高級なホテルのロビーと見間違うかのような煌びやかな広い室内、この室内を華やかに彩るのは見るからに高価なシャンデリア。その上に男はいた。
ハンター試験を表も裏もパスし念能力を収め、目的の同胞の形見、緋の眼を集めるために斡旋所でヨークシンシティで行われるオークションに強いコネクションを持つ人体収集家を希望したところ、この屋敷にやってきた。そのクラピカがなぜ今シャンデリアの上にいるかというと、簡単に言うと襲われているからであった。面接としてこの場にやってきたと思われる人間はクラピカを含め6名。
数刻前にモニターに映し出された漢が言った。
「___テメェらがライセンスを持っているかどうかは問わねェ・・・要はこっちの望むものを手に入れられるかどうかだ‥オークション開催まであと1ヶ月ある・・これから渡すリストの中から一つどれでも構わねェ。ここに持ってきなァ・・」
そして執事のような男からリストを渡される。どれも人体収集家にとっては価値のあるもののようではあるが一般には趣味が悪いとしか思えないものであった。その中にはもちろんクルタ族の眼球。通称「緋の眼」もリストアップされている。リストが行き渡ったことを確認すると、モニター越しに漢が続けた。
「___それをクリアすれば正式に契約し護衛と収集活動を担って貰うッッ・・!それと__強えェってことが雇用の最低条件だッッッ・・・・この館から無事出られる位「最低」な___」
顔に傷を持ち、眼鏡を掛けた大男が凄みを利かせて言い放った。こういった仕事を選んだ以上、マフィアなど闇社会に関して積極的に絡んでいく事に関しては同胞の形見を集めるため、覚悟はしていた。ただクラピカが闇社会の住人として最初に見たこの漢はヒソカや勇次郎とはまた違った意味で異質の存在感を示していた。
おそらくはこの漢は依頼主ですらないのであろう。ノストラードファミリーの若頭といったところであろうか?これほどの威圧感を持つ漢でさえ、まだ組のトップではないという事を肝に銘じ、より一層気を引き締めたところで黒装束に身を包んだ集団が襲ってきたのである。放たれた銃弾をクラピカの能力「導く薬指の鎖(ダウジングチェーン)」を発動し防ぎ、攻撃を躱し、そしてシャンデリアの上に避難した。
ご存知の通りクラピカの能力は具現化した鎖を右手に用し、制約と契約によりそれぞれの指に異なる能力を持つ。最もその能力の殆どは仇である旅団に対して絶対的に有利な能力となっている。なぜ鎖を具現化したのか、それに対してクラピカは「冥府に繋いでおかねばならないような連中がこの世で野離しになっているからだろう」と語っている。
正義感の強いこの男が目的の為、マフィアの飼い犬にさえ志願していること。その心境を考えるといたたまれなくなってしまう。
だが現実、ここで認められることが今のクラピカにとって同胞の眼を集める為の一番の近道であることに変わりはない。冷静に上から状況を判断し、黒装束を纏ったこの族を操っていた者を6名の中から断定し、能力を解除させ無事に館を脱出した。
帰り際に手の平にじっとりとした汗を掻いていたことに気がつく。モニター越しに見た漢の熱に当てられたのかもしれない。
何もかも見透かしたような不気味な瞳、画面越しとはいえクラピカと花山薫とのファーストコンタクトがここで実現したのであった。
◆花山薫(カオル=ハナヤマ)◆
15歳で暴力団、藤木組系花山組の二代目組長に就任。現在19歳。
非武装・非鍛錬の美学を持つ素手喧嘩(ステゴロ)の天才、誰が呼ぶともなく全国のヤクザや不良から尊敬の念を込め「日本一の喧嘩師」と呼ばれている。
顔には大きく走った斬り傷の跡を始め、全身に斬り傷や弾痕が多数、背中には花山家に代々伝わる彫られた入れ墨、「侠客立ち(おとこだち)」を背負う巨漢。
ファイトスタイルは桁外れの身体能力に物を言わせた喧嘩といったもので、握力✖️体重✖️スピード=破壊力の方程式から放たれる強力無比な打撃と敵の攻撃をノーガードで平然と受け切り反撃する規格外のタフネスが持ち味。
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暗い室内で椅子に深く腰を掛け、マホガニーの机を足置きにエナメルの靴を鈍く光らせ、その大きな体躯を沈めている。そのままの姿勢で大きな掌で握りしめていた酒瓶を口元へ運ぶ
静寂に包まれたその部屋で電話が鳴った
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漢は表情を変えないままに通話ボタンを押す
花山「‥…」
「どうかね?キミから見てモノになりそうな人材はいたか?」
花山「……1人」
「ほぅ…それは楽しみだ」
花山 「………‥」
「……ま、まぁキミの働きには期待しているよ、ネオンもキミの言うことなら聞くようだし、よろしく頼む 」
花山「……………」
「必要なものがあれば遠慮なく言ってくれ、新しい顧客の情報と今月分の物はこれから送信させてもらうよ。2名増えているがネオンには何とか言い聞かせてくれ」
花山 「………………」
「…では、またこちらから連絡させて貰う…」
切られた電話を机に置きもう一口酒瓶を口元へ運び、濃度の高いアルコールを水でも飲むかの如く喉を鳴らす。部屋の入り口近くにあるFAXがギーギーと音を出し起動し始めた。 その音を響かせたまま数十枚ほどの紙を吐きだした後、起動音が鳴り止み、その部屋は再び静寂に包まれた。
それを確認すると花山薫は机に掛けた足を下ろし、重い体躯を椅子から上げた。送られてきた紙の束を乱暴に手にし、その部屋を出て隣の部屋の扉をノックする。隣の部屋の主は鈍く、重いノックの音で来訪者が花山薫だと解ったようだ。中からの返事を確認し、ドアノブに手をかけ扉を開けた。
部屋の主は10代の後半であろうか?可愛らしい顔立ちをした少女である。突然の予期せぬ来訪者により緊張状態にあるようで、ベットの隅に体を寄せている。
花山「…今月の分だ」
そう言い、扉を開けたものの部屋の敷居は跨がずにその紙の束をそっと床へ置いた。
「……あれ?ちょっと多くない?」
花山「………今月の分だ」
聞こえていない筈はない・・・ただ何を言ったところで、その意見は通らないと判断し素直に従うことが賢明なのことを決して馬鹿ではないこの少女は察した。
「ええ…明日の朝までには終わらせておくわ…それと今月の貴方の占いはそこに置いてあるから…」
一度視線をその部屋の主、ネオン=ノストラードへ向け、扉の横の棚の上に置いてあった1枚の紙を手に取り、そして、ゆっくりと扉を閉めた。
最初の電話はノストラードファミリーの組長、ライト=ノストラード。そして部屋で怯えていた少女はその娘、名をネオン=ノストラードという。組長ということから察するようにこの館の持ち主、そして最初の電話の相手は娘の念能力により一代で成り上がったハンターハンターの世界でいう新興マフィアである。
◆ネオン=ノストラード◆
特質系能力者
天使の自動書記(ラブリーゴーストライター)
自動書記による四行詩という形式で、他者の未来を100%的中する占いで占う特質系能力。
予言を書き込む紙に、相手の名前、生年月日、血液型を書いてもらい本人、もしくは本人の写真を目の前に置くことで、占いが可能になる。予言詩は4〜5つの四行詩から成り、その月の週ごとに起こる出来事を暗示している。悪い出来事には警告が示され、その警告を守れば予言を回避できる。
100%的中する占いという娘の能力を手に入れてから片田舎の小さなマフィアに過ぎなかったノストラードファミリーは一転して風向きが変わった、その占いにより、ノストラードファミリーは瞬く間に巨万の富を築き、裏社会における地位も飛躍的に向上したのであった。
積極的にネオンの占いを売り込んでいき今では十老頭にまで顧客を持つようになる。しかし、その成功の裏側で、ライト=ノストラードは切り札である娘のネオンを失うことを非常に恐れており、そのため過剰とも言える人数の護衛を付けている。今回クラピカを含め数名を徴集したのも娘の警護を固めるためであった。十老頭というのはハンターハンターの世界で6大陸10地区を縄張りにしている巨大マフィアの長老達、要するにマフィアのトップであり、文字通り10人いることから十老頭と呼ばれている。
花山薫はこの世界に飛来し、街を徘徊していた際にその風貌なのか雰囲気なのかは判らないがとあるマフィア6名に因縁をつけられた。恐らくは同業者だと思われたのであろうが因縁を付けて来た相手が気の毒とも思える程の圧倒的な腕力で返り討ちにしていたところを偶然にもライト=ノストラードが目にし、声を掛け、無所属ということを知るなり好待遇で引き入れたのであった。その腕力と手腕から圧倒的な速さで昇進し、今では護衛チームのリーダー兼、若頭まで上り詰めてしまった。
最もこの漢の器は娘の能力だけでのし上がった片田舎のマフィアごときでは扱いきれず、今では組長である筈のライト=ノストラードはこの計り知れない器を持つ花山薫に日々肝を冷やしているような状態である。
花山薫にとってもこの世界では一文無しで宿すらなかったため、己の専門である裏社会に早々に飛び込め、衣食住と情報収集にはもってこいの職まで手に入れられたことは目的達成の為には最良の選択であったのかもしれない。
自身の部屋に帰り、ネオンから受けとった予言を読む
流れるように立った場所は貴方にとって馴染みが深く水が合うだろう
今はその流れに身を任せよう
時が来れば自ずと向かう先は蜘蛛の糸へと繋がるのだから
待ち人は緋い目を持ち共犯者となるだろう
離れ離れとなった星々はゆっくりと輝き出すが貴方は変わらず其処で輝く
霜月が佇み、数えきれぬ黒服が地に伏した傍らに貴方は立つ
背を向ける事を忘れてはいけない
その背中には博徒が宿っているのだから
失った筈の星が輝くだろう
獅子は姿を見せないが5つの星は瞬いて線を結ぶように手を取り合う
緋い目から眼を離してはいけない
緋く燃える炎は決して鎮火などしないのだから
一瞥し、その紙をくしゃくしゃに丸めゴミ箱に投げ捨てた