ダンジョンで情報を探るのは間違っているだろうか 作:怠惰ご都合
ホントに申し訳無いと思ってます。
「・・・・う〜ん」
どうしよう、正直なところは何をどうすればミレアが喜んでくれるのか全然思いつかない。
ミレアは工房で、ニコニコしながら準備とかして。
因みに僕は廊下でさっきからずっと悩んでます。
いやだって、ミレアってば
『何でもいいし、どこでもいい。外をぶらついてもいいし、なんだったらずっと工房にいてもいい』
とか言い出すんだよ。
ホントにどうしたらいいのかな。
「あなたが悩んでるなんて珍しいじゃない。明日は雨かしらね?」
困ってたら、そんな声が聞こえてきた。
声のする方へ向くと、へファイストス様が自室の扉に手をかけたまま、笑っていた。
「・・・・へファイストス様?」
「そんなところで立ってるなんて、何かお困りかしら?」
ひょっとしたら、何か助けてくれるかもしれない。
そう思って頼ることにした。
「・・・・って訳なんですけど、助けてもらえませんでしょうか?」
「イヤ」
即答されました。
「・・・え」
あまりの反応に思考がついていけなかった。
「だって、答えが出てるんですもの。なら私が出ても邪魔なだけでしょう」
「え、ちょっ・・・・・」
「たまには自分で解決する事ね」
バタン、と扉が閉められへファイストス様は自室へと消えていった。
答えが出てる・・・って言われても、そもそも解ってないから聞いたのに。
とはいえ、仕方ない。
こうなってしまっては、もはや自分で答えを見つける他に道はない。
ここは一度、ミレアの言葉を思い出してみよう。
落ち着かなければ、攻略できるものも出来ないというものだ。
『何でもいいし、どこでもいい。外をぶらついてもいいし、なんだったらずっと工房でもいい』
わかったかもしれない。
いやでもそんな事はあり得る・・・・のか?
僕がいればそれでいい・・・・なんて。
そう思うと急に恥ずかしくなってきた。
顔が熱くなって、心臓の鼓動が早くなった気がする。
「なんで、そんなに距離を開けてんのよ」
「・・・・・ベ、ベツニ、イツモドオリデスヨ?」
その日の夜、ミレアの顔をまともに見れないまま、寝ようとした時だった。
「なら、なんで疑問形になってんのよ」
「・・・キノセイダヨ?」
ちゃんと答えたはずなのに、余計に疑われるなんて、結構理不尽だなと思っていた瞬間。
「まぁ、いいわ。私がそっちに行くから」
死の宣告が下った。
「は、来るって何!?」
トン、と彼女の足が床につく音が聞こえた。
ゆっくりと、足音が近づいてきて、背中に気配を感じる。
「・・・・・もう少し、奥に詰めてよ」
「・・・あーっと、一応理由を聞いてもいい?」
「言葉にしてもいいの?」
小さい声で、そう言われた。
僕は体勢をそのままに、ゆっくりと奥へと移動する。
「ねぇ、こっち向いてよ」
「・・・・勘弁してもらえない、かな?」
わかる。
今の状態でさえ危険なのに、これ以上の注文に答えると、僕は恥ずかしさと気まずさで倒れるのがはっきりと解る。
「昔はよく一緒に寝たじゃない」
確かにミレアの言うとおり。
僕とミレアは昔から仲が良くて、何をするにも一緒に行動していた。
でも、それは。
「十年近くも前のことだよ。今とは状況が全然違う」
「・・・・・そう、よね。そうだったわね」
互いに顔を合わせないまま、僕らは言葉を交わす。
本当は昔みたいに過ごしたい。
ただ一緒にいるだけなのに、仲良く笑っていられたあの時みたいに。
それは、成長したからなのか、オラリオに来たからなのか、冒険者になったからなのか。
もう前みたいには出来ないのかな。
「・・・・・ん」
背中にのしかかる重みによって、僕は目が覚めた。
いつもならミレアに無理矢理起こされるところだが、今日は、僕の方が先だったようだ。
ミレアがいることに気づき、起こさないようにゆっくり動こうとしたときだった。
「・・・・・あれ?」
体が動かない。
「せいっ・・・・えぇ?」
やはり動かない。
「まさか・・・・・あぁ」
もしやと思って首だけ動かすと、見事にしがみつかれていた。
間に枕を挟んでいたため気づけなかったみたいだ。
もうどれだけ寝相が悪いのか、どうやって突っ込めばいいのかわからない。
黙っていれば美人のソレであるが故に、乱暴に振り解くのは気が引ける。
脱出を早々に諦め、呼び起こす事にする。
「・・・ミレア」
「・・・・・・・・・・・」
返事がない。
だが、たった一度の挑戦で諦めるのは癪だからもう一度。
「ミレア」
「・・・・・・・・・んぅ」
今度は手応えあり。
ならばこのまま畳み掛ける。
「起きて、ミレア。ほら手を離して」
「やだ」
三度目は拒否されました。
というか起きてるじゃんか。
ひょっとしたら最初から起きてたのか?
心なしか、しがみつく力が強くなった気がする。
しかし、これで音を上げては、冒険者とは名乗れない。
無理にでも脱出を試みる。
「・・・・・ふぅぅうんっ!」
「や・だ」
また少し力が強まったような。
「・・・んっぐぅぁぁぁ・・・・ハァ、ハァ」
「や〜だって言ってるでしょ。何、もう疲れたの?」
三度の抵抗も虚しく、僕は勝てなかった。
・・・・なんで、寝てるエルフに力比べで勝てないのさ。ダンジョンでの戦闘でも、お互いに前衛と後衛を交代でやってるのに。ヘルメス様、一体何を吹き込んだんですか。
「しょうがないわねぇ」
ミレアは渋々、体を起こした。
対して僕は、朝からぐったりすることになりました。
「で、どこ行くのよ?」
「う〜ん、歩きながら決める・・・・じゃあダメ?」
通りに出てそんな会話をすると、少し呆れられた。
「・・・まぁ、いいわ。はい」
そして、右手を差し出された。
「えっと、つまり・・・」
「あなた、考えながら歩くとあっちこっち行っちゃうじゃない。だから手を繋いでてあげる」
いやまぁ、確かにその通りではあるけど、この年で『手を繋ぐ』というのは恥ずかしいと言いますか照れくさいと言いますか。
しかし今日は、ミレアの為に使うと決めた。
一度決めたからには行動しなければ。
「・・・・・ん」
ゆっくりと左手を近づけて、ミレアの手を握った。
「ふふ、よろしい!」
多少は恥ずかしいけれど、彼女が笑ってくれたから良しとしよう。
正直なところ、昨日は恥ずかしさから突き放すような態度をとって、後ろめたさがあった。
でも、今は別の問題が発生した。
この状況下で考えがまとまるほど、僕は賢くないのである。
そんな事を考えていると、ミレアが顔を覗き込んできた。
「・・・・な、何さ」
「アンタの顔、真っ赤じゃない」
「うるさい、あんまり見ないでよ」
「え〜、い〜じゃないの。ほら、ちゃんとこっち向いてよ。顔を背けないの」
こっちは全然良くないっての。
手を繋いで歩くだけでも恥ずかしいのに、顔を直視なんてできるはずないじゃないか。
「ふふっ、ほ〜ら素直になりなっての」
特に催しがある訳でもないはずなのに、この機嫌の良さはどういう事なのか。
こっちはあまりにも恥ずかしくて、今すぐにでも駆け出したい位だというのに。
「・・・・因みにわかってると思うけど」
そんな僕の胸中を知ってか知らずか、ミレアが小さな声で一言付け加えてきた。
「恥ずかしいからって逃げ出したりしたら、荒れるからね」
「・・・・えっと、ミレアが?」
「アンタの工房が、よ。それはもう目も当てられない程にねぇ」
なんて脅し方をしてくるんだ。
逃げようにも逃げられないこの状況。
いやまぁ確かに言い出したのは僕の方だけどね。
この恥ずかしさは予想外と言いますか何と言いますか。
「だから諦めなさいって。アンタも冒険者なら一度口にした事ぐらいやり遂げなさいよ。いくら恥ずかしいからって逃げるのは許さないわよ」
「当たり前のように心を読まないでよっ!?なんで考えてること解るの!?」
「秘密。ほら早くしてよね、私だって恥ずかしいんだから」
どこか恥ずかしそうに笑いながらミレアは催促してきた。
互いに嬉しいはずなのに、相手にはっきりと伝えられない不器用さ。
相手に察してもらえれば自ら言わなくてもいいという強情なところ。
口ではあれこれ言いつつも、結局相手に付き合ってしまう正直になれないところ。
数え上げれば切りがないが、それでも相手の文句を言わないのは、幼馴染だからだろうか。
「そこまで言ってくれるなら、せめて後もう一声くらい欲しいわね」
「だから心を読まないでって!」
つまりまぁ、それなりに仲良しなのだろう。
からかい合い、ムキになって反論し合うその関係は今でなければ有り得ないのだから。
なんてことを考えている時だった。
「・・・・あ」
今まで上機嫌だったミレアが急に落ち込んだ様子がその声音から感じて取れた。
彼女はそっと僕の後ろに身を隠した。
どうしたんだろう、そう考えてゆっくりと前を見ると、そこにいたのは。
羽つきの鍔の広い帽子を被り、旅人風の服装に身を包んだ優男風の男神。
ヘルメス様、本人だった。
そしてその隣では、常に落ち着いた様を想像させる眼鏡をかけた女性、《ヘルメス・ファミリア》団長のアスフィさんがいた。
多分だけど、ミレアが隠れたのは彼女がいるからだろう。
「やぁルミト君、この前の
自分から話しといてこの堂々とした姿、もしこの前の光景を見ている人がいたなら、呆れるのを通り越していっそ清々しいとまで言った事だろう。
「それは、まぁ。察して頂けたら助かります。ところで今日は用事とかないんですか?こんな時間から珍しいですね」
「それについては私が答えましょう。・・・・ミレア」
「・・・・・ッ!?」
びくっ、と彼女が跳ねるのがわかる。
「は・・・・・はい」
「あなた、ここ最近見かけないと思ったら今までどこにいたのですか?」
「・・・・あ、えっと、その」
普段の彼女からは考えられない程に萎縮している。
「アスフィ・・・さん、実は」
「おおっと、アスフィ!すまないが予定を思い出した。もう一つ用事に付き合ってくれ」
張り詰めた雰囲気を破るように、ヘルメス様が突然大きな声で話し始めた。
「・・・何故今まで黙っていたんですか」
「だから今思い出したと言っているだろう!あとミレアには別に用事を頼んであるから、あまり言ってやるな」
そう言われてアスフィさんは深い溜息をついた。
「・・・そうでしたか。すみませんミレア、訳も聞かないまま追い詰めてしまいました」
「いえ、アスフィさんは悪くありません。説明してなかった私が悪いからご迷惑を」
さっきとは変わって謝る
態度変わり過ぎでしょ。
「おいおいどうしたんだアスフィ!?さっきとは打って変わってしおらしくなったなぁ、疲れてるのか?」
「・・・・誰のせいですか、まったく」
「邪魔したな二人とも、またな」
「・・・・・それでは」
やっぱり流れ変わり過ぎでしょ《ヘルメス・ファミリア》。
ついていけなさ過ぎて、会話の半分以上空気になってしまった。
二人が去って少ししてから、ミレアがゆっくりと元の位置に戻った。
「どうしたの、いつもとは調子が違ったけど。ひょっとしてアスフィさん苦手?」
「・・・・・か」
「・・・どうしたのさ」
普段と違って、彼女の声は小さくなっていた。
そんなに恐れてる相手なのかと思っていると、
「カッコイイ!」
「・・・・・はぁ?」
「ねぇねぇ、今日のアスフィさんカッコ良かったわよね!いやいつもカッコイイんだけど、特に今日は凄かったわ!普段の凛としてるのも素敵だけど、相手を追い詰めるあの雰囲気も堪らないわ!ね、そうよね、ね!?」
盛大に違うっぽい。
つまり、恐くて萎縮していたのではなくて、憧れの存在を前にして緊張していた、という事のようだ。
「・・・・・はぁ〜、心配して損した」
「ちょっと、話聞いてんの、ねぇってば!」
けしかけたのはヘルメス様。
偶然を装って会ったのもヘルメス様。
ミレアを盛り上げるために、
全部、あの神に仕組まれたかと思うと素直に喜べないというかなんというか。
しかも、ヘルメス様曰く、ミレアは用事をこなしている途中らしい。
当分はミレアと一緒なのかと思うと、複雑としか言い表せない。
しかもまだお昼にもなっていない。
その上、ミレアは上機嫌だし、ホントにどうするべきだろうか。
二人と別れて、少ししてからヘルメスとアスフィは路地裏へと入った。
「ヘルメス様、本当に何がしたかったんですか」
周囲への警戒を続けたまま、アスフィは自らの主神へと話しかける。
「おいおい、変な勘ぐりは止せよアスフィ。俺はいつもこんな感じだぜ?」
あくまでも冷静に言ってのけるヘルメスに、アスフィは少し困惑した。
「・・・でしたら偶然を装ってまで調査をしなくてもよろしいでしょうに」
「そう言うなよ、これも依頼主の意向ってヤツさ」
「しかしまさか《ヘファイストス・ファミリア》、その主神自らの申し出とは」
「俺も最初は驚いたさ。しかも、『不器用な二人を後押ししろ』とはいかにも過保護な彼女らしい」
「自分でやれば、それで済む話ではないのですか?」
「それがなぁ?『たまには自分で解決しろ』、と言ってしまっただけに干渉しにくいみたいなんだよなぁ」
「・・・・・・・そうですか」
最後にはアスフィは完全に呆れてしまった。
彼女は今回、終始振り回されてばかりとなったのだ。
二柱の意図がどうであれ、彼女が一番損をした事に変わりはないだろう。
そんな神の思惑に気付かぬまま上機嫌なミレアと、早々に疲れつつあるルミト。
二人の一日はまだ始まったばかり。
今回はこんなにお待たせしたんだから、じゃあ次回は投稿が早いんですね・・・・・・・えぇ(困惑)。
まぁ投稿はします(いつとは決まっていませんが)
にしてもルミト、君力負けして、振り回されて、損な役回りばかりですね。
・・・一体誰のせいなんでしょうね?
それではまた次回。