ダンジョンで情報を探るのは間違っているだろうか 作:怠惰ご都合
大体いつも一緒な二人ですが、今回は実はそうでもなかったりします。
「あらルミト、かくれんぼはもうお仕舞いなの?もっと彼女から話を聞きたいから、まだ隠れていてもいいのよ?」
ヘファイストス様が笑いながら口を開く。
もしかしなくてもバレてるぅ。
「ちなみにヘファイストス様、どこまで聞いちゃいました?」
「昨日の朝から今日の目覚めまで」
「おう、手前も全てを聞いた。確かに面白いがな、もう少し素直に行動しても良かったと思うな。まぁ当分の間、からかいの話題には困らんからいいがな。のう主神様よ?」
「えぇそうね」
全部じゃん。
しかも団長には感想まで言われるとか、恥ずかし過ぎてイマスグニゲタイ。
ミレアに助けを求めるも、目があった途端彼女は急に不機嫌になった。
「で、何しに来たのよ」
「・・・急に態度変わったね。さっきまであんなに上機嫌だったのに」
「別に何も変わってなんかないっての。ふん、何よ椿さんにくっつかれただけでニヤニヤしちゃって」
別にニヤニヤしてた訳じゃないんだけど、寧ろすっごい子供扱いされてるみたいで恥ずかしかったんだけど。
「なんだ自分だけされなかったのが、そんなに悔しかったのか。存外、素直な奴だなミレアよ」
「ちょっ、私は別にそんなつもりじゃ!?」
あぁなんだ、そんなことだったのか。
「ほらルミト、黙ってないでアンタからも何か言いなさいよ!」
「・・・・・別に団長が態々しなくても、僕がいくらでも頭撫でたりしてあげるのに」
「い、いきなり何言い出すのよ!?」
「あれ?だってミレアが言えって・・・・」
「そういうことじゃないの!」
「ひょっとして・・・・嫌だった?」
「べ、別に嫌なんて一言も口にしてないし、でもそれはそれで違ってくるし、ホントは嬉しいけど、でも・・・・・きゅう」
顔を真っ赤にしながら倒れそうになるミレアをどうにか支える。・・・・なんかわかんないけど幸せそうだし、まぁいいや。
「・・・・ほう」
「・・・・・あらあら」
あれ、なんか間違えたかな?
ミレアは目を回してるし、ヘファイストス様も団長もさっきとは別の意味でニヤニヤしてるし、
「あの・・・・・どうかしました?」
「ミレアも大変ねぇ」
「うむ、ひょっとしなくても『階層主』より厄介なこと極まりないな」
尋ねればそれはそれで憐れまれるし。
・・・・戻ろう。
そうすれば、少なくとも今よりはマシだろうから。
「じゃあ、失礼しました・・・・・んしょ」
ミレアを起こさないように静かに背負って扉に向かおうとする。
「ルミト、一ついいかしら?あぁ、そのままでいいから」
「・・・・はい」
「せっかくなら正面で抱きかかえてあげなさいな・・・・・・きっと喜ぶから」
「よくわかりませんが、わかりました?」
返事をしていて思った。
でもそれだと扉開けれないのでは・・・・・
「安心しなさい。扉は椿が開けてくれるから、ね?」
「おう、主神様程ではないが手前も協力しよう」
一体何に協力するって?
「ほれ、行った行った」
「じゃ、じゃあ失礼しまし・・・た?」
バタンと閉められた扉の向こうでは、二人の笑い声しか聞こえなかった。
・・・・そういえば、この抱え方どこかで聞いたような。
確か、そう。神様たちが『お姫様だっこ』とか言ってたような・・・・・。
そんなことを考えながらルミトは工房に戻る。
ミレアを起こさないように静かに歩きながら、ようやく工房に戻ってこれた。
「・・・・んしょっと」
静かに扉を開けて、ベッドまで運ぶ。
いやまぁ全然軽いから別にこのままでもいいんだけどね、僕としては。
大体こういう時のミレアはなんか顔が赤くなるから、きっと嫌なんだろう。
「・・・・・ぅ、んぅ?」
しかし、ベッドに寝かせようと一歩近づいたタイミングでミレアは目を覚ましてしまった。
「あ・・・・や、やぁ」
未だにはっきりしていないのか、目はうっすらとしか開いていない。
微かに夢見心地で見上げてくるその様子に、なんとも言えない気持ちになるが・・・・いや待て落ち着くんだ。逆に言えば、今ならまだ“夢だった”で済むかもしれない。
それには再び、ミレアに寝てもらうしかない。
「・・・・・よ〜しよし」
何度もミレアの頭を撫でる。
なるべく刺激を与えないように、静かに髪の上を滑らせる。
「んゅ?」
ぴくりと、思わず手を止めてしまった。
なんだ今の声!?
今までミレアと行動してきたが、初めて聞いたぞ。
待ってヤメテ?
そんな、猫みたいに目を細めて反応しないで!?
「んしょ・・・・・よしよし、はぁ」
どうにかベッドに下ろして再び撫でると、今度は丸まってしまった。
・・・・・・猫じゃん。
「さて、と」
再び槌を取ろうにも、今の心情で再開するとか無理だ。
こういう時は一人でダンジョンに潜って気持ちを落ち着かせるに限る。
確か、以前ミレアに内緒で打った魔剣があったはずだから、ソレを持っていこう。
猫のように丸まっているミレアを起こさないように静かに扉を閉めた。
なんだかんだで、一人でのダンジョンは久々だ。
普段はミレアと組んでるから忘れそうになるけど、ここオラリオに来たばかりの頃はいつも一人で来ていたりする。
「・・・・・よしっと」
今回持ってきた装備は魔剣が三振りに、完成させて以降しばらくの間、工房に放置してた片手剣。
魔剣はどれも試作段階だったから形状や属性はバラバラ。
短剣型の氷や、片手剣型の炎だったり、あとは大剣型の雷。
・・・・・重いし、ガチャガチャ音がするし、やっぱりミレアと来るべきだったかな。
いやでも、今中断してるやつに活かすには必要だし、誘ったとしても拒否されるだろうし、これで良かったんだよウン。
それに完成すれば、なんだかんだで文句を言いながらも受け取ってもらえそうな気がするんだよね、なんとなく。
まぁ誰とは言わないけど、どっかの椿さんのように試し切りな訳だから目的の階層とか『ドロップアイテム』云々・・・・とかは考えていない。
「というわけで、しゅっぱ〜つ」
ちなみにミレアには内緒で来た訳だから、怒ったミレアが追いかけてくるとかは・・・・・考えたくないなぁ。
そんな事を考えながらも、ただ次の階層を目指して歩く。
ビキビキと右側の壁が音を立てる。
ダンジョンにおいて、これはモンスターが生まれるということ。
つまり、今から始まるのは戦闘だ。
モンスターの数はゴブリンが二匹にコボルドが一匹。
幸い上層ということがあって、モンスターの数も強さも悩む程じゃない。
「相手の数が多い方が、 使い勝手を試すには丁度いいってね!」
最初に使うのは大剣型、雷の魔剣。
先手を取りたいっていうのもあるし、先に進むなら大きさ的にも重さ的にもそこそこある物から先に使っていく方が消耗を防げるだろうから。それに、どのくらい速度で上回れるのか知っておきたい。
「そらっ!」
力一杯大剣を振り下ろすことで、刀身から雷が撃ち出される。
その威力はゴブリンを二匹まとめて倒すだけでなく、壁に穴を開けた。
その光景を見ていたコボルドは真っ先に突っ込んできた。
「っ、しょっ!」
自分の腹目掛けて迫る鋭い爪を避けて、すれ違いざまに片手剣で一閃。
断末魔を上げて、コボルドはドサッと倒れた。
「・・・・ふむふむ」
通常、魔剣は魔法ほどではないが、それなりに威力を発揮する。そして、数回使うことでその役目を終え、砕け散る。
今のところ、この大剣にその兆候は見られないが、それでもあと1、2回が限界といったところだろうか。
「検証あるのみってね!」
コボルドから魔石を回収しサイドポーチにしまう。今回はいつものようにバックパックを持ってきている訳ではないので、魔石や『ドロップアイテム』に関しては特別配慮してないが、まぁ換金できる代物だからあるに越したことはない。遠慮なく回収するさ。
そのまま次の階層を目指して歩き続けていくと再び、壁からモンスターが生まれる。今度はウォーシャドウとニードルラビット。どちらも3匹ずつの計6匹。ウォーシャドウは新人冒険者、ニードルラビットは上級冒険者の命を狩り得る危険があると有名でで、つまりこの状況は軽く危機である。しかもそれに拍車をかけるのは、そのモンスターたちが自分を挟むように生まれてきたことだ。前後を同時に相手にするのは、第一級冒険者でも苦労すると以前どこかの酒場で耳にしたことがある。
ということは初心者に毛が生えた程度のレベル2である自分一人では大変困難な状況である。
幸いなことはすべての個体が壁から抜けきっていない事ぐらいだろう。
仕方ない、もともと今日は魔剣の使い勝手と今後制作する際の参考に・・・・・という目的で魔法を使うつもりなどなかったのに。
「痛い思いはしたくないからなぁ。・・・・【猛り
【スケール・ヴェール】を発動させる。
上げるステータスは器用。とはいえ基本ステータスの1つが1段階上昇したから何が大きく変わる訳でもないが、あるとないとでは勝手が違うのもまた事実。
そして、モンスターと戦闘する際に注意する点として挙がるのは、モンスターは互いに連携しないということ。
都合よく解釈すれば、常に個の力で圧倒できると受け取れる。しかし、正しくはその逆だ。それは1対1を何度も切り抜けなければならないということだ。
“ダンジョンでは常に最悪を想定して動け。レベルが上がったからといって決して過信するな。慢心した瞬間、それは冒険者ではなく、ただの愚か者だ”
これは、僕とミレアの担当アドバイザーである
最近は会っていないが、まぁそのうちに、早ければ今回の試験探索が終わったときにでも会うだろう。
「・・・・・・・っ!」
地面に降り立ち、雄叫びを上げながらウォーシャドウがその長い腕を振り下ろしてくる。片手剣でも防げなくはないが、長さではやはり不利。迫る腕を左の大剣でいなし、自分と近くまで近づいた頭部を右の片手剣で貫く。
一息つく間もなく、二匹目のウォーシャドウとニードルラビットが同時にその切っ先で今にも我が身を穿とうと迫りくる。
大剣を前に振り下ろし、ウォーシャドウを真っ二つにする。その勢いのまま、前方へ移動し背後から迫っていたニードルラビットを避ける。
そして3匹目のウォーシャドウを片手剣で魔石ごと消し去る。
「・・・・・ふぅ」
一息ついて、向きを変え、未だ3匹健在のニードルラビットを見据える。
「よっ、と!」
先程同様、大剣を振り下ろし、雷を撃ち出す。その速さは先の戦闘で既に確認済み。上層でなら十分に通用した。
飛びかかる二匹に命中し、消滅させた。
「もう一度・・・・・あ!?」
再度撃ち出そうとしたが、今撃ち出したのを最後に大剣は砕け散ってしまった。
やはり魔剣は、長く使う事ができない。しかも威力も耐久も低いのは、自分が打ったからだ。以前椿さんのを目にする機会があったが、アレには到底及ばない。
「ゴメンね」
それでも尚、自分を助けてくれた大剣に謝罪し、残る1匹に向き直る。
モンスターは命惜しさに逃げることはない。一度敵とみなした相手を葬るか己が消されるか、その決着がつくまで全力で襲いかかる。そしてそれは、上層でも同じこと。
せっかく解決仕掛けた数的不利を、長引かせてまた繰り返す訳にはいかない。一撃でモンスターを仕留める必要がある。
助走をつけて飛びかかるニードルラビットを、こちらも対抗するため走って迎え撃つ。
あと数セルチで額に迫ったその角を・・・・・【スケール・ヴェール】で自身の敏捷ステータスを1段階下げ、しゃがむことでやり過ごす。自身の頭上を通り過ぎるのを確認し、立ち上がりその白く小さい背中を後ろから片手剣で突き刺した。
カランっと魔剣が乾いた音を立てて地面に落ちた。それを回収し、他の倒したモンスターの魔石もサイドポーチに入れ、先程砕け散った魔剣に感謝を伝える。
「・・・・・ありがと」
この探索はまだ終わりじゃない。まだ2本の魔剣は残っている。つまり、どの階層まで使えるのか試さなければいけない。
次の階層を目指して、ルミトは足を動かした。
「・・・・・・ルミ、ト?」
おかしい、たしかにさっきまで一緒にいた気がするのに、今この空間には私しかいない。また下らない獲物でも打っているのかと覗いてみるも、やはり彼の姿は見当たらない。
「一体どこ・・・・・に?」
ぐるりと周囲を見渡してみると、あることに気がついた。
アレが、なくなっている。以前彼が作ってくれた魔剣がない。それも3振りともすべてが、だ。
確かにあの時は要らないと突っぱねたがそれは、彼が勝手に打ってくれたからだ。本当は嬉しかったのだが、その時は『私がいるから大丈夫』という意味で断った。
違う、本当は『ルミトがいれば、他には何も要らない』と言いたかったのに、素直に伝えるのは子供っぽく恥ずかしくて言えなかった。最近はずっとそうだ。彼を前にすると、嬉しいのに恥ずかしくて、ありがとうと伝えたいのに、実際に自分の口を出る言葉は一言多くて、いつも自分の心に素直になれなくて後悔してる。ヘファイストス様や椿さんに伝えるときは、素直に嬉しいと言えるのに、いざ本人を前にすると言えなくなる。
それに彼が椿さんや、他の人たちが彼と親しげにしているのを目にすると、心がざわざわして、また素直になれない。
「・・・・・ルミト」
多分、彼はダンジョンに行ったのだろう。
彼のことだ。エルフのクセに、魔力をそこそこしかなくて、魔法もそんなに使えるわけでもない。そんな私の手助けになるだろうと、内緒で私の
ダンジョンは決して油断したまま向かってはいけない。いや、彼にとっては油断ではないが、集中を妨げる一つではあるだろう。もしそれが原因で彼にもしものことがあったら私は・・・。
それとも、私自身が孤独になりたくなくて彼にいつも引っ付いているのが、駄目なのか。
わからない、いつも考えいるのにずっとわからないまま。彼がいる間はいいや、そう考えて結局いつも先送りにしているだけだ。エルフは年齢とともに成長しても見た目は大きく変化しないというが、一方私は幼い頃から
「私は、どうしたらいいの?」
・・・・今日も私は動けずにいる。
ちなみに今回は、前回の後書きで言った通り、前半ではルミトへの鞭を入れました。(実は第三者による温かい介入なだけ)
あと今回は、ルミトが普段より冒険者してたりしてなかったりでした。伝わりにくかったら申し訳ないです。
それでは、また次回!