HANMER×HANMER   作:としを

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HANMAR×HANMAR♯6

「坊や……待ちなさい…」

 

年の頃はゴンと同じくらいであろうか、短パン姿でスケボーを抱え、99番のプレートをつけたツンツンとした銀髪とツリ目の大きな瞳が印象的な少年はキルア=ゾルディック。実はこの少年は伝説の暗殺一家ゾルディック家の三男である。

 

この年齢でハンター試験を受験するというだけでも特別だという事が理解出来るがキルアはもっと特別。いや、特殊な少年だった。生まれた時から暗殺の英才教育を受けており、実際に人を殺めた経験も持つ。特殊な生活環境のせいか年の割に表情にどこか冷たい印象を受ける。ハンター試験を受験したきっかけは、ものすごい難関と言われているから面白そうだと思った。という単純な好奇心であった。

 

「待ちなさい…」

 

幻聴??そう思うより鮮明に、はっきりと声が聞こえた。

その声が自分に向けられていると確信した時に振り返ったキルアはそれを後悔することになる。

 

そこには血走った眼で鬼のような形相をした中年のオッサンが気をつけの姿勢でプルプルと震えていた。

 

現実の世界であれば、すぐにお巡りさ~ん!と交番に逃げ込まなくてはならないような状況であるのだが、ここはハンターハンターの世界、勇次郎からどこか父親に似た威圧感を感じてしまい、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなり、手招きをする勇次郎に引き寄せられるように距離をつめていく

 

 

勇次郎「それを貸しなさい…」

キルア「それってこのスケボー??」

勇次郎「貸しなさい…」

キルア「ここに置いておくね、じゃあオレ急ぐから!」

 

勇次郎の脇にスケボーを置き、目的は自分ではないと安堵の表情を浮かべ、そそくさとその場を立ち去った。

 

(あのオッサンはマジでヤベーな…)君主危うきに近寄らず。特殊な環境で育ったキルアは勇次郎の危険性を一瞥しただけで察知し、年齢の近そうな少年が前の方に居たので、キルアにとって勇次郎というダークホース以外は至極退屈なこの試験の暇つぶしと先ほどのやりとりで高ぶった気持ちを鎮める為に一緒に行動することにした。

 

 

ーーーーーー80km地点ーーーーーー

 

(バカな!!バカな…!バカな…!バカな…!

 

そんなバカな!!オレにかなう奴なんて一人もいなかった、勉強も!スポーツも!!全てトップだった!!オレ以外の人間なんてただのクズ!!オレに利用されて捨てられていくだけのガラクタだったはず!!)

 

今まで自分の思い通りに世界が回っていた187番のニコルは産まれて始めての挫折を味わっていた。

新人がここまでこれて、しかも急遽始まった耐久レースの80kmまで走れたのだ。十分に賞賛に値する結果であったのだが、後に涙ながらにこう語ってくれた。

 

きっと死ぬまで忘れることなんて出来ないですよ…え?何がですって?声ですよ声。こう見えても体力には自信がありました…でも、もう限界なのかなって…エフッエフッエフッ…って今でもその声はずっと耳に残っていて…えぇ…たまにうなされますよ。

 

後ろの方から何か気配を感じて少し振り返ってみたんです…信じられますか…?眼なんか真っ赤に充血させて…あれ筋肉なんですかね…?顔が強張っていました…鬼のような顔をした男です。その男がこう…なんていうんですか、こう…床をクロールするように物凄いスピードでオレを追い抜いていったんです、これ、本当なんですよ。

 

追い抜かれた時にお腹の下にスケボーを置いているんだって気がついたんですけどね…あの男はスケボーを使っているとは言っても腕の力だけですよ?足なんかピンッって綺麗に真っすぐ浮いてました…あの姿勢ってやってみたら解ると思うんですが、腹筋や背筋、大腿筋に物凄い負荷が掛かるんですよ…

 

その状態で80km…しかも笑いながら、あぁ…いるんだなって、鬼みたいな化け物はいるんだって…来年ですか?受けませんよ…あんな化け物がいるなんて知ったら自分の事がとてもちっぽけな人間に思えてしまったんですもの…

 

 

禁じ手ッッッッ!!範馬勇次郎ッッッ!!

 

 

「見ろよ」

「おいおい」

「マジかこりゃ」

 

不安を口にする受験生の視線の先には一体どこまで続いているのか解らない巨大な階段が上に向かって伸びていた。そして後方からも声がする

 

「おいおい、なんだこいつは」

「あぶねぇ!!近づくな」

「避けろ避けろ、顔がイッちまってる!」

 

後ろの話題を掻っ攫っていたのは、ご存知、範馬勇次郎、その人であった。

少しでも気を緩めたら、ナイアガラの様にあたり一面をうんこの海にする大惨事を引き起こし兼ねない緊迫した状況は続いている、肛門の括約筋に対して己の持てる最大筋力を導入している勇次郎であったが恐ろしいことに時間の経過により、心なしか表情が穏やかになったように見える、いや気のせいか…

 

だが目の前にそびえ立つ大きな階段を前にいくら勇次郎といえども、心の拠り所としいたそのスケボーは足枷にしかならない。

 

勇次郎「ありがとよ…」

 

キルアを見つけると、プルプルとどこか寂しそうに借りたスケボーを返す

 

ゴン 「おじさん!良かった、おじさんもここまで残ってたんだね!」

クラピカ「もしや…あのような姿勢でここまで来たということは足を負傷したのではないか?」

ゴン 「え?おじさん、大丈夫??」

 

真面目なクラピカは医者志望であるレオリオに診察をするように促す。

レオリオも勇次郎に対する恐怖心はあるが相手が患者であるとなると話は別である、それに苦悶の表情も気になっていた。勇次郎はスケボーから降り、再度気をつけの姿勢のまま、小刻みにプルプルと震える。

 

 

勇次郎 「構わん、先に行けッッッッ!!」

レオリオ「先に行けってあんた、見るからに平気な状態には見えないぜ?」

 

(邪っっっっっっ!!!)と大声を出して、皆を威圧したい勇次郎であったが今はそれが出来ない…

 

キルア 「もしかしてオッサン…」

 

伝説の暗殺者として両親からや祖父、曾祖父からもその才能には太鼓判を押される程の才能を持ったキルアは、勇次郎の主に肛門の括約筋に物凄い緊張が走っていること、発汗の量や質から便意を堪えているのではないかと持ち前の観察眼と勘の良さから察したようだった。

 

キルア 「なぁ、そこまで言うならオッサンの足に何か問題がないか階段を少し上がってみてよ」

 

イタズラっぽく、みんな心配してる事だしさぁと勇次郎に促す。こういう時の表情はまさに年相応に見えるようだった。

 

ゴン  「そうだね!別に問題がないなら俺たちも先に行くから、痛い所とかないのか証明して!」

クラピカ「私もゴンと同意見だ」

レオリオ「医者としてそれが出来ないと許可は出せないぜ」

 

(貴様まだ医者ではないであろうッッッ!!)とレオリオに対して声を張り上げたかったのだがそれも出来ずに階段と対峙した…大人だから…大人だから…必死に笑いを堪えているキルアを、後にどのように料理してやろうかと睨みをきかせようとしたその時、範馬勇次郎に光明が走るッッッ!!!

 

風…突風が吹いた…自身の世界では己の我がままを貫きとおすという事で強さの証明としてきたが

この世界はまた違った世界、そしてこの未曾有の緊急事態ということもあり、己の持つ思考を最大限に巡らせた、その間、時間にして僅か0.2秒。

 

 

ざわざわ…ざわざわ……

 

 

勇次郎「久しぶりに使ってみるか…」

 

口元に少しだけ笑みを浮かべた勇次郎はゆっくりと息を吐き、歩を進めた。

 

勇次郎「どうだ貴様らッッッ!!なんなら俺が先を行ってやるぜッッッ!」

キルア「まさか、肢曲!!?」

 

水を得た魚のように独特の歩法で得意げに階段を駆け出した勇次郎を見て、キルアが口走ったが、その動きはキルアが知っている肢曲とは少し違っていた。大の大人が人前で大便を漏らす様を見てみたかったキルアは少し悔しそうな顔をして、三人と共に階段を駆け出した。

 

勇次郎はコツを掴んだのか、物凄い早さで階段を上っており、気がつくと既に試験官であるサトツのすぐ後ろをキープしていた。先ほどまで便意に生涯で唯一の敗北を期そうとしていた勇次郎に何が起こったのかというと、試験官でありプロハンターのサトツが解説をしてくれた。

 

サトツ「ほほぅ、御殿手(うどんでぃ)ですか」

勇次郎「ふ…よく勉強してやがる」

 

サトツが言った、御殿手(うどんでぃ)というのは琉球王家の長男のみに継承をゆるされた王家秘伝の武術であった。最大の特徴である歩法は天下無敵と言われ、正中線を維持したまま左右の揺れは一切なく、ゆえに打込む隙は皆無!敵は無謀な攻撃を強いられることになる。

 

サトツ自身もジャポンという小さな島国に関する古い書物でしか読んだことがなかったので実物を見るのは初めてである。しかもその難しい歩法を階段で行うなど…この男の体術のレベルに驚嘆していた。

 

ただ驚く事はそれだけではない、勇次郎が行っているのはただの御殿手(うどんでぃ)ではなく、肛門の括約筋に極限まで力を込めながら行っている御殿手(うどんでぃ)なのである。

 

本来であれば相手に打込ませ、その隙を天下無双のカウンターで持って相手を蹂躙する為の奥義であったのだが、正中線を一切の揺れなく維持しながら歩みを進める歩法に勇次郎はこれこそ、便意を我慢する際の最善の歩法であると、永い、永い歴史のある御殿手(うどんでぃ)のその先を見たのであった。

 

(俺に技を使わせやがったッッ…)

 

そう驚嘆する程の強敵を自身の身に宿したまま。勇次郎は闘争を続けていたがそうこうしている内に光が見えてきた。やっと開けた場所に出たようであった。

 

 

その手があったか勇次郎ッッッッッッ!!!!

 

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