HANMER×HANMER   作:としを

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HANMAR×HANMAR♯8

◆ビスカ森林公園◆

 

 

ここが二次試験会場となる、湿原を抜けた先にあるこの場所の少しだけ開けた森の中に小屋があり、その入り口に大きく

 

「本日 正午 二次試験スタート」と書いた看板が掲げてある。

 

小屋の中からはなにやらけたたましいうなり声のような音が聞こえてくるが、正午スタートと書いてあるので皆、警戒はしながらも時間が来るのを待っていた。残った受験者はここまでで148名となっている。

 

時間になると扉が開き、中には2人。一人はこのうなり声の発信源、大柄な身体のお腹から音を鳴らす美食ハンターのブハラ。

 

もう一人、ブハラの前のソファーに座る、少し特殊な5本角を生やしたような髪型をした女性。彼女もまた美食ハンターでメンチという名前らしい。この2人が2次試験の試験官のようだ。

勇次郎は気がついているだろうか?この世界の女性は勇次郎の居た世界の女性と比べるととても可愛らしい。

 

是非とも、ここにも範馬の種を蒔いて欲しいものだ。

 

メンチ「二次試験は料理よ!美食ハンターの私達を満足させる食事を用意してちょうだい!」

 

まずはブハラの指定する料理から2次試験がスタートされた。メニューは豚の丸焼き。ここビスカ森に唯一生息する世界で最も凶暴な豚。グレイトスタンプを倒して焼く。この試験内容を聞いた受験生は一斉に森の中で掛けていく、ゴン達一行もそれに続く。

 

だが……ッッ!!!この漢だけは違っていたッッ!!

 

先ほどクラピカとレオリオ、2人と共にここ2次試験の会場へ来る途中に小川を見つけていたのだ。受験生が森の中に向かう中、この漢だけは浮殿手(うどんでぃ)でその小川へ向けて歩を進めていたのだ。

 

そして、ついに、その時は来た。

 

やっとの事で一人になり、そして最高のポジションで開放のカタルシスを迎えられる。

だが百戦錬磨の勇次郎であったがここで誤算があった……便意を我慢している時に一番気をつけなくてはならない事、気の緩み。それが一番起こり易い瞬間とは便所を見つけた時である。

 

安心してしまうのだ…それは心ではなく身体がそう理解してしまっている事…

小川は便所ではないのだが勇次郎からしてみれば既にここにたどり着くまでにもう便所はこの小川であると刷り込みがなされている。

 

ここまで来て、本日2回目の大きな波が勇次郎を襲うッッ!!小川までの距離はあと6メートル。もはや周囲に人の気配はない。浮殿手(うどんでぃ)を解除し、たったの一歩で距離を詰める…だが…

 

2つ目の誤算ッッッ!!!!重力が軽いこの世界では勇次郎が居た世界同様に踏み込むと大きく目算を誤り大きく小川を飛び越えてしまった。まだ身体が慣れていないようだ。

 

勇次郎「ヌウンッッ!!!」

 

今度は自らの腕力で左手で左、右手で右の尻を押さえ込む。

ただ、ただ、自らの腕力で挟み込むようにしながら飛び越えた小川まで細心の注意を払い歩を進め、川の水に両足をつける。勝利を確信し両手を解放!!!

 

だが、その時ッッ!!

 

 

3つ目の誤算ッッッ!!!

 

安心した勇次郎は忘れていたのだッッッ!!まだ服を脱いでないッッッッ!!

 

脱いでいる暇はもうないッッッ!!!大切な一張羅を汚すのは範馬の名折れッッッ!!

 

悪魔達は入り口から既に顔をだしている、その頭が勇次郎の一張羅に付着するより早く勇次郎は動いた。

 

 

「フンッッッッッッッッッッッ!!!!」

 

指で丁度、肛門の部分にだけ穴が空くように、大切な一張羅を破ったのだ。

 

それと同時に

 

 

糞ッッッッッッッッッッッッッ!!!

 

 

物凄い勢いで土石流のように流れ出、溜まりに溜まった物が小川に放たれる。

 

勇次郎の体重は100KGは超えているがその身体をふわりと浮かす程の勢いであった。強引に筋力のみで押さえていたぶん勢いも増している。脱水を避けるため、前屈みになりまだ汚れていない上流の水だけを飲む。臀部は下流に向け、上流からは水を飲む。丁度大型のネコ科動物が、獲物を前にした時のような姿勢だ。

 

この姿勢でしばらく、飲んでは出し、飲んでは出しを繰り返し波を凌ぐ事に成功した勇次郎の顔はとても晴れやかであった。とりあえず次の波が来るまではもう安心していいだろうと思うところまで出し切ると、お尻を素手で洗い小川を後にする。

 

肛門に開けてしまった穴には胸に付けていた315番のプレートを付けて見事に隠した。

 

 

「これで良しッッッ!!!」

 

 

油断は出来ないが既に一度出し切ってしまった勇次郎は目の前を通りかかったグレイトスタンプを蹴り上げ、丁寧に焼き上げブハラの元へ向かった。

 

 




(いてて……足がしびれてきた…なんで…なんで私が怒られているのかしら…私は1つ星ハンターの称号だって持ってる将来を期待されている天才よ!?
でもこの漢に逆らったらどうなるか…サトツが言ってたわね…ずっと「堅」を維持しながら付いてきていた漢がいたって…、

でも違うじゃないっ!!

こいつが行っているのは「堅」じゃないわ…垂れ流じゃない…ただこいつの状態はそんな生易しいものじゃないわ…だだ漏れよ…だだ漏れ!!!

あのおじさんも耄碌したものね。オーラを体内に留めることさえできていないヒヨッ子じゃない…でも…垂れ流しの状態でここまでのオーラの総量って…化け物じゃないのよ…!!!だいたいなんでお尻にプレートを付けてるの?この漢は普通じゃない…)

念とは身体から溢れ出す生命エネルギー・「オーラ」を自在に使いこなす力のこと。
あらゆる生物がオーラを持っているが、それを使いこなせる者はごくわずかに限られる。

常識では考えられない力を発揮できるため、念能力者は一般人から天才や超人として特別視されている。またある分野で突出した力を持つ人物が、本人も自覚しないまま念能力を使っているケースも多く、修行次第では誰にでも習得が可能である。その為、悪用される危険があるので念の存在は一般人には秘密となっているのであった。
ただしプロハンターには相応の強さが求められるため、念の習得は必須となりハンター試験に合格した者のみ習得を義務付けられている。

今年、二次試験の試験官を任されたメンチが先ほど言っていた「堅」とは念の応用技。
心源流の念の基礎「四大行」の「纏」「絶」「練」「発」その中の一つ「練」の状態を維持することだ。
全身を通常よりも遥かに多いオーラで覆うため。防御力の強化に利用する。念の達人同士の戦いには必須とされる技術であり、その持続時間は勝敗を大きく左右するとも言われている。

通常の状態で体の精孔も開かれていない勇次郎はサトツが「堅」を行っていると見間違う程のオーラを常に垂れ流していたのであった。

正座をさせられている2人の前に立つは、範馬勇次郎。
排便を終え、ブハラに豚の丸焼きを提供した際に言い放った。

勇次郎「これだけの人数を前に食事をするとくれば和・洋・中を問わず、ジャケットの着用は必須ッッ!!!まして貴様はハンターの見本ともなろう試験官であろうッッッ!!」

ゴン達一行がブハラの前に並べた豚の丸焼きを食べているところで言い放った。

そこから説教が続き、ブハラとメンチは平謝りを続け、仕方なくジャケットを着用した…もう食欲を失くしていたブハラの試験はそこで終了、ブハラは腑に落ちない顔をし、しびれる足にしかめっ面をしたメンチは自分の試験の説明に入った。

メンチの出すメニューは「スシ」ヒントとして、小屋の中に案内しながら、必要な器具やスシに必要なごはんは用意したという。そしてスシはスシでもニギリズシしか認めない。

多くの受験者はスシというものを知らない。恐らくはこの状況とメンチが出したヒントの中でスシというものを推測する観察眼などを試す試験であろう。

そして奇しくもここに、寿司を自らの国の伝統料理として持つ漢の存在が2名。
受験番号315番の範馬勇次郎と294番のハンゾーであった。

ハンゾーはこの世界ではジャポン呼ばれる小さな島国の忍者であった。忍法という特殊技術を身につけるため、生まれた時から様々な厳しい特殊訓練を課せられてきた。18歳にして雲隠流の上忍にまで昇りつめたその実力は今年の試験ではトップクラスである。世界は違えどジャパンとジャポン。そして忍や寿司などある程度はリンクしている部分もあるようだった。

ハンゾーはニギリズシに必須となる寿司のネタ。魚を捕獲するべく近くの小川に向かう。
先ほどのブハラと同様にメンチがお腹一杯になったら試験が終了ということならば急ぐに越した事はない。もっともブハラはまだ食べることは出来たが勇次郎の出現で食欲を失ってしまったのであったが…

他の受験生が目の前にある調理器具やお櫃に入ったごはんとにらめっこをしている様子を笑いを堪えながら悠々と通り過ぎていくハンゾー。先ほどの試験官とのやり取りを見て警戒対象となった勇次郎から距離をとるように迂回して出口に向かおうとしていたが、その佇まいや所作の美しさに、足を止める事となる。

いや、ハンゾーだけではない。残った70名程の受験生、そして試験官の2人でさえも受験番号315番の勇次郎に目を奪われてしまった…。

佇む漢のその手に突如現れた、魚。幻覚ではない。誰の眼にもそこに魚が現れた。

地上最強の手が慣れた手つきで捌く、包丁で筋目に対して直角に切る。

用意された米があるにも関わらずそれを使わずに空間で実演する。ある筈もない炊飯器の蓋をあける。

確かに実在しない。そこから掻き回す、しゃもじ。酢、砂糖、塩を最高の配分で米に垂らしてゆく。

手を濡らし、素早くそこから米をひと握り、船底型に作った米にわさびを塗込みネタを乗せ、また握る。

ネタに体温が移らぬよう、丁寧かつ素早く、そしてお皿に乗せた完璧な寿司。

そこに寿司は存在しないのだが、誰の眼に見てもそこには米を一口サイズの長方形に握りその上に、わさびと魚の切り身が乗せられた料理が実在するのを感じていた。

空のお皿をメンチの前に差し出した勇次郎が静かに言う

勇次郎「貴様はこの俺を、地上最強を炊事場に立たせた。我が儘というならこれ以上あるまい」

目の前で繰り広げられた行為に唖然としながらも勇次郎が差し出した何も乗っていないお皿に手を向ける。作法にうるさい勇次郎を気にしてか、手を合わせ頂きますの一言も忘れない。箸を使おうかとも思ったがそれはナンセンスであろう。シャリを醤油に付けぬようネタのみを少しだけ醤油に付着させ、一口で口に運んだ。


メンチ「合格よ……」


メンチは驚愕していた。念能力の一種ではないのは対峙するメンチが一番理解している。この漢はまだ念を治めていない…実現しない空間にイメージの力だけで寿司をそこに作り上げたのだ。

それもギャラリーにさえ見えるよう鮮明に具現化して…味も申し分なく…いや、先ほど説教されている時から気になっていた左手についている、何かの苦みさえも感じさせる程強烈に…まぁそれは試験とは関係ない。実際に食べた訳ではないですし…寿司だけにね。

勇次郎の合格の発表を皮切りに、そのイメージがヒントとなり、我れ先にと魚を捕らえに受験生が小川に向かう。自分しか知らないと思っていた寿司の調理法を知っていた者が他にも居たのかと焦るハンゾーも小川に向かう。

惨劇はその後…

結果として2次試験を通過出来たのは315番の範馬勇次郎だけであった…受験生が向かった小川はなぜか茶色に濁っていて、とても生物が生存出来るような状況ではない程の異臭を放ち、試験官であるメンチは勇次郎のエア寿司を食した後、何故か腹痛を訴えもう食べれないという。

これにて、今年の二次試験が終了した。


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