ダンジョンで情報を探るのは間違っているだろうか 作:怠惰ご都合
・・・・はい、お察しの通り今回も我らがルミト君はピンチなんです。
「わっ、ちょっ、暴れるなベル!?つーかそろそろ斧投げるの辞めろって、どんだけ引き抜いてきたんだ・・・って危なっ!?」
3匹の
「よしっ・・・・・って、しまっ!?」
しかし弾きながら近づくと、対応するのにはそれなりに速度を上げて反応しないといけない。石斧を2つ同時に投げつけられ、それを壁側に弾き飛ばす。しかし、右手の片手剣で勢いよく弾き飛ばしてしまったために、その陰に隠すように、時間差で迫ってきた石斧を弾く事が出来なかった。いや、正確には間に合わなかったのだ。どうにかして柄の部分だけ引き戻したのだが、それが仇となった。勢いよく飛んできた石斧がぶつかった衝撃で片手剣が右手から放されてしまった。
「うわわっ!?」
当然、すばしっこい
「・・・・なーんてね」
敢えて足を前に滑らせ、体を仰け反らせる事で避ける。そのまま頭上を過ぎ去るアルミラージの腹目掛けて
「別に魔剣だからって、剣として物理的に使えない訳じゃないんだよ?・・・・・まぁモンスターの君たちには解らないだろうけど、ねっ!!」
立ち上がり、そのまま魔剣を投げつける。放ったソレは片方のアルミラージを貫いた。それを隣で目撃したもう一匹は恐れたからか、はたまた動物としての闘争本能か、手ぶらになった冒険者目掛けて真っ直ぐ走り寄り石斧を振り上げる。
「確かに手ぶらになったけど、冒険者が石斧を持てないなんて、誰が決めたのさ!」
さっきまで突き刺さっていた片手剣を掘るために使用した石斧を拾い、横方向からアルミラージの体にぶつける。直撃したことでアルミラージは吹っ飛ばす事は成功したが、
「・・・・今のうちー」
相当なダメージがだったのか、体勢を整えるのに時間がかかっているアルミラージを確認し、この隙に先程別の個体に投げつけたままの魔剣を回収する。
「さぁ、準備は出来たかな?」
別に階層主ではないが、見れば見る程
「・・・・・ッ!」
アルミラージが動くと同時に魔剣を横に振り払う。撃ち出された炎は何にも防がれることなく、正面からアルミラージに命中した。ソレが動かなくなったのを確認し、片手剣といくつかの魔石を回収する。先の二本が2〜3回使用したところで砕け散ったのを考えるに、3本目もあと1、2回使ったら同じことになるかもしれない。だとすれば、これ以上進むのは危険な訳だから、そろそろ戻るのが最善だと言える。
「じゃあ撤収・・・あっそうだ。色々と換金するときに久しぶりにサーちゃんに会うのもいいかもしれない」
しかし、この考えが最悪手だと気づくのは既に手遅れになってからのことであるのだが、目的を達成した上に予想していた通りの結論に至り興奮していたルミトが、それを思いつける筈もない。それほど時間が経たないうちに
私、結局全て話しちゃった。とはいえ、ルミトもお揃いのネックレスをしていることまでは伝えていない。これすらも言ってしまったら間違いなくイジられる。だからバレないようにしないと。そう決意を固めた矢先の事だった。
「・・・・サーちゃん、いるかな?いてくれたら話を聞いてもらい・・・たいんだ、け・・・・」
そして、全てを悟った愚者と、獲物を仕留める雰囲気を醸し出している幼馴染との攻防が始まるのは簡単に想像がつく。
ちなみに、今回と同じ様な攻防が今までにも幾度となく行われてきたが、ルミトが
・・・・・・・ルミト、後で沢山慰めてあげるからね。
幸いなことに帰りはモンスターに遭遇することもなく、最後の魔剣も砕け散る事はなかった。さて、魔剣の試用も済んだことだし後はもう一度取り組む訳だけど。その前に今回ダンジョンで得た魔石の換金と幼馴染への愚痴でも・・・・・・と思っていたのだが。
その光景を見た途端、僕の体はかつて無いほどの反応速度を見せた。思考と反射が同時に働いた、そう思える程に速かった。今日のダンジョンでの連戦なんて比じゃない位だ。
「【猛り
選ぶのは勿論“敏捷”。焦りから詠唱速度が早くなるのは仕方ない事だろう。寧ろ当然と言っても過言ではない。今だけはステータスの上がり幅が1段階しかないのが悔やまれる。できることならレベルアップしたことになって欲しい位だ。そんでもって
一体何を見たのかだって?それは勿論圧倒的な捕食者だね。一見おっとり目な雰囲気の
いやいや窓口嬢なのだからギルドにいるのは当たり前だって?確かにその通りだ。なんなら逃げる必要だって皆無。・・・・だがそれは、“ミレアが泣いていて、それを慰めているサーちゃんがいて、その場面に
だからこそ、今だけは捕まるわけにはいかない。捕まればソレは自らの社会的立場を失うことを意味しているのだから。そうなる前に是非とも逃げなければ。せめて、せめて出直そう。今日は状況が悪かったんだウン。そうに違いない。そうと思い込まなければ生きていけない。
「あらあら、ルミトじゃないの偶然ねぇ?一体どこに行こうとしていたのかしら?何もいきなり走り去るなんて冷たい事しなくたっていいでしょう?ちょっとお話していきましょうよ?」
そんな願いは叶うはずもなかった。頭をがっしりと掴まれ、聞こえてくるその声はひどく冷たい。振り向かなくてもわかる。その目はきっと光を灯していない。映っているのは何処までも深い闇に違いない。かつて幾度となく体験してきたからこそ断言できる。この状態の彼女は危険そのもの。近づかれたら生命の保証はない。そう、だからこそ逃げるのだ。結局、いつも最終的には捕まってしまうと解っていても、いや解っているからこその行動なのだ。無駄だと、同じことだと理解していても、『お説教は出来るだけ後回しにしたい』と身体が芯から叫んでいるのだ。
「あらあら、魔法の無駄遣いだというのに私に対して
ミシミシと掴まれた頭が悲鳴をあげる。マズイ、このままでは自分の体がいつ《ドロップアイテム》と化してしまうか判らない。
「【は、刃を通さぬ幻の壁。姿を定め・・・・ず、主を護る盾となり矛と、なる。時にそ・・・・れは己への戒めとなるだろう】」
せめてもの抵抗に【フォッグ・チェイン】を発動させるが、それでも悲鳴は止まない。詠唱が途切れそうになったのは、それだけ頭部に対する圧が(物理的に)強くなったからである。
「な、なんで?」
「そもそも
動揺し過ぎてつい質問してしまったが、彼女は丁寧に解説してくれる。こういうところが好かれる理由なんだろうな・・・・・ってそうじゃなくて、感心してる場合じゃなくてっ!優しい言葉を使っているけど、これは結構アレな証拠。それだけでなく普段よりも早口になっていることから断言できる。終わった。
駆け出し冒険者におけるミノタウロス、中層における階層主、つまりそれ程までに危険度が高い
「やぁっっっと捕まえたわぁ。さぁいらっしゃい、3人で仲良くお話しましょうよぉ!!そんなに遠慮することないでしょ、全くいつまで経っても恥ずかしがり屋なんだから」
「いや、あの恥ずかしいとかそんなんじゃなくて、寧ろ拒絶と言いますか何と言いますか。とにかく下ろしてくれない?この体勢、足が引き摺られてて痛いんだけど」
頭を片手で掴まれたまま、まるで重い荷物のように引き摺られれば足だけでなく、他の場所も痛くなってくる。
「なぁんだ、ごめんなさいね。私としたことがうっかりしてたわ」
良かった、なんとか通じたみたいだ。やはり直接言わなければ伝わらないということだ。さぁ、後は彼女が手を離した隙に、もう一度逃げ出せば・・・・・・
「そうよね、やっぱりこっちの持ち方の方が安定するものね。あなた、良く解ってるじゃない。例え、もっとキツイことになるとはいえ、自分よりも相手のことを思いやる、その心意気。感動したわ!さっきも言ったけど遠慮は不要よ。思いっ切りやってあげる。ふふっ相変わらず軽いわね、昔と変わらないわぁ」
・・・・・おん?何やら不吉な単語が聞こえた気がするんだけど気の所為・・・・じゃないなコレ!?寧ろ引き摺られてた方が マシなまであるよ!?えっ、一体どんな体勢になったかって?言わせないでよ恥ずかしい。うわすっご、今日気絶したミレアを工房に運んだ時の抱え方って、こんな視点になるんだね・・・・・どんな罰則だよコレぇ!?
「・・・素敵」
「カッコいい」
「・・お姉様」
なんかあっちこっちで似たような感想が聞こえて来るんだけど気の所為じゃないよね!?いいか周りで目を輝かせてうっとりしてる名も知らぬアンタら。絶っっっっ対に間違えてるからな!どんな幻想を抱いているのか知らないし知りたくもないけどね、この幼馴染に憧れるのだけは辞めとくべきだよ!じゃないと気付いたときには既に手遅れになるんだから。何がとは口が裂けても言えない、というか言いたくないけど!あと、コレすんごく恥ずかしいんだぞ!羨ましいとか見当違いも甚だしいっての。ったく、誰だよこんなのミレアにやったの・・・・・・自分じゃん。
「・・・・あはは」
ちらっと顔を向けるとサーちゃんの後ろを歩くミレアが恥ずかしそうに手を振ってきたんだけど、一体何をどうしろと!?
そしてガチャリと扉の開く音を聞いて僕は思い出してしまった。そう、お説教はまだ始まってすらいないのだ。つまりこれからが地獄。なんだったら今までのは前座ですらない。サーちゃんからすれば、ただのお遊びにも満たない位だろうよ。
「は、早く下ろして下さい。既に手遅れだと理解してはいるけど、これ以上されると恥ずかしくてお外歩けなくなっちゃう」
「あら良いじゃない!きっと心優しいミレアちゃんがお世話してくれるわよ。安心して、私も時々遊びに行ってあげるから!!」
「人を小動物みたいに扱うの辞めてよねホントに!!そうなりたくないから下ろしてって言ってるの!あとどうしてミレアは顔を赤らめてるのさ!?」
「えっ、だってサーちゃんが言ってる事って・・・・つまり、そういうことなん・・・」
「うわ辞めて、聞きたくないぃ!?ゴメンって本当に謝るから、やっぱり全部言わなくていいからぁ!?」
そして為す術なく個室へと運び込まれ、扉はガチャリと閉められる。これで逃げ場は完全になくなってしまった。
「さて・・・と、ねぇルミト?私が考えてること、解るわよねぇ?」
壁際に座らされ、正面からは笑顔で迫られる。い、一体何がマズかったんだ?ミレアを困らせた事か?ミレアに内緒でこっそりダンジョンに向かったことか?それともパーティーメンバーの意志を無視して黙って魔剣を造った事か?ひょっとしてサーちゃんに会うのを避けていたことだろうか。どれだ?思い当たるのが多すぎて言い出せない。それどころか聞かれてもないのに自白をしたら更に追い詰められるに決まってるから。
ちなみにどうして椅子ではなくて壁際に座らせられているのかって?前に一度窓から脱走したからだよ、失敗したけど。だってサーちゃんの問い詰め方怖いんだもん。上げてから落とすというか、一度落としてから更に畳み掛けるというか、なんかそんな感じで責めてくるんだよ。
「もう一度聞くわよ?私が考えてること、解るわよねぇ?解るでしょう?・・・・・解るって言いなさい」
「・・・・全然一度じゃないんだけど」
「何か言ったかしら?」
「ナニモイッテマセンデスハイ」
こっわ!?言葉だけじゃ伝わらないと思うけど、この人今日会ってからずぅっっっっと笑顔のままなんだよ!?面白くて笑ってるんじゃなくて笑顔を貼り付けたままなの!!
「まぁ聞きたいことは沢山あるけど、まずは軽めのやつから選んであげましょうかしらねぇ。・・・・・・・ルミト、とっても素敵な首飾りしてるのねぇ。まるでミレアとお揃いじゃない」
・・・・・・全然軽めじゃないよサーちゃん。寧ろこの状況で一番聞かれたくないやつだよソレ。ほら後ろを見てよ。ミレアなんて顔真っ赤になってるじゃん。
「普段そういうお洒落を全くしないあなた達が、急にしだしたら“まぁお年頃よね”で済むところよ。私も察するだけで、特に深堀りするつもりはなかったわ?でも、『同じ日に、同じ意匠』をしたものを選ぶというのは“偶然”の一言で済ますには都合が良すぎると思わない?」
にこやかだけど、有無を言わさないこの雰囲気。どうしよう、逃げられない。そもそもどうしてこうなった?普段心優しい彼女が、一体何故ここまで豹変してしまったのだ?・・・・ダメだ、何も解らない。
(サーちゃん、そろそろその辺で・・・・・)
(何言ってるのよミレア、ここまできてそれはないでしょ。折角の機会なのよ、ここで聞き出さないで、いつ聞くって言うのよ?)
(・・・・・・・・一体何を話してるんだ?なんかよく解らないけど置いてきぼりにされてる気がする)
僕には聞き取れない距離で幼馴染二人が話している。話している間だけサーちゃんの表情は
(それは、そうだけど。でもこんな聞き方しなくても、ルミトなら素直に教えてくれるって)
(甘いって、それで放置したからここまで鈍くなったのよ、コイツは。傷付きたくないから知りたくない、その気持ちも解るけどパーティーメンバー、それも何年も一緒に育ってきた幼馴染なのよ。こういう時ぐらい遠慮しちゃダメよ)
よくわからないけどサーちゃんが何かを言うたびに、ミレアの表情がころころ変わるの面白いな。
「話を戻しましょう。お揃いの首飾りはどうしたのかしら?」
「・・・・プレゼント」
「あらあらそうなの、ふぅん?」
サーちゃんの顔が人を揶揄うときのヘファイストス様みたいになってる気がするんだけど気の所為・・・・じゃないよね。
「ならどうして渡そうと思ったの?」
「それは日頃の感謝として・・・・・」
「正直に答えた方が身のためよ?」
「・・・・・」
有無を言わさない雰囲気を出してやがる。なんでこの人、人を問い詰めるときに限って圧が強くなるのさっ!?しかも僕のときだけだし。他の冒険者と話すときはおっとり系なのに、一体僕が何をしたというのだろうか。
うぅ、こうなったら仕方ない。やりたくはなかったが奥の手を出すしかない。
「言わないと、ダメ?」
涙目になりながら見上げる。これをすれば大抵の人は許してくれるってヘルメス様が教えてくれ・・・・
「早くしなさい?」
・・・・終わった、あれぇおかしいな。なんか最近ヘルメス様に教わった極秘スキルが悉く無効化されているんだけど。
「・・・・・・大切だからだよ、ミレアのことが。いつも世話焼いてもらってるのに僕は何も返せてないから。それが嫌だなって。あと最近ミレアに引っ張ってもらってるばかりで、置いていかれたらどうしようって、不安になったから。でも、素直に口にするのは恥ずかしくて、照れてるところを見られたくなかったから驚かせてバレないようにしました、デス」
「へぇ?」
わああああぁぁぁっ!?恥ずかしいよ顔が熱いよ心臓がバクバク鳴ってるよ!?真っ直ぐ二人の顔を見れないよ!
「・・・・・・だ、そうよミレア?」
「きゅうぅぅぅぅ」
あれ、なんでミレアが赤くなってるの?それに縮こまっているように見えるんだけど。そんでもってサーちゃんの後ろに隠れて服を掴んでるけど、なんか小さい頃に戻ったみたいだ。今でこそお姉さん的な言動のミレアだけど、昔3人一緒に遊んでたときはいつもサーちゃんの後ろをついてったのは懐かしいな。
(良かったわねぇ、気の所為みたいで。ほら、いつまでモジモジしてるのよ?ここまでしてあげたんだから、照れてる場合じゃないでしょ?)
(うぅ、でも)
「ははっ、なんか懐かしいね!」
「何がよ?」
「・・・・・?」
「村で一緒に遊んでた時みたいだなって思ったの。いつもサーちゃんの後ろを歩いて恥ずかしそうに笑ってるミレアと、そんなミレアを励ましてるサーちゃん。で、その二人に何故か座らされてる僕。ねっ、懐かしいでしょ?」
「ふふっ、本当ね!」
「・・・・うん!」
「やっぱり二人は笑ってる方が良いよね!こっちも元気になるっていうか暖かくなるっていうか」
「・・・・・・・っ!?」
あれ、やっと笑ってくれたと思ったのにまたミレアの顔が赤くなったんだけど。
「・・・・・相変わらず、そういうところは変わらないのねルミト。少しくらい自分の心に素直になりなさいよ」
あれぇ?一体何を間違えたんだ?ただ褒めただけなのに、なんか怒らせるようなこと言ったかな。
そしてルミトは気づかない。説教が長引く原因となったのは自らの発言であるということを。
そんでもってルミト君のピンチはもうちょい続きます。でもピンチになる度に成長している気がするのは、ちょっと頼もしかったりもう少しピンチにさせてみたかったりで複雑です。
ちなみにサーちゃんこと新キャラのサーニャ・ラーミノアですが、お気づきの通りお姉さん的ポジションを意識してます。立場的にはサーニャ>ミレア>ルミトな感じ設定してます(嗚呼、ルミト君の立場がどんどん弱くなっていく)
伝わりにくいのは、ま〜アレですね作者の文章力がアレなせいですね。
それでは、また次回!