生まれたことが罪ならば   作:切株名人

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第1話

「なんだよあの出鱈目な奴は!?クソが!たかが喰種でもない人間の癖にィ!?」

 

街が寝静まった夜、一人の青年が入り組んだ路地裏をかける。その速度は人間の速度をはるかに超えた速度。彼が言った言葉通り、彼は人間ではない。

 

「クソ!堀も豪も殺られちまった!聞いてねぇぞ、あんな化け物!」

 

彼は喰種(グール)。人の姿をし、人を喰らう種族。彼らは皆、高い身体能力と再生能力、そして赫子と呼ばれる体内から生やした武器を使って殺す。

人間以外は食べることが出来ないという欠点さえ除けば、彼らは明らかな人間の上位種。事実、人を家畜として扱う喰種がほとんどである。

そんな彼が赫子を出さず、汗を流して必死に逃げている。ゴミ箱やダンボールに体がぶつかってもお構い無しに、逃げ惑っている。

 

彼はAレートと呼ばれる、喰種の中でも強力な喰種だった。持ち前の甲殻の赫子はあらゆる武器を弾き、突き刺すことが出来た。だがその赫子は無残に彼の肩から垂れ下がっている。引きちぎられたのだ。

 

「クソ!クソ!どこかに逃げ場は・・・ヒィィッ!」

 

行き先に道はなし。追い詰められた。扉も窓もなく、上へ登ることも出来ない。このままでは、追っ手が、あの怪物が・・・

 

「追いかけっこは終わりか?」

 

来た。

 

カツン、カツンとゆっくりと歩を進める人型の影。その姿は喰種(グール)でもなければ人ですらない。緑色の複眼に、所々に傷がついた真っ赤なボディに三本の傷が入った銀色の胸部装甲。手足に付いている黒いヒレのようなものには、仲間の返り血と思わしき赤がこびりついている。

 

間違いなく、彼を追ってきた化物。

 

「た、頼む!許してくれ!いや、許さなくてもいい!殺さないでコクリアに送ってくれ!知ってることは全部教えるからさ!だから、命だけは——!」

 

涙して土下座する。人間如きに土下座するという屈辱などない。今あるのはただ死にたくないという明らかな恐怖からの行動。

その間にも、コツンと歩を進める化物。ソレは彼の前で止まり、一歩、また一歩と確実に歩を詰めてくる。

 

「来な、来ないでくれ・・・!く、来るなよ!来るんじゃねぇよ!」

 

腰を引かせながら、手足を必死に動かして壁際まで詰め寄る。怖い。ただ目の前の存在が恐ろしい。

やがて距離はなくなり、手を伸ばせば容易に掴める距離まで近寄る。

 

「残念だったなぁ」

 

ソレが喋った。喋ることは知っていた。だが先程とは違い、地獄の底から発せられたかのように、重い。

 

「情報ならテメェの仲間がゲロったよ。ああ・・・確か金髪の方だったか?あのA+レートの甲殻」

 

間違いない。その男は彼の仲間だったものだ。そして、開幕早々、現れたソレに殺された・・・。

 

「あの喰種は晴れてコクリア行きが決まったよ。レートも十分、入れるに値する。こっちの言うことに従ってる間は殺さねぇよ」

 

ソレが彼の首を掴み、持ち上げる。大の男一人を悠々と足が浮くまで片手で持ち上げる筋力。救いはない。ソレにとって彼の価値は既にない。殺す理由は十分。だから殺す。彼の意思など関係ない。なぜなら、

 

「この世に生まれてきたことが罪だったんだよ。テメェら畜生(喰種)はさぁ」

 

「グギャッ・・・!いぎゃあああああああ!!!!」

 

ソレの腕が体に突き刺さる。ズブリと嫌な音と共に、絶叫。脳内が痛みで支配される。勢いよく、アーチを描きながら吹き出て滝のように垂れ流される血が熱い。蕩けてしまいそになる。

ソレは腕を動かし、赫包と呼ばれる赫子を出す器官を掴み取り、思いっきり引き抜く。その過程で心臓が破裂し、彼は泡を吹いて白目を剥き、痙攣した地面に放り投げられる。

 

「駆除完了っと」

 

ソレは死体の顔を踏み潰し、腰についている特徴的な機械のバックルを外す。全身から蒸気が溢れ、体が崩れ落ちると、そこには白いコートを着た青年がいた。青年は持っていた赫包をコートのポケットにあった袋に入れ、コートの内側から端末を取り出し、操作して耳に当てる。

 

「こちら鷹原。喰種二体の駆除完了。一体はコクリア送り。ああ。いつも通りに頼んだ」

 

通話を切り、手に持った端末を再びコートの内側へ戻す。青年は思いっきり伸びをして、ゴキリと首を鳴らす。

 

「ああ・・・確か今日はアカデミーで餓鬼共のお勉強の付き合いがあったか?っはぁ、めんどくせぇ」

 

袋とバックルを持って路地裏から出る。そこには青年と同じく白いコートを着た幾人もの姿が。皆眠そうにしながらも、淡々と己の作業を進めていく。

 

「探しましたよ先輩。一人で狩っちゃうなんて酷いんじゃないですか?私のこと待ってて欲しかったですよ」

 

「クインケ持ってなかったお前が悪いんだよハイル」

 

鷹原にニコニコと話しかけたのはゆるふわのピンク髪と垂れ目が特徴的な女性、伊丙入。現在は上等捜査官で、見た目と反して戦闘能力は凄まじい。ハイルは今は鷹原の相棒であり、喰種を狩る前までは一緒に残業していたのだが、クインケを持っていなかったため待機となった。

 

ちなみにクインケとは喰種の赫包を加工して作られるもので、レートの高い喰種に応じてクインケのレートも高くなり、階級に応じて使えるクインケのレートが変わってくる。

 

「うえ、またそれだけ抜いたんですか・・・」

 

ハイルの視線の先には袋。外見は白い袋で中身は見えないが、前に同じ光景を何度も見たことがあるので中身が何かは容易に想像できる。

 

「甲殻のA+レートの赫包が手に入ってな。まっ、俺は使わねぇから真戸のオッサンにくれてやろうと思ってな。お前はどうせ使わねぇだろ?」

 

真戸とは鷹原が数年前からよろしくさせてもらっている先輩であり、クインケ集めと喰種狩りを趣味とする捜査官。周りからは出世欲がなく、クインケ集めに狂っている変人として扱われているが、腕は鷹原も驚くほど高く、出世欲のなさという点がなくなれば、特等捜査官になっていても可笑しくない人材である。

ちなみにハイルは真戸を苦手としている節がある。

 

「さてと、んじゃ俺はもう帰るから、ハイルは残った資料まとめとけよ。同僚に手伝わせんじゃねぇぞ?」

 

「・・・はーい」

 

若干の躊躇いが見えたものの、大人しく返事をしたハイルに満足した鷹原は、袋を同僚に預けて真戸に提出するように指示すると、持っていたバックルをアタッシュケース——本来であればクインケをしまうケースに入れて、現場を後にした。

 

 

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side鷹原

 

早朝出勤マジでだりぃ。いつもなら時間なんて気にしないで遅刻覚悟で爆睡している時間帯に出勤とかホントに嫌だ。

数時間前まで喰種狩ってたから寝たの遅くなったし、出勤前にハイルがちゃんと仕事したか確認しないとだったし・・・。

つかこの白コート暑ぃ・・・。みんなよく文句言わずに着てるよな・・・。夏になったら素材が変わるとはいえ長袖だぜ?誰か総議長の爺に夏は半袖短パンでいいって直談判しに行けよ。どうせ俺が言っても怒られるだけだから。

 

「懐かしいな、ここ」

 

俺が来た場所は第二アカデミー。ここは喰種捜査官を目指す問題児が集められた場所で、性格や行動が歪んでいたりと、様々な理由で集められた候補生たちがいる。

かつては俺も第二アカデミーにぶち込まれた。飛び級して一年で辞めたけど。

ほら、授業ってめんどくさいし寝みぃじゃん?

 

「・・・血の匂い」

 

入口に立つとむせ返る、ほどでもないが結構な血の匂い。とある理由から、喰種ほどではないが超人すらも超えた肉体と鼻があるから分かる。

この匂いは虐殺などの『濃い殺し』の匂いじゃない。あまりにも小さすぎる・・・。

 

「候補生の誰かか」

 

匂いは間違いなく、講堂からする。大雑把には分かっても、細かくまではやはり分からない。入って見て嗅いで確かめる。誰が血で手を濡らしたのかを。

 

「面白くなりそうだ」

 

見つけたらどうしてやろうか。どう扱おうか今からでも楽しみだ。

 

 

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「初めましてだ。俺は鷹原仁。階級は準特等捜査官。今日はお前らの一日教官ってことで来させてもらった。よろしく頼むぜ問題児ども」

 

その人は不思議な人だった。捜査官の特徴の一つの白いコートを着崩して、クインケが入ってるケースを腰にぶら下げている。膝裏とかに当たって痛そう。

この第二アカデミーに問題児が集まっているのは勿論知っていたみたいで、ちゃんと『オレ』達のことを問題児って言っていた。その事に、自分を問題児って思っていない人達は顔を顰めるが、

 

「おい、アレって・・・」「嘘だろ・・・」「白龍翼賞なんて初めて見たよ・・・」

 

達観していた人も、敵視していた人も、誰もが彼のコートに付けられた紋に釘付けになる。勿論オレも。

彼が付けていたのは白龍翼賞。SSSレートの喰種を狩った人にだけ与えられる最高ランクの勲章。

あの人が白龍翼賞を貰っていたなんて、信じられないが信じるしかない。白龍翼賞を付けるイタズラなど、バカでもやらないだろう。一瞬で嘘だと見抜かれるに決まっている。全く貰った人がいない賞なのだ。ソレをイタズラでも付けている。それがどんな意味を持つのか、わからないほどバカじゃない。

 

「まっ、俺がお前らに教えられることなんてのは喰種の狩り方だけだ。捜査官の心得だとかそんなもんは俺には分からねぇが、いいこと教えてやるよ」

 

鷹原さんは私たちをまた見渡して、ニヤリと悪どい笑みを浮かべた。

 

「問題児の方が、捜査官ってのは向いてんだぜ?」

 

 

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講習は講師に何教えればいいか聞きながら、なんとか問題なく終わった。見どころがある奴はそれなりにいたな。やっぱ捜査官ってのは問題児の方が向いてるわ。

 

道行く候補生たちが俺のコートについてる勲章を見てコッチをチラ見してきやがる。視線が鬱陶しすぎる。俺はこんな派手でダサいもん付けたくねぇのに、吉時さんが是が非でも付けろっていうから・・・サイズ小さくしたら怒られたし。

一種の広告塔扱いなんだろうな。俺は。SSSレートの喰種を狩った捜査官がいるってだけで、喰種は近づかなくなるからな。見られただけで一目散に逃げてく奴もいるし。

 

「こっちかな〜?」

 

俺は尾行している。尾行、と言っても見えた後ろ姿を遠くから追っているだけだけど。目がいいってのは便利でいいわ。

俺が来た時、そして講習中にもプンプン臭っていた血臭。下手人は判明した。近寄る機会があったからわかりやすい。

いやぁ、本当に人ってのは見かけによらないもんだねぇ。

 

いる場所はアカデミーの近くにある森。それもバレにくく、結構深い場所にいる。周囲の目を警戒していたのか、少しだけ遠回りしていたのが仇になったな。おかげで距離が簡単に詰められた。

 

ほら、見つけた見つけた。鼻腔にくる血の匂い。無理矢理肉を刃物で切り裂く柔らかな音。大分抵抗されているのか、手つきは鮮やかとは言い難い。

なんで分かるかって?いつも俺がやってるからだ。

 

「随分と楽しくやってるみたいじゃないかァ。どうだ?命を奪うのは・・・楽しいか?」

 

振り向いたのは女。ほら、人は見かけによらないだろ?




誰もが考えたことのあるかもしれないアマゾンズ×東京喰種のクロスオーバー。更新はゆっくりになると思いますが、ちゃんと進めていきます。
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