ぶ刃牙は、その答えを呟く。それが独り言なのか誰かに対して発した言葉なのか、向かい合うゴンは解らなかったが大切な事なんだという事だけは理解でき、静かに聞いていた。
バキ「夢…………夢じゃない。確かに感じられるこの魚の旨味。疑りようもないこの胸を叩いた拳の感覚…何度だって驚ける…一体誰が信じる!?
異世界の人間と戦った。それもかなりの強者…ストライダム大佐の説明は無教養な俺には難しく…とにかく親父が異世界に行ったということらしい。理屈はともかく…はっきりしていることがある。
異世界の人間と立ち会った証拠はこの五体に刻まれている。立ち会った際に解った。こちらの世界とは異なった部分での強さ。この世界で生き残るのは何か違った力が必要…意識が戻ってから感じるこの身体に纏う「何か」おそらくこの力はこの世界で強者を名乗るのならば身につけて当然の嗜みだろう…なんて虫のいい…ツイてる…無茶苦茶ツイてる!!
原始の太古からピクルという奇跡がやって来た。
戦国の世から「最強」宮本武蔵が俺達の前に。
そして今まさに異世界にまで来てしまった俺。
理解ったよ……もう理解った…
時代が…
法則が…
神が…
俺が…
人類史最強を決定しようとしている!!!」