ダンジョンで情報を探るのは間違っているだろうか   作:怠惰ご都合

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自分にしては珍しい事に、ここ最近続いてる月1投稿、そしてそれに驚きを隠せない作者です。
・・・・・・・すいません嘘です、ホントは一回投稿しませんでした。文章では言い表せない程なんです(ちなみに答えはサボりの一言で全部解決しますが・・・・・あ)
前回に続き、今回もピンチな予感。


甘い言葉と願望

 (良かった、置いていかれたくないって思ってたのは私だけじゃなかったのね)

 

 説教されているルミトを見ながら安心する。自分だけだと思っていたのだが杞憂だったようだ。さっきの言葉を思い出して再び心が暖かくなる。

 

 

 『変わりたいのなら、変わればいいじゃない。実行するには難しいけれど、言葉にするほど楽ではないけれど、“変わりたい”とそう思えなければ、何も行動できないわ』

 

 

 『傷付きたくないから知りたくない、その気持ちも解るけどパーティーメンバー、それも何年も一緒に育ってきた幼馴染なのよ。こういう時ぐらい遠慮しちゃダメよ』

 

 

 ヘファイストス様とサーちゃんの言った通りね。変わりたいと思えなければギルドに来なかった。遠慮しなかったからルミトの本心を聞くことが出来た。

 大切だって言ってもらえたのが嬉しかった。

 笑顔でいると心が暖かくなるって言ってくれた。

 変ね、たったそれだけなのに、心臓がドキドキしてる。頬が緩んで嬉しくなる。顔が熱くてじんわりしてくる。

 ルミトと目が合う度に心臓がキュウっと締め付けられる。

 嗚呼、問い詰められる度にルミトがどんどん小さくなっていく。止めに入りたいのは山々なんだけど私から言い出した手前、サーちゃんには言い出しにくいの、ごめんね。

 

 (でも、そっかぁ。同じこと考えてたんだぁ・・・・・えへへぇ)

 

 そう思ったら頬が緩んでしまうが、バレないように必死に堪えるから変な顔になってるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁に追い詰められ、これ以上引くことの出来ない体勢で、他にどんな事を言及されるのか覚悟を決めるしかないと諦めていた。

 獲物を狩る準備を整えたサーちゃんはにんまりと笑って小声で話しかける。

 

 (で、いつまでこの体勢でいたらいいの?)

 

 (そうねぇ、もう暫くかしら)

 

 (いや、さっきからずっと同じこと言ってるじゃん)

 

 そう、実はこのやり取り既に3回目なのである。一体なぜ、と誰もが疑問に思うであろうがその理由ははっきりしている

 

 (お説教はいいの?他にも言われるかと思ってたんだけど)

 

 (そのつもりだったけど、なんかどうでも良くなっちゃった)

 

 (えっなんで!?)

 

 (アレを見てみなさい)

 

 サーちゃんが示した方向には顔を赤くしたミレアが幸せそうな表情をしていた。お気づきであるようにこれが理由である。詳しいことは知らないが、さっきの首飾りを渡すに至った自分の心情を曝露してからずっとあの状態なのである。いやなんで?客観的に判断すると正直恥ずかしいというか可哀想というか、まぁそんな感じのやつなんだけど。

 

 (・・・・・何あれ、ひょっとして怒ってるの?顔真っ赤なんだけど)

 

 サーちゃんは残念そうにため息をつく。

 

 (無知って罪よねぇ。いやでもこれはいっそのこと気づかせない方がいいのかしら。下手に修整しても結果が怖いからやっぱりこのままにしましょう。ね、ルミト)

 

 (いや何の事かさっぱり理解できないんだけど?)

 

 (あなたはこのままでいればいいって、それだけのことよ・・・・・よしよし)

 

 そう言って静かに人の頭を撫でるサーちゃん。

 

 (あれ、ひょっとして僕だけ置いてきぼりにされてるの?ちょっと残念なやつって思われてたりするの?)

 

 (いいえ違うわ)

 

 良かった。そんなに酷い扱いはされてないみたいだし安心して・・・・・・・・

 

 (あなた、自分が思っているのより相当残念なやつよ)

 

 ・・・・・・・・あれぇ?

 

 (要は、ミレアに笑ってて欲しいか悲しんで欲しいかどっちの方を望むかって事よ)

 

 そんでもって、なんでもないかのように扱われてるし、工房は幼馴染に居座られるし、本来頼れる筈のアドバイザーは僕だけ責めてくるし、僕の安寧の地は一体どこにあるの?ひょっとして存在しないから創れとでも言うのだろうか。神様に祈るしかないのかも・・・・・・・いやでも、そもそもあの方(ヘファイストス様)もミレア側だし却下だよなぁ。寧ろもっと苦しくなるだろうし。うんうん、詰んだねこれ!

 僕が一体どんなとんでもない事をやらかしたんだろう。いやだってやらかしたのは確定でしょ。だって現にこんなに恐ろしい状況になってるんだから。

 

 (で、どっち?)

 

 このまま続けるんだ。そんでもって僕の意見は皆無ですか。でもそんな聞き方、僕の選択はとっくに決まってる。

 

 (・・・・・・笑ってて欲しいよ)

 

 (えっ、なに聞こえなかった。ごめんもう一回言って?)

 

 返答が早いなあ。それにどうして急に聞こえなくなってるの?さっきまでは普通に成立してたよね会話。サーちゃん、なんでこのタイミングでそうなるの?ひょっとしてもうそんな年齢になっちゃったのかな?だとしたら、ごめんね僕の配慮が足りてなかったよね。うんうん今から気をつけ・・・・・

 

 (まさか、失礼な事考えてたりしないわよね?仮にそうだったとしたらちょーっと(・・・・・)歪になるわよ)

 

 考えた途端ガシッと頭を掴まれる。撫でるでもなく包み込むでもなく掴む。サーちゃんがそれを選択したということは、つまりそういうこと。

 

 (ちっとも全然これっぽっち考えてなんてしないから手を離して下さいお願いですから、ホント許して痛いイタイいたい)

 

 ミシミシそしてメキメキと頭蓋が悲鳴を上げ、それを声で伝えたいのも堪えて心から解放を願う。

 

 (早く答えなさい?)

 

 (笑ってて欲し・・・・・)

 

 (は、何を?もうちょっと大きな声で言いなさい?)

 

 ・・・・・嘘じゃん。さっきのと声量一緒なのに、こんなに態度違うことある?しかもさっきなんて声に出してすらいないし、考えただけであんな痛い思いしたってのに、それに対してこんな・・・・こんな雑な扱いなんて。

 

 「笑って欲しいです!ミレアの事が大事です!一緒にいたいです!」

 

 「きゅいっ!?」

 

 自棄になって叫ぶとミレアが小動物みたいな声出して倒れたんだけど。なんかボフッて聞こえてた気がするし、あと薄っすらだけど湯気出てない?

 あれ、いいの?これマズイんじゃないの?ねぇ満足してないで早く教えてよサーちゃん!?

 

 「・・・・・これからよミレア」

 

 「満足気にうんうん頷いてないで、どういうことか早く説明してよ!?」

 

 「あーハイハイ、アンタもよくやったよくやった・・・よしよし、この調子だからね」

 

 「いや何をどう維持しろと!?あとなんで撫でてるの!?」

 

 「よーしよしよし、いい子いい子ー」

 

 「あやすよりもさっさと説明して欲しいな!?」

 

 「後はそうねぇ、さっきアンタにやったみたいに抱きかかえてあげれば完璧ね」

 

 「・・・・えっ!?」

 

 「何よ?」

 

 「今日やったばかりだよ?」

 

 「いつ?」

 

 「ヘファイストス様の部屋で全てを曝露された後」

 

 「なんでそんなことになったの?」

 

 「寝起きに頭撫でたり、頬つんつんしたから」

 

 「・・・・・・」

 

 なんで黙るの、そう思った瞬間、何かを悟ったサーちゃんは一度天井を見上げて大きく息を吐いた。

 

 「ひょっとして・・・・駄目だった?」

 

 尋ねるとサーちゃんは再び視線を合わせてこう告げた。

 

 「最高!」

 

 楽しげに笑いながら告げる幼馴染に対して僕が抱いたのは唯一つ。

 ・・・・・・・・だから何が?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・ダンジョンよりも疲れたんだけど」

 

 サーちゃん(階層主)はやはり強大だった。終始圧倒されっぱなしでなんの抵抗も出来ず、まさに打つ手なしだった。

 時間帯としては昼と日没の間くらいだから、外はまだ明るい。今日もミレアを連れて帰る事になっちゃったなぁ、と考えると同時に夕食についても悩まなければいけない。別に自分一人で生活する分には装備品の製作を優先して多少は食べなくても構わないんだけど、最近はミレアも一緒だからそうもいかない。というかそうさせてくれない。何処かに寄るにしても何を買うか決まっている訳でもないし。

 

 「・・・・・はぁ」

 

 背中でおぶられたまま寝ている・・・・・もとい気絶しているミレアをちらっと覗く。両手が塞がってるから今朝のようにイタズラ出来ないけど、見慣れたその顔は人を安心させてくれる。

 

 「・・・・・・」

 

 そもそも何故おぶって帰る事になったのか、それはサーちゃんの強制によるものだった。

 

 『いやぁ、アンタも偶には良いことするじゃない、見直したわ!』

 

 『・・・・』

 

 『にしても、そっかぁ実行済みだったのね』

 

 『うん。だから目が覚めるまでここで待たせてもらいたいんだけど』

 

 『ならいっそのこと、おぶって帰りなさい』

 

 『・・・・・えっ!?』

 

 『まさか知らないの?』

 

 『いやヘルメス様に教わってるからそれについては全然心配ないんだけど、いいの?』

 

 『・・・・・・なんで私の楽しみ奪うのよあの(ヒト)

 

 『どういう意味?』

 

 『とにかく!朝みたいにやっててミレアが起きたら大変でしょう?考えてみなさい、仮にミレアが慌てたらその後はどうなると思う?』

 

 『・・・・・両手塞がってるから耐えることもできずに仲良く倒れる』

 

 『そういうこと。だったらミレアが起きてもある程度支えられる体勢でいた方がいいでしょ!』

 

 『確かに』

 

 『・・・・・・・あとその方が私としても面白いし』

 

 『なんて?』

 

 『あっ、私用事思い出したから戻るわね!じゃあ、またね!』

 

 というのがサーちゃんに最高と評価されて以降のやり取りである。なんか言ってることの半分くらい意味不明だったけど、説明すらされなかったよ。気づいたときにはもういなくなってた、というか逃げられたし。・・・・・まぁいつものこと過ぎてもう諦めたけどさ。

 

 「困ったなぁ」

 

 両手が塞がってるにもかかわらず、買い物には行かないといけない。不思議なこともあるもんだ。正面で横抱きしたことはある(今日のが初だった)けど、おぶるのはなんとも落ち着かない。ひょっとして顔が見えないから、とかそういう事なのかな?よくわかんないけど。

 

 「・・・うぅ、ん」

 

 背中でミレアがもぞもぞ動いているのが伝わってくる。うんうん、ごめんね寝心地最悪なやつで。ただ、もうちょっとだけそのままでいててくれると僕もこれ以上恥ずかしい思いしなくて済むんだ。理由?往来で人をおぶっていればそれなりに目立つ、それだけだよ。相手が怪我してるっていうなら問題なんて皆無だろうさ。でも外見的に無傷の人をおぶってるのって、普段より人の目を意識しちゃうんだ。

 

 「サーちゃんはああ言ってたから従ったけど、せっかくの寝顔が見れないのは不安だなぁ。ね、ミレア?」

 

 まぁ寝てるから返事なんてないんだけどね。はぁ寂しい。

 それでも・・・・・・・小さい頃から知ってる君の体温は、いつも僕の不安を吹き飛ばしてくれる。だから、今朝みたいにイタズラしちゃう。そのことを知ったら君は、どう思うのかな?

 

 (もう少しの間だけこのままでいられたらいいのに)

 

 自分の顔がすぐに近くで売り買いされている果物のように赤くなっている。バレないように早く帰らないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (なんで、こんなことになってるの!?)

 

 目を覚ますとルミトに背負われていた。そればかりが頭の中を駆け巡って、どうしてこうなっているのか考える余裕なんてなかった。確かサーちゃんがルミトに問い詰めてると思ってたら、急にルミトが急に大切だとか、一緒に・・・・とか言い出してそれで、倒れちゃったのね。今日は朝から驚かされっぱなし、というか振り回されてばかりね。

 

 (嬉しいけど、起きてるってバレたら降ろされちゃう。知らない間にこんなことになってて驚いたけど、多分サーちゃんが変な事を吹き込んだからでしょ。でもせっかくの機会だからなんとか気付かれないようにしないと)

 

 ちらっと目を開けると陽が沈みそうになっている。どうやらもうすぐで日没なのだろう。ということはルミトは買い物に寄るのではないだろうか。少し前に作業に集中し過ぎて食事を抜いたことが何度もあると、うっかり零していたのを問い詰めて改善するように要求したことがある。しかし、説明しても本人には響かなかったからその時は無理矢理食べさせた。だって、改善させないと、『1日抜いても平気になった』とか言い出しそうだし、気付いたら倒れてたなんて事になりかねないから、(自分の行動が強引だった事は認めるけど)心配だった。それ以降、少なくとも私がいるときは食事を抜かなくなったから進歩したと言えるだろう。 

 

 (嬉しいけど・・・・・それ以上に恥ずかしい!?)

 

 顔が熱くなっていくのがわかる。どうかバレませんようにと願う中で、ふと考えた。

 

 (不安定で落ちるのかと思ったけどそうでもないのね、この体勢)

 

 規則正しく伝わってくる振動が、ほんのり赤くなっているその顔が昔と違って少し寂しい。

 

 それでも、小さい頃から見てきたあなたの必死な顔が頼もしくて、こんなにも私を安心させてくれる。ちょっと無愛想だけど、どこまでも優しいあなたと一緒にいたくて、だけど素直に伝えるのは恥ずかしいから変な絡み方をしてしまう。それを知っても、あなたは変わらないでいてくれるのかしら?

 

 (この状況がもっと続いてくれたらいいのに)

 

 周りの会話よりも自分の心臓の方が騒がしい。どうかバレないようにと願うけど、同時にもう少しゆっくり帰って欲しいとも思ってしまう。

 

 

 

 

 

 




いつもはルミト視点でしたが、今回はミレアの視点を多めにしてみました。実はピンチなのはミレアの方だったり(まぁいつもと大差ないんですけど・・・・・ハッ!?)
そして今更ですがミレアが照れやすく倒れやすいことに気付きました。今回多少は進歩しましたがルミトがそれに気付くのとミレアに耐性がつくの、どっちが先になるんでしょうね。唯一の救いはサーニャがミレアの味方だということぐらいですかね(ルミトからすればそれだけで十分過ぎるレベル)
それでは、また次回!
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