ハイスクールD×D ~赤と紅と緋~   作:フレイムドラゴン

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第2話 彼女に殺されました!

「村山の胸、マジでけぇぇぇ!」

「80、70、81」

「片瀬ぇぇ、いい足してんなぁぁぁ!」

「78.5、65、79」

「こらぁ! 俺にも見せろ! ふたり占めすんなってーの!?」

 

 俺、兵藤一誠は現在、松田と元浜に連れてきてもらった覗きスポットに来ていた。場所は女子剣道部の部室の裏。そこの壁に穴が空いており、そこから部室内を覗けるのだ。

 そして、いまは女子剣道部員たちが着替えの真っ最中! つまり、穴の向こうには楽園があるのだ!

 ・・・・・・なのに、松田と元浜がなかなか交代してくれないので、一向に覗けないでいた。

 

「やばい! 気づかれたぞ!」

「逃げろ!」

「あっ、待てこらぁっ!?」

 

 結局、俺は女子の生着替えを覗くことができなかった。

 慌てて逃げてきた俺たちは、学園にある旧校舎の前に来ていた。

 

「ふざけんなよ! 俺だけまったく見れなかったじゃねぇか!?」

「フッ、この場所を見つけたのは俺たちだぞ。そのぶん、優先権があって当然じゃないか」

「むしろ、連れてってやっただけでも感謝するべきだろう?」

「ああ! おっぱいのひとつでも見られたのなら、いくらでも感謝してやるよ!」

 

 クソォォォォォッ! 俺も見たかったぞ! 女子の生着替え!

 

「フン! だいたい、千秋ちゃんと一緒に登下校している奴が贅沢を言うな!」

「まったくだ!」

 

 確かに、俺は千秋と一緒によく登下校している。仲のいい幼馴染みで、家が向かいだから必然的にそうなるのだ。俺も千秋みたいなかわいい女の子と一緒に登下校できて幸せだ。

 ちなみに明日夏は用事があるのか、いつもさっさと一人で行ってしまう。

 

「あーあ。これなら千秋と一緒に帰ったほうがよかったぜ」

 

 俺は二人に自慢するように言うと、二人は悔し涙を流し始める。

 

「ちくしょう! なんでイッセーにあんなかわいい幼馴染みがいるんだよ!?」

「・・・・・・言うな・・・・・・! ・・・・・・空しくなる・・・・・・!」

「おまけに、そのかわいい幼馴染みのナイスバディなお姉さんの幼馴染みもいるときてる!」

「・・・・・・だから言うな・・・・・・! ・・・・・・空しくなる・・・・・・!」

 

 あぁ、千春さんのことか。

 千春さんとは明日夏と千秋のお姉さんだ。松田の言う通り、それはもう見事なナイスバディなのである。

 そんな美女美少女姉妹と幼馴染みなのは、周りの男子からすればさぞや羨ましいことなのだろう。俺も逆の立場だったら・・・・・・うん、血涙を流すかもな。

 それから、明日夏たちには冬夜さんっていうお兄さんもいる。すごく頭がいいし、俺たちが難易度の高い駒王学園に入学できたのも、冬夜さんが家庭教師をしてくれたおかげによるところが大きい。──あと、超イケメンだ。明日夏もイケメンだし──まさにイケメン兄弟だ。

 そんな明日夏たちとは幼馴染みで、明日夏とは親友と呼べる間柄だ。

 

「ん?」

 

 ふと、俺の目に紅色が映る。

 紅い──ストロベリーブロンドよりもさらに紅の髪を持った少女が、旧校舎の窓からこちらを見ていた。

 リアス・グレモリー──この駒王学園の三年生。俺の先輩にあたる。我が学園のアイドルでもある。出身は北欧っていう噂だ。

 いいなぁ・・・・・・あの真っ赤な髪・・・・・・。

 俺がその真っ赤な髪に見惚れてると、リアス先輩は身を翻して中のほうに行ってしまった。

 

 

―○●○―

 

 

「・・・・・・なんかゴメンな──千秋」

 

 俺は隣にいる千秋に謝る。

 あのあと、松田と元浜と別れ、一人帰ろうとしたら、一人校門の前にいた千秋を見つけたのだ。──どうやら、俺を待っていてくれたみたいだ。

 ・・・・・・なんか申し訳なくなり、いまこうして謝っているわけだ。

 

「いいよ。私が勝手に待ってたわけだから」

「・・・・・・つってもなぁ・・・・・・」

「気にしなくていいよ。・・・・・・あんまり気にされると・・・・・・私まで申し訳なくなる・・・・・・」

 

 うーん、そこまで言われるたら、気にしないほうがいいのか?

 

「そういえば、明日夏は?」

「買わなきゃいけないものがあるから、商店街のほうに行くって」

「そっか」

 

 ──あいつ、完全に主夫みたいだな。

 冬夜さんと千春さんは仕事の都合で家を空けている。そのため、明日夏が自主的に家事なんかをやっているわけだ。その姿はもう主夫と言ってもいいぐらいだ。イケメンだし、性格も悪くないし、たぶん、いい旦那さんになるだろう。

 ・・・・・・それに引き換え俺は・・・・・・学校では松田と元浜と共に変態三人組と女子に嫌われ、彼女のいない学園生活を送っております。

 クソッ! なぜだ!? 当初の計画では、入学早々に彼女をゲットしているはずだったのに!

 そのために、女子の多い駒王学園に冬夜さんの家庭教師とスケベ根性で入学したのに!

 女子が多ければ彼女の一人や二人、すぐにできると思ったのに──結果は一部の男子──いわゆるイケメンがモテて、俺なんて女子の眼中に入ってなかった。

 ・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・世の中不公平だよなぁ・・・・・・。

 ・・・・・・俺たちの相手をしてくれる女子なんて、ここにいる千秋ぐらいだ。

 ちなみに、千秋とは仲のいい幼馴染みで、とくにそれ以上でもそれ以下でもない。

 定番の仲のいい幼馴染み同士が恋人に──なんて展開はもちろんなかった。千秋にとって俺はもう一人の兄みたいな感じなんだろうな。俺も千秋のことを妹のように思っちゃいるけど。

 ・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・暗い青春だぁ・・・・・・。このまま俺の学園生活は花も実もなく、おっぱいに触れることすら叶わず終わっちまうのかぁ。

 

「どうしたの、イッセー兄?」

「ああいや!? なんでもない!」

 

 そんなふうに、内心落ち込みながら千秋と帰ってると──。

 

「──あ、あの」

 

 見慣れない制服を着た少女に話しかけられた。

 

「駒王学園の兵藤一誠くん・・・・・・ですよね?」

 

 少女はもじもじしながら尋ねてくる。

 か、かわいいぃぃッ!

 とにかく、かわいい子だった!

 

「あのっ!」

「ああ! な、何か俺に用・・・・・・?」

 

 少女は少しの間もじもじすると尋ねてくる。

 

「・・・・・・えっと・・・・・・兵藤くんて・・・・・・いま付き合ってる人とかいます・・・・・・?」

「えっ?」

「あっ。もしかして、隣の子が・・・・・・か、彼女さんですか・・・・・・?」

「あ、いや。この子は幼馴染みで妹みたいな子で・・・・・・彼女は・・・・・・別にいないけど・・・・・・」

 

 それを聞いて、少女は安心したように息を吐く。

 

「よかったぁ!」

 

 少女は決心したかのような表情になると言う。

 

「──あ、あの・・・・・・私と・・・・・・付き合っていただけませんか」

「はっ? い、いま、なんて・・・・・・?」

 

 き、聞き違いじゃないよな!? い、いま──。

 

「──以前、ここを通るのを見かけてて・・・・・・それで・・・・・・あの・・・・・・兵藤くんのことを・・・・・・」

 

 お、おい! これって!?

 

「わ、私と・・・・・・私と付き合ってください!」

 

 マ、マジっスかぁぁぁぁぁっ!?

 俺、兵藤一誠──女の子から告白されましたぁぁぁぁぁッ!

 

 

―○●○―

 

 

「なっ!? 何ぃぃぃぃぃっ!?」

「なぜぇぇっ!?」

 

 翌日──松田と元浜があるものを見て驚愕していた。

 それは──。

 

「あぁ、この子、天野夕麻ちゃん」

 

 イッセーの隣にいる天野夕麻という名の少女のことだ。

 

「こいつら、俺のダチの明日夏に松田、元浜」

「よろしくね」

 

 天野夕麻が微笑みながら挨拶する中、イッセーが俺たちにだけ聞こえる声で言う。

 

「一応、俺のカ・ノ・ジョ♪ ま、おまえらも彼女を早く作れよ♪」

 

 そう言うと、イッセーは天野夕麻を連れて行ってしまう。

 ──で、松田と元浜を見ると──。

 

「うぅっ! 裏切り者めぇぇぇっ!?」

「あぁぁ・・・・・・!?」

 

 血の涙を流さんばかりに慟哭していた。

 ──で、今度は千秋のほうを見ると──。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 うなだれていた。・・・・・・耳をすませば、すすり泣きが聞こえてきた。

 ──さて、情報を整理するか。千秋に聞くところ、昨日、イッセーは千秋と一緒に帰っているところに、イッセーに一目惚れしたという天野夕麻に告白され、イッセーは即OK(オーケー)した。で、今日ここでその天野夕麻をイッセーに紹介された。そして、そのことに松田と元浜は慟哭し、千秋はうなだれながらすすり泣いてるわけだ。

 うん・・・・・・なんでこうなったんだ?

 いや、別にイッセーに彼女ができたことが信じられないわけじゃない。ていうか、彼女ができても別におかしくないからな。

 イッセーはスケベだが、それを除けば、その人柄はよく、非常に真っ直ぐなところがある。

 実を言うと、俺はイッセーのそういうところに密かに憧れてたりする。

 まぁ、それはいいとして──そういうわけだから、イッセーのそういうところに好感を持ち、惹かれる女子も少なくはないだろう。・・・・・・だが、それは付き合いが長くなり、イッセーのことを理解した場合においての話だ。いや、一目惚れすることがないとは言いきれないが・・・・・・。

 まぁ、それもいまどうでもいいか。

 いまはそこで泣きわめくバカ二人といつの間にか膝を抱えてうなだれている千秋をどうにかしないとな。

 それに──。

 俺はイッセーたちが行ったほうを見る。

 ──どうにも・・・・・・()()()()()がするんだよな? ・・・・・・俺の気のせいならいいんだが。

 

 

―○●○―

 

 

 数日後──。

 イッセーと天野夕麻は今日、デートすることになった。

 なんで知ってるかって? イッセーに自慢されたから──てなわけではなく、デートプランについて相談されたからだ。

 ・・・・・・なぜ恋愛経験のない俺に訊く? まぁ、それ以前に知り合いに、恋愛経験がある奴なんていないけどな。

 ──で、結局内容は王道なものになった。

 そして、俺がいま何をしているのかというと──イッセーたちのデートの尾行をするために、二人の待ち合わせ場所から少し離れた場所にいた。

 ちなみにイッセーは、気合を入れたオシャレをして、待ち合わせ時間の三時間前に来ていた。

 で、待ち合わせ時間が間近に迫ったところで、イッセーに女性が一人近づく。

 

「・・・・・・あれは・・・・・・」

 

 イッセーは女性からチラシを一枚受け取る。

 遠目ではなんのチラシなのかわからないが、おそらく──。

 

「イッセーくん!」

 

 そして、天野夕麻がようやく到着した。

 

「ゴメンね! 待った?」

「いや、俺もいま来たところだから」

 

 三時間も前に来て、なに言ってんだか。相談時にイッセーはこんなことを言っていた。

 

 ──一度、『待った?』て訊かれて『いま来たところだから』て言ってみたいんだよなぁ。

 

 そのために、確実に先に来るためにイッセーは三時間も前に来ていたのだ。

 そして、二人はデートを開始する。俺は気づかれないように二人のあとをつける。

 そもそも、なんで俺がこんなことをやっているのかというと──あの日、イッセーに天野夕麻を紹介されてから抱いたいやな予感・・・・・・それが日増しに強くなっていくので、それを確かめるためにこうして尾行をしているわけだ。

 ・・・・・・俺の気のせいで済めばいいんだけどな。

 デート風景そのものはいい感じといったものだった。町を歩き、ショッピングをし、その際にイッセーが彼女にプレゼントを買ってあげ、ファミレスで食事をする──王道で鉄板物なデートだった。

 ここまでいい雰囲気だと、俺のいやな予感も気のせいのように思えてきた。

 

「・・・・・・帰るか」

 

 これ以上は二人に悪いだろうと、踵を返して帰ろうとすると──。

 

「ん? あれは──」

 

 俺の視界にあるものが入る。それは──。

 

「・・・・・・何やってんだよ・・・・・・?」

 

 変装をしてイッセーたちを尾行している千秋だった。

 いやまぁ、気持ちは察せなくもないが──その変装はなんだよ。

 千秋の出で立ちは、フード付きのパーカーにサングラスに帽子というものだった。・・・・・・うん、怪しさ満点だ。

 変装ってのは、自分を隠すのではなく周りの風景に溶け込ませるようにするものだ。『木を隠すなら森』ってな。自分を隠そうとすれば、必要以上のことをしてしまい、かえって目立つ出で立ちになってしまう。

 俺も変装しちゃいるが、髪を後ろで縛り、伊達メガネをかけた程度だ。あとはケータイをいじるふりでもしていれば、人通りの多いここなら、そのへんにいる若者程度にしか認識されないだろう。

 まぁ、それはどうでもいいとして──あれ、どうするか?

 正直、自分の妹があんな格好でウロウロされるのは──勘弁願いたいな。

 そう思い、千秋のところに行こうとした俺は、視界に映った光景に驚愕する!

 イッセーにチラシを渡していた女性がいつのまにか千秋にもチラシを渡していたからだ。

 千秋はジーッとそのチラシを眺め、何かを決心したような表情でウンと頷く!

 別のいやな予感を感じた俺はダッシュで千秋のもとまで走るのだった!

 

 

―○●○―

 

 

「今日は楽しかったね!」

「ああ! 最高の一日だったよ!」

 

 デートは順調に進み俺と夕麻ちゃんは町外れ公園に来ていた。

 夕麻ちゃんは小走りで公園の噴水の前まで行くと、俺のほうに振り向いて言う。

 

「ねぇ、イッセー君?」

「うん?」

「私達の初デートの記念に一つだけ私のお願い聞いてくれる?」

 

 来た! これ、来ましたよ!

 

「な、何かな、お願いって?」

 

 こ、これって! もしかして、キ──。

 

「──()()()()()()()()()?」

 

 冷たい声音でそう言われてしまった。

 

「え? それって・・・・・・あれ? 夕麻ちゃん、ゴメン。もう一度言ってくんない? ・・・・・・なんか・・・・・・俺の耳変だわ・・・・・・」

 

 聞き違いだと信じて、乾いた笑いを上げながら訊き返したが──。

 

「死んでくれないかな?」

 

 夕麻ちゃんは俺の耳元ではっきりとそう言った。

 その瞬間、夕麻ちゃんが着ていた服が弾け飛び、ものすっごいエロい衣装を身にまとい、背中から黒い翼が生えた!

 見えた! いま見えたよな!? 一瞬だけど、確かに生おっぱい! ついに初の生おっぱいを拝んじまったぜ! それにこんなかわいい女の子の! こういうのをなんだっけ!? 眼福っていうんだっけ!? ──て、そうじゃない! そうじゃなくてさ・・・・・・()

 ・・・・・・目の前の光景にただただ混乱してしまう。

 夕麻ちゃんは冷たい目つきで言う。

 

「楽しかったわ。ほんの僅かなとき、あなたと過ごした初々しい子供のままごとに付き合えて。あなたが買ってくれたこれ、大切にするわ」

 

 そう言って、俺が買ってあげたシュシュを見せてくる。

 

「──だから・・・・・・」

 

 冷笑を浮かべた夕麻ちゃんの手に光る槍みたいなものが握られる!

 

「・・・・・・夕麻・・・・・・ちゃ──」

「死んでちょうだい」

 

 俺の言葉をかき消すかのように、手に持つ槍を投げられ──。

 

 ズボォォッ!

 

 槍は俺の腹を貫いた。

 

 

―○●○―

 

 

「──ッ! クソッ! なんなんだ、この胸騒ぎは!?」

 

 あのあと、千秋を諌めるのに苦労させられた。

 千秋はイッセーのことになると奥手で恥ずかしがり屋になると言ったが、時々変に暴走することがある。そのときは諌めるのに苦労するんだよな。

 まぁ、いまそれはどうでもいい。

 千秋を諌めるのに集中してたせいで、イッセーたちのことを見失った。別に帰ろうとしいてたから、問題なかった──はずだったのに、その瞬間にいやな胸騒ぎ──警告音のようなものが俺の中で響いた!

 俺は千秋をテキトーな理由で帰らせ、イッセーたちを探し始めて現在に至る。

 相談のときに聞いたプランと確認できたデートの進行状況をもとに、いまイッセーたちがどこにいるのかを考察する。そして、おそらくいまは町外れの公園にいると推理し、そこに急いで向かう!

 日が傾くにつれ、胸騒ぎがどんどん大きくなっていく。

 そして、公園に着いた俺の目に映ったのは──。

 

「死んでちょうだい」

 

 ──その言葉と同時に、服装が変わり、背中から黒い翼を生やした天野夕麻が冷笑を浮べながら投げた槍のようなものがイッセーを貫く光景だった。

 イッセーを貫いた槍はすぐに消え、抑えるものを失った傷口から血が大量に噴き出し・・・・・・イッセーはそのまま力なく倒れてしまう。

 

「あら? 人がいたのね?」

 

 俺は天野夕麻を無視し、イッセーのもとに駆け寄る。

 しゃがんで脈を確認すると、まだ脈はあった──が、明らかに出血多量・・・・・・死は免れない現実だった。

 

「あぁ、あなた。その子の友達だった子よね?」

 

 後ろで天野夕麻が問いかけてくるが、俺は答えず、振り向かないで訊く。

 

「・・・・・・なんでだ・・・・・・?」

「うん?」

「・・・・・・なんでイッセーを殺した?」

「あら、ゴメンね。その子が私たちにとって危険因子だったから、早めに始末させてもらったの」

 

 イッセーを殺した謝罪と理由を言うが、そこに誠意なんてものはなかった。

 

「恨むなら、その子に『神器(セイクリッド・ギア)』を宿した神を恨んでちょうだい」

「──知るかよ」

「?」

 

 俺は首だけ後ろに向け、天野夕麻を睨む。

 

「そう言われて、『はい、そうですか』と納得できるかよ!」

 

 俺は明確な殺意を堕天使に向ける。

 

「安心して。見られたからにはあなたにも死んでもらうから。よかったわね? お友達のところに行けるんだから」

 

 そう言うと、天野夕麻の手にイッセーを貫いたものと同じ槍が握られる。

 

「お友達同士仲良く、天国に行きなさい」

 

 その言葉と同時に槍が俺の胸目掛けて投げられる。

 だが──。

 

 ガシッ。

 

 俺はその槍を刺さる寸前で掴んでいた。

 

「ただの人間が光の槍を素手で掴んだですって!?」

 

 そのことに天野夕麻が驚愕をあらわにする。

 

「──俺が()()()()()なんて誰が言った? 天野夕麻──いや、『堕天使』」

 

 悪魔がいれば、その大敵の天使も存在する。その天使が欲を持ち、その身を天から地に堕としたのが堕天使だ。

 自分たちの種族を脅かす可能性があるものを排除する──理解できなくはない。人間だってやってることだからな。だがな──それで納得できるほど、俺は人間できちゃいない!

 

「・・・・・・私たちのことを知っている! いえ、だからといって、私の光の槍を素手で掴むなんて──」

 

 堕天使が槍を掴んでいる俺の右手を見て、怪訝な表情を浮かべる。

 俺の右手を緋色のオーラが覆っていたからだ。

 オーラが次第に全身から溢れ、掴んでいた槍はオーラによって消滅する。

 

「──ッ!? あなたも『神器(セイクリッド・ギア)』を──」

 

 堕天使が驚愕しているスキに、俺は堕天使に肉薄する!

 堕天使は慌てて光の槍で刺突を放ってくるが、俺はそれを避けると同時に堕天使の腕をつかんで引き寄せる!

 

「──裡門頂肘!」

 

 ズドォォッ!

 

「──っっ!?」

 

 俺の肘打ちを受け、堕天使は苦悶の声を出しながら血を吐く。

 

「鉄山靠!」

 

 さらに背中からの体当たりで堕天使を後方に吹き飛ばす!

 

「・・・・・・かはっ······!? ・・・・・・貴様・・・・・・いずれ至高の堕天使となる私に・・・・・・よくも!」

 

 血を吐きながら堕天使が忌々しそうに俺のことを睨みつけてくる。

 俺の一撃が叩き込まれた部分には、火傷のような傷ができていた。肘打ちの際に俺の体から湧き出るオーラが堕天使の身を焼いたのだ。

 

「・・・・・・いまは見逃してあげるわ・・・・・・! でも、いずれ後悔させてやるわ!」

 

 そう言い、堕天使は翼を羽ばたかせ、この場から飛び去ろうとする!

 

「逃がすか──ッ!?」

 

 逃がすまいと駆け出そうとしたが、堕天使が光の槍を投げつけてくる!

 直感的に受けるのはマズいと思った俺は後方に跳んで避ける。

 地面に突き刺さった光の槍は爆発し、爆風の衝撃が襲ってくる。

 なんとか地面を転がりながら体勢を立て直すが、堕天使はすでにこの場から飛び去っていた。

 

「・・・・・・逃がしたか・・・・・・」

 

 堕天使に逃げられたことに内心で舌打ちする。

 ・・・・・・追うことも無理そうだな。

 完全に見失ってしまっており、追跡は不可能だった。

 ──とはいえ、あの感じは屈辱を許せないタイプっぽいな。となると、また会うことがあるかもな。そのときは──。

 ──そう判断した俺は頭を落ち着け、体から溢れてる緋色のオーラを収める。

 

「・・・・・・イッセー・・・・・・」

 

 俺は死に瀕しているイッセーに歩み寄る。──イッセーはまだ微かに息はあった。

 

「・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・す、か・・・・・・」

 

 イッセーは虚ろな声音で俺を呼ぶ。

 

「・・・・・・なんだ・・・・・・何か言い残したいことでもあるのか?」

 

 俺は血が出るほど拳を握りしめながら耳をすませて訊く。

 

「・・・・・・・・・・・・へ、や・・・・・・の・・・・・・エロ本・・・・・・」

「・・・・・・こんなときまでそんなことかよ・・・・・・」

 

 ・・・・・・らしいっちゃ、らしいが・・・・・・もうちょい、マシな遺言はなかったのかよ・・・・・・?

 ──まぁ、それ以前にもう声を出すのも厳しいか。

 ・・・・・・もう間もなく、イッセーは息を引き取るだろう。

 松田や元浜、イッセーの両親は驚き悲しむだろうな。

 兄貴も姉貴も。二人ともイッセーを気に入っていたからな。

 千秋には──なんて言えばいいんだろうな。たぶん、誰よりも悲しむ。ただでさえ、一度大切な存在を──父さんと母さんを目の前で失っている。そのせいで、イッセーに依存気味なところがある。・・・・・・ヘタをすれば、二度と立ち直れないかもしれない。

 

「クソッ!」

 

 自分の無力さに腹が立ち、当たるように地面に拳を打ちつける!

 はぐれ悪魔と戦えようが、堕天使と戦えようが、ダチ一人守れないんじゃなんの意味もねえ!

 避けられないイッセーの死に打ちひしがれていると、イッセーが弱々しく手を上げる。

 イッセーは何かを思い起こすかのように、自身の鮮血に染まる手を見ていた。

 

 カァァァッ。

 

 その瞬間、イッセーから紅色の光が漏れ出した!

 俺は光の発生源であるイッセーのポケットを漁ると、一枚のチラシが出てきた。光の発生源はこのチラシだった。

 チラシには『あなたの願いを叶えます!』という謳い文句と魔法陣が描かれていた。普通の人なら一見すれば、怪しいもの、詐欺的なものと断定するだろう。

 だが、俺は知っている。このチラシの正体を。

 チラシがさらに輝きだし、ひとりでに俺の手から離れる。

 チラシが地面に落ちると、輝きがさらに増し、ひとつの魔法陣が出現する。

 魔法陣が輝くと、駒王学園の制服を着た紅髪の少女が現れた。

 

「あなたね? 私を呼んだのは?」

 

 その少女は、俺の通う駒王学園の三年のリアス・グレモリーだった。

 

「もう死にそうね、この子? ねえ、あなた、この子の友人だったわよね? 名前は?」

「──士騎明日夏。駒王学園の二年です。はじめまして、リアス・グレモリー先輩──いえ、いまは上級悪魔、グレモリー家の次期当主、リアス・グレモリーと言ったほうがいいですかね?」

 

 そう、このヒトこそが、この町を根城にし、管理下に置いている上級悪魔、リアス・グレモリーだった。

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