HANMER×HANMER   作:としを

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烈が生きているのに武蔵後編?とご指摘頂きましたが、書いたのが数年前になりまして、おそらく40話くらいまではストックを改変して載せていきます。なので時代背景など今後ずれてくる部分もあると思いますが刃牙道の連載が始まった頃ぐらいとお考え下さい。今後もツッコミ所が色々あると思いますがご容赦下さい。いつも読んで下さりありがとうございます。


HANMAR×HANMAR♯25

『さぁーーーいよいよです!!カストロ選手VSドッポ選手の大決戦!!』

 

マントのついたひらひらした服を身に纏ったカストロと神心というこの世界では聞いたこともないような流派の道着に身を包んだ独歩が対峙する。これから試合を迎える者しては両者随分と余裕を感じられる。その余裕が己を強者せしめる確固たる自信と場数を踏んでいることを匂わせていた。澄ました顔でカストロが語りかける

 

カストロ「感謝するよドッポ、キミは場所を問わず戦いたかったようだが、せっかくの対決にはそれなりの観衆が欲しかった。」

 

独歩  「気に入らねェな・・200階に入ってから楽しい戦いが出来るもんだとばかり思ってたら、最初の1戦以外つまらねェ奴らばっかりで辟易してたんだ。なァ兄ちゃんよォ、少しは楽しませてくれんだろう?」

 

カストロ「言っておくが、ヒソカに敗れてからの8戦、1度として全力で戦ったことはない、全てが奴を倒す為の準備運動に過ぎない!」

 

独歩  「アンタを倒して次に俺がそいつと戦いてェなァ」

 

 

『始め!!』

 

カストロ「行くぞ!!」

 

審判の合図と共にカストロが声を上げ独歩へ強襲を掛ける、それを独歩は鉄壁の防御、前羽の構えで迎え撃つ。

カストロの左の手刀、それを独歩が捌き、間合いを詰めカストロの懐に入り、正拳突きを放つ。

カストロは放たれた正拳を受け1m後方へ引くが、一瞬と時を開けずに今度は左足での蹴りを入れる。独歩はそれが放たれる前に右足でカストロの股関節辺りを押し、倒れたカストロを上から見下ろした。

 

カストロ「・・・・・・ッッッ!!!?」

 

眼帯で覆われていない右目が冷ややかな光を放ち、冷徹にカストロを見下していた。

 

ゴンの試合のチケットは確保したが、人気闘士同士の戦いであるこの試合のチケットが入手できなかったビスケはホテルに宿泊しているウイングに録画を任せ、天空闘技場のとあるフロアで腕を組みながら、映し出されるカストロと独歩の試合をモニター越しに見ていた。

 

ビスケ 「堂に入ってる・・・わさね・・・」

 

ウイング「はい・・何者なんでしょうか・・ただ・・・これはあまりにも」

 

ビスケ 「・・・アンタどっちに賭ける?」

 

ウイング「やめてください。賭けになりませんよ」

 

ビスケ 「アンタはそういうの嫌いだったわね、勝敗はともかく・・あのカストロって男の首筋・・」

 

ウイング「ええ、何かありますね。」

 

独歩ファンの男性客のボルテージは上がりに上がり場内を覆うようなドッポコールの大歓声が広がっていた。対象的にカストロのファンの女性達は悲鳴をあげたり涙目で祈るように手を顔の前で合わせている。

 

独歩 「あのよォ、兄ちゃん、散々勿体振ってこれで終わりってことはないんだろなァ?」

 

ゴクリと生唾を飲み込み、目線を伏せながら服についた土をパタパタと払い、立ち上がるカストロ

 

カストロ「安心し・・・・」

 

カストロの顔面数センチ前で独歩の正拳が静止した。

 

独歩  「空手家前にして目逸らして話すんじゃねぇよ。そろそろ本気で掛かってきてくれねぇかい?って言ってるんだ。」

 

カストロ「すばらしい、あなたはやはりホンモノだ」

 

独歩  「ぬかせや小僧」

 

カストロの目の色が変り、今度は独歩の右側頭部に対してのハイキックを一閃。

それを独歩はしっかりとガードをした。だが気配は後ろ、カストロが独歩の背後から左の側頭部に強烈な蹴りを放つ。みしっと音が聞こえそうなほど、強烈な蹴りを受けた独歩はそのままの勢いで顔面から地面に叩きつけられた。

 

『クリーンヒット!!&ダウン!!』

 

審判がこの試合で初めての有効打とダウンを取った。独歩は未だに立ち上がることが出来ないほどのダメージを負い、カストロは先ほどの借りだとでも思っているのか早く立ち上がれ。と独歩を促している。

 

ビスケ「下手したらあの漢、死ぬわさね。念に関しては全くのヒヨッコよ、もしかして何も知らないのかしら・・・?オーラの総量に差がありすぎる。勝ち目がないわよ。鍛えたら相当な使い手になりそうなのに歯がゆいわさね。」

 

ビスケの言う通りであった。独歩は念に関して誰からも教わっていない。

故に体にオーラを留める纏。そして精神状態に左右されるが高ぶった際に無意識に練を行ったり、あくまで精神力や感情による火事場馬鹿力的な要素でしかない。だがそれも仕方ないと言えよう。念能力に目覚めてからオーラの総量を増やすトレーニングやオーラを移動する為の訓練などは一切行っていない。

 

それが出来るということさえ考えなかったのだ。だが単純に纏と点に関しては達人でさえ及ばない程に研磨されていた。しかしそれだけではこの世界で強者との戦いには太刀打ち出来るはずもない。

 

このクラスに入っての1戦目はともかく2、3、4戦と戦った対戦者は大した使い手ではなかった、独楽を回したり、車椅子で鞭を振り回したり、隻腕だったりと少し独特ではあったが、実力に差がありすぎた為に纏の防御だけで十分に看破ができたからだ。

 

ただこの相手は違う、カストロは曲がりにもヒソカのお眼鏡にかない今殺すには惜しいと判断された程の才能の持ち主だ。

 

いくら体術で上回ったとしても、独歩の攻撃では決定打になるダメージは与えられずに、カストロの攻撃を受けてしまえば纏しか出来ない今の独歩では実力差以上のダメージを受けてしまう。

 

結果、独歩はたった一発の攻撃で地面に唇を押し付ける展開となった。

 

ゆっくりと起き上がり、カストロを見る。

 

独歩「気のせいかい?兄ちゃんが消えたように見えたんだが・・・いや・・それは表現が正しくねェな。目の前にいて俺に蹴りをくれたはずのアンタが一瞬にして背後にいた・・それが一番近い表現だと思うんだけどよォまだ何か違う気がするぜ・・何か基本的な見落としをしている感じがするなァ」

 

カストロ「対ヒソカ戦へのとっておきだ。まさかヒソカと戦う前にお披露目する事になるとは‥謎解きをしているようだが無駄だね、何にせよもう待たない。次は腕をいただくぞ」

 

観客からは「出たぞ虎咬拳」と歓声が響く。

 

カストロは独歩のお得意の天地上下の構えのような姿勢をとり、腰をかがめ下に構えた手を少し体に寄せて両の手にオーラを集めた。

 

集まっていくオーラを目を凝らしてみることが出来た独歩は念能力に目覚めてからこの日初めて凝を行った。

 

そして「なるほどねェ……」と試合中にも関わらず感嘆の声をあげた。

 

 

▪️「虎咬拳(ココウケン)」▪️

 

▪️掌を虎の爪や牙に模し敵を裂く拳法。達人なら大木を真っ二つにすることも可能▪️

 

独歩  「やるよ」

 

勉強料とでもいうのだろうか独歩が無防備なその左腕をカストロの方へ向け掲げた。

 

カストロ「フン、余裕かそれとも罠のつもりか!?どちらにしても腕はもらった。右(こっち)のな」

 

左腕を掲げ切断を覚悟したその刹那、独歩はまた背後に気配を感じた。そして目の前に居たカストロの姿は消え、後ろから出現した気配に掲げた左腕ではなく、右腕を切断された。虎咬拳により右腕が宙に舞い、ボトリと重たい音を立て地面に落ちる。

 

独歩は上腕内側に流れる動脈を圧迫し見事な止血を行いながら深いため息をつく。怖いもの見たさの観客からもどよめきと実際に腕が飛ぶシーンを見たことから恐怖の悲鳴が響いていた。

 

独歩  「嫌だねェ…。この世界の戦いってのはよく分からねぇことばっかりだぜ。もう2度と腕がなくなる経験はしないと思ってたが、今度はこっちの腕がなくなるなんてよォ」

 

カストロ「全てが自分の思い通りになると思ったら大間違いだ。まだ続けるかい?」

 

独歩  「あ?兄ちゃんよ、俺は右腕を失った以外ピンピンしてるぜ?それに兄ちゃんの能力の正体がやっとわかった。お前さん・・・2人いるだろ?」

 

カストロ「・・・流石だな、その通りだ」

 

カストロが種明かしとばかりに自身の分身を露わにした。観客席からは再度どよめきが起こる。刃牙、キルア、ゴンの3人はカストロが攻撃を仕掛けた瞬間に身体が重なって見えたことを錯覚ではなかったと理解した。

 

▪️「分身(ダブル)」▪️

▪️念により作り出された自分の分身を具現化して操る能力。

 

相手の不意をついたり数的有利を作り出すことが可能となるがかなりの集中力を要する。自分が想像する(平常時の)姿を再現してしまうため戦闘中に出来た傷や汚れなどは再現できないという弱点がある。具現化・操作・放出能力の複合技▪️

 

独歩 「昔・・・貫手の稽古がしんどくてなァ、束ねた竹に貫手ェかますンだがこいつがまた痛ってェんだ・・・何度脱臼と骨折を繰り返したことか。いっそ指なんか全部なくなっちまえばいい、そうすりゃ思い切りブチ込めるって・・」

 

「夢が叶ったぜ!!」

 

独歩がカストロとの距離を一瞬で詰め、失った右腕をそのままカストロの顔面にねじ込んだ。

 

「うァァ!無い方の手で殴ったァーーーッッ!!」観客からの声が響くと同時に審判はカストロに対しクリーンヒット&ダウンの判定を下す。

 

ゴン「ねぇバキ、あの人どんな人なの‥‥?」

 

刃牙「説明がいるかい?あのまんまだよ。真っ直ぐで、それでいて狡くて、強くて、俺の世界であの人に勝てる人が何人いるかってくらいの最高の空手家さ」

 

ゴン「スゴイい世界だね・・・」

 

刃牙が笑いながら答えるとゴンのその真っ直ぐな瞳は劣勢であるはずの独歩から視線を外せなくなっていた。

ビスケとウイングもモニター越しにこの眼帯親父のオーラが時を追う毎に力強くなっていく事に気がついていた。

 

独歩がカストロとの距離を一瞬で詰めた能力。

 

▪️「武の神様からの贈り物(ファイティングギフト)」▪️

 

▪️予備動作一切なく、移動が可能となる能力。移動出来る範囲は現在50センチほど。また移動には大量のオーラを有する▪️

 

独歩が200階クラスに入り初めての戦闘で苦戦した際に目覚めた能力の一つだ。武を志す者にとって命とも呼べる間合い。それを予備動作なく詰めることが出来るという事は戦局を大きく左右する事を想像に容易い。事実この能力を用い達人と呼ばれたその対戦者を場外へと吹き飛ばし勝利をもぎ取った。そしてもう2つ・・・。

 

カストロは顔についた血を拭いながら、独歩を諭す。

 

カストロ「多少は面食らったが、戦局は変わらない。その腕も止血をしながら戦う事は不可能だ。ギブアップしないのなら立っていることができなくなる前に次は左腕をいただく。」

 

来いよ。そう促すような笑みを浮かべる独歩に対してカストロとその分身が襲いかかる。先に特攻を仕掛けたのは分身の方だった。が、独歩に近づくとその分身が消滅した。カストロにはその状況が未だ理解出来ない。再び分身を独歩に嗾けるが結果は同じくカストロの意思とは無関係に分身は消滅した。

 

カストロ「ッッッ!!!???」

 

▪️神眼(ゴットアイ)▪️

 

▪️自身の円の中に於いては己を含む全ての能力が無効、つまり絶の状態になる。発動者と対象は肉体のみの強さで戦うこととなる。

 

念能力が未熟な為、現在は数秒ほどと発動時間が短く、発動範囲も独歩の間合いに未だ満たないほど狭い。能力名の由来は稚拙な円の形が真円とはならず上から見ると楕円形となる為、自身の眼帯の形をモジってこの名をつけた▪️

 

独歩  「さっさと終らそうぜ、小綺麗な分身じゃなくて俺の血が付いてる本体で来いよ、そろそろ落ちた腕を氷漬けにしないとヤバそうなんでな」

 

カストロ「‥‥‥‥ッッ!?まだ負けを認めないというのなら良く分かったよ。私はもうお前に近づかない。そうすれば出血多量でもう勝敗は見えているからね」

 

カストロの試合放棄とも取れる発言をし、今度は観客に向かって演説をする

 

カストロ「皆さんッッ私の勝利を認めてください!!この戦いはもう意味を持たない!!これ以上何を見たいのですかッッこれ以上戦ってはドッポが死んでしまいます!もし私に戦えというのならーーー

 

独歩「おい」

 

後ろから声をかけ「武の神様からの贈り物(ファイティングギフト)」で間合いを詰め3つ目の能力。

 

▪️「菩薩の拳(フィストオブセイント)」▪️を発動。

 

▪️念を込めた菩薩の拳。今後はどう成長するか分からないが現状では纏の状態で繰り出される正拳と何ら変わらない▪️

 

愚地独歩が武に身を捧げて手にした答えがこの菩薩の拳。今までで最大のオーラがその身体に宿ったがそれでもまだカストロに致命傷を与えるには至らない。だがッッッ!!その拳が顔面を捉えた瞬間に独歩の後ろから何かが物凄いスピードでカストロの頸動脈に突き刺さった。

カストロは首筋の頸動脈から夥しい程の出血をし、そして糸の切れた操り人形のように倒れた。

 

『勝者ドッポ!!医者を早く!!』

 

凄惨たる幕切れに観客が静まり返る。運ばれていくカストロ。 観客はもちろん独歩自身も何が起こったのかわからず呆然と立ち尽くしていた。観客や審判からは独歩が何かしらの能力を使いカストロを討ったと見えているのだろう。

 

その結果だけは理解できた観客達が時間差で湧き出した。独歩は腑に落ちない顔をしながら再び止血をし、切り離された右腕を拾いあげようと腰を屈めた。その際に石造りの舞台に鋭角で突き刺さる1枚のトランプが目に入った。

 

カストロの頸動脈を引き裂いた血まみれの死神のカード。その死神の顔は心なしか笑っているようにも見えた。

腕を拾い上げ、独歩が舞台を降りようと通路の奥に目をやるとそこに死神の後ろ姿を見た。

 




「ほほほ。刃牙さんや、本物じゃ本物じゃ。」

「俺はそんなことだろうと思ってたぜェ、香典は返して貰わねェとな。」

2人の老人が笑顔で刃牙の肩をポンポンと叩いたり体を揺する姿を見ているのは少し滑稽であった。
天空闘技場の207階のフロアにいる愚地独歩の部屋には見慣れない面子が揃っていた。

ゴン、キルア、刃牙、ビスケ、ウイング。そして愚地独歩と渋川剛気と刃牙だ。

独歩の試合の後に行われたギドVSゴンは当人達の心配をよそに実にあっけなく決着がついた。
ゴンの練はビスケの特訓の甲斐もあり発展途上とはいえ既にギドクラスの能力者の攻撃など問題にならないほどに鍛えられていた為、ギドの攻撃によりダメージを受けることは一切なく無傷のまま勝利を掴んだのであった。そして刃牙が愚地独歩の部屋に行くのに皆を紹介したいということで連れてきたのであった。そこには渋川剛気も居て、散々驚かされた仕返しに独歩を驚かせてやろうと思った範馬刃牙はもう一度驚かされることになってしまった。

だが驚いたのは2人も同じで今回は奇しくも同じ構えだったというところかもしれない。

抜けていた時間、この世界に来てからの一連の流れを説明した両者であったが、その話を黙って聞いていたウイングとビスケは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。

ビスケ「ちょっと待つだわさ、バキあんた違う世界からきたっていうの??」

バキ 「あれ、言ってなかったけ?」

ビスケ「ちょっと世間知らずだとは思ってたけど、そんなこと一言も聞いてないわよ!!」

バキ 「あぁ、話してどうなるって事でもないから気にしないでくれ」

ビスケ「気にするとかそういう話じゃないわさ!!!そんで、オタクら2人ともこっちの世界からきた奴らに仕返しがしたいと?」

ビスケが刃牙に少し呆れたように頭を抱え、一連の話を聞いて一通りは理解したが頭はまだついていってない、だがその世界の住人である2人にも投げかけた。

独歩 「あぁ、あの蜘蛛の刺青をしたあの男だけは許せねェからな。」

ビスケ「やめときなさい、死ぬだけだわさ」

独歩 「武道家は特攻隊じゃい、勝算のないーーー」

ビスケ「勝算がないって言ってるの!蜘蛛の刺青っておそらく幻影旅団でしょ?今のアンタなんか1秒も立ってられないわ、確実に死ぬわさ」

渋川 「お嬢さんや、何か知っているのかい?」

ビスケ「ワタシが知ってるのはそいつらの悪名と全員が凄腕の能力者だってこと、それと今のアンタ達の未熟さね。自殺したいなら別だけど、そいつらが悪名通りの奴らならアンタらの世界で暴れたりもやり兼ねないわさ」

独歩 「口の悪いお嬢ちゃんだな。こちとら仮にも神心会の長だぜェ?言葉は間違えないこった。」

ビスケ「何度でも言ってやるわさ、アンタ達は弱いって言ってんの。今日の試合だって何回死ねた?運良く誰かの助けがあったから勝てたもののあのまま普通に戦ってたらアンタ死んでたわよ?」

ビスケが最後のトランプの解説をビデオを見せながら皆にした。試合開始の時点でカストロの首筋についていたオーラは伸縮自在のオーラを限りなく見えにくくする為にという技を使っており、それをあたかも独歩の攻撃に合わせて伸縮させ独歩の攻撃のように見せていたのであった。

決定打は独歩の「菩薩の拳(フィストオブセイント)」ではなく、このオーラについて飛んできたトランプであると説明してあっけにとられる一度であった。

ゴン 「ヒソカ・・だよね?」

キルア「しかいねぇーだろな」

ビスケ「心当たりがあるようね。どっちにしてもこのトランプの能力者は相当な実力者だわさ。」

ゴン 「でもなんでヒソカがこの眼帯のおじさんを助けたの?」

ビスケ「助けたっていうよりも許せなかったんじゃないかしら、実況が言ってたけど、このカストロっていう男の洗礼をしたのってそのヒソカっていう男なんでしょ?対戦相手を全員殺してるっていう男がこのカストロは殺さなかった。きっと期待してたんだわさ」

ゴン 「期待??」

ビスケ「良い能力者に育って欲しいっていう期待だわさ、きっとそいつは常に好敵手を求めてるのよ。自分の為にね。ワタシもそういうとこない訳じゃいから気持ちは解るわさ、ただその期待を裏切られた。このカストロって多分本来強化系なのよ、でも実際に能力として使用してた「分身(ダブル)」は具現化、操作、放出の高等技。そりゃちょっとガッカリもしちゃうわさね」

独歩 「あのよぉ、その首筋についているっていうオーラが見えねェんだが、本当にオーラがついてるのか?大体、その具現化とか操作、放出っていうのは何だい?」

ビスケ「それが見えないってことが今のアンタの実力ってこと」

先ほどからこの場を仕切る、一番幼く見える少女に渋川剛気の眼鏡が光ったところで刃牙が一言付け足した。

刃牙「あ・・紹介してなかったけど、こっちにいるのはゴンとキルア。俺の友達です。あとその女の子は俺らの念の師匠でビスケ、きっと親父より強いっすよ。」

少し。

ほんの少しだけ空気が重くなったのを感じた。刃牙が父親より強いといってから愚地独歩と渋川剛気はさっきまで全くと言って良いほど意識しなかった身体に緊張を走らせる。だが2人の全ての気持ちを汲んで刃牙が続ける。

刃牙「あの、俺、気がついたんです。あっちの世界でチャンピオンとか言われて調子乗ってた自分がいました。自分の力を信じて疑ってなかったけど、奴らには手も足も出なかった。親父もこっちの世界でもう負けてるらしいって聞いて少し吹っ切れました・・・俺たちは弱いです。少なくとも奴らと比べたらまだまだ・・ただこの念っていう力を覚えて可能性が広がったのも事実です。俺正直言うともう限界まで強くなった気でいたのに、でもまだまだ強くなれる。だから今すごく嬉しいっすよ。」

刃牙が静かに語った胸中に2人の武人は視線を遠くに向け思い返す。三成とストライダムの手ほどきでこの世界に来て数ヶ月、念に目覚めてから少しは強くなった気がしたが、あの蜘蛛の刺青をした大男やその仲間に今の自分が勝てるのか?そう聞かれたら答えを躊躇ってしまう。確かに、今までの力とは違う強さが必要になっていることを日に日に感じていたのは事実であった。地上最強の生物、範馬勇次郎が負けたという姿は想像すらできないが、刃牙が言うのならそれは事実なのだろう。

渋川剛気はそう語る刃牙の姿を見て、前とは違う刃牙の何かに気がついた。

渋川 「刃牙さんや、アンタまた強くなったかい?」

刃牙 「ええ、ビスケに稽古をつけて貰って少しは・・ただまだまだっすけどね。」

渋川 「お嬢さん、ワシもまだ強くなれるかのう?」

ビスケ「アンタがそう願うなら力を貸してあげてもいいわよ。」

独歩 「この歳で弟子入りとは、人生何があるかわかねぇもんだぜ」

ビスケ「ならアンタらからはここに来るまでのファイトマネーの半分頂くわさ、大分貯め込んでるんでしょ?まず水見式やってみて」

ビスケが2人の了承を得る前にさっさと水見式の用意を始めた為、ファイトマネーの半額という法外な請求に突っ込む興を削がれてしまった。全くと言っていいほど念に関しての知識がない為、水見式と言われても意味が分からなかったが急かされるようにグラスに向けてオーラを発した。

渋川剛気は一見何の変化もなかったが舐めてみると、水がとても甘くなっていた為、変化系であるということがわかった。

ビスケ「アンタの能力は知らないけど、変化系ね。オーラを何かに変化させるのが得意な系統だわさ、大体、バキもそうだけどアンタら体術は相当なもんよ。オーラの攻防力がそれについていけるようになったら相当な使い手になるわさ。」

独歩 「このジイさんの能力はちょっと手強いぜ、このクラスに入って最初に戦ったのがこのジイさんだったんだけど苦戦してなァたまたま、その時に俺が「武の神様からの贈り物(ファイティングギフト)」と「神眼(ゴットアイ)」に目覚めたから勝てたものの、そのまま戦ってたら何にも出来ずに負けてたな。」

渋川 「次は負けないですわ、カッカッカ!」

ビスケ「まぁ能力がどんなものにしろ、自系統と合っているならワタシは何も言わないわさ、次はドッポだけどアンタ右腕どうしたの?」

独歩 「あぁ、これな・・・」

独歩の右腕はカストロの虎口拳により落とされたはずであったが、今はしっかりとその右腕が付いていた、少し繋ぎ目に傷は残っているが日常生活で指を動かしたりするのはもう問題なさそうである。その事実に今更気がついた皆は驚いたが独歩もよく解らないという。

カストロと対戦した後、止血をしながら右腕を持ち選手用の通路で急に意識を失い、目が覚めたら腕がついていたというのであった。
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