「クソッッッ!!!クソッッ!!フザケンナッッ!クソがッッ!!!」
乱雑に散らかる廃棄物の中で、包帯を顔に巻いた大男が悪態をついている。漢は箱状の廃棄物の中で冷蔵庫か洗濯機であろうか?今となっては判断のしようのないその何かを台のようにし、その上に水を並々と注いだグラスを置き、無機物であるはずのそのグラスにこれでもかと言う程のガンをつけていた。
水面には一枚の葉が浮かんでいる。
深呼吸をし、漢は両手をグラスに掲げ練を行った。そうすると水面に浮かぶ葉はグラスの中でクルクルと回転を始める。
「クソーーーーッッ!!!」
一体今ので何回目であろうか、漢はもう100回以上はこの一連の流れを試している。既にその顔は憔悴しきっているように思えるが、そのグラスを台からどけ、今度は違うグラスを置き、そこにペットボトルから水を並々と注ぎ、また葉を浮かべた。よく見ると漢の周りには空のペットボトルや様々な種類のグラスやコップが転がっていた。
「ッシャアッッッ!!もう一回ッッッ!!」
漢が意を決して、再度グラスに向き合った。両の手でグラスを優しくつ包み込むように念を練る。
決死の覚悟でその水面に浮かぶ葉を睨みつけるが、そんなことで結果が変わるはずもなく、漢を嘲笑うかのように水面をクルクルと回るだけであった。
ガシャンッッッッ!!!
漢は拳をグラスに叩きつけた。
「クソォォーー!!」
悲痛な叫びが絞り出されるように辺りに響き渡った。グラスを打ち砕いた拳を握り締めプルプル怒りに身体を震わせる。
えぇ、そうです。皆さんお待ちかねの末堂厚、久しぶりの登場です。彼の心の声を聞いてみよう。
(なんで俺が操作系なんだよッッ!??フザケンナッッ!クソがッ!!神心会でジャンプ仲間だった寺田といっつも話してたハンターハンターで最弱の系統は?って話題でいっつも操作系は雑魚!って話してた俺が操作系って……クソがッ!!強化か特質にしてくれッッ!!!強化!!!特質!!頼むから何かの間違いであってくれ!強化系か特質系で!!頼むぜッ!!もう一回だッッッ!!!)
そして、数刻後、再度グラスが割れる音がした。
(ウォォォォーーーー!!!!!なんとかしてくれッッ!!・・・・落ち着け、落ち着け俺・・・よく考えろ。クレバーになれ………思い出せ……。ハンターハンターで操作系だった奴。パッと思いだせるのだと、ズシ、イルミ、シュート、ヴェーゼ、モラウ辺りか、あとプフとかゴレイヌも操作系だったよな?蟻の師団長にも何人か居たな確か。
マジか、思ったよりいやがる‥まぁいいか、さて、この中で最強はイルミかプフで間違いないだろうが・・・参考にならねェじゃねぇかッッ!!どっちも俺とは資質が違い過ぎる!!イルミはゾルディックだし、プフなんて蟻の王直属の護衛軍…もっと参考にならねぇ・・・。
いい線いってるのはモラウ、ゴレイヌ、シュート辺りだけど。。。あいつら操作系なのに具現化系、放出系、変化系……色々応用し過ぎててダメだ。俺がやると多分、ヒソカにメモリの無駄使いとか言われてぶっ殺される…… あ、やばい………詰んだ………俺死ぬかもしれねぇ……
とりあえず生き残ることを考えて、体術、念の基礎と攻防力の移動、あとはオーラの絶対値の底上げ、それはやってきた。多分今の俺は時間掛かったが原作でいうとグリードアイランドクリア時のゴンやキルアくらいまでは鍛えられると思う………うん、多分な………多分………希望的な部分もあるが…間違いねぇ、漫画の世界に入ったから勝手に自分が主人公だと……俺は特質系か強化系だと思ってたから………能力。つまり発の鍛錬は全く行ってなかったぜ………クソッッ!!この先どうやって生き残っていけばいいんだ………
能力なしのポテンシャルで生き残れるやつなんて強化系か主役クラスしかいねぇだろこの世界………しかもそのポテンシャルも心許なくて………扱いにくい操作系ってよ………あぁ終わったわ。俺、終わった……)
「へぇー意外、スエドウって操作系だったの?オレと一緒だね」
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◆シャルナーク◆
操作系能力者
能力名:携帯する他人の運命(ブラックボイス)
付属のアンテナを標的の体に刺すことで能力が発動。アンテナが抜けない限り、標的は術者のロボットと化し、携帯を通じて操作をすることが可能になる。
またアンテナを自分自身に刺すことで戦闘力を飛躍的に上昇させることが出来る。しかしその反動として能力を使い終わった後に肉体にかなりの負荷が掛かる。
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興奮し過ぎていたのか、自分の世界に入りすぎていた末堂厚はこんな閑散とした場に人がいるとは思わずに周囲への警戒を怠っていた。すでに最後の水見式の前から背後には人影があったようだ。その事に気が付かない程、没頭してた末堂厚は焦った様子で振り返る。
末堂「なんだシャルか、あ、忘れてたけどお前も操作系だったな…」
数刻置いて、今度は泣きながらシャルナークに末堂が抱きついた。
末堂「シャル!!辛かったなぁ!お前も辛かっただろッ…よく頑張ったなッッ!!」
シャル「おい!おいって!ちょっと辞めろ気持ち悪いだろッ!!」
涙と鼻汁、それと嗚咽でグシャグシャになった顔をシャルナークの胸に擦り付けて縋り泣いている末堂厚。
シャル「誰かに見られたら勘違いされるじゃないか!分かったから!話なら聞くからまず落ち着いてくれよ!!」
必死に末堂を引き剝がし落ち着かせ、少し距離を取り、さぁ何があったんだい?と話すように促した。
末堂が旅団に入団し、今でこそウボォーギンやフェイタン、フィンクスなどからは修行なのかイジメなのかは定かではないが、組手と称したサンドバックのようなポジションにいる、何発耐えられるか、何発入れられるかが専ら今の賭けの対象になっている、最もオッズは常に末堂が0なので賭けは成立していないような状況ではあるが、何度でも立ち向かってくるし、そこそこの暇つぶしにはなるので遊び相手として可愛がられているのは間違いないだろう。
そして、そもそもこの短期間になぜ末堂が全力ではないにしても彼らの遊び相手にまでなれるようになったのかというと、常に生死と隣り合わせの理不尽な組手はもちろんであるがその功労者として一番に名前が挙がるのは間違い無くこのシャルナークである。
きっかけは末堂がウボォーギンの組手と称したサンドバック状態になっている際にフィンクスとフェイタンに焚き付けられてシャルナークが悪戯で末堂にアンテナを刺したのだった。
まだオーラの扱いに慣れていなかった末堂が急に達人のような動きを見せたため、完全に手を抜いて子供をあやすかのように組手をしていたウボォーギンはその急な変化に対応出来ず、末堂の正拳突きで吹き飛ばされてしまったのである。
大笑いするフィンクス、フェイタン、シャルナークであったが、この日から何かを掴んだのか。毎日シャルナークにアンテナを刺して操作して貰い、動きやオーラの操作を体で覚え、そしてアンテナを抜き自分で反復。それを延々続けた。体に刷り込ますようにして無理矢理覚えさせるような正に邪道な修行方法であったが、ひたむきに頑張る末堂のその姿勢をシャルナークは嫌いにはなれなかったし、むしろ純粋に強さを求めるその姿勢に好感さえ持っていた。それに戦力の底上げは旅団にとっても必要なことでもあったので自分の時間を削ってまで面倒を見ていたのだ。
その甲斐もあってか、基礎の4大行に加えて硬、流、堅、周、円、などの応用も一通り網羅した。中でも堅に関しては自分では意識せずとも脳と体のリミッターが制御して途中で辞めてしまうのが普通だが、シャルナークの操作によりオーラが枯渇して気絶するまで続けるという死と隣合わせな無茶な鍛錬を毎日繰り返したお陰でオーラの絶対量は現在も尚、飛躍的に増え続けている。
シャル「さぁ、何があったんだい?」
まるで無人島に取り残され数十年振りに人と出会ったかのようなウルウルした目をする末堂へ投げかける。
末堂 「操作系であることに不満を感じたことってないか……?」
シャル「あぁーなるほどね。 確かに、ウボォーとか見てると強化系の単純な強さは羨ましいなって思ったこともあるよ、オレの能力なんか単純だし誰でも代わりが効くからなぁ。」
末堂 「だよなぁ………俺が忘れてたくらいだからな………。」
シャル「ん?忘れてた?」
末堂 「いや、なんでもない。ただ操作系ってよ…なんていうか夢がないよな…」
シャル「まぁ派手さはないよね。でもそれは資質によるところも大きいし、悩んでも仕方ないんじゃないかな?だからオレは他の部分で、みんなをサポート出来たらって割り切ってるけどね」
末堂 「シャルは色々なことできるからいいじゃねぇか…俺なんか…」
シャル「まぁまぁ、生まれ持った系統は努力でなんとかなるようなことじゃないから。能力に頼らずとも強ければいいんじゃい?あれ?でもスエドウの能力って団長から、名前を含む何かしらの対象の情報を得る特質系能力、もしくは瞬間的にウボォー並みのオーラを込めたパンチを繰り出せる強化系能力者だって聞いてたんだけどな」
末堂 「あぁ……あの時は口八丁手八丁で何とか誤魔化さないと殺されてたかもしれないからな、まぁハッタリだよ。」
シャル「え?でもそれじゃあ説明つかないこともあるよね?」
末堂 「シャル、お前とは一番長い時間を過ごしてるから、解って貰えると思うけど。誤魔化したのはあの場を生き残る為だけについた嘘であって他意はない。誓って他意はない。ただ俺が話せるのはここまでだ。もしそれが気に食わないっていうんだったら、今すぐこの場を去ってもう2度とお前らに顔を見せねぇよ。だから信じてくれとしか言えない。」
シャル「ふーん。それが旅団にとってマイナスになるようなことじゃないならいいけど?」
末堂 「ありがとよ。お前には感謝してる。もちろんマイナスになるようなことは一切ないぜ、それに最初はビビってたが今の環境やここでの生活だって悪くないって思ってるぜ。」
二人は顔を見合わせて笑った。
末堂は純粋に同類を見つけた事。単純にそのの優しさへ感謝の意味で笑顔を向けたが、シャルナークはこの一瞬で様々な事を考えていた。
末堂が言えないと言ったことをどう思ったかは定かではないが、今まで一番近くでこの漢を見てきたシャルナークは末堂が自分達を欺いたりなど出来る人間ではないような気がしていた。あの日の話を聞く限り、自分達が襲撃し末堂の仲間を殺し、勝手にこの世界に連れてきたにも関わらず末堂の瞳には最初こそ憤怒や恐怖などが伺えたが今は純粋に強くなりたいという色しか映っていなかった。それ以上に、何かしらの念能力による干渉を受けているのではないかという方を心配した程である。
マチやシズクに対しては分かりやすい程の明らかな下心と自分やウボォーギンに対しては確かな信頼を寄せているのを日々感じていたからかもしれない。
例えそれが虚偽であったとして、旅団に対し復讐を誓っていたとしても、今の末堂の力では到底叶わないことであったし、もしそうであってもそれはそれで面白いとさえ思った。初期のメンバー以外は実際に腹の底では何を抱えているかわからない者も少なからずいる事ではある。
正式な活動以外は何をしいても干渉しないのもルールの一つ。ヒソカが良い例だ。
まぁいいかともう一度笑顔を向け、そういえばと付け足すようにシャルナークが末堂に投げかけた。
シャル「確かに操作系は強化系と比べて能力のバランスは悪いけど、やり方にもよるよ?ある事をしたら限定的ではあるけどね。」
末堂 「あ!!制約と誓約かッッッッ!!!?」