酒保の設定は適当です
「見事にGO☆MIだけだったな!」
「そうだね」
雷蔵と時雨は二人揃って、詰み直したダンボール箱の壁を見やる。箱の大きさは統一されているらしく、マス目の模様が表れている。
提督は組んでいた腕を解くと、いかにもめんどくさいという風に、一番上のダンボール箱を叩いた。
「これこのままゴミに出しちゃおうか」
「箱は畳んでまとめて古紙に、中身は指定の袋に入れて燃えるゴミにしなきゃ」
手を後ろに組んだ時雨が、愛想よく笑って提督を諭す。怖い。その笑顔はなぜかちょっと怖いよ、時雨さん。
「じゃあ、僕は酒保に行ってくるね」
雷蔵に笑いかけたのち、時雨はくるりと向きを変え、部屋の出口の方に歩き始めた。
「酒保に?」
「燃えるゴミの袋もそこで売ってるから」
『酒保』。雷蔵は何だったか少し記憶を辿る。ええと確か、『軍事基地の中にある雑貨屋』だったっけか。
それなら今後もお世話になる機会が多そうだ。場所を覚えといたほうが良かろう。
「待ってくれ。ついでに、おれをそこに案内してくれ」
***
ベニヤ板で出来た焦げ茶色の壁に、木の角材を固定して作られた簡素な棚、棚、棚。その上に、木組みの天井からロープで吊り下げられた案内用の板。『日用雑貨』、『清掃用具』、『台所用品』等々。中には『資材』とか『旬のお奨め』なんて名付けられたコーナーもある。
「いらっしゃいませ! どれにします?」
そんな木造の酒保で出迎えてくれたのは、鮮やかな桜色の長髪を靡かせる、高校生だった。
ミニチュアのクレーンを担いだ、女子高生だっ(ry
時雨は特に気にした風もなく、『清掃用具』の棚を物色している。ああ、彼女も、オカシイっちゃオカシイんだったな。この鎮守府では女学生が施設を切り盛りしてるんだろうか。
「明石さん、これ、お願い」
時雨がゴミ袋(10枚セット、30リットル)を持ってきた。明石、と呼ばれた彼女が、カウンター越しに商品を受け取る。
「はいはい。可燃ゴミの袋、10枚入りで———、って、あれ?」
建物の雰囲気にはそぐわない、タブレットをとんとんと操作していた明石が、少々困ったような顔をして髪をかき上げた。
「えーっと、第九司令分室でしたよね?」
明石に尋ねられ、提督が『そうだね』と答える。
「すみません、申し訳無いのですが、予算が足りないようで……」
「「えっ」」
思わず声を合わせる雷蔵と時雨。ゴミ袋ってそんな高いの? にしては慣れてるはずの時雨も驚いてる。
急に値上げして、3万円になったとか? いやいやそれにしたってな。どういうことか聞いてみよう。
「ゴミ袋の値段は?」
「260円です」
ゴミ袋は適正価格だ。てことは、つまり。
「……ウチの予算は?」
「200円ですね。どうも」
「にっ」
明石は申し訳なさそうな顔をしている。買い物に来た二人は絶句している。
にひゃく、って、いくらウチが一番下だからつっても、それはあんまりだろ。小学生の小遣いより少ねーんじゃねえの。
一桁、二桁、最低でもあと三桁は位をあげて、ようやく相場って勢いだぞ。
提督は内心、そう憤慨する。
これには時雨も呆れたようで、青い目を少し丸くしながら、彼女は明石に尋ねた。
「えっと、その場合はどうすれば」
「自費による購入は原則として認められてないから……。商品の実費と一緒に申請書を提出してもらって、認可証を持って来てもらえれば引き換えますよ」
なるほど、聞くだに面倒な話だった。それでも一応、雷蔵は確かめておく。
「それって大体どれくらいかかるん?」
「そうですねえ。多分、一週間くらいで認可証が発行されるので。それくらいですね」
「おっそーい!」
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