ダンジョンで情報を探るのは間違っているだろうか 作:怠惰ご都合
前回のを読み返して、あまりにも文字数が少なくて自分でも驚いたので、今回は5千字程でご容赦を。
それでは、どうぞ!・・・・・・あ、そうでしたそうでした。明けましておめでとうございます。
アレ見てよ
早く来て
次はアッチ行きましょ
などと、ミレアに振り回されるまま半日が経過した。
正直なところ、あっちこっち回り過ぎて途中から記憶がないんだけど、そんな事を言おうものならミレアの機嫌を損ねること不可避だろう。
「ぅん、どうかしたの?柄にも無く難しい顔して」
そんな事を言いながら、ミレアは下から覗き込んできた。
急にミレアの顔が近くなったものだから、慌てて顔を逸してしまった。
顔が熱い様な気がするけど、多分気の所為だろう。そう信じたい。
「ちょっと、ホントに何なのよその反応は。あ〜、さては何か隠してるんでしょ?」
「・・・・まさか?何も隠してなんかないって。僕だって考え込む時ぐらいあるっての」
「なら、どうして目を見て話さないのかしら?」
恥ずかしいから・・・・なんて直接本人に言えるはずないじゃないか。
そう考えていると、彼女に両頬を抑えられ、無理やり正面を向かされてしまった。
「面と向かって言いなさいってお姉ちゃんと約束したわよね!」
「別に、同い年じゃんか。どっちが年上とか・・・・」
「い・い・か・ら!・・・・あれ、ちょっと顔紅くなってない?」
・・・・遂にバレた。どうしよう、どうすれば・・・・
「な〜によ、まさか下から見上げてくるエルフにドキってしたとか言わないわよね?」
いや、全部言われたよ。ホントにもうどうすんだココから。
「ぅあ・・・・えっとね、急にかわいいエルフが見上げてくるとか思ってなくて、その上、“目を合わせろ”とか言われるとちょっと気恥ずかしいっていうかその・・・・ハイ」
「・・・・ちょっと、何なのよその反応。これじゃ私だけ遠回りしてたみたいじゃないの」
何故かミレアの顔まで紅くなってる様な気がするが、そこまで意識できるほど余裕はない。
気づかない間に夕方になっていたのか、辺りは少し暗くなり始めていて、迷宮から帰ってきた冒険者の数も増えている。
取り敢えず、ミレアの手から解放されようと、彼女の両手を握る。
「ち、ちょっと!?こんな所で何すんのよ!?」
そんな様子で、彼女が慌てた事で恥ずかしさが増した気がする。
うわぁ、温かいなぁ・・・・・・・じゃなかった。誰かこの状況をどうにかしてくれよ。
ヘルメス様、アスフィさん、見てるんでしょ!?どうせ、どっかの陰から覗いてニヤニヤしてるんでしょ!?お願いですから!?
なんて、心の中で盛大に頼み込んでいると・・・・
「お〜い、兄ちゃんたち、流石に店の真ん前でそんなやり取りをされてるとな、なんの関係もない俺も恥ずかしいんだけど。どうせ寄り付く客もいないけどな、もう止めてくれると有り難いんだが」
なんて、隣から男の声が聞こえた。
「・・・・・・」
「・・・・」
声のする方を向くと、ドワーフのオジサンが座ったまま手を振っていた。
途端に気まずい雰囲気となる僕とミレア。彼女に至っては完全に真っ赤になり、頭から煙が出ていた。
「いやまぁ、最初こそ止める気はなかったんだけどな?それでも長々と店の前にいられると客が寄り付かなくなる訳だから、止めざるを得ないっていうかその・・・・なんか悪いな」
その後はもう、ミレアの悲鳴が響き渡る事は簡単に予想できるだろう。
「・・・・・・・うぅ、もう恥ずかしくて外で出歩けないじゃない」
両手で顔を覆いながら恥ずかしそうに呟くミレア。
「あ、それは助かる。だって工房に来ないって事じゃん」
「アンタの工房から外に出れないって言ってるんですけど?」
・・・・・・・終わるんだが?何がとは言わないけど、僕の生活終わってしまうんだが?
「はっはははぁ!いや、今のは兄ちゃんの言い過ぎだと思うけどね!で、どうだい?何か買ってやくれないかい?」
この状況下で促すとはなんたる勇敢さ。このオジサン、只者ではないな。
オジサンの足元を見ると、指輪や首飾りなど、神様たちの言うアクセサリーという物が陳列していた。
「あら素敵。これ全部、手作りなのかしら?」
「おうおう、そうだとも。ここにあるのは全部、俺が拵えた物よ!」
確かに一個一個に意匠が凝らされている。
これがホントに手作りだとなんて素晴らしさか。
「あ、ねぇルミト。コレとコレ凄くない?パッと見別々の意匠なのに、2つ合わせると1つの記号になるのよ!?」
ミレアが目を輝かせて2つの指輪を見せてきた。
「はっはははぁっ!お目が高いなお嬢ちゃん!その2つはこの中でも自信作でよぉ!」
その時、僕は見てしまった。
値札にはとんでもない桁が堂々と書かれていた。
「・・・・まぁその分だけ値は張るんだけどな」
「ぐ・・・・」
値段を知った途端、ミレアの心が折れた音が聞こえた。
「・・・ごめんなさい、邪魔したわね」
諦めたミレアは立ち上がり歩き出した。
彼女の背中のが遠くなっていく。
慌てて立ち上がって追いかけようとしたとき、ふと思いついた。
「そうだオジサン、ちょっと頼みがあんだけど聞いてくんない?」
「んぉ?そいつぁ構わねぇけどよ、お嬢ちゃん行っちまったぞ!?」
「・・・・・・・その彼女の事で、ちょっと協力して欲しいんだよ」
その後、いつの間にか私はルミトの工房に帰ってきていた。
「ミレア〜、ちょっと・・・・待ってよ〜」
後ろからはルミトの呼ぶ声が聞こえてきた。
「・・・・遅かったじゃない」
「えっとその、人混みに飲まれて」
「普段籠もってばっかりだからじゃないの」
「・・・そうかもね。あ、ゴメン。ちょっと思い出したから少し籠もるね」
なんて言いながらルミトは工房へと入っていった。
そのままベッドに座りさっきの指輪を思い出す。
偶然とはいえ、あの場所で見つけた指輪が特に印象に残っていた。
しかし結構な値段もしていた。
買えないわけではないが、やはり少しだけ躊躇ってしまった。
「・・・綺麗だったなぁ。でもなぁ・・・・」
そのまま少しの間、考えた末に。
「・・・・・よし。ルミト、私ちょっと出てくるね、すぐに戻るから」
「・・・・は〜い」
私は再び、外に出た。
「はぁっ・・・・はぁっ!」
目的はさっきの指輪。
ひょっとしたらもう売れてしまったかもしれない。
でも、ただ諦めるだけなんて嫌だった。
「お、よぉさっきのお嬢ちゃん。そんなに息を切らしてどうしたんだ?」
「あ・・・・・あの・・・はぁ・・・はぁ」
「まぁもう店じまいだけど、お嬢ちゃんの息を整える位の時間はあるからよ、取り敢えず落ち着きなって」
「・・・あ、ありがとう・・ございます・・・・ふぅ」
「んで、どうしたんだい?」
「さっきの指輪2つを買いたくて、戻って来たんですけ・・・ど」
しかし、私はそこで気づいてしまった。
さっきまであったはずの指輪2つは・・・・もうなかったのだった。
「あっちゃー、タイミング悪かったな」
「まさか・・・・」
「ああ、丁度お嬢ちゃんたちが去ってった後にな、買ってった人がいてな。なんかその・・・・悪いな」
「・・・・そう、ですか。突然押しかけて・・・・・失礼しました」
無いものはしょうがない。
一言告げて私は重い足取りで工房に戻ることにした。
「すまねぇな、お嬢ちゃん」
「・・・・・ただいま」
「あ、やっと戻ってきたぁ!遅かったね」
戻ってくると丁度、ルミトが工房から出てきた。
「えぇ・・・・もう用事は済んだの?」
「ほんの少し前にね」
「そう・・・・・悪いけどもう寝るわ」
「待ってよぉ、見せたい物があるんだけ・・・・・」
「ゴメン、明日にして」
ルミトの言葉を遮って私はベッドに向かおうとした、その時だった。
「ならせめて、そこでちょっと止まって目を閉じてて。すぐに済むから」
「・・・・ならさっさとしてよね」
珍しく食い下がってくるルミトに呆れて、渋々従うことにする。
もう早く忘れたいってのに。
そんな事を考えていると、ルミトが後ろに立って何かしようとしているのを感じる。
「・・・・何しようとしているのよ?」
「秘密!まだ目を開けちゃだめだからね」
「・・・・・ホントに何なのよもう」
「終わったから、もう目を開けていいよ」
そう言って、ルミトの声が少しだけ遠くなった。
「・・・・一体なんなの・・・・よ?」
ふと、自分の首に違和感を覚えた。
手を伸ばすとそこにはさっきまで諦めていた、あの模様が半分だけ刻まれた指輪がネックレスになって、自分の首にかかっていた。
「丁度さっき完成したんだ。どう、驚いた?」
「・・・・何で?」
「1日付き合うって決めたから」
「・・・・・どうして?」
「君が欲しそうに見つめてたから」
「・・・・・・」
「君が、ミレアが嬉しいと・・・・僕も嬉しいから」
何でこいつは、いつもはだらしないのに、こういう時はこんな事して、恥ずかしいって解ってるのに、こんな事を言ってくれるんだろう。
こんな奴だから、私は・・・・・。
涙が溢れ、胸がキュウと締め付けられる。
「ど、どうしたの!?驚かせすぎた!?」
そんな私に驚いたのか、ルミトがアタフタしている。
さっきまで、あんなに笑顔だったのに急に困りだして。
「ホントに、大丈夫!?ゴメンね、少しびっくりさせたかっただけで・・・」
「・・・・違うの」
「・・・・・ふぇ?」
不思議だった。
泣いているはずなのに、嬉しくて笑っている自分がいることが。
何よりも不思議だった。
「な、何が間違え・・・ってうわっ!?」
ルミトの言葉を遮って、気づいたときには彼に抱きついていた。
「ぇ・・・・・な、何!?」
「・・・・・ありがとう」
それ以外に言葉は不要だった。
「ふんふふ〜ふ〜」
背中越しにミレアのご機嫌な雰囲気を感じながら、ルミトはベッドで横になっていた。思い出していたのは、さっきの露店にてミレアが落ち込んで離れていった時の事。
「・・・・・・協力って何すんだよぉ?さっきのお嬢ちゃん泣かせたいってのかぁ?」
「逆だよオジサン、・・・・・喜ばせたいんだ」
「・・・・」
「多分だけど彼女は、後でもう一度来ると思うんだ。さっきまで見てた2つを買いにね。でもせっかくだから僕から渡したい」
「ふぅむ・・・・ということはワシはお前さんが買ったってことを黙っておればよいと、そういうことだな?」
「そういうこと」
そこで、ドワーフのオジサンは少し考え込んだ。
「あと、この2つを首から下げれる様に材料も一緒に買わせてほしい」
「別にそれくらいならオマケしてやるが・・・・」
「ううん。さっきまで店の真ん前で邪魔してた訳だから、そのお詫びに」
「お詫び・・・と言う割には随分と注文が多いではないか」
「あ〜まぁ、それは・・・・その」
「わっはっはっはぁ!まぁいい、協力してやるわ!」
そこでオジサンは盛大に笑って協力してくれる事になった。
「・・・・ありがとう」
「にしてもお前さん、どうしてそんな手間のかかる事をしようなどど。直接渡せばよいではないか。こういっちゃあなんだが、お前さんたちの関係ならそんまわりくどい事をせんでもいいと思うんじゃが」
「そうなんだけどさ、昔から知ってる間柄だから直接とか恥ずかしくて。なんなら驚かせたいかなって」
「・・・・面倒な性格じゃのう」
「自分でもそう思うよ。はいお代」
「ほいよ。じゃあ後は任せな。上手くやれよ」
「うん、ありがとう!」
確かに今日は1日付き合ってもらうとは言ったが、正直言って、ここまでやってもらえるとは思っていなかった。
私ばっかりこんなに貰ってばっかりでいいのかな。
そんな事を考えて目の前で横になっているルミトに声をかける。
「ねぇ、もう寝た?」
「・・・・寝てる。だからコレは寝言ね」
驚いた。まさか返事が来るとは思っていなかったから。
「ふふっ、起きてるんじゃないの」
そんなに反応に思わず笑ってしまった。
「・・・・どうかしたの?」
「なんで、ここまでしてくれるのかなって」
「・・・さっきも言ったじゃん。ミレアが嬉しいと僕も嬉しいから。ただ喜んでもらいたいって・・・・ホントにそれだけだよ」
「でも、私ばっかり・・・・」
「違う、それは違うよ。だって、いつも
「・・・・・っ!?」
それを聞いて、驚きのあまり言葉が出なかった。
だってそれは、ルミトも私のことを考えてくれているって事・・・だと思えたから。
自分の顔が熱くなっているのがわかる。
自分の顔が紅くなっているのがわかってしまう。
今だけは、ルミトがこっちを向いてなくて助かった。
見られたら、これからどう接したらいいかわからないから。
ひょっとしたら、もう今日みたいなことは無いかもしれないと、思ってしまったから。
「・・・・・ありがと」
こんな気持ちのままで、私は寝れるんだろうか。
明日、ルミトに“おはよう”ってそう言えるだろうか。
ゆっくりとルミトの背中に両手を近づける。
そのままギュッと服を握ると、微かに暖かくなって安心する。
今ぐらいは・・・・いいよね。
それから数時間後。
ふと、背中に違和感を覚えて手を伸ばそうとしたら、何かに触れた。
「・・・ん?・・・・ぅん!?」
寝ぼけ眼で見てみたらミレアの顔が近くて驚いた。
慌てて向き直るも、反応はない。
どうやら寝ているようだった。
「え・・・・えぇ〜」
察するに、さっき触れたのはミレアの手のようだ。
深く考えず寝ようにも、もうすっかり目が冴えてしまっているため、それもできそうにない。
一体どうしてこんなことになったのか。
そう考え続ける事、更に数時間。
気づいた時には窓からは朝日が差し込んでいた。
ルミトよ、君いつからそんなに出来る子になってしまったんだ。
久しぶりに筆(?)が進んだと思ったらルミトがとんでもないアレになってますね。第一話とはまるで違う気がしますが、安心して下さい。同一人物です・・・・多分。
それでは、また!
今年もよろしくお願いします。