生意気な男の娘勇者が俺のことを大好きになるまでのお話 作:コーク厨
皇暦20XX年!
世界は、魔王の脅威に包まれた!
しかし!人類はただ黙って滅ぼされるわけでは無かった!
人類を圧倒する魔王に対抗するため、異世界から勇者を呼び出す……………………
そう!つまりは異世界召喚系ラノベのテンプレである!
で。
この度呼び出されました勇者様がこちらになりまーす。
「くすくすっ!、騎士団長風情が勇者であるこの僕に勝てるわけないじゃんっ!」
…………チェンジで。
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それが勇者様のお名前である。
小さめな身長
華奢な身体
お前ほんとに現代から来たの?と思わずにはいられない真っピンクの髪の毛(地毛らしい)
甘ったるいソプラノボイス
そして何より…………
「あぁ〜人生ってほんとちょろいなぁ〜」
この世の中を舐め腐った生意気さである。
あ、ちなみに男。
で。
「あぁ、おにいさんが僕の先生?まぁ、最強でかわいい僕には先生なんて必要ないけどぉ〜」
舐め腐ってる、明らかにこっちを見下しているがここは大人の対応である。
とりあえずささっと戦闘訓練。
「いいですか?勇者様、まずは剣の訓練です。この剣は刃を潰してありますから、遠慮せず全力で来てください。」
言葉を言い終わると同時に素早く距離を詰めてくる勇者君。
そのまま大きく横に一閃!
が、余裕を持って防ぎそのまま剣を地面に向けて流し落とさせる。
勇者君は小柄な体格なので力で押し勝てるが…
「そんなの効かない…」
地面に剣を落とされる瞬間勇者君は自ら剣を手放しその隙を逃さず…
「よっ!」
魔力で強化した蹴りを頭を狙って叩き込んでくる。
これだ、勇者君が現代社会から呼び出された人間にも関わらずこの国最強となっている理由。
神からの恵みかと思えるほどの圧倒的な魔力と天性の戦闘センス。
頭への蹴りを防ぐがその威力で吹き飛ばされてしまう。
そして剣を拾い追撃をかけてくる勇者君。
「ほらほらっ!まだまだ終わらないよっ!」
追撃を何とか防いでいくが………
「いやぁ〜流石勇者様!まさかもうこんなにもお強くなっていらっしゃったとは!」
普通に負けてしまった……
なんや勇者君強いやんけ………
「ふふーん!やっぱり弱いなぁみんな!恥ずかしくないんですかぁ?」
イラッとするが負けてしまったのは自分なのでここは大人の対応である。
「今まで必死に訓練していたのにぃ、ぽっと出の子供に負けるなんてぇ〜」
大人の対応………である………。
訓練の時間が終わる。
長く苦しい戦いだった………。
正直な話あと何回か煽られてたら確実に爆発していた、大人が子供に本気出すなんて恥ずかしい事だぞ!
と見事に耐えきった己の精神力を褒めてやりたいところだ………
あ、でもこれ以来訓練の度に勇者君には馬鹿にされた。
そんなこんなで。
生意気系男の娘である勇者様は着実に実力を上げていきましたとさ……………………
あ、自己紹介が遅れましたが、どうも。
この世界に輪廻眼持って転生することになりました、イタミと言うものです。
さて、着実に力を身につけた勇者君はこの度ダンジョンに行くこととなりましたー。
向かう先は暗闇の洞窟、王国から離れた所にあるゲームで言うなら大体上級者向けのダンジョンである。
何だってあんな高難易度のダンジョン向かわせたんだろ?
そりゃあ今の勇者君なら余裕で踏破出来るけどさぁ。
それだけ期待されてるって事なのかねぇ?
何て事を自宅で考えているとふと一つ思い出した。
大丈夫かなぁ?そういえばあそこ前行った時にサクッと調べてみたら、どう考えてもクリア後に出てくる類の裏ダンジョンあったんだよなぁ…………
正直今の人類であのダンジョン踏破出来る奴いないしなぁ。(自分除く)
今の勇者君は深い所じゃ何も出来ずに殺されるレベルなんだけど…………
まぁでも、あの生意気さとか伸びきった鼻を修正するには丁度いいのかなぁ?
あ、因みに報告はしてない。
理由?そんなん報告なんてしたら国の無能共が無駄な犠牲増やすからに決まっとるやんけ。
隠しダンジョンはどうやら一定の条件満たさないと出てこないみたいだし、大丈夫大丈夫。
でもなぁ……
やっぱなぁ……
ダメだな、迷ったら即行動としよう。
よし!さっさと様子見に行かなきゃ(使命感)
と、言う訳で暗闇の洞窟にやってきたとさ。
はてさて、勇者様は何処にいるかなーっと?
そんな事を呟き、口笛を拭きながら、
俺は紫色の波紋の眼を光らせ、洞窟に入っていった。
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「なんだぁ、簡単なダンジョンじゃん。こんなの目を瞑ってても踏破出来ちゃうよ…」
護衛の人が驚きに目を見張っている。
こんな簡単なダンジョンが上級者向けの高難易度ダンジョンだなんてこの世界の人達は本当に弱いんだなぁ〜
護衛って言ったって僕より弱い人に護衛なんてされても……ねぇ?
ま!その方が僕の強さが目立っていいんだけどね!
さて、さっさとお城に帰って先生を馬鹿にして遊ばないとなぁ〜
なんて事を考えながら洞窟を戻っていくと、来る時には無かったはずの通路が現れていた。
「ねぇねぇ?護衛さん?この道はなに?」
「いえ、報告ではこの場所に道は無かったはずです。」
「え!じゃあじゃあ!僕が発見者だね!それじゃあ入って中も調べて調べてみようか!」
「しかし…危険です!勇者様、ただでさえダンジョンを踏破して疲労が溜まっているというのに……!」
「何?僕に逆らうの?僕よりも弱いくせに…」
「ですが……!」
「うるさいなぁ…!別にお前の変わりなんていくらでもいるんだけど…!ここで君の人生終わらせて上げてもいいんだよ…!」
そう言うと護衛の人は黙ってしまった。
全く、雑魚の凡人が僕に意見するなよ…!
意気揚々と進んで行って、ある程度の深さまでは来たと思う。
出てくる敵はさっきよりは強いけど、別に苦戦するって程でもない。
やっぱり僕って最強なんだなぁ……
少し開けた場所に出た。
「勇者様、やはりそろそろ……」
「うるさいってば!」
なんなんだよさっきからぁ!
空気の読めない護衛を睨み、周りを見渡してみると灰色の巨大な怪物が目に付いた。
「何あれー、ブサイクで気持ち悪いー。」
さっさと倒しちゃお、そんなことを考えながら走り出して
「勇者様!お待ちを!」
一気に斬りつけた。
すると
ガキンッ!と大きな音がした。
「えっ?」
恐る恐る剣を見ると、折れた剣が目に入った。
しかし、自身の身体を強化し、怯むことなく攻撃する。
でも通じない。
まるで山を殴っているように攻撃が通用していない。
そして、遂に沈黙を保っていた怪物が動き出し、光る3つの眼をこちらに向けてきた。
「ひっ!」
目と目が合ったその瞬間に悟ってしまった。
今の自分ではどう足掻いても勝てない。
怪物は、怒りを顕にして大きな声で吠えた。
僕の真後ろに巨大な石斧が叩きつけられる。
何で?何で?何で?
さっきまであんな簡単に敵を倒せたのに!
必死で逃げる。後ろにはさっきの怪物。手に持った石斧を振り回しながらこちらを追いかけてくる。
「勇者様っ!危ないっ!」
いきなり背中を押された。
こんな状況で何をするのかと怒りを覚えながら振り返ると…
護衛の人が物言わぬ肉片になって飛び散った。
「あ…あ…あぁ……!」
怖いっ!怖いっ!怖いっ!
やだっ!やだっ!やだっ!
死にたくない!死にたくないよぉ!
逃げて、逃げて、逃げて。
行き着いた先は
「あ…」
行き止まり
怪物がこちらにゆっくり近づいてくる
殺されるっ…死ぬっ……死んじゃう……!
やだっ!やだよぉ!しにたくないよぉ!まだ!まだなにもできてない!
自分が勇者だということも忘れてただただ泣きじゃくる。
助けてっ!
たすけてっ!
だれかぁ!
だれかぁ!
「あっ」
怪物が石斧を振り上げて………
「神羅天征!!」
「え?」
目の前にいたはずの怪物が吹き飛ばされた。
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灰色の怪物が吹き飛ばされていく、そしてすかさず修羅道のカラクリで消し炭にする。
見た所一緒にいるはずの護衛がいない……
途中ではぐれたか、それとも死んだか。
どちらにしろ不運な事だ。
取り敢えずへたりこんでいる勇者君に近づき声をかける。
「生きてますか?」
「へ?あ?え?」
「せ、先生……?」
「はい、先生ですよ。」
「な、何で?何でここにいるの?それより、怪物は?へ?」
「私が倒しました。」
「え?でも、僕でも勝てなかったのに……」
どうやらだいぶ混乱している様子で…
ま、兎にも角にも
「勇者様、生きていて良かった。」
「怖かったでしょう?」
「もう、大丈夫ですよ。」
そう言って、優しく抱きしめた。
すると、ようやく自分の状況が理解出来たのか、わんわんと泣き出してしまった。
「あ…ぁ…あぁ……先生ぇ…先生ぇ…………」
「怖かったよぉぉ…………!」
少し時間が経って、勇者君が落ち着いた頃に改めて状況の確認をした。
「それで、新しい道を発見したと思って進んでたらあの怪物が…………」
「なるほど、災難でしたね。ですが、この事については、帰っても報告しないようにしてください。」
「え?なんで?」
「報告しても無駄だからですよ。」
「はぁ?あぁ!そうだよ!お前!どうやってあいつ倒したんだよ!最強の勇者である僕でも勝てなかったんだぞ!僕に簡単に負けちゃったお前なんかに倒せる訳無いじゃん!」
口調が元に戻っている。
どうやら立て直したようだ。
「おや?誰があれが本気だと言ったのです。」
「へ?」
「あれはあくまで訓練、訓練で相手を殺してしまうほどの力なんて出す訳無いでしょう?」
「もっと言えば貴方は勇者、国の宝であり切札です。それを訓練中に間違って殺してしまったなんて言ったら私が怒られてしまうではありませんか。」
「しかも、私基本的に剣を使う人間じゃありませんし……」
そう言うと勇者君は顔を真っ赤にして、
「て、手加減してたのかぁ!ふざけるな!最強の僕が手加減されてたなんて認めるかぁ!もっかい本気で戦え〜!」
などと勇者君が駄々をこねていると………
先程と同じ怪物が三体こちらに向かって歩いて来ていた。
「ひっ!」
隣をふと見ると、勇者君が顔を青くしてガタガタと震えていたので、近づいて肩を抱いてやる。
「安心してください、さっき私がなんて言ったか忘れましたか?」
「もう、大丈夫だと言ったんですよ。」
言うと同時に修羅道の力で腕を2本生やし、カラクリを使って迎撃する。
やっぱ修羅道クソ便利だわ。
カラクリの弾幕が晴れた時には既に怪物は塵となっていた。
「ほら、貴方が心配することなんて何も無い。」
そう言って勇者君の頭を撫でてやる。
こうしてるとまるで女の子みたい!だが男だ。
「さて、勇者君?」
「もう1回、本気で戦って欲しいんでしたっけ?」
勇者君は首を横に振っていた。なんでや。
城に到着した後、王に報告を行う。
勇者君がダンジョンを無事に踏破したこと、護衛役の兵士が殉職したこと、心配になって追いかけていた私と合流したこと。
「ふむぅ…そうか、勇者よ、ご苦労であったな。」
「はい……」
「では、私もこれにて失礼致します。」
「ふむ。」
報告を終えた後、廊下で勇者君に呼び止められた。
「おい!ちょっと話があるんだけど……」
「おや?なんですか勇者様?」
「いいから!ちょっとついてこいよ!」
そうして連れ込まれたのは勇者君の私室。
「お前!何だったんだよ、あれ…」
尻すぼみな勇者君の言葉に、
あれっていうのは、あのダンジョンの事かい?それとも私の力の事かい?と聞くと、
「どっちもだよ!」
と返してきた。
「ふむぅ…そうですね、まずはダンジョンの事から話しましょうか。」
「あそこにはある仕掛けがあるようでね、一定以上の力を持つ人間で無いとどうやら入口が開かないみたいなんですよ。しかも踏破した帰り道にしか出ない。中にいるのは強大な力を持つ奴らばかりで、今の勇者君じゃあ手も足も出ずに殺されるでしょうね。実際、そうなったでしょう?そして1人の犠牲を出した。」
「んぐぅ……!じゃ、じゃあ!あの力は何なんだよ!あんな能力聞いたことも見たこともないぞ!」
「そりゃあ、私固有の能力ですから。あの能力は輪廻眼と言いまして、まぁ色々出来るんだと覚えておいていただければ。」
「なんだよそれ…」
おかしい…とか何で僕じゃ無くてあんな奴に……とかぼやいているがこっちだってこの眼を手に入れるのに並大抵ならぬ苦労をしているのだ。
「さて、聞きたいことはこれで終わりですか?私も暇ではないので、無いなら帰ってよろしいでしょうか?」
そう言って帰ろうとすると、
「あ…ま、待てよ!」
「何ですか?」
「え、あの…その…えっと……」
「何ですか?はっきり言ってくださいな?」
「だから!……その……ありがと……」
「いえ、礼には及びませんよ」
「んなっ!お、お前っ!聞こえたのかっ!わ…わ…忘れろぉ!」
殴りかかってくる勇者君をサクッと鎮圧して、おやおや?素直な勇者君の方が可愛いですよぉ?と煽ってから帰った。
終わりっ!
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「何なんだよ…あいつぅ…!」
あいつが帰った後、ベッドに寝転がりながらボヤく。
ムカつくっ!ムカつくっ!ムカつくムカつくっ!
ずっとムカついてたんだ!先生やってる時も!ずっと余裕ぶってて!皆僕にもっと汚い視線を向けてくるのにっ!
この世界に呼び出されて!勇者だって持て囃されて!みんなして僕に媚び売って来たのに!
あいつはずっと汚くない目で僕の事を見てたっ!
あんな地味な見た目してるのに可愛くて最強の僕より強いなんてムカつくっ!
あんな強い能力持ってるなんてムカつくっ!
あんなに大きな手をしてるなんてムカつくっ!
あんなにあったかいなんてムカつくっ!
あんなにっ!あんなにっ!
「僕の事を安心させるなんて……!」
むぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!
ムカつくっ!ムカつくっ!ムカつくぅぅぅぅ!!
んにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!
でも……
「でも…」
「嫌いじゃ、無い………」
そうして、あいつの暖かさを思い出しながら眠りについた。
感想お待ちしてますっ!