ダンジョンで情報を探るのは間違っているだろうか 作:怠惰ご都合
ということは、珍しくor初めてピンチじゃない(かもしれない)ルミト!(深夜テンションが故に情緒不安定)
「で、なんで落ち込んでんのよ?」
ヘファイストス様の声がよく響く。
「・・・・・ふぇ?」
「勝手にいなくなってたと思ったら、さっきからボーッとしてるんだもの。声かけたくもなるわよ」
この
「・・・・えっと、実は今日色々とありまして。そんでもって帰りが一緒になったんですけど、考えてたことが何も伝えられなくて。もっと配慮すれば良かったのにって後悔してまして。正直、何も手につかなくて」
「ならそんなところで突っ立ってないで工房に籠もっていればいいじゃないの。炉に向き合っていれば自然と体が動いてくれると思うわよ?」
確かにヘファイストス様の言う通り、ずっと扉の前で立っていても何も変わらない。なら体を動かすのも一つだろう。
「そうしたいのは山々なんですけどね、入れない状態なんですよ」
ただし、それは扉の向こうが平穏な場合に限る。
「あらどうして?ひょっとして何か壊したの?それとも炉の火が引火して作品が燃え尽きたとか?」
「・・・・・・・ではないんですけど、その」
「わかったわ、言葉では表しにくいのね」
流石に神様だよなぁ。こういうときはすぐに察してくれるからこっちとしても非常に助かる。理由に関しても聞かないでいてくれるから悩んでる身としてもありがたい。
「安心しなさい、中で何が起こっていようと別に怒ったりしないわ。だからちょっとだけ様子を見させて欲しいの。構わないかしら?」
「・・・・助かります」
ガチャリと扉を開けて、ヘファイストス様は静かに工房へと入っていった。
「・・・・えへへへへ」
何度思い出しても、その都度頬が緩んでしまう。あの大人びた筈なのに幼さの残る横顔が、子供の頃とは違って大きくなった背中が、昔と変わらず安心できる体温が、私を幸せな気持ちにしてくれる。
「・・・・・・・」
幸か不幸かルミトは私が寝たままだと勘違いしてくれているから、騒いで起こさないようにと工房を離れているために今この空間は私一人だけ。つまり、こうやって
「はぁ・・・・・・いい」
本当は炉に向き合っている時も一緒してたいんだけど、それは危ないからとルミトが許してくれない。その時の顔が、普段の顔よりも3割くらい増しで格好良く見えてるから、止められても近くに行きたいというのが本心。まぁでもそれを伝えると困らせちゃうと思うから実行できたことはないけど。あと単純に、怒らせて追い出されたら困るし。
「うぅぅぅぅぅ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
普段冷たく当たるのだって、そうしないと頬が緩んじゃうし、顔赤くなっちゃうし、何言われても従っちゃうから。そうなったら今みたいに接してくれなくなっちゃうかもと不安に襲われる。ひょっとしたらパーティー解散されちゃうかもだし、幼児みたいに扱われてしまったら・・・・・・・いやでもそうなったらもっと近づきやすくなるのでは、だけどもしかしたら・・・
「・・・・・・ぅぅぅんぅ!」
え、選べない!? 私は一体どっちを選べばいいの!?どっちも正解かもだし、ハズレな気もするし!でも両方とも幸せなのは解り切ってるし!
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
行き場のない熱量が溜まっていく。なんとか爆発しないように顔を伏せて脚をバタバタさせて消費していく。
「今までは空気読んで黙ってたけど流石にそろそろ限界だから言うわよ?・・・・・・ずっとこの感じでいられると、もう私どうしたらいいかわかんないんだけど、どうしたらいいと思う?」
しかしそれを解決するよりも先に、別の悩みに直面してしまった。
「うひゃあっ!?」
「・・・・・お邪魔してるわよ」
「いっ、一体いつから!?どうやって入ったんですか!?なんで勝手に入ってるんですか!?そんなっまるでヘルメス様みたいに神出鬼没なっ!一体いつから!?」
「・・・・アナタが笑いながらゴロゴロしてる辺りからいたわよ?ちなみにルミトから許可は得てるし、なんだったらここ、あの子の工房だからね。あの子が良しといえばそれで十分じゃないの。そろそろ落ち着きなさい、焦り過ぎて同じこと2回も言ってるわよ?」
自分の恥ずかしいところが知られてしまった。
「そ、それは焦るに決まってますって!醜態を晒してしまったんですよ!?それも衝撃なレベルの!」
「・・・・・いやいやご丁寧に説明してくれてるところ悪いけど、割と前から気づいているからね私?」
「えっ!?」
「だからまぁ、今更って感じよ?」
ひょっとしたら知られているのではと思っていたが、それをいざ改めて告げられると恥ずかしいことこの上ない。
「〜〜〜〜〜っ!?」
さっきと状況は異なるが、奇しくも同じように顔を伏せて脚をバタバタさせてしまう。
「あとさっきは思わずスルーしちゃったけど、ヘルメスってそんなことしてんの?ちょっとそれは知り合いとして看過できないというか、同列視してほしくないから今すぐ訂正してくれるかしら?」
「えっ?神様って皆こぞって娯楽に飢えているんじゃないんです・・・・か?」
「大抵の神が常に娯楽を欲しているっていうのは・・・・・まぁ否定しないけど、全員がそうなわけじゃないからね」
ヘファイストス様はどこか遠い目をしながら、残念そうに答えます。気の所為かしら、その瞳に光が灯っていないような。
「ちなみに、さっきうっかり滑らせちゃったヘルメス様の話について詳しく補足しますと、私は被害に遭ったことはないですけど、主にアスフィさんが」
「・・・・・・あっそう」
ついに愛想笑いすらも消えてしまったんですけど、私は悪くありません。だって事実ですから・・・・・・・頻度は少ないですけど。常に何処かに(無理やり)連れられる印象がありますし。
「ですけど、そんな高頻度な訳ではないですし・・・・ね?」
「・・・・・・・」
とうとう何も言わなくなったんですけど、これ大丈夫なやつですよね!?私は悪くないですよねっ!?あっでもこれ、結果的に話題変えれたんじゃない!?
「・・・・・うーん」
ほらほら何か悩んでるからこのまま他の話題に持っていけば私は助かるわよね!そうとなればこの流れに乗っちゃえば完璧よ!ありがとうヘルメス様、多分出会って以来久しぶりに感謝してるわ!
「まぁそれは今度会った時にでも詳しく聞くとして、さっきの奇行についてなんだけど」
・・・・・・・詰んだ。流石は神様、駆け引きはお手のものだと言うのか。
「私は別に見なかったことにするから、全然気にする必要ないのよ?」
「・・・・・・・はぇ?」
ど、どういうこと!?あまりに衝撃過ぎて変な声出ちゃった。いやだってそうじゃない?客観的に見ても引かれる程の事をしでかしてるのにお咎めなしなんて想像出来ないわよ!
「嘘じゃないわよ?」
「えっ、いやでも・・・・・えぇ?」
「本心よ。今朝も言ったけど、あの子の世話焼いてくれるならそれだけで御の字なのよ。だから多少のことは目を瞑ってあげるわ。寧ろ今よりもっとやっても良いくらいよ」
「・・・・・・怪しい」
「今の貴女に怪しいと言われるのは複雑なんだけど、まぁ聞かなかったことにしてあげる。その気持ちもわからないでもないけどそうね、どうしたら信じてもらえるかしら。・・・・・そうだこれでどうかしら」
「言っておきますけど疑り深いですよ私は」
そう、エルフという種族はプライドが高いばかりに己の種族以外を見下す習性がある。特に厄介なのは己が認めた者以外に肌を触られるのを嫌うというものだ。とはいえそれも全てのエルフに該当するわけではない。顕著な者もいれば全く気にしない人もいる。ちなみに私に関しては、育った環境が関係しているのもあるために完全に後者だと言える。
「こんなんでも一応はエルフですし、納得させるにはそれ相応の理由と証拠が必要ですよ?」
「この工房、不思議だと思わない?人通りの多い廊下に近い上に、人の行き来が多い
「それでなんの話でしたっけ!?あ、安心して下さい。私ヘファイストス様の話なら全面的に信じますから!疑うなんてそんな恐れ多いことしませんから気にしないで下さい!」
「・・・・・その立ち回りの速さ、あなた間違いなくヘルメスの子よね。今はっきり確信が持てたわ」
「・・・・・・そこで納得されるの嫌なんですけど」
「だってその通りなんだもの」
「何か言いました?」
「そういう時だけ食いつきが速いじゃない。もうそれこそ確たる証拠なのよ。まぁいいわ、信じてくれたならそれでいいわ。じゃあ、そういうことだから」
ヘファイストス様は工房を出ていったけど、終始揶揄かわれっぱなしの私がそれ以上を聞き出せるはずもなく、私は再びこの空間で一人となった。
「・・・・・・どうでした?」
「いつも通りね」
なるほどいつも通りなのか。つまり冷静で時々当たりがキツくて、前触れもなく急に顔を赤くする。それなら特別心配しなくてもいいか。
「言っとくけどあなたの知ってるいつも通りと、私の言ってる“いつも通り”は真逆だからね」
「・・・・・・ぇ?」
何か大切なことを見逃している?小さい頃からの知り合いであるこの僕が?ミレアの事を知らない?
「あれぇ!?」
「うんまぁ、でしょうねって感じよ」
ヘファイストス様は想定通りと言わんばかりにウンウン頷いている。
「確認してきても?」
「まぁ今すぐ入っても大丈夫よ・・・・っていうかそもそもあなたの工房だからね」
「・・・・・」
「気付いてないのはあなただけよ、アレ」
「・・・・それ、さっきサーちゃんに言われたばかりなんですけど。どういう意味なんですか?詳しく聞こうとしても教えてくれなくて・・・・」
「でしょうね。自分で気づいた方がいいと思うの。もしくは何も知らない方がいいのかも」
「・・・・・全く同じ事言われた」
「じゃあ、あとは自分でどうにかしてね」
扉を呆然と見続ける僕を特に心配することもなく、寧ろ何処か楽しそうな表情をしながらヘファイストス様は自室へと入っていった。
「・・・・入るか」
ミレアなら答えてくれるかも、なんて考えながら僕は工房の扉を開けた。
そして例に漏れずルミトだけが置き去りにされます。はい、いつも通りですね。そう、ミレアが恥ずかしがるのと、照れるのは、ルミトからすればどちらも「あれ、調子悪いのかな」っていう認識なのです。その割には自分から照れさせてるような気がするのは作者だけではないはずです。(鈍いの一言で済ませていいのか、これは)
それでは、また次回!