HANMER×HANMER   作:としを

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HANMER×HANMER♯37

見渡す限りの景色がすべて海、大海に佇む鯨のような形をしたその島でゆっくりと時間が流れてゆく

一番見晴らしの良いくじらの頭の丁度真上で、とんがり頭の少年が大きくググッと両の手を大空へ掲げながら伸びをし、そのまま天然のベットへ体を預けた。それを見た二人も同じように体を預け、空を眺める。足はそれぞれ別の方角を示し、頭同士が一番近くにある。短針が2つ、長針が一つ、そんなあべこべな時計のような形でそれぞれ何も言葉を発したりもせずにただただ、空を眺めている。しばらくすると、思い出したかのようにとんがり頭の少年が口を開いた。

 

ゴン「あぁーー!悔しい!何であそこでオーラ使い果たしちゃったんだろ!」

 

ゴン、キルア、刃牙の3人はゴンの故郷であるくじら島で束の間の休息を楽しんでいた。といいながらもそれぞれの系統別の修行であったり、ビスケがしっかりと修行のメニューを組んでくれていた為に鍛錬は欠かさない、ただ指導者の目がないというだけで些か開放感に溢れているように感じる。

 

キルア「っっんだよ!またその話かっ!!仕方ないだろ、あれだけオーラ使ってたらそうなるよ。でもジャンケンチーでヒソカの伸縮自在の愛(バンジーガム)を斬ったときはもしかして……?って思ったけどな。」

 

ゴン「だよね!あそこまで上手くいくとは思ってなかったから正直オレもビックリしちゃったよ!」

 

刃牙「あれずっと考えてたことじゃなかったのか?」

 

ゴン「ううん、出来るかな?って思ってやったら本当に切れちゃった」

 

ゴンが子供のようにその時の状況を体で表現する、チー!!と掛け声を言いながら手刀のような形をした手を大袈裟に振るい、バシュッ!!バッシュッ!と口で効果音をつけていた。

 

あの日の立会いは善戦はしたものの、結果だけを見ればまだまだヒソカの域までゴンは達していなかったと言えよう。渋川のミステリアスギミック(合気の極み)が解除された後、ゴンはヒソカの能力に翻弄され続けた。最後にはヒソカの伸縮自在の愛(バンジーガム)をゴンのジャジャン拳のチーで切断した後、後ろに回りこみ、必殺のグーを見舞おうとオーラを右手に込めた所、オーラが使い果たし、その場で意識を失った。

 

ヒソカがゴンのズボンのポケットを弄り、プレートを取り出すと、キルアに対して「これで借りはなしだ。今度は本気でやろうと伝えておくれ♥」と言うと、手を振りながらその場を後にした。途中、一度立ち止まり、刃牙に向かって、「そういえばキミともやろうって話をしてたよね?今、やるかい?」と問い掛けた、刃牙は口を噤み、

 

「いや、俺はいい・・・」

 

そう呟いた。ヒソカは「そうか、残念♠」と言い残し去っていった。

 

キルアの耳には不思議と刃牙のその言葉がずっと耳に残っていた。

その夜、意識を取り戻したゴンを含め、5人で今後について話をした。

 

ゴンは不甲斐ないながらもヒソカへプレートを返すという、とりあえずの目標は達成したので一度故郷へ合格の報告を兼ねて帰ると言い、キルアと刃牙はそれについていくことにした。

ゴンはビスケと渋川と独歩も連れて行きたかったようであるが、渋川と独歩はまだビスケに稽古をつけて欲しいようで、ビスケもそれに同意した。

 

もっともこれで終わりということではなく、その後はどうするかという話の流れで、ゴンが9月1日にヨークシンシティに行くことになっているという旨を伝えるとビスケもその頃にヨークシンに用があるようで再会の日は近そうであった。だが携帯を持っていたのはビスケとキルアの2人だけであって、4人は2人から説教を受けることになった。

見た目からしたら最年少の2人からゴンを含めてではあるが、大の大人達が正座をして説教を受けながら苦笑いを浮かべる図は端から見ると、とても奇妙に映った。

 

その夜、キルアがふと目を覚ますと夜の闇の中へビスケと刃牙が消えていった。何事かとは思ったが特に気には留めずにそのまま翌朝を迎えると、派手に顔を腫らした刃牙がおはようと寝ぼけ眼を擦っていた。

 

その顔を見て散々笑ったり冷やかしたりはしたが、原因が何であるかは最後まで聞けなかった。

 

舞台は再びくじら島に戻り、そういえばと思い出したかのようにキルアが刃牙へ問いかけた。

 

キルア「そういえば、刃牙さ、あの夜ビスケと何してたんだ?翌朝顔パンパンに腫らしてたけどなんかしてたんだろ?」

 

刃牙 「あぁ……あれか……うんまぁ」

 

ゴン 「えー!?あれ蜂に刺されたとかそういうのじゃなくてビスケにやられたの!?」

 

刃牙 「いや、まぁ……ちょっとね」

 

キルア「……あ!!やべっ!そういえば、ミトさん洗濯の時間がどうとか言ってなかったか!?」

 

刃牙の煮え切らない返事に何かを感じたのかキルアが話題を逸らした。

キルアは産まれ育った環境なのか、その過程でなのか、そういった感覚は人一倍察する人間のように思う。刃牙は年上ながらもキルアのそういった何気なく、気付かないかもしれないような小さな気遣いに尊敬の念すら感じていた。もっともゴンに関しても別の意味でそういった感覚に驚かされる部分は多く、刃牙は産まれて初めて出来た、年下の友人と一緒に過ごす生活に毎日の充実感を感じている。

 

範馬刃牙は今でこそ、共に拳を交えた格闘士達に繋がりを感じて友と呼んでいたが、この2人くらいの年齢の時に出来た初めての友は人ではなく、夜叉猿であった。そんな刃牙だからこそ年の離れた2人を下に見ることも上に見ることもなく対等に付き合うことができるのであろう。

キルアとゴンも同じように対等な仲間として友達としてこの関係がずっと続くものだと今は疑いすらしていなかった。

 

キルアの言葉に焦ってミトの待つ自宅へ駈け出すゴン、それに続いてキルアも起き上がり駆け出した。

 

ゴン「バキーー!!早くーー!急いで!!」

 

もう遠くに見えるゴンがこちらを振り返りながら手を振っている、そのゴンとキルアの後ろ姿に対して起き上がり、刃牙は音になるかならないか位の小さな声で「ありがとう。」と呟いた。




3人は何やら両手の掌でちょうど覆うことができるくらいの立方体の箱とにらめっこをしていた。

昨晩の事である。
3人が食事を終え、ミトとお婆さんとゴンの昔話で盛り上がった。ここくじら島にはゴンと同い年くらいで同姓の友達など小さな島だったのでいなかった為、保護者である2人もそれはそれは喜んでお接待をしてくれている。すでに何日か経っている為に刃牙とキルアの事もゴンと同様に息子同然の扱いを受けており、刃牙もキルアもそういう気を使わない、いわゆる普通の家族の団欒というものがとても新鮮で初めての体験であり、居心地が良かった。

眠る前にミトが席を外し、自室に行き手にしたものを机に置きながら口を開いた。

ミト「ジンから預かってたものよ。あなたがハンターになったら渡してくれって」

それがこの箱である。

その日は様々な話をして盛り上がったし、朝早くからビスケに課せられていた修行のノルマをこなし、午後は釣りをしたり、森で追いかけっこをしたり、お腹いっぱいになるまでミトが振る舞った美味しいご飯を食べたのでぐっすり眠りについたが、朝になり、一体この物体はなんなのだろうということで3人がその箱を中心に胡座をかき首を捻っていた。

なぜか。

キルア「これ、どーやって開けるんだ?」

ゴン 「うん、いろいろ試したんだけど、どうしても開かないんだよ」

キルア「ちょっと力入れていいか?」

ゴン 「いいよ、オレもやったから」

キルア「んがっ!!」

腕に筋を浮かべ、全力でその箱を捻るようにキルアが力を込めたがその箱はビクともしなかった。

キルア「ムリっ!! はい、バキ、パス!!」

キルアが投げやりに刃牙へその箱をパスする。刃牙も同じように力を込めたがビクともしない。

刃牙 「 お湯とかかけてみるか?」

キルア「・・・・・・・・・・・」

ゴン 「・・・・・・・・・・・」

沈黙が流れた

キルア「ハンターになったら・・・か、そーかもしかして」

刃牙 「ん?」

キルア「まだ試してないことあるぜ」

ゴン 「え?」

キルア「ハンターになった今、なる前には持ってなかったものがあるだろ?」

刃牙 「念かッッッッ!!」

ゴン 「あ!!」

ゴンに手渡されたそれに、息を飲み、ゴンが両手に念を込めると先ほどまでビクともしなかったその箱を覆おう、鉄の棒がバラバラに分かれ中身が姿を現した。

箱の中にまた箱があった。だがこの中身の箱は先ほどまでの無機質なものではなく、カードが入るような隙間があった。迷いもなくゴンはその隙間にハンターライセンスを差し込む。

カチッと音を奏でながら空いたその箱の中には指輪とテープとROMカードが入っていた。
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