HANMER×HANMER   作:としを

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HANMER×HANMER♯42

「オラァ!!!クソッッ!!」

 

「いいぞー兄ちゃん!やれやれ!!」

 

「スッゲーな本当に擦りもしねぇじゃんか!」

 

繁華街のど真ん中で男の怒鳴り声と歓声が聞こえる。

二人の男を取り囲むように人集りが出来ていた。中心にいるのは先程怒鳴り声を上げていた男と我らが範馬刃牙だ。最後に放った男のテレホンパンチが空を斬るのと同時に時間を告げるベルが鳴った。

 

刃牙「はい!ここまでッッ!アンタ良いパンチしてたよ!」

 

「ハーハーハー………よく言うぜ……!一発も当てられなかったチクショー!持ってけ!」

 

肩で息をする男から刃牙へ1000ジェニーが手渡された。

 

刃牙「へへ、毎度!」

 

汗ひとつ流さず呼吸の乱れもない刃牙は人差し指と中指で、差し出されたその1000ジェニーをピッと引き抜いた。

 

刃牙が行っているのは俗に言う殴られ屋だ。そして、30秒1000ジェニーで刃牙の顔面に一発でも当てる事ができたら100万ジェニーという条件がついた条件競売というもの。普通は怪我などを考慮して互いにグローブをつけて行うものだが、刃牙も相手も素手で行っている。

 

グローブをつけることにより手首のしなりや手首から先の動きが制限されたり、普段グローブをつけ慣れていない素人からしたら重く、大きなグローブをつけて30秒間パンチを繰り出すのは相当堪える。

これは手を出せなく不利な立場になる殴られ屋にとって最低限必要なことになるのだが、刃牙はそれを除外した。

 

理由はグローブを購入する金額をケチったためである。刃牙はここまで30秒の時間を告げるベルにしかまだお金を使っていない。そのベルも500ジェニーほどで購入した安物であった。

意外に倹約家な面を見せた刃牙はそろそろ店じまいか。っと地面に置いていたその安物のベルをカバンに入れ、ポケットから取り出した今日の稼ぎを乱暴にカバンに押し込んだ。すべて1000ジェニーであるがかなりの厚みがあり、今日1日の盛況ぶりを伺わせた。

 

そんな矢先に一人の少女が声を掛けてきた。

多くの客を相手にしていたが女性の挑戦者は初めてだったので刃牙は少し驚いたのか吟味するようにその女性と視線を合わす。

 

「1000ジェニーが100万ジェニーになるって本当ですか?」

 

面食らった表情の刃牙にさらに追い打ちを掛けるような言葉を投げかける。年齢は刃牙と同じくらいだろうか?

黒のタートルネックに女性らしい曲線を際立たせ、眼鏡を額に乗せて声を掛けてきた為か目の焦点が定まっていないようでウルウルとした大きな瞳が印象的だった。

 

刃牙「え?あぁ……まぁ30秒で俺の顔面に一発でも当てる事が出来たらだけどね」

 

「もう終わりですか?」

 

刃牙「やります……?」

 

「やります」

 

シュッと音を立て人差し指と中指に1000ジェニーを挟んだ指を刃牙に差し出した。

 

ギャラリーの酔っ払い達が少女の挑戦に悪ノリのヤジを飛ばすのが滑稽だったが当の本人は何も気にしていない様子だった。

 

刃牙「じゃあ俺がスイッチを押したらスタートということで、このベルが鳴ったら終わりです」

 

「はい」

 

刃牙「じゃあスタート!」

 

多くの挑戦者は時間の制限がある為スタートと同時に距離を詰め、やみくもにパンチを繰り出してきたのだがこの少女はゆっくりと刃牙の方へ歩いてきた。大きな瞳のその視線は判断できないが歩いてくるその動きに刃牙はごくりと音を立てて唾を飲み込む。幾多の闘士と戦ってきた経験から培われた相手の強さを測る物差し、それが危険信号を差している。

 

「エイッッ!!」

 

刃牙の顔の横、右肩辺りにビュッッと音を立て風が吹いた。

 

刃牙「ッッッ!!」

 

咄嗟に身体を捻りその攻撃を交わした刃牙は安堵していたが、その攻撃は避けるまでもなく拳が空を切っていたようだ。

 

「やりますね」

 

刃牙「いや、あれ避けなくても当たってなかったみたいだけど……ていうより時間制限があるからもっと打ってきなよ」

 

既に刃牙は少しワクワクしているようで、本日初めて重心を前後左右どこにでも動かせるようにステップを踏みだしていた。刃牙の気持ちとは裏腹にその少女は考え込むようにして沈黙していたが急に思い出したように刃牙に問いかける

 

30秒の制限時間内に罵声を浴びせられたりはあったが普通の会話をしてきたのもこの少女が初めてであった。

 

「あの、さっきスイッチを押したらスタートでベルが鳴ったら終わりって言いましたよね?」

 

刃牙「え?あぁそう言ったけど?」

 

「ならベルが鳴らない限り終わらないってことですか?」

 

刃牙「いや、そういうことじゃなくて30秒だから……うん、まぁそういうことになるかな」

 

「あと何秒くらいありますか?」

 

刃牙「もう5秒もないんじゃないかな?会話してても俺はいいけど、早く打ってきた方がいいんじゃないか?」

 

刃牙がそう言い切ったあたりから少女が刃牙の方ではなく荷物とベルが置いてある方向へ歩いていった。

 

刃牙「あっっ!」

 

ベルの付近で立ち止まりにっこりと笑った少女がしゃがみ込みベルを手にしようとしたがその手は空を切った。

 

その瞬間にベルが鳴り響き30秒が経過した事を告げる。

 

刃牙「終わり……だけど?」

 

「そうですね、失礼しました」

 

不思議な経験をした刃牙だったがその少女がそそくさとその場を去っていき、声を掛けたかったがそう思った時にはもう姿が見えなくなってしまっていた。この世界には強い人がたくさんいるんだなぁと噛みしめ(そういえばあの子可愛いかったなぁ……)と心の中で呟いた。

 

 

ーーーーーーーーー

 

シズク「攻撃は避けられるし、なぜベルを手に取れなかったんだろう…100万ジェニー欲しかったなぁ」

 

フランクリン「眼鏡掛けてないからじゃないか……?」

 

シズク「あ!!!!」

 

ーーーーーーーーー

 

帰りに道に露店で様々な出来合いの食料と飲料などを買いこみ、宿泊しているホテルに戻った。

今日の稼ぎを数えると16万7千ジェニー。後半はヤケになったリベンジャーばかりになり、最初に1万ジェニー払うから3分殴らせろなどという者もおり、数時間でなりの収入となった。

だが刃牙の反応は違ったようだ。

 

刃牙「こんなもんか…… これじゃ2人には勝てないなぁ。いいアイデアだと思ったんだけど……」

 

先ほど購入した特大タッパ入りのおじや(梅干しを添えて栄養バランスもいい)を口に運びながら手に取ったコーラのキャップを勢いよく開けた。

 

プシューー

 

刃牙「こ!??ッッ!!!これだァァッッッッ!!!」

 

刃牙はすぐにそのコーラのラベルに書いてある会社に連絡をする。

 

すでに口元からは笑みがこぼれており何か企みがあるのが伺えた。

 

 

 

 




キルア「あ〜〜〜あ。4コーナーでムームーダンスがこけなきゃ12倍で入ってたんだよな〜」

ゴン 「バクチで一発当てようとするのがまず間違い」

キルア「っせーな!お前こそ2週間で1万5千!?路上に空き缶置いただけでもそれよりは稼げるぞ!!

ゴン 「勝ちは勝ちだもんねー。って言ってもまだバキが来ないとわからないけどね」

キルア「 まぁ勝ちみたいなもんだろ。アイツもコツコツ金稼ぐタイプには思えないし俺と同じで0か100だと思うぜ?」

ゴン 「もう直ぐ来ると思うから待ってようか、レオリオも来るはずだから」

ゴンとキルアが久しぶりの再会を喜び合う。些細な口喧嘩から別行動になり、賭けの勝敗を楽しそうに話しているところを見ると、既に賭けの方がメインになっていて揉めた原因などは忘れているようだ。
二人は市場の真ん中にある広場の噴水の縁に座って、刃牙とレオリオの到着を待っていた。

レオリオはともかくとして、時間になっても来ない刃牙を二人がそろそろ心配になってきたところでこの大衆的な市場にはふさわしくない黒塗りの大きなリムジンが二人の前に止まった。

キルア「あ〜ぁ、こんな場所にあんなデケェー車で入って来やがってみっともねぇな」

運転席が開き、白い手袋をした身なりの良い老紳士が扉を開け目の前にレッドカーペットを敷く。

10メートル程であろうか?そのカーペットのロールの先がちょうど二人の前で終わり、道が出来上がった。
先程まで慌ただしく行き交っていた人々もスターでも来るのかと立ち止まって視線を集めている。

たまたまカーペットが目の前まで来た為にキルアがからかってやろうか?とイヤらしい顔でゴンに促すがそれを止めなよ、と制す。大方、金持ちが庶民の市を物珍しそうに見学にでも来たんだろうと思っていたようだ。
そして後部の扉が開き現れたのは見慣れないジャケット姿の範馬刃牙。

キルア「へッッ?!ッッて、バキじゃん!!お前何やってんだよ!?」

ゴン 「え?バキ!?久しぶり!どうしたの!?」

刃牙 「これはこれはキルアくんに、ゴンくん、元気だったかい?」

驚く二人を無視して、お得意のスカし顔をした刃牙が鼻息荒げにワザとらしく質問をした。

キルア「これはこれはじゃねーよ!どういうことだって聞いてんだよ!?」

刃牙 「これを見て分からないか?賭けは、俺の勝ちだッッッ!!」

ゴン 「ちなみに……いくら稼いだの!?」

刃牙 「細かい計算はしてないが今のところ89億くらいかな?ただ明日、明後日にはもっと増える計算だ」

キルアはすでに開いた口が塞がらない状態になっており、ゴンに至っては頭からボンッと爆発音が聞こえた。

刃牙 「説明する前に我が社の役員達を紹介させてくれ」

そういうと後部の扉からまたまた見たことのある顔が「よっ!」と顔を出した。

ゴン 「レオリオ!!」

そしてまだ2人。懐かしい顔が見えた。

渋川 「ひっひっひ、お二人とも元気かの?」

独歩 「オイラも忘れるなよ?」

キルア「ゴウキもドッポも!?ちょっと待てよ!色々説明しろよな?」

頭の回転の早いキルアもこの状況を並べられて、答えを導きだすことは出来なかった。ただ皆の身につける服装や小物は見るからに良い生地や素材を使っていて、リムジンから何からとかなりのお金が掛かっているのが分かった。

刃牙 「あぁそうだよな。まずは先に名刺を渡しておくよ。」

差し出された名刺には<株式会社グラップラー 代表取締役社長 範馬刃牙>と書かれていた。
なおさら意味が分からない。

刃牙 「最初から説明するさ…………」

一体、刃牙の身に何があったのかしっかりと説明させて頂こう。

殴られ屋で何とかお金を増やしていた刃牙であったが、現実的にこのまま資金が少し増えたところでとてもグリードアイランドの購入資金になるとは思えなかった。ゴンとキルアとの賭けにも度肝を抜いて勝つには考えた先に、あの時目に止まったコーラ。これが刃牙の頭の中で稲妻のように駆け巡った。

すぐさまコーラの販売会社へ電話をし、ボトルの入手経路を聞き、有り金すべてを叩いて空のボトルを購入。独歩と渋川にコンタクトを取った。

事情の掴めない二人は刃牙のいる部屋に入るとダンボールに入ったたくさんの空のペットボトル。
驚く二人は刃牙から説明を受ける。

♪タタタッタタ〜タラタッタッタッタ〜

株式会社グラップラーの朝は早い。遅咲きの桜が咲くここヨークシンのホテルの一室で伝説が生まれようとしていた。
まずはホテルの水道から水を汲む。
それを渋川剛気が練。
変化系である渋川が練を行うと水が純度の高い砂糖水のように甘くなる。

そして範馬刃牙が練。
具現化系である刃牙が練を行うと水に不純物が現れる。
そう、刃牙が練を行うと水が質の良い炭酸水になる。

そしてそれを愚地独歩が練。
強化系である独歩の練により砂糖水の量が一気に増える。

それをボトリング。

最初はこの工程で商品を作っていた3名であるが、刃牙が言う

「まだだ・・・何かが足りない」

職人気質がある刃牙は現状に満足できないでいる。

もう一つ、

後もう一つピースが揃えば………

壁にぶち当たると彼は散歩をする。頭をクリアにして一旦問題を頭から切り離してただただ歩く。
そんな風にしていると不意にアイデアに閃いたりする。

ふと立ち止まり、風に舞う桜吹雪を眺めていたら不意に声をかけられた。振り向くとゴン達と合流する前に数日早くに到着して街で遊ぼうとしていたレオリオだった。とりあえず纏と練は出来ると言うことなのでホテルに連れて帰り、水見式で練をさせてみる。

パズルのピースが揃った。

水が見る見る色を帯びて黒っぽい色になる。

刃牙「これだッッッ!!! 」

3人ががっしりと握手を交わすがレオリオに理解できないでいた。
刃牙の悩みは色。3人での作業により味は完全なるコーラ。 いやそれよりも旨いかもしれない。
原価は一体いくらであろうか?
水はホテルの水道水。あとは勝手に増やすことが出来る。

唯一の悩みは色だった。コーラだと言っても信じて貰えない。だって色が無色透明なのだから、それに着色するだけの金はすでになかったのだ。味は良い、あとは黒ければ大衆に馴染みのあるコーラだ。

レオリオが色付けしたコーラをグラスに注ぎ3人で飲み干す。

今度はがっしりと抱き合った。

世界が変わる。完璧な甘さ、喉が痛くなるほどの細かな炭酸、そして黒曜石のような美しい色。それが無限に増やせる。原価は既存の商品とは比較にならない。

刃牙「これを市場に出回るものの半値で売ろう。会社名はそうだな………株式会社グラップラーっていうのはどうかな?」

独歩「いいんじゃねェか?世界のシェアを総取りしちまおう」

渋川「カッカッカッカ、卑怯とはいうまいね」

レオリオ「よく分かんねぇーが協力するぜ、練の修行にもなりそうだしな」

以上が刃牙がいかにして巨万の富を築いたかの顛末である。
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