キルア「参った…俺の負けだ…」
キルアのその言葉に審判や観客は唖然とすることになった。
数刻前
ビスケ(この子がキルアね。あのネテロのジジイが私に鍛えてくれって頼むからどんなゴリラかと思ったら、なかなか美形じゃない、纏ってるオーラもどこか儚げだけど質が良さそうね、ちょっと楽しみになってきちゃったわさ)
ビスケ「宜しくお願い致します」
対戦相手となったキルアにビスケが猫かぶりモードで丁寧にお辞儀をしたがキルアはそれを無視した。
審判がルールの説明をしている時にも審判に対して発言する。
キルア「あ、もう解ってるからいいよ。どうせ俺が勝つんだし」
ビスケ(ビキ…ビキ…)
笑顔のままビスケの顔は強ばっていった。
ビスケ(言うにことかいて、このガキャ、あたしがてめェの何倍生きてると思ってんだスカが!あたしがちょっと本気になりゃオメェなんざ片手でチョチョイのチョイだぞ、決めた!少しだけオメェに現実を教えてやろうと思ったけど、こうなったら修復不可能になるまでメタメタにその高い高い鼻をへし折ってやんよ)
開始と同時にキルアがビスケの後ろに回り、首筋に手刀を落とす。
ビスケ(へぇー意外に早いし確実に意識を奪いに来たわね、でも残念、こんな攻撃眠ってたって避けられるわ)
ビスケはその手刀を躱し、キルアに笑顔を向ける。
ビスケ「殺す気でいらしたら?どうせ私が勝つんだけど力出し切らなかったとか後で無様に言い訳されたら後味悪いしね」
キルア「あ?あんまり調子に乗んなよ」
キルアは先ほどよりも早くビスケに攻撃するがその手刀は再び空を切ることになった。少し頭に血が上ったキルアは真っ正面からビスケに向き合い連打を行う。
実況「キルア選手の猛攻!!早い!早い!早い!!驚くべき名勝負がこの少年と少女との間で繰り広げられている!ビスケ選手防戦一方!!攻撃を辛うじて紙一重で躱すのが精一杯です!」
そして、その時は訪れた。
キルア「参った…俺の負けだ…」
観客の誰しもがキルアの勝利を確信していたがその試合をロビーの画面で見ていたウイングは頭を抱えた。
ウイング「全くあのお方は…」
顔面蒼白で目を虚ろにしながら、キルアはゴンと刃牙と合流した。キルアが負けたというのは衝撃的であったが、50階クラスで戦ったファイトマネーで3人は宿に入り、キルアは一言も話さずにベットに潜り込んでしまった。何があったのかは聞かなかったがよっぽどの相手だったのだろうと推測した2人は何も聞かずに一夜を過ごした。
キルアとビスケの攻防はキルアが今まで培ってきた全てを全否定する程の実力差を感じさせた。
布団に包まりながらキルアは今日という最悪の一日を振り返っていた。
(女に負けた…女に負けた…しかもオレより年下だろ…あいつ一体何者だ…??オレの動きが全て読まれてた…しかも…実況や観客には見えてないのか…オレの攻撃が終わる度に…毎回毎回あり得ない早さで額にデコピンを入れてきやがった…あれはいつでも俺を倒せるっていうサインに違いない…攻撃をする度に訪れる恐怖のデコピン……クソッッ悪い夢なら覚めてくれ…なんだったんだあいつ…こんな侮辱されるなんて…しかも年下の女に…クソッッ…)
そして次の朝、悪夢がさらに襲いかかる。
呼び鈴が鳴らされた宿の扉を空けるとそこには昨日キルアを弄んだ笑顔の少女とウイングが立っていたのであった。
ビスケ「はい、腕立ての次はスクワットよ。ゴン何休んでるわさ?回数増やしたいの?」
ゴン 「違うよっ!!汗で滑ってちょっとだけ‥‥」
ビスケ「言い訳はいいからゴンは腕立て100回追加!ほら、集中!!」
刃牙とゴン、キルアの3人はあの日からみっちりとビスケにシゴかれることになった。
もっともキルアだけは最後までフテっている様子であったが、身を持って体感したビスケの実力の底が見えなかったのも事実であった。
キルアが納得した一番の理由はビスケが自分よりも年上であり、ウイングの師匠でもあったということである。
そのことに関してはもちろん驚いたが重要なのは年下ではなかったということがキルアのプライドを保つことに意味を持つ。
刃牙「でも、なぜ俺達に稽古をつけてくれるんだ?」
ビスケ「ある人からの依頼でね。まぁ謝礼はそいつからたっぷり貰うつもりだからあんた達は黙って私のメニューについてきたらいいわさ!」
おほほほっと笑うビスケの目が輝いているのはきっと依頼主からの見返りを思っての事だろうことは容易に想像ができた。不信感を募らせた刃牙にウイングが助け舟を出す。
ウイング「ゴン君とバキ君の二人は今年ハンター試験に合格しましたよね?実はまだハンター試験は終わってないんです」
ビスケ 「ちょっとウイング!余計なこと言うんじゃないわさ!それは全部終わってから話すのが楽しいんじゃないのよ!」
ゴン 「え?どういうこと?ライセンスならもう貰ったよ?」
ウイング「はい。ただ、まだ君たちをプロハンターとして認める訳にはいきません。ハンターにとって最低限の強さは必要になるためプロハンターとしての活動を行う合格者には例外はありますが、まず第一に念を収めて貰う決まりになっているんです。試験を勝ち抜いた君たちなら分かりますね?つまりこの方は協会から派遣されてきたプロハンターですよ。あえてこの方を派遣したということはおそらく会長から直々に言われたんのではないですか?」
それに楽しいとか楽しくないとかではありません。もっと自覚を持ってくださいと。ビスケを睨みつけるように眼鏡を持ち上げる。
ビスケ 「暫く会わないうちに一丁前の口を利くようになったわね‥そういうことよ!だからアンタ達は黙ってワタシのメニューについてくればいいわさ!(最もあのジジイが何の考えもなくワタシに修行を依頼するとは思えないけどね)」
「ハンター十ヶ条」其乃二項にはこうある。
◆ハンターたるもの最低限の武の心得は必要である、最低限とは念の習得である。
つまりは念とはプロハンターを名乗るには必要不可欠な武であったのだ。3人はビスケの執拗なシゴキに耐え。ウイングから10万人に一人の才と言われているズシが舌を巻く程の速度で成長しあっという間に基礎の四大行をマスターしていった。
100階に上がり、専用の個室を手にしてからは修行に追われていたので闘技場での戦いはなるべく控えていた。というよりも、連日、連日、クタクタになるまでビスケにしごかれ、修行後は倒れるように眠る生活を続けた為、組まれた試合を棄権することも多く、闘技場に立つ余裕が無かったといえよう。
そのため、ビスケの思惑通りなのかは甚だ疑わしいが、基礎を収めたそのタイミングで三人はやっと200階に上がった。
キルア「ウイングの言ったとおりだな‥‥」
刃牙 「あぁ‥」
コクリと頷くゴンもそれに続いた。
エレベーターが200階に向かう前に感じられた不気味な念。明らかに敵意はこちらに向けられているのを感じる。
ウイング曰く、200階以上の闘士は全て念能力者であり、それを知らない者は洗礼を受ける。つまり念能力での攻撃だ。念による防御なく念能力による攻撃を受けた者は最悪死に至たることもある。それを知らずに200階に上がった無知な闘士を好んで狙い、容赦なく念を持って攻撃し、勝利を積み重ねるような者も少なくないようだ。
念を学んでまだ日の浅い3人であるがその意味を身を持って感じていた。
そして‥このオーラには身に覚えがあった。
否、あり過ぎる。
ヒソカ「200階クラスへようこそ♥洗礼は受けずにすみそうだね♦︎」
忘れられない顔。ハンター試験で際立った異質さをみせていた道化師ヒソカがそこに居た。
キルア「やっぱりお前かよ!何でここに!?」
ヒソカ「別に不思議じゃないだろ?ボクは戦闘が好きでここは格闘のメッカだ♣︎なんてね♥もちろん偶然なんかじゃなく君達を待ってた♦︎」
ゴン 「まさかそっちから現れるとは思わなかったよ手間が省けた」
ヒソカ「くっくく♥基礎を覚えたくらいでいい気になるなよ♠︎念は奥が深い♦︎」
刃牙 「あの・・俺とも戦ってくれるかい?もちろんゴンの後でいい」
不敵な笑みを浮かべながら去っていったヒソカは去り際に刃牙とゴンにこのクラスで1回でも勝つことができたら挑戦を受けると言葉を残していった。