申し訳ございません。
織部が黒森峰を去るまで残り1週間を切り、いよいよもって自分が黒森峰を去る日が近づいてきているのだと、織部もそう思わざるを得なかった。
最近になって、クラスでもあまり話をしなかった生徒と言葉を交わすようになった。少し前までは、女子校にいる男子という事で敬遠されていたので進んで話をする事もあまりなかったが、ここ最近では話す機会が増えている。どうやら、織部が去る前に1度だけでも話がしたかったのだろう。つまり、好奇心から来るものだ。
織部としては別に構わないのだが、自分が珍獣扱いされているような気がしてならない。その認識も間違っていないと言えば間違ってはいないのだが。
そんな折、織部は学園長室に呼び出されていた。今は授業時間中なのだが、前日に担任から『学園長から話がある』と言われていたので、そこまで驚きはしない。
学園長室の前にたどり着くと、今一度襟を正し、服に目立った汚れがないこと、ゴミが付いていないことを確認して、ノックをする。
『どうぞ』
ドアを開けて、学園長室に足を踏み入れる。
そしてその部屋の中を見た瞬間に、背筋が凍り付いた。
学園長室の中は割と広く、床には赤い絨毯、壁際にはいくつものトロフィーや盾が飾られている。そして学園長の机の傍には応接セットが設けられている。ただ、ここは一度入った事があるので別に今更怖気づきはしない。
問題なのはその応接セットに座っている人物だ。
まず、黒森峰の学園長。この人物に至っては、この学校の長であるので、いるのは当然だ。
だが、日本戦車道連盟理事長の児玉七郎と、西住流家元の西住しほという、戦車道界の重鎮2人がいるのまでは予測できなかった。
しかし、冷静に考えてみればいてもおかしくはない話だ。児玉は、織部が黒森峰で勉強できるように手配してくれた身であるので無関係ではない。しほだって織部が黒森峰に来るのを認めたのだから、やはりいてもおかしくはない。
おかしくはないのだが、織部にとっては不測の事態であることに変わりはない。
(心の、準備が・・・・・・)
この2人が来ると事前に聞いていれば、織部もまだ心の準備をしたり覚悟を決めたりと色々できたのだが、たった今知ったのではそんな余裕も時間も無い。
一気に心臓の鼓動が速くなり、冷や汗が背中に滲むが、それでもお辞儀は忘れず、歩みは止めずに通された席へと座る。
改めて、自分の正面に座る人物の顔を見て、織部は身震いしそうになる。
学園長である初老の女性と児玉は、どちらも柔和な笑みを浮かべていてそこまで恐ろしいという印象は抱かない。特に児玉は、何度か顔を合わせて話もしているのでそこまで恐れてはいない。それでも、この2人の立場を鑑みると半端な態度は取れなかった。
そしてしほに至っては鋭い眼光と険しい表情で織部の顔を捉えて外さず、形相と立場が相まって、他2人と比べると威圧感がまったく違う。
果たして自分は、この学園長室から無事帰れるのかどうかが不安になる。
「久しぶりだね、織部君」
児玉が一番最初に話しかけて来てくれた。織部が萎縮し切ってしまっているのに気付いて、緊張を解きほぐすためだったのかは分からないが、それは織部からすればありがたい事だった。
「ご無沙汰しております。理事長」
「今年の、2月ぐらいだったかな?最後に会ったのは」
「はい、確かそのぐらいでした」
最後に児玉と直接会ったのは、児玉の言った通り2月中旬辺りだ。黒森峰への留学が正式に決まった時、詳しい話を児玉から聞いた時。それ以来だから、およそ8カ月ぶりぐらいだった。
「家元は、彼と実際に会うのは初めてでしたかな?」
「いえ、一度、黒森峰の訓練を見た際に会っています」
児玉が話題をしほに振ると、しほはあくまで事務的に話す。そのしほの、感情の起伏が無いような喋り方が、織部の不安や恐怖心を煽っていた。
そしてしほと織部が初めて会った時とは、監視台という狭い空間で織部としほが2人きりになってしまい、その後織部が倒れてしまった日の事だ。あの時の事は、トラウマとまではいかないが忘れられない出来事だ。
「さて・・・・・・」
そこで学園長が、挨拶もそれぐらいにとばかりに言葉を発し、織部の顔を見る。織部も、少しだけ緩んだ気を今一度引き締めて、姿勢を正し学園長に顔を向ける。
「もうすぐ、留学期間も終わりを迎えますが・・・・・・」
学園長がそう切り出したのを聞いて、やはりその日が近づいているのだという事を改めて認識させられる。だが、その事で感傷に浸るのは後回しだ。
「今日まで、よく頑張りましたね」
「いえ・・・・・・僕なんて、全然・・・」
学園長がそう言ったのは恐らく、織部が留学している特別な身であるから、成績・素行についてマークしていて、そこでどんな評価なのかを知っているからだろう。
織部自身でも、成績は(体育を除いて)問題ないはずだと自負しているし、戦車道でも審判・監視員として責務を果たして、報告書は丁寧に書いてきたつもりだ。疚しい事は何もない、はずだ。
「成績も同学年の中では上位ですし、戦車道での報告書も文句なしだと隊長は評価していました」
「・・・・・・そうですか、ありがとうございます」
また織部のあずかり知らぬ場所で、まほが織部の事を評価してくれていた。その事自体は嬉しいのだが、同時に織部がまほを振ってしまった事も思い出してしまい、心が締め付けられそうになる。
「・・・・・・・・・・・・」
そこでしほが、ちらっと学園長の方を向き、そして織部の方へと視線を戻す。そのしほの視線の動きに織部は、学園長の方を向いていたので気付かない。
「将来、あなたは戦車道連盟に就く事を希望して、そのための勉強をするためにここへ来た・・・」
「はい」
改めて学園長が、織部が黒森峰へ来た理由を確認の意図も籠めて話す。黒森峰では紆余曲折を経て、多くの出来事を経験したのだが、根っこのところはそうなのだ。
織部は、戦車道の事を学ぶために来たのだ。戦車道連盟に就く事を将来望んでいても、戦車道連盟で働く男性も戦車道とは何らかの関りがあった。元戦車の整備士だとか、親族に戦車道を歩む人がいた等。
だが織部は戦車道とは繋がりが無くて、こうしてかなり特殊なケースで戦車道の事を学び繋がりを作るために黒森峰にやってきたのだ。その事実を忘れたことはない。
「・・・・・・戦車道について、納得のいく勉強はできましたか?」
その学園長の問いは、愚問とも言える。
「それは、もちろんです」
模擬戦の審判を務めた事で戦車道の試合を間近で見て、戦車道のルールについても学ぶことができ、訓練後のミーティングに参加したことで訓練を俯瞰的ではなく主観的に調べる事もできた。報告書を書いたのも、訓練の内容を織部自身が振り返る機会になった。
戦車の整備を手伝ったのも、戦車の内部や部品、整備手順を学ぶことができた。
全国大会の黒森峰の試合を全て見ることができたのも、他校の戦車の戦いを見ることができたので決して損ではない。
総じて、織部は黒森峰に来て戦車道に関する知識が、来る前と比べると遥かに多く蓄積されている。
学園長の質問の答えには自信を持って頷けるほどに、納得のいく勉強ができた。
「・・・・・・・・・・・・」
その織部の答えを聞いて、児玉は僅かに笑みを浮かべて小さく頷いた。織部の過去を聞いて、夢を聞いて、その力になりたいと思い織部が黒森峰に行けるよう尽力した児玉だからこそ、その織部がこうして黒森峰に来て勉強することができたのだと知ることができて嬉しいのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
しほの表情は変わらず険しい。一切の考えが読み取れなくて、得体の知れない不安と恐怖に織部は苛まれる。だが、最初に会った時のように緊張のあまり倒れそうになるということにはならない。心身共に成長できたからだろうか。
「・・・・・・そうですか。それなら、あなたを黒森峰に迎え入れてよかったと言うものです」
学園長が安心したとばかりにそう告げる。この状況で『勉強できなかった』『ためにならなかった』と冗談でも言う肝の座った輩は恐らくいないだろうが、その言葉に嘘偽りが無いという事は、この目の前の学園長ほどの年齢と立場の人物からすれば、顔を見れば分かる。
「もし、君が戦車道連盟に就く事を本当に望むのであれば、今回の事は加味して、判断をさせてもらうよ」
「・・・・・・ありがとうございます」
児玉がそう告げて、織部は頭を下げる。
と、そこで。
「・・・・・・学園長、理事長」
ずっと口を閉ざしていたしほが、口を開いたのだ。先ほどまで黙っていた人物が急に声を上げたので、織部だけでなく学園長と児玉もわずかに驚く。
「大変申し訳ございませんが、5分ほど席を外していただけますか?」
「はい?」
「彼と、少し話があります」
織部の肩がビクッと震える。最初にしほと会った時と同じ、1対1の状況に持ち込まれてしまう。
一方で児玉と学園長も、しほが無駄なことは一切しない人物だという事を知っているし、そのしほがこうして2人に席を外すように告げたのは、恐らく聞かれると後ろめたいような話をするという事なのだろう。それをすぐに理解して、児玉と学園長は部屋の外へと行ってしまった。
これで残るは、織部と、しほのみ。
何を言われるのか、織部は不安で不安で仕方がない。
ここで織部は、もしかしたら織部がまほを振った事がしほにバレてしまったのかもしれないという一抹の不安に襲われる。もしそれが本当だとすれば、織部が何を言われるか分かったものではない。
「・・・織部さん」
「・・・・・・はい」
緊張の一瞬。次にしほが何を言ってくるかで、この先織部の心がどうなるのかが決まると言ってもいい。
まほとの事でなければそれでいいし、まほとの事だったらそれまでだ。
「まほから聞いた話だけれど・・・・・・」
ダメだ、終わった。
直近の出来事でまほとあった事など1つしか思いつかない。やはりあの事は、しほの耳に入ってしまったのだ。本当に今日が精神的な命日となってしまうかもしれない。
膝の上の手が無意識に握りしめられる。視線を合わせるのが恐ろしくて下を向いてしまう。
「・・・・・・あなた、まほから色々と相談を受けたそうですね?」
だが、『相談』という単語を聞いて織部の中で疑問符が浮かぶ。てっきり、まほの告白の話をされるのかと思ったのだが。
しかしまだ気は抜けない。言葉を選び、慎重に答える。
「・・・はい、受けました」
「まほがみほとの関係についてあなたに相談をし、みほに謝りたいと言ったところ、あなたは『誠意を持って謝れば気持ちは伝わる』、そうまほは言っていたのだけれど、本当にそう言ったのかしら?」
全国大会の抽選会の日。戦車喫茶ルクレールでまほとエリカ、そしてみほは再会した。だが、まほは話をしたかったのだが、エリカが場の空気を悪くしてしまったために、大洗とみほに悪い印象を与えて別れてしまった。
その日の事を、まほは織部に相談してきた。その時に織部は、先ほどしほが言ったような言葉をまほに告げた記憶は確かにある。
「・・・・・・言いました」
「・・・そう」
しほは、納得したようにうなずく。
一方で織部は気が気じゃない。どうしてそんな話を蒸し返すのか、なぜ急にこんな話になったのか、それが気になる。そして、この先何を言われるのかが全く予測できない。
ここから落とされるのか、多分そうなのかもしれない。
「・・・では、まほがみほと和解することができたという事は、聞きましたか?」
織部の中の積もる不安はさておき、そのことについても織部は知っている。その時その場に織部はいなかったが、2人が和解することができたという話は小梅とまほから聞いた。
なので、その事についても頷く。
「・・・まほは、あなたに話したおかげでみほに謝る決意が固まったと、そう言っていました。つまり、まほとみほが仲を取り戻せたのは、あなたのおかげだと言外に告げていたのです」
そのことについては、織部も覚えがある。まほとみほが仲直りを遂げたその日の夜、まほから直接電話でお礼の言葉を伝えられたからだ。
「・・・2人の親としても、2人の仲が拗れたままというのは忍びないものだし、仲直りできたことはとても喜ばしく思っています」
「・・・・・・・・・」
「・・・だから、このことについて助言をしてくれたあなたにも、礼を言っておきます」
しほが小さく、本当に小さく会釈をする。
自分は今、夢の中にいるのではないだろうかとさえ思えてしまう。それほどまでに、自分のような一介の高校生があの西住しほから感謝の言葉を告げられたことが、衝撃的でいて、実感がわかない。
「・・・・・・あなたの戦車道連盟に就くという夢が叶うように、戦車道連盟の1人として応援させていただきます」
「・・・・・・ありがとうございます」
まほとのことについて責められるのか、という心配はとうに無くなっていた。いや、無くなっていたと言うより、それ以上に衝撃的過ぎる事が起きたので考えられなかった。
そして気づけば既に5分経っていたようで、ノックの後で学園長と児玉が入室してきた。
「それはまた・・・・・・」
「胃が痛くなるような話だね・・・」
昼休みになり、場所は食堂。織部と小梅、同じクラスの根津と斑田、そして戦車道で仲の良い三河と直下といういつものメンバーで席に着き、それぞれ自分が頼んだ料理を食べている。
そんな中で、根津が先ほどの公民の授業に織部が出席していなかったのを不審に思い、その事を織部に聞いたのだ。そして何があったのかを織部がかいつまんで説明した後で、三河と斑田がコメントを洩らした。
斑田の『胃が痛くなりそう』というコメントに織部は大きく頷き、まったくもってその通りだと同意する。あの時は、冗談抜きで緊張のあまり胃が痛くなっていたのだ。
「生きた心地がしなかったよ・・・・・・」
「大丈夫ですか・・・?」
織部が心底安心したかのように大きく息を吐いて、中辛のカレーライスを一口食べる。先ほどの話し合いで精神的に疲れてしまったので、刺激的なものを食べて頭をすっきりさせたかった。
そんな織部を心配するかのように、鯖の味噌煮定食を食べていた隣に座る小梅が、織部の顔を見る。今の織部はその気遣いだけでも涙しそうになるぐらいには心がボロボロだ。
「でも戦車道連盟理事長と知り合いって、結構すごいね」
直下がハムカツを咀嚼し飲み込んでから織部に話しかける。だが、直下の気持ちは他の者たちも同じだ。織部が黒森峰に来た大まかな経緯については話しているし、戦車道連盟と繋がりがあるという事も知っているが、戦車道連盟理事長と知り合いだという事は小梅以外には話してはいない。その知り合った経緯を伝えるとなると、織部の過去についても話さなければならなくなるからだ。
「まあ・・・・・・知り合ったのはすごい偶然だったんだけどね」
だからこうして知り合った経緯を抽象的に話すしかないのだが、偶然に偶然を重ねたような出会いなのであながち間違ってはいない。
「それで知り合って、戦車道連盟に就くのも応援してくれるのって、コネってこと?」
「まあ、そう言う事になるかな」
三河が、定食のみそ汁を啜ってからそう問いかける。確かに三河の言う通り、大体の人から見ればそれはコネと言うものだ。
だが、コネと言うのも人によってさまざまだ。コネがあるからのんびり過ごして将来安泰とだらけるか、コネを作ってもらったからこそその期待に応えられるように研鑽するか、それは人それぞれだ。
そして織部は、断じて前者のようにだらけてはならないと自分に厳しくし、後者のように切磋琢磨するのが人として当然だと思っていた。
だから、戦車道連盟にコネがあるからと言って、それに胡坐をかいてのんべんだらりとしよう等とはさらさら思っていない。
それと、応援してくれると言っても、直接的な支援は何もしない。織部の力だけで、戦車道連盟に就くのだ。万が一、戦車道連盟が支援してくれると言っても、織部はそれを断っていただろう。
「真面目だなぁ、織部ってやっぱり」
「そうかな・・・」
そんな織部の自論を聞くと、根津はラーメンを啜って素直に感想を告げる。真面目と言われる事には慣れているのだが、織部にとっては当たり前の事を言われただけなので、少し照れくさい。
「でもさぁ、そんな話があるって事は、もうホントに帰る日が近いんだね」
三河がご馳走様と手を合わせてから、そうしてしみじみと告げる。確かに、校長たちと話をしたという事は、それだけ織部が黒森峰を去る日が近いという事の証明になる。
「そうだね・・・・・・もう、後1週間も無いかな」
織部もまた少し寂しそうに告げる。
織部は、借りていた部屋の荷物をまとめ始め、残りの1週間で使う事も無いようなものについては、既に元居た学校の寮に送っている。
その準備もまた、織部自身が黒森峰との別れを実感させられるものであった。それがなお、織部の中の寂しさを助長させる。
「随分長かったね・・・半年ぐらい前に初めて会ったはずなのに、もう何年も一緒にいたみたい」
織部と同じくカレーライス(辛口)を食べていた斑田が、最初に会った頃の事を思い出すように、そう呟く。半年という期間は短くも長くもないぐらいの期間に感じるが、それでもここで経験したことが多かったために、実際に過ごした以上の時間を過ごしたように感じられる。
そしてその斑田の言葉に反応したのは、小梅だ。
「そうですね・・・・・・もう、ずっと一緒にいたみたいに・・・」
織部を含め、小梅のその言葉には誰もがその通りだと頷く。そう思うのは、この中で一番織部と親密な関係になったのは小梅だと分かっているからだ。
関係が深ければ深いほど、その人と過ごした時間は長く感じられるし、その人との思い出は心に深く刻み込まれる。
だから小梅は、斑田の言葉に大きく頷き、その通りだと賛同したのだ。
「だからこそ、寂しくなりますね・・・・・・」
そして関係が深ければ深いほど、その別れもより一層悲しく感じる。
仲の良い友達ぐらいの付き合いになった根津たちも少ししんみりしているのだから、それ以上、最上級レベルの付き合いを織部としている小梅はそれ以上の寂しさを感じているだろう。
もう、残りの日数で織部が小梅にしてやれることはそれほど残っていないし、できる事もあまりない。
織部がいなくなった後で、小梅が悲しまないようにするために、織部もできる限りの事をするつもりでいるのだが、それでも織部だって寂しさを感じている。
別れの日は、すぐそこだった。
その日の戦車道の訓練の後、小梅は隊長室に呼び出されていた。何の用件があって呼び出されたのかは、まだ小梅には分からない。
衣服を整えてから来るように言われたので、タンクジャケットから制服に着替えて隊長室へと向かう。織部は教室で報告書を書いているし、もしかしたら入れ違いになるかもしれなかった。
だがそれはそれとして、小梅は心の中では怯え切っていた。隊長室に呼ばれる事なんて滅多にないし、隊長室という事は隊長のまほがいる。副隊長のエリカだっている。その2人と面と向かって話をするというのも、気後れするものだ。
まほが隊の皆と平等な関係になりたいと言っていたのは聞いたし、エリカともそこそこ打ち解けることができたのだが、それでも隊長室に呼び出されたのだから気は引き締めなければなるまい。
隊長室の前に到着し、一度深呼吸してからドアをノックする。中から『入れ』というまほの声が聞こえたので、一拍置きドアを開く。
「失礼します」
「急に呼び出して済まない」
「いえ、お気になさらないでください」
まほが詫びの言葉を告げるが、小梅はまったく気にしていない。気にしているのは呼ばれた事ではなくて、何の話をされるのかだ。
「心配しなくても大丈夫よ、別に悪い話じゃないわ」
そこで、エリカからまさかの助け舟が出された。エリカがこうして小梅の緊張を解そうとすること自体が稀なので、すごい変な気分だ。
「・・・・・・恐らくだが、な」
まほがエリカの言葉に続いてそう告げる。ますます、何の話をされるのかが分からなくなる。
「・・・・・・赤星。聞いてほしい」
「はい」
挨拶もそれなりに、改まって、まほが切り出す。小梅は自然と姿勢をより正し話を聞く態勢に入る。
「・・・私は3年生で、もうすぐ卒業する。だから、隊長も別の誰かに代わる事になる」
「・・・はい」
織部が黒森峰を去る事が一番悲しいものだったので忘れかけていたが、夏休みも終わり今年度も残り半年を切ったのだから、まほを筆頭に3年生の先輩隊員たちが戦車隊を辞めて卒業するのも近いのだ。
まほは隊長なのだから、そのまほが辞めてしまうのであれば自然と隊長も別の人間になる。
その新しい隊長が誰になるのか、小梅はまだ知らないが大方の見当はついていた。
「で、だ。次の新しい隊長は、エリカに決まった」
まほがエリカの事を見ながらそう告げ、エリカが小さく頷く。
その反応でエリカも嘘をついてはいないというのが分かったし、エリカが次代の隊長になるのは小梅も見当がついていたことだ。副隊長と言う立場でまほの傍にいたし、この前の模擬戦の行われた理由がエリカの真価を見極めるためのものだったという予想も小梅は立てていた。
だから、エリカが隊長になるという事に驚きはしないし、不満も無い。順当だと思えるものだ。
となると、自分はどうして呼ばれたのか。
だが、そこで小梅が何かに気付く。
「・・・それに伴い、副隊長の枠が空く事になる」
それで小梅もなぜ自分が呼ばれたのか確信し、そこでエリカの表情を見る。
エリカは、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべている。どうやらエリカは、“その話”を聞いていたのだろうが敢えて今まで何も言ってこなかったのだろう。
「・・・つまり、赤星」
「・・・はい」
だが、気付いたからと言ってそれを先に言いはしない。まほからその言葉を直接告げられるのを待つ。
「・・・赤星に、副隊長をやってもらいたい」
小梅の中で緊張の鎖が切れて、うっかりすると息を吐いてしまいそうになるぐらい、安心した。『悪い話ではない』という言葉の通り、除隊や警告などの小梅にとって悪い話ではなかった。
だが、副隊長になってほしいというまほからの言葉には、まだ素直には頷けない。
小梅の心には緊張に代わって、疑問という感情が浮かび上がってきた。
「・・・あの、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「・・・どうして、私を・・・?」
一番の問題はそれだ。なぜ小梅が副隊長に選ばれたのか、それが分からないし、そこが一番気になるところだ。
大洗女子学園に加勢して大学選抜チームと戦う事になったとき、まほから実力の高さを買われたから増援に呼ばれたというのは知っている。だが、それぐらいしか自分の強さに自信が無い。小梅は自惚れてなどいないし、副隊長としての素質があるのかも疑わしい。
「赤星の車輌・パンターの乗員は、赤星を除いて全員が今年入ったばかりの隊員だ。それはもちろん、赤星も知っているだろう?」
「はい」
もちろんそれは分かっている。小梅の戦車に乗るメンバーは皆、新入隊員だ。だが、それでも今日この日まで挫折する事は無く小梅に付いてきてくれている。
「そして赤星のパンターの実力は、他の上級生の乗る戦車と変わりないぐらいに成長している」
「・・・・・・」
全国大会の決勝に出場できたのもそうだし、その大学選抜チームとの試合にも呼ばれたから、確かに強くなっていると小梅も分かる。それは同じ戦車に乗っている小梅には、分かっていた。
「それは恐らく、彼女たちを纏める車長の赤星の指導の仕方がいいと、私は思っている」
「・・・・・・・・・・・・」
戦車隊全体の指導をしていたのは隊長であるまほだが、戦車の中でだけ見れば、指導をしていたのは小梅だ。
小梅は、訓練の後でいつも同じパンターの乗員たちと軽いミーティングをしている。小梅の戦車内に限っての訓練の反省点や評価できる点、次の訓練に向けての課題と目標を話し合って、戦車内での練度向上を図るためのものだ。
そのミーティングは、他の戦車のチームがしている様は見られない。だから恐らくは、小梅たちのチーム独自のものと言える。
そして、小梅が乗員たちに目を向けていたから、小梅は同じ乗員たちの欠点にも、美点にも気づくことができた。そして小梅は美点は伸ばし、欠点はどうにかして改善するようにアドバイスを出してきた。
そして小梅が優しい性格をしていて、仲間の事を理解してくれているから、同じ戦車の乗員たちも小梅に付いてきてくれている。
この、小梅と乗員の間にある信頼関係が、小梅のパンターの実力を高めているのだと、まほは推測していた。
「そして、2週間ほど前の模擬戦で、赤星は自分から動いてエリカのティーガーⅡを守ったと、エリカから聞いた」
「・・・・・・」
2週間ほど前の模擬戦で、該当する場面のあった模擬戦と言えば、まほのチームに重駆逐戦車が偏った模擬戦だろう。その模擬戦は、その後のまほの織部への告白と同じ日だったというのもあって覚えている。
そしてその模擬戦の最中。群狼戦術に似た作戦の後、エリカのティーガーⅡがまほのティーガーⅠに狙われて撃破されそうになった際、小梅のパンターは両者の間に割って入る形でティーガーⅡを守り撃破された。そして、ティーガーⅡにチャンスを繋いだ。
あれは、エリカから命令を受けてした事ではない。小梅自身がそうするべきだと思い考え、そして行動に移した。
「あの時ように戦況が逼迫している中で、赤星のように即座に判断できてそれを行動に移すことができるような者はなかなかいない。特に、マニュアルに頼り切りなところのある黒森峰なら、なおさらだ」
大洗女子学園と戦った全国大会決勝以来、マニュアルに頼らないような訓練・模擬戦は続いている。
だがそれでも、まだ掟やフォーマットに依存していた事による柔軟な対応力を鍛える事は出来ていない。
その中でも小梅は、柔軟に事態に対処する力を持っていることが、この前の模擬戦で分かったのだ。
「柔軟な対応力と行動力、そして指導力を、私は買っている」
「・・・・・・・・・・・・」
小梅は初めて、自分が戦車道で持っている能力と言うものをここで知った。その対応力と指導力と言うのは、まほから初めて評価された事だった。今更ながら、まほはきちんと自分の率いる隊員の事を見ていたのだと、そう実感させられる。
「私も、あなたを副隊長に推したいと思っているのよ。隊長の言った通り、あなたの中にある才能を私も認めてる。だから、あなたを副隊長にしたいと言ったのよ」
そこで、黙っていたエリカがそう話す。
まほから正式に、次の隊長をエリカにすると言われた際に、エリカは副隊長に小梅を推薦した。そしてそう思っていたのはまほも同じだったようで、お互いに頷いて、副隊長の候補(まだ小梅が引き受けるとは決まっていなかったから候補だ)を小梅としたのだった。
小梅の才能は、まほだけでなくエリカも認めていたのだという事を改めて知って、小梅の中に驚きが走る。
ここで小梅は、このまほとエリカからの申し入れを断るか、受け入れるか、それにわずかに迷っていた。
副隊長に推されるという事は、それだけ小梅の実力をまほとエリカが高く評価しているという事だ。それは純粋に嬉しいし、誇らしい事だった。
だが、副隊長になれば今度は隊全体をエリカと共に率いるという事になる。その責任は、一戦車長である今とはまた違うものだろう。責任の重さだって変わる。その責任とプレッシャーに、自分が耐えられるかどうかはまた別の問題だ。
しかも、小梅の心の支えでもあった織部も間もなくいなくなり、この先は小梅1人でやって行かなければならない。織部がいなければ自分はどうなるのかは正直まだ分からないが、それでも不安だった。
(・・・・・・・・・でも・・・)
織部がいなければ不安ではある。だが、織部が去るのはもう避けられない、曲げられない事だ。
そして、いつまでも織部に負んぶに抱っこの状態ではだめだという事は、小梅自身でも分かっている。
それに織部には、今日この日までに多くの心配をかけさせてしまっていた。織部は小梅や他の人たちに迷惑をかけさせまいと、辛い思いを隠していることが多かったというのに、自分はその織部と逆というのも公平ではない。
本当に初めての出会いから打ち解けるまでは織部に心配をかけさせて、そして付き合い始めてからも織部は小梅の身を案じていてくれた。
その織部の心配や不安を解消させるために、小梅だけでももう大丈夫だと伝えるために、小梅は。
「・・・・・・分かりました」
まほとエリカが、目をほんのわずかに見開く。
小梅は、真っ直ぐにまほの目を見て、頭を下げる。
「私でよろしければ・・・・・・副隊長を務めさせていただきます」
そこで、場の空気が緩んだような気がした。
「・・・・・・そうか、分かった」
まほはそう告げると、笑みを浮かべて小梅の顔を見る。そして、右手を差し出してきたのだ。
「・・・・・・これからの黒森峰を、よろしく頼む」
その差し出された右手を、小梅は優しく包み込むように握る。
「・・・・・・はい、分かりました」
その横でエリカが、目を閉じて、心底安心したという風に笑っていた。
「・・・・・・これで、私のやるべきことは・・・もうあまり残されていないな」
まほが珍しく、冗談交じりな言葉を微笑みながら告げる。だがそれは、冗談とも取れないような言葉だったので小梅とエリカはピクリとも笑えない。
何せ、本当にまほが黒森峰を去る日は刻一刻と近づいてきているのだし、既に次代の隊長と副隊長も任命し、後は引継ぎ程度しかやる事は残されていない。これから先の新世代黒森峰戦車隊の指導も、エリカと小梅でやっていくのだろうし。
「・・・・・・エリカ・・・・・・小梅」
まほが、エリカと小梅の名を呼ぶ。
だが、ここでまほが小梅の事を苗字ではなく名前で呼んだのは、小梅の予想の完全に遥か斜め上だった。
しかし、まほはかつて黒森峰で横のつながりを作って強くしていきたいと言っていたので、これもその表れなのかもしれない。と言っても、まほはもうすぐ隊を離れてしまうので、最後の最後の試みでもあったが。
「・・・・・・勝利を目指さなければならないという考えには、囚われなくていい。勝ち負けを、重要視しなくてもいい」
そこで聞いた言葉は、西住流の権化のようなまほの口からはきいた事も無い言葉だった。勝利することを貴ぶ西住流の後継者の言葉とは思えないような言葉だ。
「自分の信じる戦車道を、歩めばいいんだ」
エリカと小梅はその言葉には、どこか後悔を秘めているように聞こえた。
まるで、自分にはできなかった事ができるようになってほしいという願いのような、後悔のような気持ちが含まれているような。
まほは、西住流の後継者として、常に西住流の戦い方でここまで戦い抜いてきた。
だが今思えば、まほも西住流というしがらみに縛られて、自分なりの戦車道と言うものが見つけられなかったのかもしれない。西住流の戦車道こそが自分なりの戦車道だとまほは言うのだろうが、それでも心のどこかでは、“自分だけの”戦車道を探していたのかもしれない。
これらはすべて推測に過ぎないし、まほに聞いても全てを話しはしないだろう。
だが、それでも、先のまほの言葉は、そう思わせるかのような意味を込めている気がしてならなかった。
その日の夜、ドイツ料理店。
今目の前の状況に、織部は困惑するほかなかった。
自分の隣には小梅がいて、自分と小梅の前に置かれた、19時以降で1杯無料サービスとなったノンアルコールビールには口も付けてはいない。
その2人に向かい合うかのように、エリカは座っていた。そしてノンアルコールビールをぐいぐい飲んでいる。アルコールは含まれていないのでイッキ飲みしても死にはしないだろうが、エリカらしくない。
ここにエリカがいるのは、小梅が呼んだからではない。織部が誘ったわけでもない。エリカが自分から、『少し付き合いなさい』と小梅に言って、一緒に帰る予定だった織部を誘っても平気かを小梅が聞くと、エリカは問題ないと言って、そして今に至る。
全部飲み切って、ビールの入っていたジョッキをテーブルに勢いよく叩きつけるかと思いきやそっと置いて、エリカは一つ溜息をついた。
「・・・・・・はぁ」
エリカの憂鬱そうなため息を聞き、織部と小梅は顔を見合わせる。
(・・・・・・・・・逸見さん、どうしたの?)
(分からないです・・・・・・)
こうして食事に誘った事自体が初めての事態で驚くほかないし、イラついているわけでもない、もの悲しさを感じさせるようなエリカを見た事は無かったので、余計織部と小梅の2人は困惑している。
だが、このまま放っておくと話は一向に進まないし、下手するとエリカが本物のビールに手を伸ばしかねないので、早いとこ話を聞いておく事にした。
「・・・何かあったの?逸見さん」
織部がおずおずと聞いてみると、エリカは力なく織部の顔を見て、呟いた。
「隊長・・・・・・もうホントに隊を辞めちゃうんだって思うとね、寂しく感じるのよ」
その言葉だけで、そう言う事か、と織部と小梅は納得した。
エリカがまほの事を信奉しているのは周知の事実だし、もうすぐまほを含む3年生が戦車隊を辞めるという事も知っている。
この2つの事象を合わせて考えれば、今目の前のエリカの状態も納得できるものだ。
つまりエリカは、まほがもうすぐいなくなってしまうのが寂しいのだ。そして、そのせいで頭の中に渦巻いている不安や寂しさと言った愚痴を織部と小梅に聞いてほしいのだろう。
中々にエリカも、年相応の女の子らしいところがある。
「でも、次はエリカさんが西住隊長に代わって隊を率いるんですよ?私もですけど・・・・・・」
エリカが新しい隊長になり、小梅が次の副隊長になるという事は、ここに来る道すがらで織部も聞いた。だから小梅の言葉は初耳ではない。
そして小梅の言っていることはもっともなことである。エリカがまほを信奉しているのは確かな事だが、今度はエリカがそのまほに代わって隊を率いていくのだ。それなのに、そのエリカがもういなくなってしまうまほにいつまでも囚われていては、隊は成り立たない。
小梅も副隊長としてエリカのサポートをし、エリカと共に隊を率いていく事になるのだが、隊長のエリカがいつまでたってもこの状態では、小梅もキャパオーバーとなってしまうだろう。
「西住隊長は、エリカさんを信じて、エリカさんを次の隊長にしたんですよ?エリカさんなら、黒森峰を勝利に導けるって信じて・・・・・・」
「そうだね。その逸見さんが、西住隊長がいないからって凹んでて、それで隊長も務まらないんじゃ本末転倒だし、西住隊長の意に反する事になると、僕は思う」
小梅の説得に続けて織部も、自分の考えを告げる。
まほは、エリカを信じて次代の隊長に任命したのだ。小梅の言っていたように、エリカが黒森峰を勝利に導くと信じて。
勝ち負けを重要視しなくてもいいとは言っていたのだが、それでもエリカの様な真面目な人間であれば負けてもいいやとは思ってもいないだろう。やるからには、勝利を目指すに違いない。
けれど、エリカが落ち込んでいて隊を率いるのもままならない状態では、まほの信頼を裏切ったことになる。それはエリカも望むところではないだろう。
それを小梅と織部は、伝えたのだ。
「・・・・・・分かってるの。分かってるんだけど・・・・・・」
エリカも馬鹿ではない。さっき織部と小梅が言った事はエリカ自身でもわかっているだろう。だがそれでも、頭では分かっていても、心は納得できない、といった具合にエリカの心は揺れていた。
「・・・・・・隊長は私の事を信頼してるって事なのよね」
「ええ、そうですよ」
最初からそう言ってるのだが、エリカも小梅の言っていることをかみ砕いて吸収し、頭の中で反復する。
「・・・赤星」
「はい?」
「・・・隊長が、横のつながりを作って隊を強くしたいって言ってたの、覚えてる?」
「それは、もちろん」
まだ隊の中では、まほの望みとも言える横のつながりを作るという事はできていない。ならば、まほの世代ではできなかった事はエリカの世代で実現するのが、当然とも言うべき流れだ。
「・・・・・・なら、私とあなたで、西住隊長の成し得たかったことを、成し遂げるのが礼儀ってものよね」
「・・・そうですね」
礼儀、という言い方は少し語弊があるように感じるが、確かに新世代の隊長と副隊長としてやるべきことではある。
「・・・・・・私1人でできるとは思っていない。だから、あなたの力を貸してほしい」
「・・・・・・」
「・・・・・・小梅、お願い」
エリカは自分の力を弁えている。自分1人で何でもやれるとは思っていないし、過信もしてはいない。
だから、まほの成し遂げたかったことをまほに代わって完遂するのは自分1人の力では無理だという事は重々承知している。
そう思ったからエリカは、恥を忍びプライドを捨てて小梅に嘆願したのだ。
小梅の事を名前で呼んだのも、エリカ自身が小梅と打ち解けて力を合わせたいと思ったのと、その横のつながりを作っていきたいという目標に向けて一歩前に踏み出すためだ。
そして、その意図に気付かない小梅ではない。
「・・・・・・もちろん、私で良ければ」
そこでエリカが、いつものようにふっと笑う。
「・・・・・・ま、副隊長なんだし、嫌でも力を貸してもらうつもりだけどね」
「え、ええ~・・・?」
小梅が困惑したように声を上げると、エリカはしてやったりな笑みを浮かべて水を飲む。皮肉屋なところと、僅かな恐ろしさを孕む笑みは、やはりエリカらしいところがあった。
「悪いわね、変なところ見せて」
「いえいえ・・・変じゃありませんでしたよ・・・?」
「ただ、ちょっと驚きはしたけどね。逸見さんがあそこまで落ち込むのなんて、初めて見たし・・・」
「・・・・・・なんでかしら、織部に言われるとムカつくんだけど」
「・・・・・・泣けるなぁ」
そうして、普段のような会話を交わしている鬱に3人の頼んだ料理の中でエリカのハンバーグが一番早くやってきた。エリカがそれを見て目を輝かせる。さらに普段見せる事の無いような純粋な笑みを浮かべてハンバーグの味を楽しみ、
「大好物なんだけど、悪い?」
普段とはまた違うエリカのギャップを楽しんでいた織部と小梅を、狼のような鋭い眼で睨むエリカもまた、本調子に戻ったのだと証明させてくれた。
これが、織部と小梅、そしてエリカの3人で食べる、最初で最後の食事だった。
ハナショウブ
科・属名:アヤメ科アヤメ属
学名:Iris ensata var. ensata
和名:花菖蒲
別名:
原産地:日本、朝鮮半島から東シベリア
花言葉:嬉しい知らせ、あなたを信じています、心意気など
Varianteでしほさんは会長に敬語だったので、
合わせる形にしました。
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