緑谷出久が梁山泊に弟子入りしてから数年後、出久は雄英体育祭の開幕式の為に整列していた。
色々あったなぁ。となんとなしに今までを振り返る。
梁山泊の人達との出会い、兄弟子ケンイチの仲間で武術家の先輩達との出会いから始まり
人間の限界を突破するような地獄という言葉すら生温い修行の数々
憧れのオールマイトとの出会い
幼馴染のかっちゃんを襲ったヘドロっぽいヴィランを、拳圧で吹き飛ばした時の「違法な個性の使用」(これはすぐに誤解とされお咎め無しとなった)
その後のかっちゃんとの軋轢
入学試験では0Pの仮想ヴィランを腕を駆け上がり、背中からコアをぶち抜く
個性の使用有りの身体測定ではクラスメートに引けを取らず
マスコミ騒動では長老仕込みの喝破で場を収め
ヒーロー学での模擬戦ではかっちゃんと互角に渡り合い
USJでは防御、回避、受け流しに徹する事で「能無」を無力化した(師匠達の方が遥かに怖いとは出久談)
そんな過去(主に修行内容)を振り返り
「よく生きてたな、僕」
と遠い目をしつつ、周りからの視線を無視している。
人の口に戸は立てられない。
ヒーロー科に所属していながら「無個性」であると、密かに知れ渡っている出久は特に注目を集めているからだ。
かっちゃんによる「選手宣誓という宣戦布告」も終え、第一種目のスタート地点へと並ぶ。
と、プレゼントマイクのハイテンションな実況の声が辺りに響いた。
「さぁ!!実況はこのプレゼントマイク!!そしてぇ、なんと!!解説にはスペシャルゲストとして『ヒーローよりも人間離れしてる』と言われる武術家集団『梁山泊』からぁ!!『哲学する柔術家』の異名で知られる『岬越寺秋雨』が来てくれたぞぉ!!」
「よろしくね」
ヒゲをちょいちょいと触りつつ挨拶をする秋雨。
予想外の師匠の登場に一瞬だけ出久は硬直してしまう。
「デク君、どうしたん?」
「ア、イ、イヤ………」
その挙動に傍に居た麗日お茶子に問われるも、妙な片言で返してしまう。
「なんでも弟子が此処に通ってるとか?」
「えぇ、出久君という子なんです。それと彼には師匠として課題を、と思いましてね。」
「おぉ!!今注目のルーキーか!!んで、その課題ってゆーのは?」
そんな会話から出久へと視線が集まる。
「えぇ、この体育祭でベスト8に、出来れば優勝して欲しいですね。もしベスト8に入れなかったら………」
「入れなかったら?」
ゴクリ、と静まり返った会場で唾を飲み込む音がどこかから聞こえた。
「『修羅コース』の修行を一ヶ月」
「デ、デク君大丈夫?」
『修羅コース』とは何か?と殆どが首を傾げる中、カタカタと歯を鳴らす出久に恐る恐る声をかける麗日。
「麗日さん、『地獄の修行』って聞いて思い付く限りの厳しいのを思い浮かべてみて」
「へ?う、うん」
周りで聞いていた生徒達も連られて思い浮かべる
「それが天国だって理解させられるような、例え死んでも黄泉帰りを経験できる。正に生かさず殺さずの修行だよ。それに見会うだけの強さは得られるけどね」
ハハハ、と力無く笑う出久に同情の視線が集まるが、それほどの修行をしているからこそ、彼はこの場に居るのだと一部の生徒は気を引き締める。力なき無個性ではなく、強力なライバルとして存在を再確認する。
「師匠からの熱い声援は此処までだ!!こっからは公正に頼むぜぇ!?さぁさぁ、気を引き締めていけ!!そろそろ第一種目が始まるぜぇ!!」
(あくまで発破をかけただけと勘違いしている)プレゼントマイクの声で全員が意識を向ける。
この体育祭で、緑谷出久は世界へ己を知らしめる。
その影にある、財政難の梁山泊を何とかするための師匠達の