HANMER×HANMER   作:としを

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HANMAR×HANMAR♯17

漢は静かに天井を見上げていた。無機質な天井と薬品の匂いから、この場所は死闘を終えた度に何度も世話になったことがある病院である事を悟る。

また…むざむざ生き残っちまったか…。

 

そう想いを馳せ、窓の外に視線を移すと太陽がちょうど落ちようとしている綺麗な夕焼けの色を角膜で感じることができた。漢はいつか考えたことがある。自分の死に場所。武神とまで言われている自分の死に場所はやっぱり戦いの中でしかありえねぇ…老衰なんてまっぴらごめんだ。いつだって前のめりで攻めて、攻めて、そこで死にたい。もっとも負けて死ぬなんてご免だ。

 

勝ってから死ぬ。ビシッ!と型でも決めちゃってよ。

格好つけて死にてぇもんだぜ。その後ろには妻と、克己は…まぁ声掛けてやってもいいか。

出来の悪い息子だったが最近はめっきり親離れしちまって寂しいもんだぜ…。えっとよ、確認なんだが俺はまだ生きてるんだな…?意識が鮮明になり、ぼやけた視界がはっきりすると先ほどまでとはうってかわって穏やかな顔が一変した。

 

 

独歩「覚えてやがれよ…あの野郎!!!

 

 

 

同じく同じ病棟の違う部屋。ここにいる漢の部屋の前には病院には似つかわしくない見るからに強面のスーツ姿の漢達が数人立っている。微動だにしないその姿勢を崩さぬまま、目の前を通り過ぎる人間を、その存在感で威圧しながら注意深く観察する。恐らくあの漢の護衛であろう。

花山組二代目組長、花山薫。

 

大きな身体をそのままに眠っているのか嗤っているのか表情が伺えない。

 

重体にも関わらず、サイドテーブルにはタバコとお決まりのウイスキーが置かれている。多くの格闘士もそうであるが、文字通り法の外に生きるこの漢は、その者達とは一線を画す。兎にも角にも欠伸が止まったことには違いない。ただこの漢。喧嘩師として喧嘩に負けたまま終わる漢ではないと。

 

それは誰もが知っている。

 

グッっと見開いた血走った眼で飲み終えたウイスキーの空き瓶を握り込み。破裂させた。

 

 

 

花山「ッッッ………!!!

 

 

 

 

買いかぶっていたつもりはない。何を?実力をだ…。

向上心の塊のようなこの漢は地下闘技場で刃牙に敗れてからというもの鍛錬に継ぐ鍛錬。血を分けた実の兄弟である兄。スーパードクター鎬紅葉に勝利し鎬流をさらなる高みへ。

 

数々の武術を取り入れ斬撃拳というオリジナルまで極めたつもりであった…つもりであった…。

 

規格外の存在との戦いは初めてではない。常に強者と切磋琢磨してきた…つもりであった…。

 

だが…己が今まで出会った最強の敵を持ってしても比べるに値しない程の強者の存在が昂昇の信念を揺らがせる…。

武闘家として最も信頼を寄せる身体、その四肢の一端である腕をいとも簡単に折られたのだ…心中は察してやるべきであろう。

 

 

昂昇「俺は…俺は‥弱いのか…?

 

 

 

 

未熟。未熟。未熟ッッッ!!

 

漢の意識は先の3名と比べて一番しっかりとしていたようだ。実力を見誤う愚。

慢心していた…何よりも…気を使わせていたッッ!

同じ舞台に立ちながら、相手に気を使わすという闘士としてあるまじき侮辱を恥じていた。

 

そして己の技、力、戦略、全てが許せない。

 

私の身体を気遣うかのように放たれる拳は実力の何割だったのだろう…功がなったと思い上がっていた自分が何より許せないッ…敗北をし、尚、生きながらえてしまった…奥歯を噛み締める音が外まで聞こえてくる…。

中国武術を舐められたままでは絶対に終わらせることができんッッ!!

数千年間という途方も無い時間を経て、先人達が与えてくれたもの。ある者はそれを途方も無い学問と謂う。

 

その現代の最終形態とも呼び声高い己が負けたことは即ち、数千年にも及ぶ中国武術の敗北を意味する。

 

 

烈「このままでは…納得できんッッッ!!

 

 

 

 

そして

 

 

 

渋川 「ーーーーーー

 

ウボォーギンの超破壊拳(ビックバンインパクト)を最も近くで受けた渋川剛気は未だ意識不明の重体。閉じられた目、その意識の先に何を想うのかは本人のみぞ知る…

 

 

 

最後の病室には横たわる愚地克己を囲うように徳川光成、ストライダム、鎬紅葉が居た。

 

紅葉「愚地克己さん、わかりますね?まだ意識が戻ったばかりで悪いが何があったのか、話して貰ってもいいかい?」

 

克己「あぁ…」

 

一度ゆっくりと目を瞑り、状況を思い出すように断片的に記憶を辿る…夢か現実かすら疑わしかった。神心会にとって過去最大級の未曾有の大事件と大惨事。夢であるなら夢であって欲しいと、この屈強な漢が切望する程。自身の負傷をみるとそれは叶わない紛れも無い現実であると悟る。深い溜め息と共に言葉を吐き出した。

 

克己「入れ墨……腰の辺りにベッタリと張り付いた…そう、蜘蛛の入れ墨だ、11と数字が入っていた…」

 

光成「蜘蛛の入れ墨とな…?」

 

克己「あぁ…俺が最後に見たのはあの男の蜘蛛の入れ墨だ…そいつに‥そいつたった1人に手も足も出なかった‥」

 

光成「よし!奴らで間違いなさそうじゃ!なら早速顔写真と共に緊急で指名手配をするように警察にも手を回そう」

 

克己「ふざけるなッッ!!これ以上神心会に、俺に、親父に…恥の上塗りをさせろっていうのかッッ?!?」

 

空手団体として世界で最大規模に支部を持ち、門下数の数は100万人。決して事前事業で行っている訳ではない。曲がりにも武闘派集団と詠っているその本部道場のトップクラスの実力者が雁首揃えて集まっていた最中に襲撃され、死者も多数。残された者のほとんどが意識不明で病院送りにされたなど、長たる克己には世間に公表することは断じて許せなかった。

 

克己「徳川さん…無礼な言葉を使ってしまい申し訳ありません…ただ、世間に公表するのは俺があの男を取っ捕まえてからです」

 

克己はまだ諦めていなかった。その真っすぐな瞳の奥に復讐の光を宿し。天井を見上げた視線の先に蜘蛛の入れ墨を見る。

 

ストライダム「その事なんだが…」

 

そう切り出したストライダムが、全てを話した。あくまで可能性の問題であり憶測の域は出ていない。ただ神心会を襲撃した男。そしてその者の仲間。現場に居合わせ生き残った黒帯の門下生に写真で確認は済ませてあったようだ。

機械のようなものに乗り消えていったと…。信じたくない気持ちから可能性という言葉を使ったストライダムであったが、ここまでの状況証拠が揃っているとなると言い逃れは出来ないであろう。異世界の住人である事を聞き、徳川光成も目を丸くして、言葉をなくす。

 

その全てを、克己を始め独歩、花山、昂昇、烈、にはその日の内に伝えた。

 

激震が激震を呼び、その噂は瞬く間に地下闘技場を生業とする数々の猛者達の耳にも届いたのであった。

皆、一様に想う事はそれぞれであったが共通して言えること。それは攻撃を受けた5名の身体を覆う何かが以前とは違っているという事。

そのオーラにより回復力が促進されていた事は後に知る事になる。だが、そのお陰で全快し徳川邸に決起集会を行いそれぞれの情報を交換したようだ。

 

 

範馬刃牙、加藤清澄、末堂厚、3名の葬儀はその後盛大に行われた。




まさか自分の葬儀が行われているの事など夢にも思っていないこの漢は現在境地に立たされている。

末堂(おいおい…マジかよ…マチじゃねぇか!本物のマチじゃん!シズクもいるし………めっちゃ可愛い!!反則だろ…こんな美しい女性がこの世の中にいるなんて…あれ?ウボォーギンがいる、ってことは俺の最後の攻撃ってやっぱダメだったのか…噛ませ犬らしく華々しく散ったってことだな。まぁちょっとはビビらせることできたし、こいつら相手によくやったと思うぜ。加藤もきっとそういってくれる。
さてさて、もう走馬灯みたいなのはいいからよ、さっさと相方のとこ連れてってくれや。お、マチが近づいてきた。近くで見るとやっぱめっちゃ可愛いな…そんなに顔近づけて…おい、惚れてまうだろッッ!!それにしてもいい匂いだぜ…神様、最後に夢見させてくれて、ありがとな)

走馬灯と思っていた末堂が最後に見た、顔の造りから瞳の大きさの世界観までも違う美系のマチの姿や匂いをしっかりと脳の記憶中枢の海馬へ刻み、感謝しながらこの世への未練を捨てたところで右頬に鋭い痛みが走った。

末堂「いてててッッ!!」

マチ「こいつ目が覚めたみたいだよ」

椅子に縛り上げられた末堂の顔をひっぱたくマチ。そのまま別室にいるクロロとシャルナークを呼びに行った。

叩かれた頬の痛みから自分がまだ生きている事を悟り現在境地に立たされているこの漢は旅団員の一人であるコルトピを倒し、気を失ったままこちらの世界に連れて来られた末堂厚である。

フィンクス 「こんな奴が本当にそんな化け物みたいな力を見せたっていうのか?」

フェイタン 「とてもそうはみえないね」

フランクリン「おい、お前ら!あんまり近づくなよ、何かあるぜ」

先ほど合流したこの3名は既に話を聞き、大まかな情報は理解している。もちろん個人差はあるがフランクリンという顔に傷を持つ男はしっかりと事態を把握していたようだ。だが他の2名は少し怪しいものだ。クロロとシャルナーク、続いてマチが入ってきた。

入ってきたクロロは末堂の顔を一瞥すると淡々と言葉を発した。

クロロ 「名前は?」

声が聞こえなかった訳ではない。末堂は漫画で見ていたクロロやその他の登場人物が実在する人間として、こうして目の前に存在し、そして言葉を投げ掛けてくることに目を見開き、しばしの動揺から言葉を失っていた。

フェイ 「やはり殺すいいね」
フィン 「オレがやってもいいぞ」 

返答がないことに殺気立った目で睨みつけるフェイタンとぼきぼきと指を鳴らすフィンクス

クロロ 「名前は…?」

もう一度、繰り返された言葉は末堂に対して偽りは一切認めないという強い信念を伺わせたのと同時に、自分が今置かれている状況。そして、この者達が殺人も厭わない、悪名高き幻影旅団だということを理解させた。発せられた圧は小細工は効果をなさないことを再認識させるには十分であったが、奇しくも再び繰り返されたこの言葉は逆に末堂を冷静にさせた。

末堂(生き延びてやる……ッッ!!)

末堂「末堂厚」

クロロ「スエドウ、お前が今置かれている状況は理解しているか?」

末堂 「アンタらが…ふざけている訳ではないってことは解る…そして俺を殺すことに一切の躊躇いもないってこともな…」

クロロ「ずいぶんと冷静なようで安心した。目が覚める前の記憶はあるか?」

末堂 「あぁ…あそこにいるデカイ奴が道場にやってきて、俺の師や友人達を倒し…俺が殴り掛かった所までだ」

クロロ「その後、お前はこちらの仲間を一人殺し、意識を失ったが我々でこの世界に連れてきた。オレらは旅団という盗賊団だ。メンバーは厳選される。例外はあるが団員の人数は13人。団員が入れ替わる際は元居た団員を希望者が殺すか現団員の推薦となる。オレがお前の入団を推薦する。そしてお前は既に元団員の一人を倒した。言っている事が判るか?お前次第となるが、選べ。」

末堂 (元居た世界だと…?ならやっぱりここはハンターハンターの世界…。そこに俺は連れて来られちまったってことか!倒した?ならなんでウボォーギンがそこにいんだよ!!全然覚えてねぇ…クソッ!)

末堂 「選べって…一体何を選べばいいんだ?」

クロロ「入団するか、死か、だ」

末堂 (おいおいおい…選択肢少なすぎるだろ!いい加減にしろよこの野郎…目がマジじゃねぇか…俺が旅団に?旅団ってあれだろ?ヨークシンでマフィアに喧嘩売ったり、クラピカに復讐されたり…あと蟻と戦ったり…とんでもねぇあぶねぇ奴らじゃねぇか…俺で務まる訳ねぇだろ……でも…ここでのNOはない…NOは即、死を意味する……くッッ!なってやろうじゃねぇか!)

末堂 「……する。入団するぜ…。」

クロロ「入団を歓迎しよう。スエドウ。他に何か質問はあるか?」

末堂 「正直に言うと、俺はまだこの世界の事と置かれている状況が良く理解出来てないんだ。さっき連れてきたと言ったがお前らがどうやって俺が居た世界に来たのかだってわからねぇ。ウボォーギンだって生きてるだろ?何がどうなってる?」

暫しの沈黙。。。
クロロ「……お前…なぜウボォーの名を知っている?」

末堂 (しまったッッ……!!!!)

ゆっくりとそしてはっきりと発せられたその声は漢の耳によく通った。そしてその言葉に込められた圧力を自身が元居た世界では活躍の場は無かったが常人と比べれば圧倒的に人間離れしたポテンシャルを持つこの漢は悟る。
失言は即、死に繋がる…これからの発言、行動、その全てに細心の注意を払はなければ死ぬ。脳細胞へこれまで生涯で最大といっても良い程の神経を集中し、言葉を選ぶ。

末堂 (死ぬ気でごまかしてやるッッ……!!!!)

末堂 「それは俺の能力に起因する…クロロ=ルシルフルさんよ」

クロロ「ほぅ…」

末堂 「お前らだって仲間に知られたくない能力の1つや2つは持ってるんだろう…?」

クロロ「あぁ、構わない。お前が元居た世界では念能力のたぐいは存在しないかと思ったがそれは誤った認識だったようだな。」

末堂 「フッ!俺を誰だと思ってやがる!」

クロロ「歓迎しよう」

末堂 「世話になるぜ」


末堂(あっぶねぇーー!!ヤバかったぁーー!!!なんとかなったぜ!俺天才!!漫画で読んだとかいっても殺されるだけだ、沈黙は金!俺だけが知ってる未来で俺はなんとか生き延びてやる!こいつら利用してな!そして‥あわよくばこの世界の美人と・・好きなキャラと童貞を卒業してやるぜぇ!むふッ)

少し前に見せた加藤に対するあの漢らしい姿からは想像が出来ないが末堂にとって冨樫先生の描く女性は加藤の死を越えてゆくほどの衝撃だったのかもしれない……

末堂厚、無事に?幻影旅団に入団ッッ!!
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